次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi

文字の大きさ
18 / 66

第18話:カルロス様はどこにでも現れます

しおりを挟む
「皆、なんだかごめんなさい…」

「なんでルミナス様が謝るのですか?私たちこそ、その、婚約者様の姿をお腹を抱えて笑ってしまい、ごめんなさい」

「令嬢として有るまじき姿でしたわ…でも…」

思い出して笑いを必死に堪える令嬢たち。分かるわ、私も最初カルロス様のあの姿を見た時、笑いが止まらなかったもの。本人を目の前にして噴出したくらいだし…

それにしても、クラスメイト全員を笑いの渦に巻き込むだなんて、ある意味カルロス様は、笑いの天才かもしれない。

「あんな姿を見たら、笑うなという方が無理があるよ。それよりも、なんと言うか…ルミナス嬢も大変だな…」

「そうだよな、カルロス殿があんな人だっただなんて…」

なぜか一斉に皆が、私を可哀そうな子を見る様な目で見つめている。

「あの…カルロス様は皆様がご存じの通り、普段はとても真面目で、勉学も武術にも優れているとても素敵な人なのですよ。なぜか私の事になると、ああなってしまうと言うか。そうだわ!きっと私がカルロス様のファンの方に虐められない様に、あえてあのような姿を演じていらっしゃるのです。ですから、本当のカルロス様は…」

「ルミナス様はお優しいのですね。どう見ても演技には見えなかったですわ。演技であの顔が出来るのなら、ある意味凄いですが…」

「止めろ、アハハハハ、思い出してしまっただろう。ハハハハッハ」

再びクラス中が笑いに包まれた。

「よかったわね、ルミナス。クラスの皆も、皆あなた達の事を祝福してくれている様だし。それになんだかんだ言って、ルミナスもカルロス様の事を好きみたいじゃない」

私の元にやって来て、そんなふざけたことを言っているのは、マリーヌだ。私のどこがカルロス様の事を好きなのよ!

「私は別に、カルロス様の事なんて好きじゃないわよ!」

「あら、そうかしら?さっき必死にカルロス様の事を庇っていたじゃない。それってカルロス様の事を、悪く思われるのが嫌だったのでしょう?」

「そんなつもりで言ったのじゃないわよ。ただ、カルロス様の名誉の為に言っただけよ。もう、マリーヌったら。私、ちょっとトイレに行ってくるわ」

「もう、恥ずかしがっちゃって。1人で大丈夫?私も付いていこうか?」

「平気よ。それじゃあ行ってくるわ」

急いでトイレへと向かう。もう、マリーヌが変な事を言うから、なんだか変な気持ちになってしまったわ。私はカルロス様の事なんて、好きじゃないのだから!

その時だった。誰かに足を引っかけられたのだ。まずい、このままでは顔から思いっきり転ぶ!そう思った時だった。

「ルミタン!!!」

ん?この声は?

間一髪のところで、誰かに抱きとめられた。この感じ、それにさっきの声は…

やはり私を抱きとめてくれていたのは、カルロス様だった。

「ルミタン、大丈夫かい?おい、君、さっきわざと足を出したね。俺はしっかりこの目で見ていたぞ!」

「そんな、言いがかりです。たまたま私が足を延ばしたところに、ルミナス様が私の足を蹴飛ばして転びそうになったのですわ。そうです、私はルミナス様に足をけられた被害者ですわ」

「ほぅ、それじゃあもし君がわざと足を延ばしていたなら、それなりの罪を償ってもらうからな。ここにさっきの様子が録画されているんだよ。それじゃあ、確認しようか」

ニヤリと笑ったカルロス様。

「あ…あの…わざと足を延ばしました。ごめんなさい。でも、私はただ、カルロス様がお可哀そうだと思ったのです。ルミナス様と無理やり婚約させられて…」

「要するに、己の醜い嫉妬心から、罪もないルミタンに怪我をさせようとしたのだな。許せん!俺の可愛いルミタンに手を出すだなんて!いいか、もし次ルミタンに手を出したら、ただじゃおかないからな!ルミタン、大丈夫かい?怪我はないかい?」

今にも目で殺せそうなくらい殺気立ったカルロス様に怒られた令嬢は、その場で腰を抜かしてしまった。ただ、その後私の方を向いたカルロス様は、すっかり毒が抜けて、締まりのない顔をしていた。

そのギャップに、つい笑いそうになるのを必死に堪えた。

「カルロス様、助けて頂きありがとうございます。私は大丈夫ですわ。それよりも、よくこの場所が分かりましたね。ここは2年棟ですし…それに録画の件も…」

“録画は嘘だよ。ただの脅しだ。それから、俺はルミタンの危機にはどこにでも現れるよ。だから安心して欲しい。君は誰にも傷つけさせないから”

耳元でカルロス様が呟いた。

その言葉通り、私が令嬢たちに絡まれるたびにどこからともなく現れ、すぐに助けてくれるのだ。そして令嬢たちが腰を抜かすほど、恐ろしい顔で抗議をしてくれる。

そのお陰で私への嫌がらせも、1週間もすればたちまち無くなったのだった。


ちなみに…

あまりにもどこにでもカルロス様が現れるものだから、友人たちの間で、カルロス様は実は分身がいるのではないかと、密かに噂されていたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公爵家の妾腹の子ですが、義母となった公爵夫人が優しすぎます!

ましゅぺちーの
恋愛
リデルはヴォルシュタイン王国の名門貴族ベルクォーツ公爵の血を引いている。 しかし彼女は正妻の子ではなく愛人の子だった。 父は自分に無関心で母は父の寵愛を失ったことで荒れていた。 そんな中、母が亡くなりリデルは父公爵に引き取られ本邸へと行くことになる そこで出会ったのが父公爵の正妻であり、義母となった公爵夫人シルフィーラだった。 彼女は愛人の子だというのにリデルを冷遇することなく、母の愛というものを教えてくれた。 リデルは虐げられているシルフィーラを守り抜き、幸せにすることを決意する。 しかし本邸にはリデルの他にも父公爵の愛人の子がいて――? 「愛するお義母様を幸せにします!」 愛する義母を守るために奮闘するリデル。そうしているうちに腹違いの兄弟たちの、公爵の愛人だった実母の、そして父公爵の知られざる秘密が次々と明らかになって――!? ヒロインが愛する義母のために強く逞しい女となり、結果的には皆に愛されるようになる物語です! 完結まで執筆済みです! 小説家になろう様にも投稿しています。

愛人の子を寵愛する旦那様へ、多分その子貴方の子どもじゃありません。

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵家の令嬢だったシアには結婚して七年目になる夫がいる。 夫との間には娘が一人おり、傍から見れば幸せな家庭のように思えた。 が、しかし。 実際には彼女の夫である公爵は元メイドである愛人宅から帰らずシアを蔑ろにしていた。 彼女が頼れるのは実家と公爵邸にいる優しい使用人たちだけ。 ずっと耐えてきたシアだったが、ある日夫に娘の悪口を言われたことでとうとう堪忍袋の緒が切れて……! ついに虐げられたお飾りの妻による復讐が始まる―― 夫に報復をするために動く最中、愛人のまさかの事実が次々と判明して…!?

愛する夫にもう一つの家庭があったことを知ったのは、結婚して10年目のことでした

ましゅぺちーの
恋愛
王国の伯爵令嬢だったエミリアは長年の想い人である公爵令息オリバーと結婚した。 しかし、夫となったオリバーとの仲は冷え切っていた。 オリバーはエミリアを愛していない。 それでもエミリアは一途に夫を想い続けた。 子供も出来ないまま十年の年月が過ぎ、エミリアはオリバーにもう一つの家庭が存在していることを知ってしまう。 それをきっかけとして、エミリアはついにオリバーとの離婚を決意する。 オリバーと離婚したエミリアは第二の人生を歩み始める。 一方、最愛の愛人とその子供を公爵家に迎え入れたオリバーは後悔に苛まれていた……。

愛されなかった公爵令嬢のやり直し

ましゅぺちーの
恋愛
オルレリアン王国の公爵令嬢セシリアは、誰からも愛されていなかった。 母は幼い頃に亡くなり、父である公爵には無視され、王宮の使用人達には憐れみの眼差しを向けられる。 婚約者であった王太子と結婚するが夫となった王太子には冷遇されていた。 そんなある日、セシリアは王太子が寵愛する愛妾を害したと疑われてしまう。 どうせ処刑されるならと、セシリアは王宮のバルコニーから身を投げる。 死ぬ寸前のセシリアは思う。 「一度でいいから誰かに愛されたかった。」と。 目が覚めた時、セシリアは12歳の頃に時間が巻き戻っていた。 セシリアは決意する。 「自分の幸せは自分でつかみ取る!」 幸せになるために奔走するセシリア。 だがそれと同時に父である公爵の、婚約者である王太子の、王太子の愛妾であった男爵令嬢の、驚くべき真実が次々と明らかになっていく。 小説家になろう様にも投稿しています。 タイトル変更しました!大幅改稿のため、一部非公開にしております。

悪女役らしく離婚を迫ろうとしたのに、夫の反応がおかしい

廻り
恋愛
第18回恋愛小説大賞にて奨励賞をいただきました。応援してくださりありがとうございました!  王太子妃シャルロット20歳は、前世の記憶が蘇る。  ここは小説の世界で、シャルロットは王太子とヒロインの恋路を邪魔する『悪女役』。 『断罪される運命』から逃れたいが、夫は離婚に応じる気がない。  ならばと、シャルロットは別居を始める。 『夫が離婚に応じたくなる計画』を思いついたシャルロットは、それを実行することに。  夫がヒロインと出会うまで、タイムリミットは一年。  それまでに離婚に応じさせたいシャルロットと、なぜか様子がおかしい夫の話。

身代わりの公爵家の花嫁は翌日から溺愛される。~初日を挽回し、溺愛させてくれ!~

湯川仁美
恋愛
姉の身代わりに公爵夫人になった。 「貴様と寝食を共にする気はない!俺に呼ばれるまでは、俺の前に姿を見せるな。声を聞かせるな」 夫と初対面の日、家族から男癖の悪い醜悪女と流され。 公爵である夫とから啖呵を切られたが。 翌日には誤解だと気づいた公爵は花嫁に好意を持ち、挽回活動を開始。 地獄の番人こと閻魔大王(善悪を判断する審判)と異名をもつ公爵は、影でプレゼントを贈り。話しかけるが、謝れない。 「愛しの妻。大切な妻。可愛い妻」とは言えない。 一度、言った言葉を撤回するのは難しい。 そして妻は普通の令嬢とは違い、媚びず、ビクビク怯えもせず普通に接してくれる。 徐々に距離を詰めていきましょう。 全力で真摯に接し、謝罪を行い、ラブラブに到着するコメディ。 第二章から口説きまくり。 第四章で完結です。 第五章に番外編を追加しました。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

処理中です...