大好きだった旦那様に離縁され家を追い出されましたが、騎士団長様に拾われ溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
12 / 61
第1章

第12話:このままずっと見ているだけでいいと思っていたのに~グレイ視点~

しおりを挟む
「フィルはあの女性と知り合いなのか?」
 
食堂を出た後、ぽつりと彼女の事を聞いた。
 
「スカーレットちゃんの事?ああ、騎士団員ならみんな知っているよ。可愛らしい子だろう。でもあの子、最近結婚したばかりの新婚さんだぞ。結婚したと聞いた時、かなりの騎士団員がショックを受けていたな」
 
新婚さん…
その言葉を聞いた瞬間、鈍器で頭を殴られたような衝撃を受けた。そうか…彼女は結婚しているのか…て、俺は何をショックを受けているのだ。とにかく彼女がこの街で安心して暮らせるよう、より一層治安の維持に努めよう。
 
そんな思いから、毎日必死に騎士団の仕事をこなす。ただ、食事はいつも彼女の働いている食堂に足を運んでしまう。フィルや他の騎士団員たちから別の食堂を紹介されたが、どうしても他の食堂に行く事が出来なかった。
 
彼女の笑顔を見ると、どんなに疲れていても、嫌な事があっても、もっと頑張ろうという気持ちになるのだ。日に日に大きくなる気持ちを、必死に抑えていた。
 
そんなある日
「お前、スカーレットちゃんの事が好きだろう」
急にそんな事を言い出したフィル。こいつは何を言っているんだ。
 
「そんな訳ないだろう。彼女は人妻だぞ。変な事を言うのはよせ」
 
「お前、嘘を付くのが下手だな。お前がスカーレットちゃんに会いたくてあの店に通っている事くらい、最初から分かっていた。店長や他のスタッフにもバレているぞ」
 
何だって…
 
「そう言えばスカーレットちゃんの旦那って…」
 
「旦那の話なんて聞きたくはない。とにかく、俺は彼女を見ているだけでいいんだ。これ以上変な事を言うのは止めろ!」
 
そうフィルに伝えた。クソ、俺の気持ちが皆にバレていたなんて…もうあの店には通えない。そう思い、別の食堂に足を運んだものの、あまり旨くない…やっぱり俺はあの店の料理が好きだ。そうだ、料理が好きなんだ。そう自分に言い聞かせ、翌日彼女が務めている食堂へと足を運んだ。
 
すると
「騎士団長様、らっしゃいませ。昨日いらっしゃらなかったから、体調でも崩したのではないかと心配していたのですよ。でも、元気そうで何よりですわ」
 
そう言って笑顔を向けてくれたスカーレット殿。あぁ…やっぱり俺は彼女が好きだ。この笑顔を守るためにも、俺の気持ちは封印しよう。そう思っていたのに…
 
その日はスカーレット殿が結婚して1年記念日の日。嬉しそうに他のお客さんに話している姿をたまたま目撃してしまった。そうか…今日はお祝いをするのか…
 
「おい、グレイ。露骨にショックそうな顔をするな」
 
前に座って食事をしていたフィルが、俺に向かってそう呟く。でも、ショックなものはショックなんだ。モヤモヤした気持ちを抑え、必死に午後の稽古を終えた。気を使ってくれたフィルが食事に誘ってくれたが、さすがにそんな気にはなれず、そのまま家路につくことにした。
 
凍てつくような寒さの中、近くでサンドウィッチを買った。正直食欲はあまりないが、何も食わない訳には行かない。とにかく今日は早く帰って、さっさと寝よう。そう思って歩いていると、1人の女性が道の真ん中で座り込んでいた。
 
通り過ぎる人たちがチラチラ見ているが、誰も女性に声をかける人はいない。もしかしたら、何かあったのかもしれない。急いで女性の元に向かい、声をかけると…
 
その女性はなんと、スカーレット殿ではないか。どうしてこんなところにいるのだろう。それも泣いていた様だ。とにかく足を怪我している様なので、自宅に送り届ける為彼女を抱きかかえた。
 
俺の腕の中にすっぽり入るほどの大きさしかない彼女は、温かくて柔らかくて…正直このまま離したくない…そんな歪んだ感情が俺を支配する。そんな俺に向かって“帰る家がない”そう言い放った彼女。一体どういうことなのだろう。
 
とにかく自分の家に連れて帰って来た。急いで暖炉に薪をくべ、部屋を暖かくし、足の手当てを行った。クソ、本当に何にもない家だな。どんな形であれ、スカーレット殿が我が家に来てくれているのに。
 
先日たまたま騎士団員からもらったお茶を見つけ、すぐに彼女に出した。ゆっくりお茶を飲むスカーレット殿をつい見つめてしまう。お茶を飲み落ち着いたのか、この家から出て行こうとするスカーレット殿を必死に止め、何とか話を聞きだすことが出来た。
 
スカーレット殿の話によると、クソ旦那は別の女を連れてきたうえ離縁を迫り、さらに寒空の下スカーレット殿を追い出したらしい。その上、結婚したのは亡くなったスカーレット殿のご両親の遺産が目当てだったとの事。クソ、どこまで腐りきった男なんだ。
 
体中から怒りがこみ上げてくるのを抑えきれず、感情を爆発させてしまった。そもそも、俺はずっと彼女を好きだったんだ。彼女が困っているなら、俺が手を差し伸べなくてどうする。
 
遠慮するスカーレット殿を説得し、この家に住まわせる事にした。こうして俺たちの同居生活が始まったのだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】気味が悪いと見放された令嬢ですので ~殿下、無理に愛さなくていいのでお構いなく~

Rohdea
恋愛
───私に嘘は通じない。 だから私は知っている。あなたは私のことなんて本当は愛していないのだと── 公爵家の令嬢という身分と魔力の強さによって、 幼い頃に自国の王子、イライアスの婚約者に選ばれていた公爵令嬢リリーベル。 二人は幼馴染としても仲良く過ごしていた。 しかし、リリーベル十歳の誕生日。 嘘を見抜ける力 “真実の瞳”という能力に目覚めたことで、 リリーベルを取り巻く環境は一変する。 リリーベルの目覚めた真実の瞳の能力は、巷で言われている能力と違っていて少々特殊だった。 そのことから更に気味が悪いと親に見放されたリリーベル。 唯一、味方となってくれたのは八歳年上の兄、トラヴィスだけだった。 そして、婚約者のイライアスとも段々と距離が出来てしまう…… そんな“真実の瞳”で視てしまった彼の心の中は─── ※『可愛い妹に全てを奪われましたので ~あなた達への未練は捨てたのでお構いなく~』 こちらの作品のヒーローの妹が主人公となる話です。 めちゃくちゃチートを発揮しています……

離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています

腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。 「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」 そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった! 今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。 冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。 彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――

身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】 妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。

突然決められた婚約者は人気者だそうです。押し付けられたに違いないので断ってもらおうと思います。

橘ハルシ
恋愛
 ごくごく普通の伯爵令嬢リーディアに、突然、降って湧いた婚約話。相手は、騎士団長の叔父の部下。侍女に聞くと、どうやら社交界で超人気の男性らしい。こんな釣り合わない相手、絶対に叔父が権力を使って、無理強いしたに違いない!  リーディアは相手に遠慮なく断ってくれるよう頼みに騎士団へ乗り込むが、両親も叔父も相手のことを教えてくれなかったため、全く知らない相手を一人で探す羽目になる。  怪しい変装をして、騎士団内をうろついていたリーディアは一人の青年と出会い、そのまま一緒に婚約者候補を探すことに。  しかしその青年といるうちに、リーディアは彼に好意を抱いてしまう。 全21話(本編20話+番外編1話)です。

とんでもない侯爵に嫁がされた女流作家の伯爵令嬢

ヴァンドール
恋愛
面食いで愛人のいる侯爵に伯爵令嬢であり女流作家のアンリが身を守るため変装して嫁いだが、その後、王弟殿下と知り合って・・

忘れられた幼な妻は泣くことを止めました

帆々
恋愛
アリスは十五歳。王国で高家と呼ばれるう高貴な家の姫だった。しかし、家は貧しく日々の暮らしにも困窮していた。 そんな時、アリスの父に非常に有利な融資をする人物が現れた。その代理人のフーは巧みに父を騙して、莫大な借金を負わせてしまう。 もちろん返済する目処もない。 「アリス姫と我が主人との婚姻で借財を帳消しにしましょう」 フーの言葉に父は頷いた。アリスもそれを責められなかった。家を守るのは父の責務だと信じたから。 嫁いだドリトルン家は悪徳金貸しとして有名で、アリスは邸の厳しいルールに従うことになる。フーは彼女を監視し自由を許さない。そんな中、夫の愛人が邸に迎え入れることを知る。彼女は庭の隅の離れ住まいを強いられているのに。アリスは嘆き悲しむが、フーに強く諌められてうなだれて受け入れた。 「ご実家への援助はご心配なく。ここでの悪くないお暮らしも保証しましょう」 そういう経緯を仲良しのはとこに打ち明けた。晩餐に招かれ、久しぶりに心の落ち着く時間を過ごした。その席にははとこ夫妻の友人のロエルもいて、彼女に彼の掘った珍しい鉱石を見せてくれた。しかし迎えに現れたフーが、和やかな夜をぶち壊してしまう。彼女を庇うはとこを咎め、フーの無礼を責めたロエルにまで痛烈な侮蔑を吐き捨てた。 厳しい婚家のルールに縛られ、アリスは外出もままならない。 それから五年の月日が流れ、ひょんなことからロエルに再会することになった。金髪の端正な紳士の彼は、彼女に問いかけた。 「お幸せですか?」 アリスはそれに答えられずにそのまま別れた。しかし、その言葉が彼の優しかった印象と共に尾を引いて、彼女の中に残っていく_______。 世間知らずの高貴な姫とやや強引な公爵家の子息のじれじれなラブストーリーです。 古風な恋愛物語をお好きな方にお読みいただけますと幸いです。 ハッピーエンドを心がけております。読後感のいい物語を努めます。 ※小説家になろう様にも投稿させていただいております。

私を虐げた人には絶望を ~貧乏令嬢は悪魔と呼ばれる侯爵様と契約結婚する~

香木陽灯
恋愛
 「あなた達の絶望を侯爵様に捧げる契約なの。だから……悪く思わないでね?」   貧乏な子爵家に生まれたカレン・リドリーは、家族から虐げられ、使用人のように働かされていた。   カレンはリドリー家から脱出して平民として生きるため、就職先を探し始めるが、令嬢である彼女の就職活動は難航してしまう。   ある時、不思議な少年ティルからモルザン侯爵家で働くようにスカウトされ、モルザン家に連れていかれるが……  「変わった人間だな。悪魔を前にして驚きもしないとは」   クラウス・モルザンは「悪魔の侯爵」と呼ばれていたが、本当に悪魔だったのだ。   負の感情を糧として生きているクラウスは、社交界での負の感情を摂取するために優秀な侯爵を演じていた。   カレンと契約結婚することになったクラウスは、彼女の家族に目をつける。   そしてクラウスはカレンの家族を絶望させて糧とするため、動き出すのだった。  「お前を虐げていた者たちに絶望を」  ※念のためのR-15です  ※他サイトでも掲載中

白い結婚のはずが、騎士様の独占欲が強すぎます! すれ違いから始まる溺愛逆転劇

鍛高譚
恋愛
婚約破棄された令嬢リオナは、家の体面を守るため、幼なじみであり王国騎士でもあるカイルと「白い結婚」をすることになった。 お互い干渉しない、心も体も自由な結婚生活――そのはずだった。 ……少なくとも、リオナはそう信じていた。 ところが結婚後、カイルの様子がおかしい。 距離を取るどころか、妙に優しくて、時に甘くて、そしてなぜか他の男性が近づくと怒る。 「お前は俺の妻だ。離れようなんて、思うなよ」 どうしてそんな顔をするのか、どうしてそんなに真剣に見つめてくるのか。 “白い結婚”のはずなのに、リオナの胸は日に日にざわついていく。 すれ違い、誤解、嫉妬。 そして社交界で起きた陰謀事件をきっかけに、カイルはとうとう本心を隠せなくなる。 「……ずっと好きだった。諦めるつもりなんてない」 そんなはずじゃなかったのに。 曖昧にしていたのは、むしろリオナのほうだった。 白い結婚から始まる、幼なじみ騎士の不器用で激しい独占欲。 鈍感な令嬢リオナが少しずつ自分の気持ちに気づいていく、溺愛逆転ラブストーリー。 「ゆっくりでいい。お前の歩幅に合わせる」 「……はい。私も、カイルと歩きたいです」 二人は“白い結婚”の先に、本当の夫婦を選んでいく――。 -

処理中です...