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第1話:ぐうたらな日々万歳
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「お嬢様、またその様なだらしのない格好をされてベッドに寝転がって。あなた様は伯爵令嬢でございますのよ。しゃきっとしてくださいませ」
天気の良い昼下がり、ゆったりめのズボンとダボダボな上着を着て、ベッドに横になっている私に、専属メイドのマリアンが怒っている。
「マリアン、あまり怒ると皺が増えるわよ。私はこの格好が好きなの。締め付けもなくて動きやすくて快適よ。マリアンも一度来てみたらどう?」
「誰のせいで皺が増えると思っていらっしゃるのですか?そもそも、そのようなだらしのない衣装、平民でも着ませんわ。一体どこからそんな衣装を入手したのだか…」
はぁっとため息をつくマレリアン。
「この衣装はね、私が開発したの。肌の着け心地はもちろん、どんなデザインなら苦しくないか、開発を重ねた結果、生み出された服なのよ」
「その様な開発はしなくてもよろしいのです。それよりもお嬢様は今年、16歳になられるのですよ。世の貴族令嬢たちの多くは、社交界に積極的に参加されていらっしゃいます。そして素敵な殿方を見つけられていらっしゃるのですよ。お嬢様もいつまでも屋敷に引きこもっていらっしゃらずに、社交界に参加してみてはいかがですか?」
「社交界なんて嫌よ。見栄の張り合いの令嬢たちが、マウント合戦を繰り広げているだけですもの。そもそも私、貴族って嫌いなのよね」
やれどこどこでドレスを新調しただの、この宝石が素敵だの、全く興味のない話で盛り上がる令嬢たち。本当に令嬢とは、面倒な生き物だ。
「お嬢様、貴族令嬢にとって、唯一のお仕事は社交界に出る事です。そして素敵な殿方を見つけ、結婚する事ですわ。姉君のレーラお嬢様も、社交界で素敵な殿方を見つけられ、結婚されたのですよ。お嬢様も、いつまでもぐうたらしていてはいけません」
「マリアン、何度も言っているでしょう?私は殿方とは結婚しないと。お兄様が伯爵家を継ぐタイミングでこの屋敷を出て、王都に家を借り悠々自適に暮らすと。その為のお金だって、しっかり準備をしているのだから。そうだわ、マリアンも私のお屋敷に住まわせてあげるわ」
「またその様な事をおっしゃって!大体お嬢様は…」
「マリアン、レイリスに何を行っても無駄よ…この子は一体誰に似たのか、あり得ない程の頭脳を持っているにもかかわらず、ぐうたらで楽をする事しか考えていないのだから…もうこの子には、諦めているわ。それにレイリスのお陰で、我が領地は今、かなり裕福になったのだし…」
いつの間にか現れたお母様が、ため息をついている。
実は我がモーレンス伯爵領は、3年ほど前までは非常に治安が悪く、領民たちも飢えと貧困に苦しんでいたのだ。このままでは伯爵家自体の財政も危ないというところまで追い詰められていた。
このままでは贅沢な暮らしが出来ないと考えた私は、13歳という若さで伯爵領を立て直した。
とはいえ、私がやった事は、そんなに大したことではない。我が領地は寒い地域の特性を利用した作物を育て、さらに加工する事にしただけだ。
加工工場を作った事で、今まで働き口がなかった若者の雇用を生み、さらに腕っぷしに自信がある悪党どもを勧誘し、自衛団を結成した。自衛団に領地の治安を任せた結果、格段に治安もよくなったのだ。
そして私が作った加工工場が軌道に乗り、さらに雇用も促進。今ではこの国でもそれなりに裕福な領地になったのだ。
そんな私の働きが認められ、領地の税収の5%が私の懐に入って来る。この収入があれば、一生遊んで暮らせる。
だから両親もお兄様も、私に社交界に出ろだの、結婚しろだのとやかく言わないのだ。ただ、子供の頃から私の世話をしてくれているマレアンだけが、未だにうるさく言ってくるのだが…
「マリアン、お母様もそう言っているのだから、いいじゃない。私、少し昼寝をするから、少し静かにしてくれるかしら?」
大きな口を開けてあくびをすると、ゆっくり瞼を閉じた。
~あとがき~
新連載を始めました。
よろしくお願いいたします。
天気の良い昼下がり、ゆったりめのズボンとダボダボな上着を着て、ベッドに横になっている私に、専属メイドのマリアンが怒っている。
「マリアン、あまり怒ると皺が増えるわよ。私はこの格好が好きなの。締め付けもなくて動きやすくて快適よ。マリアンも一度来てみたらどう?」
「誰のせいで皺が増えると思っていらっしゃるのですか?そもそも、そのようなだらしのない衣装、平民でも着ませんわ。一体どこからそんな衣装を入手したのだか…」
はぁっとため息をつくマレリアン。
「この衣装はね、私が開発したの。肌の着け心地はもちろん、どんなデザインなら苦しくないか、開発を重ねた結果、生み出された服なのよ」
「その様な開発はしなくてもよろしいのです。それよりもお嬢様は今年、16歳になられるのですよ。世の貴族令嬢たちの多くは、社交界に積極的に参加されていらっしゃいます。そして素敵な殿方を見つけられていらっしゃるのですよ。お嬢様もいつまでも屋敷に引きこもっていらっしゃらずに、社交界に参加してみてはいかがですか?」
「社交界なんて嫌よ。見栄の張り合いの令嬢たちが、マウント合戦を繰り広げているだけですもの。そもそも私、貴族って嫌いなのよね」
やれどこどこでドレスを新調しただの、この宝石が素敵だの、全く興味のない話で盛り上がる令嬢たち。本当に令嬢とは、面倒な生き物だ。
「お嬢様、貴族令嬢にとって、唯一のお仕事は社交界に出る事です。そして素敵な殿方を見つけ、結婚する事ですわ。姉君のレーラお嬢様も、社交界で素敵な殿方を見つけられ、結婚されたのですよ。お嬢様も、いつまでもぐうたらしていてはいけません」
「マリアン、何度も言っているでしょう?私は殿方とは結婚しないと。お兄様が伯爵家を継ぐタイミングでこの屋敷を出て、王都に家を借り悠々自適に暮らすと。その為のお金だって、しっかり準備をしているのだから。そうだわ、マリアンも私のお屋敷に住まわせてあげるわ」
「またその様な事をおっしゃって!大体お嬢様は…」
「マリアン、レイリスに何を行っても無駄よ…この子は一体誰に似たのか、あり得ない程の頭脳を持っているにもかかわらず、ぐうたらで楽をする事しか考えていないのだから…もうこの子には、諦めているわ。それにレイリスのお陰で、我が領地は今、かなり裕福になったのだし…」
いつの間にか現れたお母様が、ため息をついている。
実は我がモーレンス伯爵領は、3年ほど前までは非常に治安が悪く、領民たちも飢えと貧困に苦しんでいたのだ。このままでは伯爵家自体の財政も危ないというところまで追い詰められていた。
このままでは贅沢な暮らしが出来ないと考えた私は、13歳という若さで伯爵領を立て直した。
とはいえ、私がやった事は、そんなに大したことではない。我が領地は寒い地域の特性を利用した作物を育て、さらに加工する事にしただけだ。
加工工場を作った事で、今まで働き口がなかった若者の雇用を生み、さらに腕っぷしに自信がある悪党どもを勧誘し、自衛団を結成した。自衛団に領地の治安を任せた結果、格段に治安もよくなったのだ。
そして私が作った加工工場が軌道に乗り、さらに雇用も促進。今ではこの国でもそれなりに裕福な領地になったのだ。
そんな私の働きが認められ、領地の税収の5%が私の懐に入って来る。この収入があれば、一生遊んで暮らせる。
だから両親もお兄様も、私に社交界に出ろだの、結婚しろだのとやかく言わないのだ。ただ、子供の頃から私の世話をしてくれているマレアンだけが、未だにうるさく言ってくるのだが…
「マリアン、お母様もそう言っているのだから、いいじゃない。私、少し昼寝をするから、少し静かにしてくれるかしら?」
大きな口を開けてあくびをすると、ゆっくり瞼を閉じた。
~あとがき~
新連載を始めました。
よろしくお願いいたします。
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