悪役令嬢によればこの世界は乙女ゲームの世界らしい

斯波@ジゼルの錬金飴③発売中

文字の大きさ
74 / 114

73.デートではなく買い出し

しおりを挟む
 ガイナスさんに別れを告げ、放課後はクエスト先へと直接向かう。
 ギルドが用意してくれた制服はやはり動きやすい。大剣ブンブン振り回しても、崖から飛び降りても中身がチラリなんてことはない。どういう原理なのかは不明だが、乙女としてはありがたいものだ。


 それよりも頭を悩ませるのは、週末の予定のこと。


「必要なものねぇ」
 つい返事をしてしまったものの、必要なものが思い浮かばないのだ。ノートや文房具などの学校で使うものは一式揃えて貰ったものがまだまだ残っているし、服は必要ない。武器や防具は交換するか錬金するので買いに行く必要がない。そうなると残るは食べ物関連。

 買い物というよりも食べ歩きになりそうだ。
 わざわざ週末に時間を取る意味がない上に、速攻で終わりそうだが、まぁ一緒に外出することに意味があるのだろう。早く終わればその分、お屋敷でゆっくりする時間が出来てエドルドさんも嬉しいだろう。

 帰りがけにいくつか目星を付けておこう。
 エドルドさんのことだから、やっぱりグルメマスターの店がいいのかな? なんて考えながら、バトルアックスで近くの木々を伐採し、ストームで木材を集めていく。

 今回の依頼は大量発生したトレントの討伐。
 メリンダでも受注出来るCランククエストのはずなのだが、量が多い。明らかにAランク相当だ。
 おそらく放置している間に数が増えたけど、ランク昇格処理をするまでの時間が勿体ないという理由だろう。どうせ昇格した所で私の所に持ってこられるのは分かりきっているので構わないのだが、報酬が高めに設定されている時点で気づくべきだったのだろう。7

 いつの間にか厄介事担当みたいになっているのはなんとも言えないが、初めにCランククエストに出されていただけあって、特に難しいクエストではない。

 火系の魔法か、魔術具を保有していれば瞬殺だ。
 だが今回、私はそれらを使用するつもりはない。
 なにせトレントの木材は最高級の木材として取引されており、冒険者ギルドではなく建築ギルドに持ち込むと非常に高値で買い取ってくれるからだ。

 今回、山の一区画全てをトレントが占めているため、報酬よりも買い取り価格の方が高くなりそうだ。

 もちろん長さや状態などによって値段は左右されるが、細かいポイントはすでにレオンさんに教え込まれている。なるべく枝の根元を垂直に切り落とすのがポイントだそうだ。胴体部分はなるべく傷つけず、背負える範囲で持ち込むといいとのこと。私の場合、レオンさんよりもずっと背が低いため、1.5m間隔で切っていく。

 またトレントの木材は錬金術シリーズの後半でも登場し、様々な家具を作るのに適している。ちなみに錬金術で作成したトレントの机・椅子セットはレオンさんがたいそう気に入り、ホテル内で使用していた。今は王都の家に置かれている。以前、建築ギルドに加工したものを持ち込めば高く売れるかもしれないと提案したのだが、腕の良い職人を知っていると思われたら後が面倒だから、と却下されてしまった。

 金策には持ってこいだが、特に金に困っていないなら面倒事に首を突っ込むべきではない。
 だから今回も加工品を売ることはなく、素材として持ち込む用のものをバッサバッサと刈り取っていく。

「トレントでがっぽり!」
 ストームでまとめた木々に縄を巻き付けて、2束ほど背負う。本当は全部売りさばきたいのだが、少女がトレントの木材を大量に背負って持ち込めば目立って仕方がない。
 残りはアイテムボックスに入れて、王都の建築ギルドで引き取って貰う予定だ。

 週末の食べ歩き代くらいにはなっただろう。
 るんるんと上機嫌で仕事を終え、報酬と木材の売却金を得る。

 その足で王都へと戻り、翌日もその次も学園終わりに仕事先へと向かった。

 そしてエドルドさんとの買い出しを翌日に控えた日の昼のこと。
 今日も無事? グルメマスターとの食事会の権利を得た私達は厳かな昼食を取り、次の授業へと向かっていた。そんなとき、ガイナスさんはいつものように話を切り出した。

「ところで師匠、明日空いていないか? 父上の休みが取れたんだ。よければ手合わせをしたい」
「ごめんなさい。明日はエドルドさんと買い出しをする予定なの」
「買い出し?」
「必要なものもあるだろうって。でも多分王都で食べ歩きをすることになると思う」
「ああ、デートか。なら邪魔しちゃ悪いな」
「デートじゃなくて買い出し」

 デートとは仲の良い二人が出かける行為のことを指す。
 夫婦に恋人、恋人未満など関係は様々だが、保護者(仮)と行く買い出しはデートにはならないだろう。


「? 婚約者と出かけるんだからデートだろ?」
「買い出しだって」
 首を捻るガイナスさんの言い分も分からなくはない。
 通常、婚約者との外出はデートに換算されるものなのだろう。もしくは社交か仕事。だがその三つのどれかで言えば、私達の買い出しは社交に当たる。
 婚約者として仲いいですよアピールをしつつも、知り合いとしての仲を深めていくのだから。だから決して私達がするものは、デートなんてものではないのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

知識スキルで異世界らいふ

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

墓守の荷物持ち 遺体を回収したら世界が変わりました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はアレア・バリスタ ポーターとしてパーティーメンバーと一緒にダンジョンに潜っていた いつも通りの階層まで潜るといつもとは違う魔物とあってしまう その魔物は僕らでは勝てない魔物、逃げるために必死に走った だけど仲間に裏切られてしまった 生き残るのに必死なのはわかるけど、僕をおとりにするなんてひどい そんな僕は何とか生き残ってあることに気づくこととなりました

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

幼女と執事が異世界で

天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。 当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった! 謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!? おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。 オレの人生はまだ始まったばかりだ!

処理中です...