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第2章
第21話:無事退院しました
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入院して早3日。今日はいよいよ退院の日だ。この3日間、特に何もせずに毎日過ごした。そもそも入院自体が初めてで、何もしないという事がここまで退屈な事だったなんて思わなかったわ。とにかく早く家に帰って、家の事を思いっきりしたい。
この3日退屈している私の為に、毎日ベスさんとミミリィさんが様子を見に来てくれた。もちろん、グレイ様も。面会時間が始まると真っ先に来て、面会時間が終わるギリギリまでずっとそばに居てくれるのだ。
さすがに騎士団の仕事は大丈夫なのか心配になり、やんわりと騎士団に戻る様に促すと
“俺は今まで気が狂いそうになるくらい働いた。そして今だって働いている。俺が数時間抜けるくらい問題ない。それよりも、どうして君はすぐに俺を騎士団に戻したがるんだ?まさかパン屋の息子と!”
と、なぜかすぐにベスさんとの関係に持って行こうとするグレイ様。だんだん面倒になって来たので、これ以上何も言わないでおく事にした。
「スカーレット、荷物はまとめた。さあ、家に帰ろう」
そしていよいよ退院の時だ。もちろん、グレイ様が私の退院に付き添ってくれる。お世話になった先生や看護師さんに挨拶を済ませ、グレイ様と手を繋いで病院を出た。
「スカーレット、さあ、馬車へ」
なんとグレイ様が馬車を準備してくれていたのだ。病院から家まで、歩いて10分程度の距離なのに…
「あの、グレイ様。さすがに歩けますわ…」
そう伝えたのだが
「何を言っているんだ。君は命を落としかけたんだぞ。退院したからと言って、油断は出来ん。馬車が嫌なら、俺がおんぶしてやろう。それとも抱っこがいいか?そう言えばあの日、パン屋の息子が君をおぶって病院に行ったそうではないか。やっぱりおんぶがいいか」
そう言うと、私をおぶろうとするではないか。
「馬車で大丈夫ですわ」
急いで馬車に乗り込んだ。そもそもあの日は、緊急事態だったのだから仕方がない。それなのに、なぜグレイ様はそんなにベスさんの事を意識するのか、さっぱりわからない。ベスさんはただ、友人でもある私の危機を救ってくれただけなのに…
馬車に揺られる事2分、あっという間に家に着いた。
「さあ、スカーレット。我が家に着いたよ」
差し出してくれたグレイ様の手を握り、一緒に家の中に入って行く。3日留守にしただけなのに、なんだか懐かしい。
「スカーレット、しばらくはメイドを雇おうと思っているのだが」
えっ、メイドですって!
「メイドなど雇っていただかなくても大丈夫ですわ。もうすっかり元気になりましたし、それに適度に体を動かして免疫力を高める様、先生にも言われておりますし」
とにかく、体を動かしたくてたまらないのだ。
「スカーレットがそう言うなら…でも無理はしてほしくない。それからこれ、通信機だ。このボタンを押すと、俺の通信機に繋がる。本当はずっとスカーレットのそばに居たいのだが、生憎そう言う訳にも行かないからな。とにかく、仕事中もこまめに連絡を入れる様にするから。スカーレットも遠慮なく通信してきて欲しい」
そう言うと、通信機を渡したグレイ様。手のひらサイズでポケットに入れておけるくらい小さい。ちなみに通信機なんて生まれてこの方使った事がない。でも、この赤いボタンを押せばいいだけとの事なので、とても簡単だ。
「いいかい?この通信機を肌身離さず持っているんだよ」
「ええ、分かりましたわ。通信が入ったらすぐに出られる様に、肌身離さず持っておりますわね」
その後すぐに仕事に行ってしまったグレイ様。その後何度も通信機で連絡が入る。そして晩御飯の時間には、一度戻ってきてくれた。2人で食事をするのは何日ぶりかしら。嬉しくてつい頬が緩む。グレイ様も同じ事を思ったのか
「久しぶりに食べるスカーレットの食事は、本当に旨いな」
そう言って嬉しそうに頬張っていた。この後仕事に向かうグレイ様の為に、夜食を作って渡した。
「夜食まで本当にありがとう。それじゃあ、行ってくる。寝る前に一度通信機で連絡を入れてくれ。きちんと眠ったかどうか、心配なんだ」
「わかりました。でも、お忙しいのではなくって?」
「何を言っているんだ!俺にとって、スカーレットより大切なものなどない。いいな、絶対に連絡を入れるんだぞ」
物凄い勢いでそう詰め寄るグレイ様。
「はい、分かりましたわ」
あまりの迫力に、つい頷いてしまった。私の返答に満足したグレイ様は、唇に口づけをしてそのまま出て行った。その後後片付けをしてお風呂に入ると、いつもの様にベッドに入った。言われた通り、通信機でグレイ様に通信を入れる。
「グレイ様、今宜しいでしょうか?今から眠るので、連絡を入れました」
“よく連絡をくれたね。戸締りはしっかりしたかい?”
「ええ、大丈夫ですわ」
“そうか、退院したばかりなのに、そばに居てやれなくて本当にすまない。お休み、スカーレット”
「おやすみなさい、グレイ様」
そう言って通信を切る。たとえグレイ様がそばに居てくれてなくても、こうやって声を聞けて“おやすみ”の言葉を言い合えるだけで、なんだか心が温かくなった。
病気になってグレイ様に沢山迷惑を掛けたけれど、こうやって連絡を取り合える様になったのだから、ある意味よかったのかもしれないわね。
心が少しだけほっこりしたまま眠る、スカーレットであった。
この3日退屈している私の為に、毎日ベスさんとミミリィさんが様子を見に来てくれた。もちろん、グレイ様も。面会時間が始まると真っ先に来て、面会時間が終わるギリギリまでずっとそばに居てくれるのだ。
さすがに騎士団の仕事は大丈夫なのか心配になり、やんわりと騎士団に戻る様に促すと
“俺は今まで気が狂いそうになるくらい働いた。そして今だって働いている。俺が数時間抜けるくらい問題ない。それよりも、どうして君はすぐに俺を騎士団に戻したがるんだ?まさかパン屋の息子と!”
と、なぜかすぐにベスさんとの関係に持って行こうとするグレイ様。だんだん面倒になって来たので、これ以上何も言わないでおく事にした。
「スカーレット、荷物はまとめた。さあ、家に帰ろう」
そしていよいよ退院の時だ。もちろん、グレイ様が私の退院に付き添ってくれる。お世話になった先生や看護師さんに挨拶を済ませ、グレイ様と手を繋いで病院を出た。
「スカーレット、さあ、馬車へ」
なんとグレイ様が馬車を準備してくれていたのだ。病院から家まで、歩いて10分程度の距離なのに…
「あの、グレイ様。さすがに歩けますわ…」
そう伝えたのだが
「何を言っているんだ。君は命を落としかけたんだぞ。退院したからと言って、油断は出来ん。馬車が嫌なら、俺がおんぶしてやろう。それとも抱っこがいいか?そう言えばあの日、パン屋の息子が君をおぶって病院に行ったそうではないか。やっぱりおんぶがいいか」
そう言うと、私をおぶろうとするではないか。
「馬車で大丈夫ですわ」
急いで馬車に乗り込んだ。そもそもあの日は、緊急事態だったのだから仕方がない。それなのに、なぜグレイ様はそんなにベスさんの事を意識するのか、さっぱりわからない。ベスさんはただ、友人でもある私の危機を救ってくれただけなのに…
馬車に揺られる事2分、あっという間に家に着いた。
「さあ、スカーレット。我が家に着いたよ」
差し出してくれたグレイ様の手を握り、一緒に家の中に入って行く。3日留守にしただけなのに、なんだか懐かしい。
「スカーレット、しばらくはメイドを雇おうと思っているのだが」
えっ、メイドですって!
「メイドなど雇っていただかなくても大丈夫ですわ。もうすっかり元気になりましたし、それに適度に体を動かして免疫力を高める様、先生にも言われておりますし」
とにかく、体を動かしたくてたまらないのだ。
「スカーレットがそう言うなら…でも無理はしてほしくない。それからこれ、通信機だ。このボタンを押すと、俺の通信機に繋がる。本当はずっとスカーレットのそばに居たいのだが、生憎そう言う訳にも行かないからな。とにかく、仕事中もこまめに連絡を入れる様にするから。スカーレットも遠慮なく通信してきて欲しい」
そう言うと、通信機を渡したグレイ様。手のひらサイズでポケットに入れておけるくらい小さい。ちなみに通信機なんて生まれてこの方使った事がない。でも、この赤いボタンを押せばいいだけとの事なので、とても簡単だ。
「いいかい?この通信機を肌身離さず持っているんだよ」
「ええ、分かりましたわ。通信が入ったらすぐに出られる様に、肌身離さず持っておりますわね」
その後すぐに仕事に行ってしまったグレイ様。その後何度も通信機で連絡が入る。そして晩御飯の時間には、一度戻ってきてくれた。2人で食事をするのは何日ぶりかしら。嬉しくてつい頬が緩む。グレイ様も同じ事を思ったのか
「久しぶりに食べるスカーレットの食事は、本当に旨いな」
そう言って嬉しそうに頬張っていた。この後仕事に向かうグレイ様の為に、夜食を作って渡した。
「夜食まで本当にありがとう。それじゃあ、行ってくる。寝る前に一度通信機で連絡を入れてくれ。きちんと眠ったかどうか、心配なんだ」
「わかりました。でも、お忙しいのではなくって?」
「何を言っているんだ!俺にとって、スカーレットより大切なものなどない。いいな、絶対に連絡を入れるんだぞ」
物凄い勢いでそう詰め寄るグレイ様。
「はい、分かりましたわ」
あまりの迫力に、つい頷いてしまった。私の返答に満足したグレイ様は、唇に口づけをしてそのまま出て行った。その後後片付けをしてお風呂に入ると、いつもの様にベッドに入った。言われた通り、通信機でグレイ様に通信を入れる。
「グレイ様、今宜しいでしょうか?今から眠るので、連絡を入れました」
“よく連絡をくれたね。戸締りはしっかりしたかい?”
「ええ、大丈夫ですわ」
“そうか、退院したばかりなのに、そばに居てやれなくて本当にすまない。お休み、スカーレット”
「おやすみなさい、グレイ様」
そう言って通信を切る。たとえグレイ様がそばに居てくれてなくても、こうやって声を聞けて“おやすみ”の言葉を言い合えるだけで、なんだか心が温かくなった。
病気になってグレイ様に沢山迷惑を掛けたけれど、こうやって連絡を取り合える様になったのだから、ある意味よかったのかもしれないわね。
心が少しだけほっこりしたまま眠る、スカーレットであった。
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