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第2章
第23話:不安で胸が押しつぶされそうです
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グレイ様が北の森に向かってから、半月が過ぎた。最初の頃は、ほぼ毎日通信が来ていたが、その通信も日に日に減っていき、今は3日に1回あるかないかだ。そして街の病院には、毎日沢山の負傷した騎士団員たちが運ばれてきているらしい。
先日、いつも買い物に行っているお店の息子さんが、大けがを負って病院に運ばれたと聞いた。さらに残念ながら、助からなかった騎士団員たちも数名出ているとの事。
きっと物凄く過酷な戦いを強いられているのだろう。もしグレイ様に、もしもの事があったら…
中々鳴らない通信機を頻繁に確認するのが、私の日課になってしまった。ふと腕に付いたブレスレットに目が行く。グレイ様からプロポーズを受けた時にもらったものだ。“つないだ手が離れない様に”と言う願いが込められているらしい。
あの頃は間違いなく幸せだった。これからもずっとずっとグレイ様のそばで笑っていられると思っていた。でも現実は…
不安で毎日胸が押しつぶされそうになる。ただ唯一の救いは、同じ状況下にあるミミリィさんの存在だ。ミミリィさんも、最愛の夫でもある副騎士団長様が北の森で戦っている。
そんなミミリィさんと一緒に過ごすことで、お互いの不安を口にすることで、何とか平常心を保っている状況だ。
そんな私たちを見たベスさんが、よく美味しいパンを持ってきてくれる。さらに
「そんな暗い顔をしていても仕方がないだろう。ほら、たまには外の空気を吸え。それから、ボーっとしていると余計に変な事を考えるぞ。そんなに暇なら、俺の家のパン屋を手伝え」
そう言って私たちをお店に連れ行くのだ。確かにお店の仕事をしていると、少しだけ気分も晴れる。それでも夜1人になると、不安で押しつぶされそうになる。つい食事が喉を通らず、このまま食べないでおこうかしら?そんな事を考えては、ダメよ、しっかり食べないと、また病気になったらどうするの!そう自分に言い聞かせ、何とか食事をしている。
さらにもしもの時の為に、夜は無心でリンダさんから教わったトレーニングを行った。そうすることで、少しだけ気持ちが晴れるのだ。
気が狂いそうな中、何とか1ヶ月が過ぎた。やっとグレイ様が帰ってくる、そう思っていたのに…
“スカーレット、すまない。まだしばらくは帰れそうにないんだ”
通信機越しから謝罪を受けた。どうやらかなり難航している様で、まだまだ帰れそうにないらしい。元々グレイ様は1ヶ月で全てが解決するとは言っていなかった。それでもこの1ヶ月を乗り切れば、グレイ様に会えると心のどこかで信じていた。
それが崩れた今、今まで張りつめていた糸が切れてしまった。通信を切った後、堰を切った様に声を上げて泣いた。泣いて泣いて泣き続けて、結局その日の夜は泣きながら眠りについた。
グレイ様がまだ帰ってこられそうにないと知った翌日。何もする気が起こらず、ソファーに腰を下ろしたっきり動けない。今日はミミリィさんとの約束もない。こんな日に1人だなんて…
何となく買い物に行く気も起らず、ただただ何もせずに過ごす。騎士団長でもあるグレイ様と結婚したのだから、これくらいで悲しんでいてはいけないのに…いつの間にか強くなった気でいたが、やっぱり私は弱い。
きっとグレイ様は必死で戦っている。それなのに、私は…
コンコン
「スカーレット、いるのか?」
この声は、ベスさん?急にどうしたのかしら?
急いで玄関を開けると、やはりベスさんがパンを持って立っていた。
「なんて顔しているんだ。一体どうしたんだよ!」
心配そうに声を掛けてくるベスさん。ベスさんの顔を見たら、再び涙がこみ上げて来た。
「ベスさん、私…」
「おい、急に泣くなよ。とにかく中に入ろう」
グレイ様にベスさんを家にあげてはいけないと言われていたが、今の私にはその事を伝える気力もない。正直今は、誰でもいいから話を聞いてもらいたい、そばに居てもらいたいのだ。
私を椅子に座らせると、ベスさんも前に座った。
「それで、どうしたんだよ」
「実は1ヶ月程度で帰ってくる予定だったグレイ様が…まだしばらく帰れそうにないと連絡があって…私は心のどこかで、1ヶ月我慢すればグレイ様に会えると思っていたのです。でも…」
再び涙が溢れ出す。
「グレイ様は今でも必死に犯罪組織と戦っているのに…私は寂しくて辛くて、心が折れそうで…グレイ様と結婚するとき、何があってもグレイ様を信じてついていこう、騎士団長の妻として、もっとしっかりしようと思っていたのに。それなのに私は、こんな事で泣き言を言って…でも、辛くてたまらないのです。心がポキッっと折れてしまいそうで…」
気が付くと、ベスさんに自分の感情をぶつけていた。
「そうか、スカーレットは随分と我慢していたんだな。なあ、そんなに辛いなら、旦那と離縁して、別の男性と結婚するのも一つの手だぞ。例えば、俺とか」
ニヤリと笑ったベスさん。そして少しずつ顔が近づいてきて…
「ベスさん、今はそんな冗談を言っている場合ではないですよ!そもそも私は、グレイ様以外の男性と結婚するつもりはないのです。でも、ありがとうございます。ベスさんのお陰で、少しだけ気持ちが楽になりましたわ」
きっと私の事をからかったのだろう。そう思ったのだが…
「ハハハハハハ、相変わらず鈍い女だな。でも、そんなところもスカーレットの魅力だ。今お前が言った通り、夫の事が大好きなんだろ。だったら信じて待つしかないだろう。お前の夫はメチャクチャ強いらしいじゃん。きっと大丈夫だ。そうそう、パンを持ってきてやったぞ。お前、今日パンを買いに来なかっただろう?とにかく旦那が帰ってきた時、やせ細っていたら心配されるぞ。しっかり食べろ。さっきミミリィさんの家にもパンを届けてきたところだ。ミミリィさんもスカーレットと同じように、この世の終わりみたいな顔をしていたぞ」
そう言って笑っていた。
「ほら、総菜パン、旨いぞ。食え」
私にパンを差し出してきたベスさん。そう言えば今日はまだ、何も食べていなかった。ベスさんからパンを受け取りパクリと一口。
「美味しい…」
「当たり前だろう?家のパンだぞ。お前も俺と結婚すれば毎日美味しいパンが食べ放題なのにな。そもそもお前みたいな鈍い女だと、旦那もさぞ心配だろう。旦那に同情するよ…」
そう言って遠くを見つめている。
「もう、からかわないで下さい!私はそんなに鈍くないですわ。本当に失礼なんだから」
頬を膨らませて抗議をする。でも、こうやってベスさんと話をしたおかげか、少し心が軽くなった。確かにベスさんの言う通り、グレイ様を信じて待つしかないのよね。グレイ様が帰ってきた時に心配かけない様に、しっかりご飯を食べないと。
「ベスさん、ありがとうございます。なんだか元気が出てきましたわ」
「それはよかった。それじゃあ、俺はもう帰るわ」
そう言ってさっさと帰っていった。ありがとう、ベスさん。ベスさんの後ろ姿を見つめながら、そっと呟いた。
先日、いつも買い物に行っているお店の息子さんが、大けがを負って病院に運ばれたと聞いた。さらに残念ながら、助からなかった騎士団員たちも数名出ているとの事。
きっと物凄く過酷な戦いを強いられているのだろう。もしグレイ様に、もしもの事があったら…
中々鳴らない通信機を頻繁に確認するのが、私の日課になってしまった。ふと腕に付いたブレスレットに目が行く。グレイ様からプロポーズを受けた時にもらったものだ。“つないだ手が離れない様に”と言う願いが込められているらしい。
あの頃は間違いなく幸せだった。これからもずっとずっとグレイ様のそばで笑っていられると思っていた。でも現実は…
不安で毎日胸が押しつぶされそうになる。ただ唯一の救いは、同じ状況下にあるミミリィさんの存在だ。ミミリィさんも、最愛の夫でもある副騎士団長様が北の森で戦っている。
そんなミミリィさんと一緒に過ごすことで、お互いの不安を口にすることで、何とか平常心を保っている状況だ。
そんな私たちを見たベスさんが、よく美味しいパンを持ってきてくれる。さらに
「そんな暗い顔をしていても仕方がないだろう。ほら、たまには外の空気を吸え。それから、ボーっとしていると余計に変な事を考えるぞ。そんなに暇なら、俺の家のパン屋を手伝え」
そう言って私たちをお店に連れ行くのだ。確かにお店の仕事をしていると、少しだけ気分も晴れる。それでも夜1人になると、不安で押しつぶされそうになる。つい食事が喉を通らず、このまま食べないでおこうかしら?そんな事を考えては、ダメよ、しっかり食べないと、また病気になったらどうするの!そう自分に言い聞かせ、何とか食事をしている。
さらにもしもの時の為に、夜は無心でリンダさんから教わったトレーニングを行った。そうすることで、少しだけ気持ちが晴れるのだ。
気が狂いそうな中、何とか1ヶ月が過ぎた。やっとグレイ様が帰ってくる、そう思っていたのに…
“スカーレット、すまない。まだしばらくは帰れそうにないんだ”
通信機越しから謝罪を受けた。どうやらかなり難航している様で、まだまだ帰れそうにないらしい。元々グレイ様は1ヶ月で全てが解決するとは言っていなかった。それでもこの1ヶ月を乗り切れば、グレイ様に会えると心のどこかで信じていた。
それが崩れた今、今まで張りつめていた糸が切れてしまった。通信を切った後、堰を切った様に声を上げて泣いた。泣いて泣いて泣き続けて、結局その日の夜は泣きながら眠りについた。
グレイ様がまだ帰ってこられそうにないと知った翌日。何もする気が起こらず、ソファーに腰を下ろしたっきり動けない。今日はミミリィさんとの約束もない。こんな日に1人だなんて…
何となく買い物に行く気も起らず、ただただ何もせずに過ごす。騎士団長でもあるグレイ様と結婚したのだから、これくらいで悲しんでいてはいけないのに…いつの間にか強くなった気でいたが、やっぱり私は弱い。
きっとグレイ様は必死で戦っている。それなのに、私は…
コンコン
「スカーレット、いるのか?」
この声は、ベスさん?急にどうしたのかしら?
急いで玄関を開けると、やはりベスさんがパンを持って立っていた。
「なんて顔しているんだ。一体どうしたんだよ!」
心配そうに声を掛けてくるベスさん。ベスさんの顔を見たら、再び涙がこみ上げて来た。
「ベスさん、私…」
「おい、急に泣くなよ。とにかく中に入ろう」
グレイ様にベスさんを家にあげてはいけないと言われていたが、今の私にはその事を伝える気力もない。正直今は、誰でもいいから話を聞いてもらいたい、そばに居てもらいたいのだ。
私を椅子に座らせると、ベスさんも前に座った。
「それで、どうしたんだよ」
「実は1ヶ月程度で帰ってくる予定だったグレイ様が…まだしばらく帰れそうにないと連絡があって…私は心のどこかで、1ヶ月我慢すればグレイ様に会えると思っていたのです。でも…」
再び涙が溢れ出す。
「グレイ様は今でも必死に犯罪組織と戦っているのに…私は寂しくて辛くて、心が折れそうで…グレイ様と結婚するとき、何があってもグレイ様を信じてついていこう、騎士団長の妻として、もっとしっかりしようと思っていたのに。それなのに私は、こんな事で泣き言を言って…でも、辛くてたまらないのです。心がポキッっと折れてしまいそうで…」
気が付くと、ベスさんに自分の感情をぶつけていた。
「そうか、スカーレットは随分と我慢していたんだな。なあ、そんなに辛いなら、旦那と離縁して、別の男性と結婚するのも一つの手だぞ。例えば、俺とか」
ニヤリと笑ったベスさん。そして少しずつ顔が近づいてきて…
「ベスさん、今はそんな冗談を言っている場合ではないですよ!そもそも私は、グレイ様以外の男性と結婚するつもりはないのです。でも、ありがとうございます。ベスさんのお陰で、少しだけ気持ちが楽になりましたわ」
きっと私の事をからかったのだろう。そう思ったのだが…
「ハハハハハハ、相変わらず鈍い女だな。でも、そんなところもスカーレットの魅力だ。今お前が言った通り、夫の事が大好きなんだろ。だったら信じて待つしかないだろう。お前の夫はメチャクチャ強いらしいじゃん。きっと大丈夫だ。そうそう、パンを持ってきてやったぞ。お前、今日パンを買いに来なかっただろう?とにかく旦那が帰ってきた時、やせ細っていたら心配されるぞ。しっかり食べろ。さっきミミリィさんの家にもパンを届けてきたところだ。ミミリィさんもスカーレットと同じように、この世の終わりみたいな顔をしていたぞ」
そう言って笑っていた。
「ほら、総菜パン、旨いぞ。食え」
私にパンを差し出してきたベスさん。そう言えば今日はまだ、何も食べていなかった。ベスさんからパンを受け取りパクリと一口。
「美味しい…」
「当たり前だろう?家のパンだぞ。お前も俺と結婚すれば毎日美味しいパンが食べ放題なのにな。そもそもお前みたいな鈍い女だと、旦那もさぞ心配だろう。旦那に同情するよ…」
そう言って遠くを見つめている。
「もう、からかわないで下さい!私はそんなに鈍くないですわ。本当に失礼なんだから」
頬を膨らませて抗議をする。でも、こうやってベスさんと話をしたおかげか、少し心が軽くなった。確かにベスさんの言う通り、グレイ様を信じて待つしかないのよね。グレイ様が帰ってきた時に心配かけない様に、しっかりご飯を食べないと。
「ベスさん、ありがとうございます。なんだか元気が出てきましたわ」
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