婚約者と親友に裏切られた伯爵令嬢は侯爵令息に溺愛される

Karamimi

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第36話:自分の気持ち

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音楽に合わせてゆっくり踊る。彼とは子供の頃からの知り合いで、私の事を妹の様にかわいがってくれた人物だ。なんだか懐かしいわ。

「マーガレットとローイン殿は仲睦まじいね。バロンから聞いたが、いずれ婚約を結ぶのだろう?」

「ええ、兄たちはその方向で話を進めているみたいで…」

「そうか。ローイン殿、君の事がよほど気になるのだろうな。今も心配そうにこちらを見ているよ。それにしてもジェファーソン殿は、本当に酷い男だな。君をあれほどまでに縛り付け、令息と話しただけで怒り狂っていたのに、自分はちゃっかりと不貞行為を働いていたのだから…て、すまん。この話題は良くなかったな」

「いえ、大丈夫ですわ。あの…やはりガルン様から見ても、その…ジェファーソン様の行動はおかしかったのでしょうか?」

「おかしいと言うよりも、自分の事しか考えていない男だと思っていたよ。結局自分が安心したいが為に、君を縛り付けていたのだろう?バロンも以前からずっとその事を心配していたよ」

そうだったのね…

私も薄々気が付いていた。あの人は自分の感情を押し付けるばかりで、私の気持ちなんて考えてくれていなかった事を…それでも私は、彼の愛情表現だと思って受け入れてきた。でも、それは違ったのだわ…

「最近やっと昔の明るいマーガレットに戻ったね。君は気が付いていないが、マーガレットの性格自体も、ジェファーソン殿によって操られていたのだよ。あんなにも明るく元気だったマーガレットが、いつもあの男の顔色を伺いながら俯いている姿は、俺たちもずっと気になっていたんだ」

言われてみれば私、いつもジェファーソン様の顔色ばかり伺っていた様な…

「今のマーガレット、俺はとても素敵だと思う。ローイン殿は自分の気持ちを押し付けるのではなくて、君の気持ちを優先してくれる素敵な殿方だね。そういう男を大切にした方がいいんじゃないかな」

確かにローイン様は、まだ正式に婚約を結んでいないとはいえ、私の気持ちをいつも尊重してくれている。

ふとローイン様の方に目をやると、不安そうな瞳と目があった。でも次の瞬間、笑顔を向けたのだ。その瞬間、音楽が終わった。

「マーガレット、今日は一緒に踊ってくれてありがとう。それじゃあ俺はこれで」

「こちらこそ、ありがとうございました」

笑顔で去っていくガルン様に頭を下げる。すると次は別の令息がやって来て、ダンスを申し込まれたのだ。その後もダンスを申し込まれる。

いつもは全くと言っていいほど、申し込まれないのに。不思議に思っていると

「いつもローイン殿と一緒にいたから、誘いづらくてね。それに以前までのマーガレット嬢なら、殿方とのダンスを断っていたから、他の令息とは踊りたくないと思っていたよ」

そう教えてくれた。どうやらガルン様と踊った事で、自分たちが誘っても問題ないと思った様だ。こんな風に色々な殿方と踊るだなんて、なんだか新鮮だわ。ふとローイン様の方を見ると、令嬢に囲まれていた。

その瞬間、胸がチクリと痛んだ。とにかくこの人とのダンスが終わったら、一度ローイン様の元に戻ろう。そう思っていると、ローイン様がスッと令嬢たちから離れたのだ。

どうやらダンスの申し込みを断った様だ。よかったわ…て、別にローイン様が誰と踊ろうが、私には関係ない事。そもそも我が国では、ダンスは異性と踊っても問題ないとされているのだから。

でも…

なんだか心底ほっとしている自分がいるのだ。私ったらどうしちゃったのかしら?

そうこうしているうちに、ダンスが終わり令息と挨拶を交わした。

「マーガレット嬢、さすがに疲れただろう?足は痛くないかい?ジュースを持ってきたから、少し休もう」

私のところにやってきてくれたのは、ローイン様だ。

「ありがとうございます。実は喉がカラカラで。助かりましたわ。それよりもローイン様は令嬢と踊らないのですか?さっき令嬢に囲まれておられましたが…」

つい気になって、さっきの件を聞いてしまった。

「俺はダンスが得意じゃないんだ。それに、他の令嬢とダンスを踊るのなら、マーガレット嬢と踊りたいからね。もちろん、君が誰とダンスを踊ろうが、俺が口出しをする事はないから、安心して欲しい。そもそも、貴族界ではパートナー以外の異性と踊る事は一般的なのだから」


そう言ってほほ笑んでいる。なぜだろう、彼のその気持ちが嬉しくてたまらない。


「ローイン様、少し休憩をしたら、私と一緒に踊ってくださいますか?それから、私も今後は他の令息と踊るのはやめますわ」

「ありがとう、マーガレット嬢。ただ、無理して俺に合わせなくてもいいのだよ。今まで色々と我慢してきたことも多いかっただろう。だから君には、自分のやりたい事を目一杯やって欲しいんだ。もちろん、異性とのダンスもね」

この人はどこまで私の事を考えてくれているのかしら?急にローイン様が愛おしく思えて来た。それと同時に、もっと彼の事を大切にしたいとも…

「ローイン様、今日色々な殿方とダンス踊って分かったのです。私もダンスを踊るのなら、相手はローイン様がいいと」

なんだか恥ずかしくなって俯いてしまう。

「ありがとう、マーガレット嬢。君がそう言ってくれるのなら嬉しいよ。それじゃあ後でゆっくりダンスを踊ろう。そうだ、中庭が奇麗にライトアップされていると、ノエルが言っていた。後で見に行こう」

「それは本当ですか?私、あまり王宮に来た事がなくて。こうしちゃいられませんわ。さあ、ローイン様、行きましょう」

「そんなに焦らなくても、中庭は逃げないよ。でも…俺は君のその笑顔、大好きだ。いつもそうやって笑っていてほしい」

彼の優しい眼差しと言葉を聞いた瞬間、一気に鼓動が早くなるのを感じた。

「さあ、行こうか」

スッと差し出されたローイン様の手を握る。温かくて大きな手…その手がなんだか心地いい。

私はきっと、ローイン様の事が好きなのだわ。そう確信した瞬間だった。
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