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71.結婚はまだまだ先のこと?
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「結婚は後々考えてもらうにして……。とりあえず今日は親友になったというだけで収穫はあったことにしよう」
ロングコートを翻し、この場を後にする。
変人ことアスカルド公爵は求婚こそすれ、強要することはなかった。その代わり、会って初日で親友の座をもぎ取っていった。まさかの友人その2もまた脳筋である。それも変態要素まで付いているときた。絶対普通じゃない。なんなら親友どころか友人とさえも認めたくはないのだが、認めなければ後々面倒臭いことになることは本能的に理解が出来た。『親友ではなく妻になってくれるのか?』なんて言い出されたら、もう一度家出する自信がある。さすがにファイティングポーズからのワンパンKOを決めるつもりはない。そんなことをしたらもっと執着されるだろうことを予測出来るほど、私も大人になったのだ。脳筋慣れしたとも言える。
「メリンダさん。そろそろ帰りますよ」
「またいつでも来てくれ」
「今度また違う武器追加しておくね~」
「それより今の武器に慣れなきゃ」
「師匠、また明日」
「うん。お邪魔しました!」
脳筋一家に頭を下げて、エドルドさんの背中を追いかける。いつも通りのエドルドさんだと思ったのもつかの間、馬車が走り出せば深いため息を吐きながら、両手で顔を押さえた。
「なぜあなたはこうも面倒事を引き寄せるんですか……」
お説教モードというか、思考モード。
怒られている訳ではなく疑問を投げかけられているだけなので、平然と答える。
「周りに脳筋が多いからじゃないですか? 後、面倒事の一つはエドルドさんのところの義弟さんです」
「だからって周りを全員結婚候補で固めることはないでしょう……」
「全員って。義弟さんは違うでしょう」
「義弟だってロザリアさんと結婚を望んでいます」
「初耳なんですけど!?」
私が持っている情報といえば、義弟さんはロザリアにお礼を言いたいらしいこと。後は極度のブラコンで、婚約者のメリンダを嫌っていることくらいだ。
どこかで関わったことあったっけ? レベルなのに、結婚を望まれているなんて想像もしていなかった。むしろ察する能力があったら私はチートを通り越して神の領域に立てるはずだ。すでにこの国ではグルメマスターというある種の神が君臨しているため信仰されるかはまた別問題で、すぐに神格の取り消しにあうかもしれないが。
もしや彼も隠れ脳筋で、強者の血を欲する一族に属しているのだろうか。
グルメマスターをお守りするために力を欲しているとか?
そして白羽の矢が立ったのがロザリアだった、と。
そうだとしてもよく知りもしない相手を結婚相手に望むだろうか?
「そうでしたっけ? まぁどうせ結婚するつもりもないでしょうし、些細な問題です」
「結婚が些細って貴族社会はどうなっているんですか!」
そもそも『結婚』というものの認識が違うのかもしれない。
この世界、もしくは貴族社会では気軽に結婚するものなのだろうか?
どうしても私は前世の記憶を基準として考えてしまうことが多い。
この世界の一般常識は結構抜けているところがあるし、意外と突飛なことが常識になっていることもある。主にグルメマスター関連。確実にここ数年で新たな常識が確立されているのは何ともいえないが、言い換えれば常識なんて数年のうちに作り替えられることがあるということでもある。
もっとこの世界に慣れていかなければ、貴族社会や学園云々ではなく社会全体においていかれてしまう。
「貴族社会がどうこう関係なく、あなたはどうせ結婚しないでしょう」
「今はまだしなくても、将来レオンさん同居可の人と結婚するかもしれないじゃないですか」
「レオンとの未来は決定事項なんですね」
「娘二人いるって言っても実際いるの私一人ですし。将来レオンさんの介護をするのは私しかいませんよ」
他に子どもがいるのかもしれないけど、聞かされたことはない。
いるかもわからない子どもを頭数にいれるだけ無駄だ。もちろん後で出てきたらありがたく労働力に加えさせてもらうが。
「介護……」
介護、介護と呟きながら、目をしばたかせるエドルドさん。
親を介護するって庶民の考え方なのかな?
貴族なら介護や補助を使用人さんがしてくれそうだし。庶民だってお金を払ってヘルパーさん頼んだり、国で何かしらの補助があるなら受けることも出来るのかもしれない。けれど現状、私が介護するのが一番現実的なのだ。
ロングコートを翻し、この場を後にする。
変人ことアスカルド公爵は求婚こそすれ、強要することはなかった。その代わり、会って初日で親友の座をもぎ取っていった。まさかの友人その2もまた脳筋である。それも変態要素まで付いているときた。絶対普通じゃない。なんなら親友どころか友人とさえも認めたくはないのだが、認めなければ後々面倒臭いことになることは本能的に理解が出来た。『親友ではなく妻になってくれるのか?』なんて言い出されたら、もう一度家出する自信がある。さすがにファイティングポーズからのワンパンKOを決めるつもりはない。そんなことをしたらもっと執着されるだろうことを予測出来るほど、私も大人になったのだ。脳筋慣れしたとも言える。
「メリンダさん。そろそろ帰りますよ」
「またいつでも来てくれ」
「今度また違う武器追加しておくね~」
「それより今の武器に慣れなきゃ」
「師匠、また明日」
「うん。お邪魔しました!」
脳筋一家に頭を下げて、エドルドさんの背中を追いかける。いつも通りのエドルドさんだと思ったのもつかの間、馬車が走り出せば深いため息を吐きながら、両手で顔を押さえた。
「なぜあなたはこうも面倒事を引き寄せるんですか……」
お説教モードというか、思考モード。
怒られている訳ではなく疑問を投げかけられているだけなので、平然と答える。
「周りに脳筋が多いからじゃないですか? 後、面倒事の一つはエドルドさんのところの義弟さんです」
「だからって周りを全員結婚候補で固めることはないでしょう……」
「全員って。義弟さんは違うでしょう」
「義弟だってロザリアさんと結婚を望んでいます」
「初耳なんですけど!?」
私が持っている情報といえば、義弟さんはロザリアにお礼を言いたいらしいこと。後は極度のブラコンで、婚約者のメリンダを嫌っていることくらいだ。
どこかで関わったことあったっけ? レベルなのに、結婚を望まれているなんて想像もしていなかった。むしろ察する能力があったら私はチートを通り越して神の領域に立てるはずだ。すでにこの国ではグルメマスターというある種の神が君臨しているため信仰されるかはまた別問題で、すぐに神格の取り消しにあうかもしれないが。
もしや彼も隠れ脳筋で、強者の血を欲する一族に属しているのだろうか。
グルメマスターをお守りするために力を欲しているとか?
そして白羽の矢が立ったのがロザリアだった、と。
そうだとしてもよく知りもしない相手を結婚相手に望むだろうか?
「そうでしたっけ? まぁどうせ結婚するつもりもないでしょうし、些細な問題です」
「結婚が些細って貴族社会はどうなっているんですか!」
そもそも『結婚』というものの認識が違うのかもしれない。
この世界、もしくは貴族社会では気軽に結婚するものなのだろうか?
どうしても私は前世の記憶を基準として考えてしまうことが多い。
この世界の一般常識は結構抜けているところがあるし、意外と突飛なことが常識になっていることもある。主にグルメマスター関連。確実にここ数年で新たな常識が確立されているのは何ともいえないが、言い換えれば常識なんて数年のうちに作り替えられることがあるということでもある。
もっとこの世界に慣れていかなければ、貴族社会や学園云々ではなく社会全体においていかれてしまう。
「貴族社会がどうこう関係なく、あなたはどうせ結婚しないでしょう」
「今はまだしなくても、将来レオンさん同居可の人と結婚するかもしれないじゃないですか」
「レオンとの未来は決定事項なんですね」
「娘二人いるって言っても実際いるの私一人ですし。将来レオンさんの介護をするのは私しかいませんよ」
他に子どもがいるのかもしれないけど、聞かされたことはない。
いるかもわからない子どもを頭数にいれるだけ無駄だ。もちろん後で出てきたらありがたく労働力に加えさせてもらうが。
「介護……」
介護、介護と呟きながら、目をしばたかせるエドルドさん。
親を介護するって庶民の考え方なのかな?
貴族なら介護や補助を使用人さんがしてくれそうだし。庶民だってお金を払ってヘルパーさん頼んだり、国で何かしらの補助があるなら受けることも出来るのかもしれない。けれど現状、私が介護するのが一番現実的なのだ。
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