11 / 33
11 見えないもの、そこにあるもの
しおりを挟む
仮眠から目覚めて星読み台で一夜を過ごした日、それはカテリナにとって新しい扉を開いた日になった。
もっとも近衛兵たちが想像したような甘く情熱的な共同作業を陛下と成したわけではなく、ある意味で大人への階段を駆け上って、そして新しい扉の向こうで力尽きた。
「よくやった、カティ」
星読み台に設けられた臨時の国王陛下の執務室で、まさか陛下から聞けるとは思わなかった労いの言葉をもらっても、カテリナはしばらく机の一点をみつめたまま動けなかった。
机には一面、カテリナの身長ぎりぎりまで積まれた書類とインクの切れた数本のペンが転がっている。足元にはもちろん、部屋の至るところにもうず高く書類が積まれて、陛下もその隙間からカテリナに声をかけたのだった。
一晩、カテリナは陛下の元で星読み台の秘された職務に就いていた。その職務というのは星の配置や動きから精霊の言葉を解読するという、一見夢のある仕事だった。
たとえ星が半刻と同じ配置をしておらず、二度と同じ配置に戻らないとしても、それを一晩愚直に追い続けるのが星読み台の仕事だと知ることになった。
カテリナはまだ呆然としながらギュンターに訊ねる。
「これで本当に当たるんでしょうか」
「外れることもある。ところが恐ろしいことに、大体精霊の言う通りになる」
カテリナが独り言のようにつぶやくと、ギュンターもさすがに疲れた様子で言った。
「恵みも災いも、人には見えないものの答えを、精霊はめったに間違えたりしない。教え方が多少迷惑なだけだ」
精霊の言葉である星の解読法則は、建国のときから変わっていないという。国防に関わるので一般国民には法則を知らせていないが、この仕事に就いて一日のカテリナでも一応理解できる難易度で、ギュンターに教わりながらではあるが実際の解読もできた。一晩でペンが五本インク切れになるほど絶え間なく数式を書き続けただけだ。
「ちなみに今日の君の運勢は、「悪くない」。たぶん精霊の言う通りになるだろう」
ギュンターは年の功だけ余裕を持っていたのか、ちゃっかり個人的な星占いも収集していたらしかった。
ギュンターは少し考えてカテリナに問う。
「君は星読み仕官に向いているな。どう思う?」
騎士をやめたら星読み仕官になるのもいいかもしれない。そう思っていたはずだが、カテリナは即答できなかった。
昼間の星読み仕官室の冷え方が理解できた。彼らは一種の冬眠に入っていて、夜にできるだけ力を温存していたらしかった。
「もう少し陛下の下で働かせてください」
転職の理想と現実を前に少しだけ弱気になったカテリナは、それほど陛下に悪い印象ではなかったらしい。
そうかとほっとしたようにうなずいた陛下にカテリナは気づかず、なんだか声が優しいことも麻痺した耳ではぼんやりと聞くしかできなかった。
「疲れただろう。帰りの馬車では寝ていることを許す。あと、王城に帰る前に少し休んで、朝食を取ってきなさい」
「お言葉のとおりに」
カテリナはのろのろと立ち上がって一礼した。ギュンターは苦笑して、転ぶなよ、と子どもにするように言ってから、ふと扉の方を見た。
「わかっていたつもりだが、やはり来なかったな」
カテリナがギュンターを見ると、彼もやはり疲れていたのか、普段口にしない弱音のような言葉を口にした。
「星読み台には弟がいるんだ。真面目で素直なんだが、年が離れすぎていて言葉をかけ間違えたように思う。……もうずっと私と口を利かない。星読み博士から仕事に苦戦しているとは聞いているが、俺が仕官室に立ち入って労いをするのも、今更遅いのだろう」
カテリナは思わず掛ける言葉を探したが、事は国王と王弟の関係で、たやすい解決は通用しないような気がした。カテリナが父と喧嘩したときは、怒りながらも永遠に縁が切れることなど想像もしていないが、王と王弟という立場はもっと難しいに違いなかった。
ギュンターはため息をついて言う。
「君は少し弟に似ている。悪いな、こんな話をして。だからどうということもないんだ」
行ってくれとギュンターが先に話を打ち切って、カテリナは部屋を去るしかなかった。
廊下を渡りながら、あまり回っていない頭でギュンターの言葉を思っていた。陛下はアリーシャのことも年が離れているから結婚などと言っていたことがある。ヴァイスラントでは別に十歳程度の年の差結婚、珍しくはないのにとカテリナは不思議に思っていたが、それは王弟とのことがあったからのようだった。
言葉一つで永遠に縁が切れたりなんてしないんじゃないかな。そう思うくらいには、カテリナは家族に甘えている。
階下に降りて食堂に入り、パンとスープを受け取って席に向かった。
パンをかじりながら、自分だったらどうやって仲直りするだろうと考えていたときだった。
「昨日はありがとう」
夜を徹しての仕事の後、カテリナのようにぼんやり朝食を取っている仕官たちの物音の中で、聞き覚えのある声が耳に入った。
瞬間的に顔に熱が蘇って恐る恐る隣を見ると、ブロンドに灰青の瞳、明るい陽射しの中で見れば実に陛下とよく似ている少年が、控えめに笑いかけていた。
シエル王弟殿下はカテリナの一つ年下、次期星読み博士となるべく勤め始めて一年になると聞いている。王族という立場上、あくまで名誉職であって実務に詳しくなくともという陰口に苦しみながら、星読み台で昼夜問わず仕官たちと仕事に打ち込んでいて、王城にもほとんど帰ってこない人だった。
「カティというんだね。今日の服装は何だか雰囲気が違う。素敵だ」
昨日は暗かったから声を聞かれなければ同一人物とはわからないかも。そういう甘い考えはあっさり覆されたが、さすが陛下の弟君、女性には流れるような褒め言葉だった。
カテリナは何か言い訳しようと思ったが、何を言い訳していいかわからなかった。女性ということを知られた以上に、王弟殿下と初めてのキスをしてしまったその事実は、カテリナにとって大事件だがこの場で口にすべきことでもない。
けれどシエルはそれ以上カテリナに追及することはなく、友達にするように声をかけた。
「さ、食べよう」
顔を赤くしたり青くしたり忙しいカテリナの心の動揺を知ってか知らずか、シエルは優雅に笑って手元に目を戻した。
周りで食器の擦れる音が鳴る中、しばらくシエルは無言で朝食を取っていた。さすが育ちがいいのか、音も立てなければ味気のないパンでも美味しそうに口にする。カテリナはその仕草に少しみとれてから自分も食事をしようとしたが、いくらカテリナでもこの場合何事もなかったかのように過ぎてはいけないと知っていた。
ごくんと息を呑んで、カテリナは頭を下げる。
「昨夜は無礼を申し上げて、大変申し訳ありませんでした」
「……ん、ううん」
まだ十六歳とは思えない落ち着いた物腰を持つ殿下、そういう噂は聞いていた。けれどカテリナを振り向こうとして目を伏せたのは、少年が年相応に言葉に詰まる様子だった。
食べよう、と彼はもう一度早口に言った。カテリナもつられて言葉に詰まって、二人の間に沈黙が下りた。
王弟殿下も昨日のことは勢いだったのだろうし、先ほど陛下から聞いたように国王陛下と喧嘩中でもあるしと、カテリナはこの場合関係ないこともぐるぐる考える。
シエルは息を吸って、照れくさそうに言った。
「一つだけ聞いて。だからどうということもないのだけど」
シエルは陛下のような前置きをして、カテリナを見やった。
「昨日の夜は、見えなかったものがずっとそこにあったみたいな気持ちだった」
シエルは先に食事を終えて、恋人に呼びかけるように言った。
「またね、精霊さん」
カテリナは頭を下げて王弟殿下が退出するのを見送りながら、彼とこれから何度も会いそうな気がしていた。
昨日の夜は精霊のくれた偶然だったのかもしれない。カテリナは夢みたいな考えに苦笑しながら、それも素敵なことのように感じていた。
もっとも近衛兵たちが想像したような甘く情熱的な共同作業を陛下と成したわけではなく、ある意味で大人への階段を駆け上って、そして新しい扉の向こうで力尽きた。
「よくやった、カティ」
星読み台に設けられた臨時の国王陛下の執務室で、まさか陛下から聞けるとは思わなかった労いの言葉をもらっても、カテリナはしばらく机の一点をみつめたまま動けなかった。
机には一面、カテリナの身長ぎりぎりまで積まれた書類とインクの切れた数本のペンが転がっている。足元にはもちろん、部屋の至るところにもうず高く書類が積まれて、陛下もその隙間からカテリナに声をかけたのだった。
一晩、カテリナは陛下の元で星読み台の秘された職務に就いていた。その職務というのは星の配置や動きから精霊の言葉を解読するという、一見夢のある仕事だった。
たとえ星が半刻と同じ配置をしておらず、二度と同じ配置に戻らないとしても、それを一晩愚直に追い続けるのが星読み台の仕事だと知ることになった。
カテリナはまだ呆然としながらギュンターに訊ねる。
「これで本当に当たるんでしょうか」
「外れることもある。ところが恐ろしいことに、大体精霊の言う通りになる」
カテリナが独り言のようにつぶやくと、ギュンターもさすがに疲れた様子で言った。
「恵みも災いも、人には見えないものの答えを、精霊はめったに間違えたりしない。教え方が多少迷惑なだけだ」
精霊の言葉である星の解読法則は、建国のときから変わっていないという。国防に関わるので一般国民には法則を知らせていないが、この仕事に就いて一日のカテリナでも一応理解できる難易度で、ギュンターに教わりながらではあるが実際の解読もできた。一晩でペンが五本インク切れになるほど絶え間なく数式を書き続けただけだ。
「ちなみに今日の君の運勢は、「悪くない」。たぶん精霊の言う通りになるだろう」
ギュンターは年の功だけ余裕を持っていたのか、ちゃっかり個人的な星占いも収集していたらしかった。
ギュンターは少し考えてカテリナに問う。
「君は星読み仕官に向いているな。どう思う?」
騎士をやめたら星読み仕官になるのもいいかもしれない。そう思っていたはずだが、カテリナは即答できなかった。
昼間の星読み仕官室の冷え方が理解できた。彼らは一種の冬眠に入っていて、夜にできるだけ力を温存していたらしかった。
「もう少し陛下の下で働かせてください」
転職の理想と現実を前に少しだけ弱気になったカテリナは、それほど陛下に悪い印象ではなかったらしい。
そうかとほっとしたようにうなずいた陛下にカテリナは気づかず、なんだか声が優しいことも麻痺した耳ではぼんやりと聞くしかできなかった。
「疲れただろう。帰りの馬車では寝ていることを許す。あと、王城に帰る前に少し休んで、朝食を取ってきなさい」
「お言葉のとおりに」
カテリナはのろのろと立ち上がって一礼した。ギュンターは苦笑して、転ぶなよ、と子どもにするように言ってから、ふと扉の方を見た。
「わかっていたつもりだが、やはり来なかったな」
カテリナがギュンターを見ると、彼もやはり疲れていたのか、普段口にしない弱音のような言葉を口にした。
「星読み台には弟がいるんだ。真面目で素直なんだが、年が離れすぎていて言葉をかけ間違えたように思う。……もうずっと私と口を利かない。星読み博士から仕事に苦戦しているとは聞いているが、俺が仕官室に立ち入って労いをするのも、今更遅いのだろう」
カテリナは思わず掛ける言葉を探したが、事は国王と王弟の関係で、たやすい解決は通用しないような気がした。カテリナが父と喧嘩したときは、怒りながらも永遠に縁が切れることなど想像もしていないが、王と王弟という立場はもっと難しいに違いなかった。
ギュンターはため息をついて言う。
「君は少し弟に似ている。悪いな、こんな話をして。だからどうということもないんだ」
行ってくれとギュンターが先に話を打ち切って、カテリナは部屋を去るしかなかった。
廊下を渡りながら、あまり回っていない頭でギュンターの言葉を思っていた。陛下はアリーシャのことも年が離れているから結婚などと言っていたことがある。ヴァイスラントでは別に十歳程度の年の差結婚、珍しくはないのにとカテリナは不思議に思っていたが、それは王弟とのことがあったからのようだった。
言葉一つで永遠に縁が切れたりなんてしないんじゃないかな。そう思うくらいには、カテリナは家族に甘えている。
階下に降りて食堂に入り、パンとスープを受け取って席に向かった。
パンをかじりながら、自分だったらどうやって仲直りするだろうと考えていたときだった。
「昨日はありがとう」
夜を徹しての仕事の後、カテリナのようにぼんやり朝食を取っている仕官たちの物音の中で、聞き覚えのある声が耳に入った。
瞬間的に顔に熱が蘇って恐る恐る隣を見ると、ブロンドに灰青の瞳、明るい陽射しの中で見れば実に陛下とよく似ている少年が、控えめに笑いかけていた。
シエル王弟殿下はカテリナの一つ年下、次期星読み博士となるべく勤め始めて一年になると聞いている。王族という立場上、あくまで名誉職であって実務に詳しくなくともという陰口に苦しみながら、星読み台で昼夜問わず仕官たちと仕事に打ち込んでいて、王城にもほとんど帰ってこない人だった。
「カティというんだね。今日の服装は何だか雰囲気が違う。素敵だ」
昨日は暗かったから声を聞かれなければ同一人物とはわからないかも。そういう甘い考えはあっさり覆されたが、さすが陛下の弟君、女性には流れるような褒め言葉だった。
カテリナは何か言い訳しようと思ったが、何を言い訳していいかわからなかった。女性ということを知られた以上に、王弟殿下と初めてのキスをしてしまったその事実は、カテリナにとって大事件だがこの場で口にすべきことでもない。
けれどシエルはそれ以上カテリナに追及することはなく、友達にするように声をかけた。
「さ、食べよう」
顔を赤くしたり青くしたり忙しいカテリナの心の動揺を知ってか知らずか、シエルは優雅に笑って手元に目を戻した。
周りで食器の擦れる音が鳴る中、しばらくシエルは無言で朝食を取っていた。さすが育ちがいいのか、音も立てなければ味気のないパンでも美味しそうに口にする。カテリナはその仕草に少しみとれてから自分も食事をしようとしたが、いくらカテリナでもこの場合何事もなかったかのように過ぎてはいけないと知っていた。
ごくんと息を呑んで、カテリナは頭を下げる。
「昨夜は無礼を申し上げて、大変申し訳ありませんでした」
「……ん、ううん」
まだ十六歳とは思えない落ち着いた物腰を持つ殿下、そういう噂は聞いていた。けれどカテリナを振り向こうとして目を伏せたのは、少年が年相応に言葉に詰まる様子だった。
食べよう、と彼はもう一度早口に言った。カテリナもつられて言葉に詰まって、二人の間に沈黙が下りた。
王弟殿下も昨日のことは勢いだったのだろうし、先ほど陛下から聞いたように国王陛下と喧嘩中でもあるしと、カテリナはこの場合関係ないこともぐるぐる考える。
シエルは息を吸って、照れくさそうに言った。
「一つだけ聞いて。だからどうということもないのだけど」
シエルは陛下のような前置きをして、カテリナを見やった。
「昨日の夜は、見えなかったものがずっとそこにあったみたいな気持ちだった」
シエルは先に食事を終えて、恋人に呼びかけるように言った。
「またね、精霊さん」
カテリナは頭を下げて王弟殿下が退出するのを見送りながら、彼とこれから何度も会いそうな気がしていた。
昨日の夜は精霊のくれた偶然だったのかもしれない。カテリナは夢みたいな考えに苦笑しながら、それも素敵なことのように感じていた。
1
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
可愛らしい人
はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」
「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」
「それにあいつはひとりで生きていけるから」
女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。
けれど、
「エレナ嬢」
「なんでしょうか?」
「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」
その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。
「……いいえ」
当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。
「よければ僕と一緒に行きませんか?」
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
【完結】ジュリアはバツイチ人生を謳歌する
ariya
恋愛
エレン王国の名門貴族・アグリア伯爵家に嫁いだジュリア・アグリア(旧姓ベルティー)。
夫のアベル・アグリア伯爵は、騎士として王妃の護衛任務に没頭し、結婚翌日からほぼ別居状態。
社交界のパーティーでは妻のエスコートを代理人に任せ、父の葬儀にも顔を出さず、事務的な会話と手紙のやり取りだけの日々が続く。
ジュリアは8年間の冷遇に耐え抜いたが、ある朝の食事中、静かに切り出す。
「私たち、離婚しましょう」
アベルは絶句するが、ジュリアは淡々と不満を告げる。
どれも自分のしでかしたことにアベルは頭を抱える。
彼女はすでに離婚届と慰謝料の用意を済ませ、夫の仕事に理解を示さなかった「有責妻」として後腐れなく別れるつもりだった。
アベルは内心で反発しつつも、ジュリアの決意の固さに渋々サイン。
こうしてジュリア・アグリアは、伯爵夫人としての全てを置き去りにし、バツイチ人生を開始する。
余命僅かな大富豪を看取って、円満に未亡人になるはずでした
ぜんだ 夕里
恋愛
傾きかけた家を救うため、私が結んだのはあまりにも不謹慎な契約――余命いくばくもない大富豪の辺境伯様と結婚し、彼の最期を穏やかに看取ることで莫大な遺産を相続する、というものだった。
しかし、人の死を利用して富を得るなど不正義!
そう考えた私が立てたのは、前代未聞の計画。
「そうだ、遺産が残らないくらい贅沢の限りを尽くしてもらえば、すべて丸く収まるじゃない!」
【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜
高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。
婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。
それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。
何故、そんな事に。
優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。
婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。
リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。
悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる