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第6話:思い出したわ
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「体が弱いのか。それは大変だ。そういえば顔色もあまり良くないね。このままこの会場に置いておく訳にはいかない。公爵家でゆっくり休むといい」
何を思ったのか、あの男が私を抱きかかえて歩き出したのだ。
ちょっと、私の大切なお料理が、どんどん遠ざかっているかない!何なのよ、この男。どこまで私の邪魔をすれば気が済むの?
「サフィーロン公爵令息殿、私を心配してくださレアりがとうございます。ですが、これ以上ご迷惑をおかけする訳にはいきません。今日は伯爵家に帰りますわ」
料理を堪能してから帰りたいが、致し方ない。本当はこんな男の腕からさっさと抜け出して帰りたいところなのだが、なぜか抜け出せないのだ。
こんなどこにでもいる男の腕から抜け出せないだなんて、屈辱以外何物でもない。こんな男の2倍はあろうという大男ですら、なぎ倒してきた私が!これが公爵令息の力なの?
私もまだまだだわ。もっともっと体を鍛え上げないと。こんな男に負けるだなんて、一生の不覚…
「イリ、いつまでそんな演技をしているつもりだい?そうか…イリはまだ僕の正体が分かっていないのだね」
公爵家の屋敷に入り、立派な部屋に降ろされた私。そして再び訳の分からない事を言っているこの男。
ただ、どうしてこの男が“イリ”という名前を知っているのかしら?以前王都の街に足を運んでいた時、私はイリと言う名前で行動をしていた。
そういえばあの時、一緒に行動していた少年がいたわね。確か名前は…
「レア…」
ポツリと呟いた。すると、男がポロポロと涙を流しだしたのだ。男がビービー泣くだなんて、みっともないわね。ただ、なぜか私の手を握っている。すっと手を引こうとしたのだが、一緒に男の手まで付いてくるのだ。
何なのよ、こいつは!
「イリ、僕の事を思い出してくれたのだね。嬉しいよ…僕はあの日からずっと、君の事を探していたのだよ」
「レア?あなた本当にレアなの?だってあなた、とても小汚い…失礼、汚れた服をいていたじゃない。髪の色だって、茶色だったし…」
「あれは変装していたのだよ。公爵令息として僕が街にいたら、色々と問題だろう?イリ、あの時の言葉を覚えているかい?」
「あの時の言葉ですって?私、何か言ったかしら?」
「ああ、言ったよ。僕がイリと結婚したいと言った時、君はこう言ったよね。“私よりも強くなったら、考えてあげてもいいわ。”と。だから僕は、必死に稽古を重ねて強くなったのだよ。イリに早く会いたくて、必死に探したのだから」
「私、そんな事言った覚えは…あっ…」
なぜか私はあの当時、レアと言う少年にかなり気に入られていた。毎日のように私に会いに来て、そして“僕のお嫁さんになって欲しい”とい言っていたのだ。当時は私よりも弱く、背も低くて軟弱だったレア。正直手のかかる弟くらいにしか思っていなかった。
ただ、あまりにも目を輝かせて結婚して欲しいと言ってくるから、私も調子に乗ってあんな事を言ってしまったのだったわ。
「まさかあの言葉を真に受けて、ずっと私を探していらしたのですか?」
「ああ、そうだよ。約束通り、僕と結婚してくれるよね?」
満面の笑みで、そんなふざけたことを抜かしている。私が結婚ですって?それも天下の大貴族、サフィーロン公爵家の令息と?
冗談じゃないわ。こんな男と結婚したら、好き勝手出来ないじゃない。面倒な社交界にも参加しないといけないし。それに何よりも、今以上に目立ってしまう。ここは1つ、演技をうとう。
「あの…私あの後、大病を患ってしまいまして…申し訳ございませんが、とても殿方と結婚する事など出来ませんわ…私ではなく、どうかもっと丈夫な令嬢と結婚してください」
目に涙をたっぷり浮かべ、上目使いで訴える。大体こういえば、男どもは引き下がるのだ。
何を思ったのか、あの男が私を抱きかかえて歩き出したのだ。
ちょっと、私の大切なお料理が、どんどん遠ざかっているかない!何なのよ、この男。どこまで私の邪魔をすれば気が済むの?
「サフィーロン公爵令息殿、私を心配してくださレアりがとうございます。ですが、これ以上ご迷惑をおかけする訳にはいきません。今日は伯爵家に帰りますわ」
料理を堪能してから帰りたいが、致し方ない。本当はこんな男の腕からさっさと抜け出して帰りたいところなのだが、なぜか抜け出せないのだ。
こんなどこにでもいる男の腕から抜け出せないだなんて、屈辱以外何物でもない。こんな男の2倍はあろうという大男ですら、なぎ倒してきた私が!これが公爵令息の力なの?
私もまだまだだわ。もっともっと体を鍛え上げないと。こんな男に負けるだなんて、一生の不覚…
「イリ、いつまでそんな演技をしているつもりだい?そうか…イリはまだ僕の正体が分かっていないのだね」
公爵家の屋敷に入り、立派な部屋に降ろされた私。そして再び訳の分からない事を言っているこの男。
ただ、どうしてこの男が“イリ”という名前を知っているのかしら?以前王都の街に足を運んでいた時、私はイリと言う名前で行動をしていた。
そういえばあの時、一緒に行動していた少年がいたわね。確か名前は…
「レア…」
ポツリと呟いた。すると、男がポロポロと涙を流しだしたのだ。男がビービー泣くだなんて、みっともないわね。ただ、なぜか私の手を握っている。すっと手を引こうとしたのだが、一緒に男の手まで付いてくるのだ。
何なのよ、こいつは!
「イリ、僕の事を思い出してくれたのだね。嬉しいよ…僕はあの日からずっと、君の事を探していたのだよ」
「レア?あなた本当にレアなの?だってあなた、とても小汚い…失礼、汚れた服をいていたじゃない。髪の色だって、茶色だったし…」
「あれは変装していたのだよ。公爵令息として僕が街にいたら、色々と問題だろう?イリ、あの時の言葉を覚えているかい?」
「あの時の言葉ですって?私、何か言ったかしら?」
「ああ、言ったよ。僕がイリと結婚したいと言った時、君はこう言ったよね。“私よりも強くなったら、考えてあげてもいいわ。”と。だから僕は、必死に稽古を重ねて強くなったのだよ。イリに早く会いたくて、必死に探したのだから」
「私、そんな事言った覚えは…あっ…」
なぜか私はあの当時、レアと言う少年にかなり気に入られていた。毎日のように私に会いに来て、そして“僕のお嫁さんになって欲しい”とい言っていたのだ。当時は私よりも弱く、背も低くて軟弱だったレア。正直手のかかる弟くらいにしか思っていなかった。
ただ、あまりにも目を輝かせて結婚して欲しいと言ってくるから、私も調子に乗ってあんな事を言ってしまったのだったわ。
「まさかあの言葉を真に受けて、ずっと私を探していらしたのですか?」
「ああ、そうだよ。約束通り、僕と結婚してくれるよね?」
満面の笑みで、そんなふざけたことを抜かしている。私が結婚ですって?それも天下の大貴族、サフィーロン公爵家の令息と?
冗談じゃないわ。こんな男と結婚したら、好き勝手出来ないじゃない。面倒な社交界にも参加しないといけないし。それに何よりも、今以上に目立ってしまう。ここは1つ、演技をうとう。
「あの…私あの後、大病を患ってしまいまして…申し訳ございませんが、とても殿方と結婚する事など出来ませんわ…私ではなく、どうかもっと丈夫な令嬢と結婚してください」
目に涙をたっぷり浮かべ、上目使いで訴える。大体こういえば、男どもは引き下がるのだ。
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