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79.活発化する動き
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エドルドさんに買って貰った万年筆をしぶしぶ使いながら、夜な夜なレオンさんに贈る万年筆を作っている。
ブラッカーをイメージしたスタンプを封筒に入れて送った際、予想通り、レオンさんは大喜びしてくれた。その手紙の返信からスタンプを使ってくれただけではなく、どうやら他の人に送る際にも利用してくれているらしい。
レオンさんの封蝋スタンプが変わったと一部で話題になっているとエドルドさんが教えてくれた。
娘が作ってくれたのだと自慢していることも。
だから調子に乗って万年筆まで作ろうとしている。自分の分はエドルドさんから買って貰ったものがあるが、レオンさんに贈る分と自分の机に飾っとく分くらいは作ってもいいだろう、と。どこか人に見える所で使うのはレオンさんだけなので、草花ではなく、武器の彫刻を彫るつもりだ。あまり全体的に彫っても邪魔になるだけ、だが個性は出していきたいと調整する日々だ。
学校の方も特に変わりなく、休日はグルッドベルグ家を訪問するか仕事をすることが多い。
たまにエドルドさんの買い物に付き合わされたり、宿題をしている時に限ってジェラールさんが嵐のようにやってきて去ることもある。
けれど至って平穏な日々。
そろそろ週末に南方に行ってお泊まりでもしようかと考えていた時のことだった。
「しばらく仕事の受注を止めます」
「どういうことですか?」
「例の貴族が、リリエンタール家の動きが活発化しました」
「え……」
真っ先に思ったのは、例の貴族の家名ってリリエンタールだったのか、ということ。
てっきり母親の方の家名だと思っていたが、私を捨てた父親の家名だったらしい。知っていたら名前の欄も偽装したのに……。通りで登録したギルドの場所が速攻で割れた訳だ。この場所で家名まで知っているのはごくごく限られているからこそ、目をつけられている程度で済んでいるのだろう。私の家名はレオンさんも知らない。知っているのは登録地のギルド職員さんと、鑑定結果を見た冒険者達、そしてエドルドさん。成長期の数年は顔形が変わりやすく、成長して髪色まで変えてしまえば数回見ただけの相手には気づかれる可能性は低いのだろう。改めてエドルドさんが仲間で良かったと巡り合わせに感謝する。
「ロザリアとしての仕事はもちろん、メリンダもロザリアの妹として目を付けられています。派手な行動は控えてください」
「はい……」
「とはいえ、グルッドベルグと仲良くしている時点で実力行使に出る心配はないと思いますが」
「なぜです?」
「リリエンタール家の奥方はパトリシア様のファンですから」
「ファン……ですか」
「別に珍しいことではありませんよ。彼女はこの国の盾と呼ばれる人物の一人ですから」
「パトリシアさんは盾というより剣じゃないですか? 攻撃特化型ですよ」
「総称ですから」
「ということは他にもいるんですか?」
「まぁ……」
歯切れが悪いのは気になるが、パトリシアさんもといグルッドベルグ家と仲良くしているうちはある程度の安全性は確保されているらしい。公爵からは友人認定されているし、ガイナスさんとは学園にいる時間のほとんどを一緒に過ごしている。放課後や休日もたまに足を運ばせて貰っている。
つまり目立たないように仕事をセーブしつつも、一学生としての生活は現状維持で構わないということだろう。
収入がなくなるのは痛いが、仕方ない。
「活発化って具体的に何しているんですか?」
「ロザリア探しの手を国中に広げています。ギルド側としては依頼をはねのけていますが、独自で雇っているようです」
「そこまでグルメマスターと同時期に娘を通わせたいんですかね~。というか他に子どもはいないんですか?」
「居ますが、まだお茶会デビューを果たしたばかりの幼子です」
「なるほど」
社交界でも繋がりが少ないのか。
一方で学園に子どもが一人でもいれば学園内はもちろんのこと、社交界でも声をかけやすく繋がりも持ちやすい、と。
「早く『ロザリア』が見つかるといいですね」
いっそ適当な養子でも取ってくれればいいのに。
けれど貴族社会って面倒くさそうだし、優秀な子どもをスカウトして、と簡単にはいかないのだろう。
それでも捕まってやるつもりはさらさらないのだが。
「ええ、本当に」
しみじみと呟くエドルドさんもリリエンタール家にはうんざりしているのだろう。
なんとも厄介な家だ。
ブラッカーをイメージしたスタンプを封筒に入れて送った際、予想通り、レオンさんは大喜びしてくれた。その手紙の返信からスタンプを使ってくれただけではなく、どうやら他の人に送る際にも利用してくれているらしい。
レオンさんの封蝋スタンプが変わったと一部で話題になっているとエドルドさんが教えてくれた。
娘が作ってくれたのだと自慢していることも。
だから調子に乗って万年筆まで作ろうとしている。自分の分はエドルドさんから買って貰ったものがあるが、レオンさんに贈る分と自分の机に飾っとく分くらいは作ってもいいだろう、と。どこか人に見える所で使うのはレオンさんだけなので、草花ではなく、武器の彫刻を彫るつもりだ。あまり全体的に彫っても邪魔になるだけ、だが個性は出していきたいと調整する日々だ。
学校の方も特に変わりなく、休日はグルッドベルグ家を訪問するか仕事をすることが多い。
たまにエドルドさんの買い物に付き合わされたり、宿題をしている時に限ってジェラールさんが嵐のようにやってきて去ることもある。
けれど至って平穏な日々。
そろそろ週末に南方に行ってお泊まりでもしようかと考えていた時のことだった。
「しばらく仕事の受注を止めます」
「どういうことですか?」
「例の貴族が、リリエンタール家の動きが活発化しました」
「え……」
真っ先に思ったのは、例の貴族の家名ってリリエンタールだったのか、ということ。
てっきり母親の方の家名だと思っていたが、私を捨てた父親の家名だったらしい。知っていたら名前の欄も偽装したのに……。通りで登録したギルドの場所が速攻で割れた訳だ。この場所で家名まで知っているのはごくごく限られているからこそ、目をつけられている程度で済んでいるのだろう。私の家名はレオンさんも知らない。知っているのは登録地のギルド職員さんと、鑑定結果を見た冒険者達、そしてエドルドさん。成長期の数年は顔形が変わりやすく、成長して髪色まで変えてしまえば数回見ただけの相手には気づかれる可能性は低いのだろう。改めてエドルドさんが仲間で良かったと巡り合わせに感謝する。
「ロザリアとしての仕事はもちろん、メリンダもロザリアの妹として目を付けられています。派手な行動は控えてください」
「はい……」
「とはいえ、グルッドベルグと仲良くしている時点で実力行使に出る心配はないと思いますが」
「なぜです?」
「リリエンタール家の奥方はパトリシア様のファンですから」
「ファン……ですか」
「別に珍しいことではありませんよ。彼女はこの国の盾と呼ばれる人物の一人ですから」
「パトリシアさんは盾というより剣じゃないですか? 攻撃特化型ですよ」
「総称ですから」
「ということは他にもいるんですか?」
「まぁ……」
歯切れが悪いのは気になるが、パトリシアさんもといグルッドベルグ家と仲良くしているうちはある程度の安全性は確保されているらしい。公爵からは友人認定されているし、ガイナスさんとは学園にいる時間のほとんどを一緒に過ごしている。放課後や休日もたまに足を運ばせて貰っている。
つまり目立たないように仕事をセーブしつつも、一学生としての生活は現状維持で構わないということだろう。
収入がなくなるのは痛いが、仕方ない。
「活発化って具体的に何しているんですか?」
「ロザリア探しの手を国中に広げています。ギルド側としては依頼をはねのけていますが、独自で雇っているようです」
「そこまでグルメマスターと同時期に娘を通わせたいんですかね~。というか他に子どもはいないんですか?」
「居ますが、まだお茶会デビューを果たしたばかりの幼子です」
「なるほど」
社交界でも繋がりが少ないのか。
一方で学園に子どもが一人でもいれば学園内はもちろんのこと、社交界でも声をかけやすく繋がりも持ちやすい、と。
「早く『ロザリア』が見つかるといいですね」
いっそ適当な養子でも取ってくれればいいのに。
けれど貴族社会って面倒くさそうだし、優秀な子どもをスカウトして、と簡単にはいかないのだろう。
それでも捕まってやるつもりはさらさらないのだが。
「ええ、本当に」
しみじみと呟くエドルドさんもリリエンタール家にはうんざりしているのだろう。
なんとも厄介な家だ。
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