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第32話:不覚にも熱を出してしまった~ディーノ視点~
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「殿下、凄い熱です。やはり昨日、冷たい湖に入ったから風邪をひいてしまったのでしょう。すぐに医者を呼びます」
執事が急いで医者を呼びに行く。まさか湖に入ったくらいで風邪をひくだなんて。僕はいつからこんなに軟になってしまったのだろう。ついため息が出る。
ふと昨日の事を思い出す。僕の前では比較的自分を出してくれるヴィクトリアだが、あまり負の感情を出すことはない。でも昨日は珍しく機嫌が悪かった。
明らかに僕を睨みつけ、あちらの方向を向くヴィクトリアを見た時、正直僕は嬉しかった。ついに僕にもこんな感情を見せてくれる様になったのだと。ただ、このまま機嫌が悪いのもよくない。
そう思い、ヴィクトリアを森に連れて行ったのだ。案の定、すっかり機嫌がよくなったヴィクトリアは、調子に乗って湖に入り溺れたのだ。急いで救出したが、よほど怖かったのだろう。僕の腕の中で子供の様に泣いていた。
彼女は年齢以上に大人びていて、さらに人の感情を操るのが得意な子。よく涙を浮かべているが、どれも演技で、僕もヴィクトリアの本当の涙は見たことがなかった。そんなヴィクトリアが、子供の様に僕の腕の中で泣いたのだ。
その姿を見た瞬間、何が何でもこの子を守りたい、そう強く思った。ずっとヴィクトリアを離したくなくて、馬車に乗った後も彼女を抱きしめ続けた。本人もよほど怖かったのか、珍しく僕から離れなかったし…
ただ、やはりヴィクトリアだ。その後は上手く僕から逃げようとしていたが…そこもまたヴィクトリアの魅力でもある。ここまで僕の心を掴んでしまうだなんて、やはりヴィクトリアはただ物ではない。
ただ…
お妃候補者選びも終盤に入っている為、そろそろフィドーズ公爵家が動き出すかもしれない。今まで以上に警戒しないと。そう思っていた矢先、熱を出してしまった。本当に情けない限りだ。
「殿下、医者を呼んで参りましたよ」
医者に診てもらった結果、やはり風邪の様だ。僕の場合、一度風邪をひくと、3日くらいは寝込んでしまう。今回もきっとそうだろう。3日もヴィクトリアに会えないだなんて…
そういえばヴィクトリアは大丈夫なのだろうか?もしもヴィクトリアも同じ様に風邪をひいていたら…
「ヴィクトリアは大丈夫かい?あの子も昨日、びしょぬれだっただろう?ヴィクトリアは元々体が弱く、領地で療養していたんだ。万が一風邪をひいて悪化したら大変だからね」
彼女は幼い頃、体が弱かった。もしヴィクトリアに何かあれば…そう考えると不安でたまらないのだ。
「先ほどヴィクトリア様の専属メイドと話をいたしましたが、すこぶる元気との事です。朝ごはんもしっかり食べられたとの事なので、ご安心ください」
「それは良かった。ヴィクトリアは乗馬と騎士団員との稽古を毎日楽しみにしている。すぐに手配してやってくれ」
「承知いたしました。それからメイドから、もしヴィクトリア様がお見舞いに来たいとおっしゃった場合、お伺いしてもよいか確認がありましたが、どうされますか?やはり規則通り、殿下のお部屋に来ることはダメだと伝えましょうか?」
「ヴィクトリアが僕の見舞いに来たいと言うのなら、僕は歓迎するよ。ただ、万が一僕の風邪が移ると大変だから、無理はしなくてもいいと伝えてくれるかい?」
「かしこまりました。それでは何かあれば、すぐにお呼びください」
執事が部屋から出ていくのを見送る。それにしても、だるいな。頭も痛いし。今日はゆっくり休もう。医者から処方された薬を飲み、ゆっくり休む。でも…
やはり僕にはあまり薬は効かない様で、熱が下がる気配はない。苦しいな…こんな時、ヴィクトリアの顔が見られたら少しは元気になるのに…
こんな時でも僕は、ヴィクトリアの事を考えてしまうのだな。
その時だった。
メイドに連れられてヴィクトリアが僕の部屋にやって来たのだ。きっと見舞いに来てくれたのだろう。ヴィクトリアが僕の為にお見舞いに来てくれるだなんて。嬉しくてつい頬が緩む。
でも、万が一ヴィクトリアに風邪が移ったら大変だ。そう思い、すぐに部屋から出る様に伝えたのだが、なぜか嬉しそうにこちらにやって来るヴィクトリア。そして僕の為に特製の薬を作って来たと言って渡してきたのだ。
見るからに怪しそうな薬。でも、僕の為にせっかく作ってくれたのだから、たとえ毒でも飲みたい。そんな思いで飲もうとした僕を制止したのは、執事だ。強めの口調でヴィクトリアを責めている。
ただ、ヴィクトリアも負けていない。目に涙をいっぱい浮かべ、その場に座り込みシクシクと泣いている。ヴィクトリア渾身の演技が炸裂し、さすがの執事もタジタジだ。
僕もヴィクトリアの演技に騙されたふりをして、軽く執事をたしなめると一気に薬を飲みほした。これは…マズイ、マズすぎるがここで飲み切らない訳にはいかない。ふとヴィクトリアの方を見ると、ニヤリと笑ったのだ。
そうか、この子、僕のこのしかめた顔を見たかったのだな。本当にヴィクトリアは…それでも僕は、一気に薬を飲み切り、ヴィクトリアに笑顔を向けた。
一瞬不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、そのまま部屋から出て行ったヴィクトリア。それにしても、随分マズイ薬を持ってきたものだな。多分毒ではないだろうから、大丈夫だろう。
その後なぜか無性に眠くなり、そのまま眠りについてしまったのだった。
執事が急いで医者を呼びに行く。まさか湖に入ったくらいで風邪をひくだなんて。僕はいつからこんなに軟になってしまったのだろう。ついため息が出る。
ふと昨日の事を思い出す。僕の前では比較的自分を出してくれるヴィクトリアだが、あまり負の感情を出すことはない。でも昨日は珍しく機嫌が悪かった。
明らかに僕を睨みつけ、あちらの方向を向くヴィクトリアを見た時、正直僕は嬉しかった。ついに僕にもこんな感情を見せてくれる様になったのだと。ただ、このまま機嫌が悪いのもよくない。
そう思い、ヴィクトリアを森に連れて行ったのだ。案の定、すっかり機嫌がよくなったヴィクトリアは、調子に乗って湖に入り溺れたのだ。急いで救出したが、よほど怖かったのだろう。僕の腕の中で子供の様に泣いていた。
彼女は年齢以上に大人びていて、さらに人の感情を操るのが得意な子。よく涙を浮かべているが、どれも演技で、僕もヴィクトリアの本当の涙は見たことがなかった。そんなヴィクトリアが、子供の様に僕の腕の中で泣いたのだ。
その姿を見た瞬間、何が何でもこの子を守りたい、そう強く思った。ずっとヴィクトリアを離したくなくて、馬車に乗った後も彼女を抱きしめ続けた。本人もよほど怖かったのか、珍しく僕から離れなかったし…
ただ、やはりヴィクトリアだ。その後は上手く僕から逃げようとしていたが…そこもまたヴィクトリアの魅力でもある。ここまで僕の心を掴んでしまうだなんて、やはりヴィクトリアはただ物ではない。
ただ…
お妃候補者選びも終盤に入っている為、そろそろフィドーズ公爵家が動き出すかもしれない。今まで以上に警戒しないと。そう思っていた矢先、熱を出してしまった。本当に情けない限りだ。
「殿下、医者を呼んで参りましたよ」
医者に診てもらった結果、やはり風邪の様だ。僕の場合、一度風邪をひくと、3日くらいは寝込んでしまう。今回もきっとそうだろう。3日もヴィクトリアに会えないだなんて…
そういえばヴィクトリアは大丈夫なのだろうか?もしもヴィクトリアも同じ様に風邪をひいていたら…
「ヴィクトリアは大丈夫かい?あの子も昨日、びしょぬれだっただろう?ヴィクトリアは元々体が弱く、領地で療養していたんだ。万が一風邪をひいて悪化したら大変だからね」
彼女は幼い頃、体が弱かった。もしヴィクトリアに何かあれば…そう考えると不安でたまらないのだ。
「先ほどヴィクトリア様の専属メイドと話をいたしましたが、すこぶる元気との事です。朝ごはんもしっかり食べられたとの事なので、ご安心ください」
「それは良かった。ヴィクトリアは乗馬と騎士団員との稽古を毎日楽しみにしている。すぐに手配してやってくれ」
「承知いたしました。それからメイドから、もしヴィクトリア様がお見舞いに来たいとおっしゃった場合、お伺いしてもよいか確認がありましたが、どうされますか?やはり規則通り、殿下のお部屋に来ることはダメだと伝えましょうか?」
「ヴィクトリアが僕の見舞いに来たいと言うのなら、僕は歓迎するよ。ただ、万が一僕の風邪が移ると大変だから、無理はしなくてもいいと伝えてくれるかい?」
「かしこまりました。それでは何かあれば、すぐにお呼びください」
執事が部屋から出ていくのを見送る。それにしても、だるいな。頭も痛いし。今日はゆっくり休もう。医者から処方された薬を飲み、ゆっくり休む。でも…
やはり僕にはあまり薬は効かない様で、熱が下がる気配はない。苦しいな…こんな時、ヴィクトリアの顔が見られたら少しは元気になるのに…
こんな時でも僕は、ヴィクトリアの事を考えてしまうのだな。
その時だった。
メイドに連れられてヴィクトリアが僕の部屋にやって来たのだ。きっと見舞いに来てくれたのだろう。ヴィクトリアが僕の為にお見舞いに来てくれるだなんて。嬉しくてつい頬が緩む。
でも、万が一ヴィクトリアに風邪が移ったら大変だ。そう思い、すぐに部屋から出る様に伝えたのだが、なぜか嬉しそうにこちらにやって来るヴィクトリア。そして僕の為に特製の薬を作って来たと言って渡してきたのだ。
見るからに怪しそうな薬。でも、僕の為にせっかく作ってくれたのだから、たとえ毒でも飲みたい。そんな思いで飲もうとした僕を制止したのは、執事だ。強めの口調でヴィクトリアを責めている。
ただ、ヴィクトリアも負けていない。目に涙をいっぱい浮かべ、その場に座り込みシクシクと泣いている。ヴィクトリア渾身の演技が炸裂し、さすがの執事もタジタジだ。
僕もヴィクトリアの演技に騙されたふりをして、軽く執事をたしなめると一気に薬を飲みほした。これは…マズイ、マズすぎるがここで飲み切らない訳にはいかない。ふとヴィクトリアの方を見ると、ニヤリと笑ったのだ。
そうか、この子、僕のこのしかめた顔を見たかったのだな。本当にヴィクトリアは…それでも僕は、一気に薬を飲み切り、ヴィクトリアに笑顔を向けた。
一瞬不満そうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、そのまま部屋から出て行ったヴィクトリア。それにしても、随分マズイ薬を持ってきたものだな。多分毒ではないだろうから、大丈夫だろう。
その後なぜか無性に眠くなり、そのまま眠りについてしまったのだった。
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