52 / 55
第52話:ノエル、ありがとう~ローイン視点~
しおりを挟む
「兄上、とにかく僕たちも行きましょう。ローインも」
ノエルと王太子殿下に連れられ、部屋へと入る。既に医師たちが治療を行っていた。
「これはかなり出血していますね。確かにここでは治療は厳しい。すぐに王都に運びましょう」
「あれがマーガレット嬢かい?酷いな…」
ポツリとノエルが呟いた。王太子殿下も目を丸くして固まっている。そんな彼らを他所に、医者たちが手際よくマーガレットを飛行船へと連れて行く。俺もマーガレットと一緒に飛行船に乗り込んだ。
すぐに出発する飛行船。医師たちが今できる施術を必死に行っている。ただ…やはり状況は良くないみたいだ。
「これは時間との勝負です。このままいくと、マーガレット嬢の命が持たない。とにかく出来る事をやります」
医師たちの険しい表情から、非常に危険な状態なのが分かる。
「ローイン、大丈夫かい?震えているじゃないか。今君の父上から今回の件、聞いて来たよ。まさか盗聴器や居場所を特定する機械の存在に気づかれていただけでなく、伯爵家の馬車を乗っ取り、まんまとマーガレット嬢を誘拐するだなんて…本当に恐ろしい男だね。それにしてもマーガレット嬢、思い切った事をしたね。馬車を飛び降りるだなんて」
いつの間にか俺の傍に来ていたノエルが、話し掛けて来た。
「ノエル、俺はあれだけジェファーソン殿を警戒していたのに、結局マーガレットを守れなかった。俺がマーガレットを見つけた時、彼女は既に…覚悟を決めていた様で…意識を飛ばす寸前、俺に愛していると言ったんだ…幸せになって欲しいとも…」
「そうか、マーガレット嬢もローインの事が好きだったのだね。サラの口ぶりから、何となくそんな気がしていたのだよ。せっかく両想いになれたのだから、何が何でも彼女を助けないとね」
珍しくノエルが真剣な表情をしている。なぜだろう、ノエルが傍にいてくれるだけで、心が落ち着く。
「ローイン、王都が見えて来たよ。貴族病院にこのまま着陸する予定だ。既に兄上が、貴族病院に連絡を入れてくれているから、すぐに治療に入れるだろう」
ノエルが言った通り、着陸と同時にマーガレットは医師たちによって、すぐに病院内へと運ばれて行った。俺も一緒に付いていこうとするが
「これ以上先は立ち入り禁止です。どうか部屋の外で待っていてください」
そう言って部屋には入れてもらえなかった。仕方なく外で待つ。ここでも俺は、ただ祈る事しかできないのか…頼む、マーガレット、どうか助かってくれ。
「ローイン、マーガレット嬢の治療には時間がかかるそうだ。隣の部屋で休めるスペースを確保いたしたから、少し休みなさい。バロン殿も、どうか休んでください。あちらの部屋を確保いたしましたで」
父上が俺たちに休む様に声をかけて来た。でも…
「今のローインに休めと言っても無駄ですよ、侯爵。ローインは僕が付いていますから、どうか侯爵やバロン殿は休んできてください」
「ノエル殿下、それにグランディス侯爵もお心遣い感謝いたします。でも、妹が今まさに生死の境をさまよっている時に、ゆっくり休んでなどいられません。それからノエル殿下、妹の為に飛行船を出していただき、ありがとうございました。本当になんとお礼を申し上げたらいいか…」
「バロン殿、気にしないで下さい。僕は王族として当たり前の事をしたまでですから」
笑顔でバロン殿に対応するノエル。結局父上もノエルもバロン殿も、マーガレットの家の使用人たちも、誰1人として施術室の前を動く事はなかった。
どれくらい待っただろう。いつの間にか世は明け、太陽が高く昇っている。
その時だった。施術室の扉が開いたのだ。
「マーガレット!!」
急いでマーガレットの傍に駆け寄った。あちこち包帯でグルグルに巻かれていて、とても痛々しい。それに意識もない様で、目も閉じたままだ。
「先生、マーガレットはどうなのですか?」
バロン殿が必死に医師に問いかけている。
「マーガレット嬢は、一命を取り留めましたよ。もう大丈夫です。怪我も全身打撲しておりましたが、そこまで酷くはありませんでした。ただ、出血が酷く、あと少し遅れていたら、助からなかったかもしれません」
マーガレットはやはり、かなり危険な状態だったのだな。でも、助かってよかった。安堵から、その場に座り込んでしまった。
「ローイン、大丈夫かい?よかったね。マーガレット嬢は、もう大丈夫だよ」
ノエルがにっこり微笑んだ。
「ノエル、本当にありがとう。あの時君が、飛行船を手配してくれたから…君は最高の親友だよ」
「ローインからお礼を言われると、なんだか照れ臭いな。それに親友なのだから、これくらい当然だろう?これからもずっと、僕の友人でいてくれるかい?」
「当たり前だろう。ずっとずっと、ノエルは俺のかけがえのない親友だ」
すっと手を伸ばすノエルの手をギュッと握った。持つべきものはやはり親友だ。彼が居なかったら、マーガレットはきっと…
まだ意識のないマーガレットをそっと見つめた。マーガレット、君の為に沢山の人が動いてくれたよ。俺の愛しい人、早く目を覚ましておくれ。
※次回、マーガレット視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
ノエルと王太子殿下に連れられ、部屋へと入る。既に医師たちが治療を行っていた。
「これはかなり出血していますね。確かにここでは治療は厳しい。すぐに王都に運びましょう」
「あれがマーガレット嬢かい?酷いな…」
ポツリとノエルが呟いた。王太子殿下も目を丸くして固まっている。そんな彼らを他所に、医者たちが手際よくマーガレットを飛行船へと連れて行く。俺もマーガレットと一緒に飛行船に乗り込んだ。
すぐに出発する飛行船。医師たちが今できる施術を必死に行っている。ただ…やはり状況は良くないみたいだ。
「これは時間との勝負です。このままいくと、マーガレット嬢の命が持たない。とにかく出来る事をやります」
医師たちの険しい表情から、非常に危険な状態なのが分かる。
「ローイン、大丈夫かい?震えているじゃないか。今君の父上から今回の件、聞いて来たよ。まさか盗聴器や居場所を特定する機械の存在に気づかれていただけでなく、伯爵家の馬車を乗っ取り、まんまとマーガレット嬢を誘拐するだなんて…本当に恐ろしい男だね。それにしてもマーガレット嬢、思い切った事をしたね。馬車を飛び降りるだなんて」
いつの間にか俺の傍に来ていたノエルが、話し掛けて来た。
「ノエル、俺はあれだけジェファーソン殿を警戒していたのに、結局マーガレットを守れなかった。俺がマーガレットを見つけた時、彼女は既に…覚悟を決めていた様で…意識を飛ばす寸前、俺に愛していると言ったんだ…幸せになって欲しいとも…」
「そうか、マーガレット嬢もローインの事が好きだったのだね。サラの口ぶりから、何となくそんな気がしていたのだよ。せっかく両想いになれたのだから、何が何でも彼女を助けないとね」
珍しくノエルが真剣な表情をしている。なぜだろう、ノエルが傍にいてくれるだけで、心が落ち着く。
「ローイン、王都が見えて来たよ。貴族病院にこのまま着陸する予定だ。既に兄上が、貴族病院に連絡を入れてくれているから、すぐに治療に入れるだろう」
ノエルが言った通り、着陸と同時にマーガレットは医師たちによって、すぐに病院内へと運ばれて行った。俺も一緒に付いていこうとするが
「これ以上先は立ち入り禁止です。どうか部屋の外で待っていてください」
そう言って部屋には入れてもらえなかった。仕方なく外で待つ。ここでも俺は、ただ祈る事しかできないのか…頼む、マーガレット、どうか助かってくれ。
「ローイン、マーガレット嬢の治療には時間がかかるそうだ。隣の部屋で休めるスペースを確保いたしたから、少し休みなさい。バロン殿も、どうか休んでください。あちらの部屋を確保いたしましたで」
父上が俺たちに休む様に声をかけて来た。でも…
「今のローインに休めと言っても無駄ですよ、侯爵。ローインは僕が付いていますから、どうか侯爵やバロン殿は休んできてください」
「ノエル殿下、それにグランディス侯爵もお心遣い感謝いたします。でも、妹が今まさに生死の境をさまよっている時に、ゆっくり休んでなどいられません。それからノエル殿下、妹の為に飛行船を出していただき、ありがとうございました。本当になんとお礼を申し上げたらいいか…」
「バロン殿、気にしないで下さい。僕は王族として当たり前の事をしたまでですから」
笑顔でバロン殿に対応するノエル。結局父上もノエルもバロン殿も、マーガレットの家の使用人たちも、誰1人として施術室の前を動く事はなかった。
どれくらい待っただろう。いつの間にか世は明け、太陽が高く昇っている。
その時だった。施術室の扉が開いたのだ。
「マーガレット!!」
急いでマーガレットの傍に駆け寄った。あちこち包帯でグルグルに巻かれていて、とても痛々しい。それに意識もない様で、目も閉じたままだ。
「先生、マーガレットはどうなのですか?」
バロン殿が必死に医師に問いかけている。
「マーガレット嬢は、一命を取り留めましたよ。もう大丈夫です。怪我も全身打撲しておりましたが、そこまで酷くはありませんでした。ただ、出血が酷く、あと少し遅れていたら、助からなかったかもしれません」
マーガレットはやはり、かなり危険な状態だったのだな。でも、助かってよかった。安堵から、その場に座り込んでしまった。
「ローイン、大丈夫かい?よかったね。マーガレット嬢は、もう大丈夫だよ」
ノエルがにっこり微笑んだ。
「ノエル、本当にありがとう。あの時君が、飛行船を手配してくれたから…君は最高の親友だよ」
「ローインからお礼を言われると、なんだか照れ臭いな。それに親友なのだから、これくらい当然だろう?これからもずっと、僕の友人でいてくれるかい?」
「当たり前だろう。ずっとずっと、ノエルは俺のかけがえのない親友だ」
すっと手を伸ばすノエルの手をギュッと握った。持つべきものはやはり親友だ。彼が居なかったら、マーガレットはきっと…
まだ意識のないマーガレットをそっと見つめた。マーガレット、君の為に沢山の人が動いてくれたよ。俺の愛しい人、早く目を覚ましておくれ。
※次回、マーガレット視点に戻ります。
よろしくお願いいたします。
104
あなたにおすすめの小説
【完結】田舎暮らしを都会でしているの?と思ったらここはどうやら異世界みたいです。
まりぃべる
恋愛
私、春日凛。
24歳、しがない中小企業の会社員。
…だったはずなんだけど、いつの間にかアスファルトではなくて石畳の街並みに迷い込んでいたみたい。
病院じゃないの?
ここどこ?どうして?やっぱり私死んじゃったの!?
パン屋のおじさんとおばさんに拾ってもらって、異世界で生きていきます!
…そして、どうにかこうにかあって幸せになっちゃうお話です。
☆28話で完結です。もう出来てますので、随時更新していきます。
☆この国での世界観です。よろしくお願いします。
地味令嬢は冤罪で処刑されて逆行転生したので、華麗な悪女を目指します!~目隠れ美形の天才王子に溺愛されまして~
胡蝶乃夢
恋愛
婚約者である王太子の望む通り『理想の淑女』として尽くしてきたにも関わらず、婚約破棄された挙句に冤罪で処刑されてしまった公爵令嬢ガーネット。
時間が遡り目覚めたガーネットは、二度と自分を犠牲にして尽くしたりしないと怒り、今度は自分勝手に生きる『華麗な悪女』になると決意する。
王太子の弟であるルベリウス王子にガーネットは留学をやめて傍にいて欲しいと願う。
処刑された時、留学中でいなかった彼がガーネットの傍にいることで運命は大きく変わっていく。
これは、不憫な地味令嬢が華麗な悪女へと変貌して周囲を魅了し、幼馴染の天才王子にも溺愛され、ざまぁして幸せになる物語です。
我慢するだけの日々はもう終わりにします
風見ゆうみ
恋愛
「レンウィル公爵も素敵だけれど、あなたの婚約者も素敵ね」伯爵の爵位を持つ父の後妻の連れ子であるロザンヌは、私、アリカ・ルージーの婚約者シーロンをうっとりとした目で見つめて言った――。
学園でのパーティーに出席した際、シーロンからパーティー会場の入口で「今日はロザンヌと出席するから、君は1人で中に入ってほしい」と言われた挙げ句、ロザンヌからは「あなたにはお似合いの相手を用意しておいた」と言われ、複数人の男子生徒にどこかへ連れ去られそうになってしまう。
そんな私を助けてくれたのは、ロザンヌが想いを寄せている相手、若き公爵ギルバート・レンウィルだった。
※本編完結しましたが、番外編を更新中です。
※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。
※独特の世界観です。
※中世〜近世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物など、その他諸々は現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。
※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
氷の騎士様は実は太陽の騎士様です。
りつ
恋愛
イリスの婚約者は幼馴染のラファエルである。彼と結婚するまで遠い修道院の寄宿学校で過ごしていたが、十八歳になり、王都へ戻って来た彼女は彼と結婚できる事実に胸をときめかせていた。しかし両親はラファエル以外の男性にも目を向けるよう言い出し、イリスは戸惑ってしまう。
王女殿下や王太子殿下とも知り合い、ラファエルが「氷の騎士」と呼ばれていることを知ったイリス。離れている間の知らなかったラファエルのことを令嬢たちの口から聞かされるが、イリスは次第に違和感を抱き始めて……
※他サイトにも掲載しています
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました
【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~
Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。
だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと──
公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、
幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。
二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。
しかし、リリーベル十歳の誕生日。
嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、
リリーベルを取り巻く環境は一変する。
リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。
そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。
唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。
そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう……
そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は───
※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』
こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。
めちゃくちゃチートを発揮しています……
婚約破棄された竜好き令嬢は黒竜様に溺愛される。残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ
水無瀬
ファンタジー
竜が好きで、三度のご飯より竜研究に没頭していた侯爵令嬢の私は、婚約者の王太子から婚約破棄を突きつけられる。
それだけでなく、この国をずっと守護してきた黒竜様を捨てると言うの。
黒竜様のことをずっと研究してきた私も、見せしめとして処刑されてしまうらしいです。
叶うなら、死ぬ前に一度でいいから黒竜様に会ってみたかったな。
ですが、私は知らなかった。
黒竜様はずっと私のそばで、私を見守ってくれていたのだ。
残念ですが、守護竜を捨てたこの国は滅亡するようですよ?
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
*********
以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。
内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる