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第13話:退屈な日々~ワイアーム視点~
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“ワイアームはいつも、無表情ね。まるで人形の様だわ…ワイアーム、あなたは何をしている時が楽しい?何がしたい?お母様に教えて”
幼い頃からずっと、母上に言われていた言葉。
僕の一族は龍の血を受け継いでいる。その昔、邪悪な魔物に支配されていたこの国を、龍一族でもある僕のご先祖様が鎮め、平和をもたらすとともに、王となった事がこの国の始まりだと言われている。
とはいえ、伝説として語り継がれている為、真意は分からない。それに長い年月をかけ、龍の血は随分と薄まってきている。
ただ、数百年に一度、龍の血を色濃く受け継ぐ人間が生まれる事があると言われている。それが僕だ。
僕は幼い頃から、人よりも数段力が強く、僕が本気を出せば、国1つ滅ぼせることが出来るだけの力を持っていると言われている。特に怒りの感情が爆発した時の力はすごく、人間なんてあっと言う間に気絶させてしまう。最悪、命を奪ってしまう事もあるのだ。
とはいえ、龍の血を色濃く受け継いでいるからと言って、炎を吐いたり空を飛ぶことは出来ない。いたって普通の人間。ただ、その力が半端ないというだけだ。
とはいえ、僕は幼い頃から感情と言うものがない。悲しいとか、嬉しいとか、楽しいとか、腹が立つという感情が…これは龍の血を受け継ぐ人間の特徴でもあるそうだが、僕は人一倍、感情に対して鈍い様だ。
その為、皆が美しいというものを見ても、皆が美味しいというものを食べても、何も感じない。
いつも無表情の僕を心配した母上が、色々な場所に連れてってくれ、色々なものに触れさせてくれた。でも僕は、やっぱり何も感じない。
“ワイアームは、どうしてこんなに感情を表さないのかしら?まるで人形の様だわ。いくら龍の血を色濃く受け継いでいたとしても、ここまで感情を表さないだなんて…」
そう言ってよく泣いていた母上。いくら母上が泣こうが、僕は何とも思わない。それでも僕は、国王でもある父上の唯一の子供。その為いずれ王となり、この国を引っ張って行かないといけないのだ。
それにしても退屈な世界だ。こんなつまらない世界で、僕はずっと生きていかないといけないのか…
そんな僕に、父上が
“ワイアーム、お前は龍の血が強すぎる様だ。正直お前にとって、この世界は退屈でしかないだろう。でもな、龍は一度興味を持ったものや相手には、恐ろしいほどの執着をみせる。かつて天人を愛した龍の子が、その女性を手に入れるため、命がけで天界の王と戦ったという話が残っているくらいだ。だからもしかしらお前にも、運命の相手が現れるかもしれないな”
そんな事を言っていたのだ。
運命の相手か…
正直僕にはそんな相手は現れないだろう。そもそも僕は、本当に何に関しても、興味がないのだ。
そんな日々を送っていたある日、そろそろ僕の婚約者を!という話が持ち上がったのだ。僕に婚約者か…僕の婚約者になった女性は、可哀そうだな。僕に関心を持たれることなく、過ごすのだから…
それでも色々な貴族が、自分の娘と僕を婚約させたいと申し出て来たのだ。特に僕は、数百年に一度生まれる、龍の血を色濃く受け継ぐ人間なのだ。自分の娘を何が何でも僕の妻にしたいと考える貴族が多いのだ。
「ワイアーム、こんなにも沢山の貴族たちから、婚約の申込書が来ているわ。さすが私の息子ね」
「侯爵以上でワイアームと同じ年頃の娘がいるところは、ほぼ全部きているのではないのかい?クレイジー公爵家とマレディア侯爵家以外は」
「クレイジー公爵家は今、お家騒動の真っ最中ですもの。それどころではないはずよ。海神ポセイドンの子孫と言われているマレディア侯爵家は、さすがに申し込んでは来ないわよ。ポセイドンの血を長く引き継がせるために、マレディア侯爵家に縁のある家と結婚させるのが通例ですもの」
「確かにそうだな。ワイアーム、選びたい放題だぞ。と言っても、ワイアームは令嬢には興味がないだろう。私達で吟味して決めるしかないか…」
「そうね、本来ならワイアーム自身が、この人と結婚したいと思った相手と結婚させたいのだけれど…無理そうね。ワイアーム抜きで、話しを進めましょう。いいわよね、ワイアーム」
「ええ、構いません」
誰が僕の婚約者になろうが、僕には興味のない事だ。好きに選んでくれて構わない。
その時はそう思っていた。
幼い頃からずっと、母上に言われていた言葉。
僕の一族は龍の血を受け継いでいる。その昔、邪悪な魔物に支配されていたこの国を、龍一族でもある僕のご先祖様が鎮め、平和をもたらすとともに、王となった事がこの国の始まりだと言われている。
とはいえ、伝説として語り継がれている為、真意は分からない。それに長い年月をかけ、龍の血は随分と薄まってきている。
ただ、数百年に一度、龍の血を色濃く受け継ぐ人間が生まれる事があると言われている。それが僕だ。
僕は幼い頃から、人よりも数段力が強く、僕が本気を出せば、国1つ滅ぼせることが出来るだけの力を持っていると言われている。特に怒りの感情が爆発した時の力はすごく、人間なんてあっと言う間に気絶させてしまう。最悪、命を奪ってしまう事もあるのだ。
とはいえ、龍の血を色濃く受け継いでいるからと言って、炎を吐いたり空を飛ぶことは出来ない。いたって普通の人間。ただ、その力が半端ないというだけだ。
とはいえ、僕は幼い頃から感情と言うものがない。悲しいとか、嬉しいとか、楽しいとか、腹が立つという感情が…これは龍の血を受け継ぐ人間の特徴でもあるそうだが、僕は人一倍、感情に対して鈍い様だ。
その為、皆が美しいというものを見ても、皆が美味しいというものを食べても、何も感じない。
いつも無表情の僕を心配した母上が、色々な場所に連れてってくれ、色々なものに触れさせてくれた。でも僕は、やっぱり何も感じない。
“ワイアームは、どうしてこんなに感情を表さないのかしら?まるで人形の様だわ。いくら龍の血を色濃く受け継いでいたとしても、ここまで感情を表さないだなんて…」
そう言ってよく泣いていた母上。いくら母上が泣こうが、僕は何とも思わない。それでも僕は、国王でもある父上の唯一の子供。その為いずれ王となり、この国を引っ張って行かないといけないのだ。
それにしても退屈な世界だ。こんなつまらない世界で、僕はずっと生きていかないといけないのか…
そんな僕に、父上が
“ワイアーム、お前は龍の血が強すぎる様だ。正直お前にとって、この世界は退屈でしかないだろう。でもな、龍は一度興味を持ったものや相手には、恐ろしいほどの執着をみせる。かつて天人を愛した龍の子が、その女性を手に入れるため、命がけで天界の王と戦ったという話が残っているくらいだ。だからもしかしらお前にも、運命の相手が現れるかもしれないな”
そんな事を言っていたのだ。
運命の相手か…
正直僕にはそんな相手は現れないだろう。そもそも僕は、本当に何に関しても、興味がないのだ。
そんな日々を送っていたある日、そろそろ僕の婚約者を!という話が持ち上がったのだ。僕に婚約者か…僕の婚約者になった女性は、可哀そうだな。僕に関心を持たれることなく、過ごすのだから…
それでも色々な貴族が、自分の娘と僕を婚約させたいと申し出て来たのだ。特に僕は、数百年に一度生まれる、龍の血を色濃く受け継ぐ人間なのだ。自分の娘を何が何でも僕の妻にしたいと考える貴族が多いのだ。
「ワイアーム、こんなにも沢山の貴族たちから、婚約の申込書が来ているわ。さすが私の息子ね」
「侯爵以上でワイアームと同じ年頃の娘がいるところは、ほぼ全部きているのではないのかい?クレイジー公爵家とマレディア侯爵家以外は」
「クレイジー公爵家は今、お家騒動の真っ最中ですもの。それどころではないはずよ。海神ポセイドンの子孫と言われているマレディア侯爵家は、さすがに申し込んでは来ないわよ。ポセイドンの血を長く引き継がせるために、マレディア侯爵家に縁のある家と結婚させるのが通例ですもの」
「確かにそうだな。ワイアーム、選びたい放題だぞ。と言っても、ワイアームは令嬢には興味がないだろう。私達で吟味して決めるしかないか…」
「そうね、本来ならワイアーム自身が、この人と結婚したいと思った相手と結婚させたいのだけれど…無理そうね。ワイアーム抜きで、話しを進めましょう。いいわよね、ワイアーム」
「ええ、構いません」
誰が僕の婚約者になろうが、僕には興味のない事だ。好きに選んでくれて構わない。
その時はそう思っていた。
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