45 / 50
番外編
ディカルド殿下に絡まれました
しおりを挟む
とはいえ、私は体調不良で早退したことになっている。人目につくとマズいから…
そのまま貴族学院の中庭を抜け、どんどん奥へと進んでいく。そしてしばらく進むと。
「あったわ、王妃様がおっしゃっていた、大きな木。これは登りがいがあるわね」
早速気をスルスルと登っていく。貴族学院は部外者の侵入を防ぐため、四方八方を塀で覆われている為、景色が決して良い訳ではない。それでもやはり、木の上はいいわ。
ディーノ様が来るまで、ここでのんびり過ごしていよう。
ディーノ様、今頃気が気ではないでしょうね。動揺して新入生代表のスピーチで、失敗…なんてあの男がする訳ないわ。涼しい顔で、堂々とスピーチをしているところだろう。
そんな事を考えている時だった。何やら視線を感じる。ふと視線の感じる方に目をやると、そこには口をポカンと開けて立っている、ディカルド殿下の姿が。
「あなた様は、ボーレス王国のディカルド殿下ですね。今は入学式のお時間ですわよ。こんなところで何をなさっているのですか?」
この男、堂々と入学式をサボるだなんて、一体何を考えているのかしら?
「あなたこそ、あんな仮病を使って式を抜け出し、挙句の果てに、令嬢が木に登るだなんて」
「あら、令嬢が木に登ってはいけない法律なんて、我が国にはありませんわ。もしかしてボーレス王国には、その様な法律があるのですか?それは面倒ですわね」
「別に法律はないけれど。普通は令嬢は木になんて登らないものだ!」
「その普通は、誰が決めたのですか?そんな普通は、私には通用しません。私に文句を言いに来たのでしたら、お戻りください。私はうるさい人間は嫌いなのです」
シッシッと追い払う。本当に面倒な男ね。ただ、何を思ったのか、ディカルド殿下はそのまま木に登って来たのだ。
「殿下、先ほど散々木に登るのは良くないと、おっしゃっていたではありませんか?どうしてあなたが登って来るのですか?迷惑ですので、さっさとどこかに行ってください」
再びシッシッと追い払ってみるが、なぜか動かない。
「君はその…僕の顔を見ても、なんとも思わないのかい?さっき僕が中庭にいた時、嬉しそうにこちらに来ていたのに、僕の顔を見た瞬間、心底ガッカリしていただろう?だから、その…」
「あら、あの時の事が不満で、私に文句を言いに来たのですか?それなら、こっちが文句を言いたいくらいですわ。私はあんなに令嬢たちが集まっていたので、てっきり新作のお菓子の紹介か何かかと思って行ったのに。まさか皆様、人間に群がっていただなんて…足を運んで損しましたわ」
はぁっとため息をつく。
「君はその…僕の顔を見ても、なんとも思わないのかい?令嬢たちは僕を見ると、皆頬を赤らめるんだよ。無駄に美しいこの顔のせいで、令嬢たちは僕の顔しか見ていない」
顔が美しい?
じーっと殿下の顔を見つめた。
「ヴィクトリア嬢?」
「顔が美しいと、なぜみんな頬を赤らめるのですか?顔が美しいと、令嬢たちにとって何かメリットがあるのですか?例えば、美味しいお菓子のありかがすぐにわかるとか。薬草や毒の知識が一発で身につくとか。はたまた、稽古無しで物凄く強くなれるだとか」
殿下に向かって問いかけた。
「僕にはそんな特殊能力は、備わっていないよ。ただ…皆美しい僕の顔が好きなんだ。でも僕は、この顔が大嫌いだ!この顔のせいで、僕は今まで苦労してきたんだ。こんな顔、捨ててしまいたい!」
「よくわかりませんが、目もしっかりみえ、耳も聞こえ、お話しも出来る。美味しい匂いも嗅ぐことが出来るのでしょう?それなのに、どうしてご自分のお顔に不満があるのですか?しっかり機能しているのなら、問題ないではありませんか?」
コテンと首を傾げた。さらに
「あなたが美しい顔をしているかどうかは、私には分かりません。ただ、お顔なんて皆様、目・鼻・口・耳が付いておりますわ。鼻が高いだの低いだの、目が小さいだの大きいだの、そんな事生きていくうえでは、どうでもいい事だと私は思います。でも、口は大きい方がいいかもしれませんね。一度に沢山美味しいものを口に入れられますから」
ただ、クロハがあまり大きな口で食事をすると怒るのだ。もちろん、人前ではおちょぼ口で食べているのに。誰もいない時くらい、好きに食べさせて欲しいものだわ!
次の瞬間、殿下が何を思ったのか、声を上げて笑ったのだ。一体どうしたのだろう。
「ヴィクトリア嬢と話をしていると、なんだか僕の悩みなんて、どうでもいい様に感じるよ。君の様な令嬢は初めてだ。確かに顔なんて、それぞれしっかり機能していれば、見た目なんてどうでもいいのだよね…それなのに僕は、この美しい顔にコンプレックスを持っていたのだよ。でも、なんだかそんな事すら、バカバカしくなってきた。かつて人形王子なんて呼ばれていたディーノ殿下が、君に出会って変わった理由がよくわかる」
ディーノ様は、他国でもそんな変な名前で呼ばれていたのね。
「あなた様のおっしゃっている事が、よくわかりませんが、悩みが解消されたのならよかったですわ。私はこれから、やらなければいけないことがございますので」
再びシッシッと殿下を追いやると、通信機と携帯用モニターを取り出したのだった。
そのまま貴族学院の中庭を抜け、どんどん奥へと進んでいく。そしてしばらく進むと。
「あったわ、王妃様がおっしゃっていた、大きな木。これは登りがいがあるわね」
早速気をスルスルと登っていく。貴族学院は部外者の侵入を防ぐため、四方八方を塀で覆われている為、景色が決して良い訳ではない。それでもやはり、木の上はいいわ。
ディーノ様が来るまで、ここでのんびり過ごしていよう。
ディーノ様、今頃気が気ではないでしょうね。動揺して新入生代表のスピーチで、失敗…なんてあの男がする訳ないわ。涼しい顔で、堂々とスピーチをしているところだろう。
そんな事を考えている時だった。何やら視線を感じる。ふと視線の感じる方に目をやると、そこには口をポカンと開けて立っている、ディカルド殿下の姿が。
「あなた様は、ボーレス王国のディカルド殿下ですね。今は入学式のお時間ですわよ。こんなところで何をなさっているのですか?」
この男、堂々と入学式をサボるだなんて、一体何を考えているのかしら?
「あなたこそ、あんな仮病を使って式を抜け出し、挙句の果てに、令嬢が木に登るだなんて」
「あら、令嬢が木に登ってはいけない法律なんて、我が国にはありませんわ。もしかしてボーレス王国には、その様な法律があるのですか?それは面倒ですわね」
「別に法律はないけれど。普通は令嬢は木になんて登らないものだ!」
「その普通は、誰が決めたのですか?そんな普通は、私には通用しません。私に文句を言いに来たのでしたら、お戻りください。私はうるさい人間は嫌いなのです」
シッシッと追い払う。本当に面倒な男ね。ただ、何を思ったのか、ディカルド殿下はそのまま木に登って来たのだ。
「殿下、先ほど散々木に登るのは良くないと、おっしゃっていたではありませんか?どうしてあなたが登って来るのですか?迷惑ですので、さっさとどこかに行ってください」
再びシッシッと追い払ってみるが、なぜか動かない。
「君はその…僕の顔を見ても、なんとも思わないのかい?さっき僕が中庭にいた時、嬉しそうにこちらに来ていたのに、僕の顔を見た瞬間、心底ガッカリしていただろう?だから、その…」
「あら、あの時の事が不満で、私に文句を言いに来たのですか?それなら、こっちが文句を言いたいくらいですわ。私はあんなに令嬢たちが集まっていたので、てっきり新作のお菓子の紹介か何かかと思って行ったのに。まさか皆様、人間に群がっていただなんて…足を運んで損しましたわ」
はぁっとため息をつく。
「君はその…僕の顔を見ても、なんとも思わないのかい?令嬢たちは僕を見ると、皆頬を赤らめるんだよ。無駄に美しいこの顔のせいで、令嬢たちは僕の顔しか見ていない」
顔が美しい?
じーっと殿下の顔を見つめた。
「ヴィクトリア嬢?」
「顔が美しいと、なぜみんな頬を赤らめるのですか?顔が美しいと、令嬢たちにとって何かメリットがあるのですか?例えば、美味しいお菓子のありかがすぐにわかるとか。薬草や毒の知識が一発で身につくとか。はたまた、稽古無しで物凄く強くなれるだとか」
殿下に向かって問いかけた。
「僕にはそんな特殊能力は、備わっていないよ。ただ…皆美しい僕の顔が好きなんだ。でも僕は、この顔が大嫌いだ!この顔のせいで、僕は今まで苦労してきたんだ。こんな顔、捨ててしまいたい!」
「よくわかりませんが、目もしっかりみえ、耳も聞こえ、お話しも出来る。美味しい匂いも嗅ぐことが出来るのでしょう?それなのに、どうしてご自分のお顔に不満があるのですか?しっかり機能しているのなら、問題ないではありませんか?」
コテンと首を傾げた。さらに
「あなたが美しい顔をしているかどうかは、私には分かりません。ただ、お顔なんて皆様、目・鼻・口・耳が付いておりますわ。鼻が高いだの低いだの、目が小さいだの大きいだの、そんな事生きていくうえでは、どうでもいい事だと私は思います。でも、口は大きい方がいいかもしれませんね。一度に沢山美味しいものを口に入れられますから」
ただ、クロハがあまり大きな口で食事をすると怒るのだ。もちろん、人前ではおちょぼ口で食べているのに。誰もいない時くらい、好きに食べさせて欲しいものだわ!
次の瞬間、殿下が何を思ったのか、声を上げて笑ったのだ。一体どうしたのだろう。
「ヴィクトリア嬢と話をしていると、なんだか僕の悩みなんて、どうでもいい様に感じるよ。君の様な令嬢は初めてだ。確かに顔なんて、それぞれしっかり機能していれば、見た目なんてどうでもいいのだよね…それなのに僕は、この美しい顔にコンプレックスを持っていたのだよ。でも、なんだかそんな事すら、バカバカしくなってきた。かつて人形王子なんて呼ばれていたディーノ殿下が、君に出会って変わった理由がよくわかる」
ディーノ様は、他国でもそんな変な名前で呼ばれていたのね。
「あなた様のおっしゃっている事が、よくわかりませんが、悩みが解消されたのならよかったですわ。私はこれから、やらなければいけないことがございますので」
再びシッシッと殿下を追いやると、通信機と携帯用モニターを取り出したのだった。
854
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
離婚寸前で人生をやり直したら、冷徹だったはずの夫が私を溺愛し始めています
腐ったバナナ
恋愛
侯爵夫人セシルは、冷徹な夫アークライトとの愛のない契約結婚に疲れ果て、離婚を決意した矢先に孤独な死を迎えた。
「もしやり直せるなら、二度と愛のない人生は選ばない」
そう願って目覚めると、そこは結婚直前の18歳の自分だった!
今世こそ平穏な人生を歩もうとするセシルだったが、なぜか夫の「感情の色」が見えるようになった。
冷徹だと思っていた夫の無表情の下に、深い孤独と不器用で一途な愛が隠されていたことを知る。
彼の愛をすべて誤解していたと気づいたセシルは、今度こそ彼の愛を掴むと決意。積極的に寄り添い、感情をぶつけると――
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
【完結】見返りは、当然求めますわ
楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。
この国では、王太子が10歳の時に婚約者が二人選ばれ、そのうちの一人が正妃に、もう一人が側妃に決められるという時代錯誤の古いしきたりがある。その伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかしーー
「私の正妃は、アンナに決めたんだ。だから、これからは君たちに側妃の座を争ってほしい」
微笑ながら見つめ合う王太子と子爵令嬢。
正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。
※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))
婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね
ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。
失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。
【完結】レイハート公爵夫人の時戻し
風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。
そんな母が私宛に残していたものがあった。
青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。
一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。
父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。
十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。
けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。
殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる