19 / 47
第19話:中々やるわね
しおりを挟む
翌日、朝から稽古をしようとしたのだが、昨日コテンパンにやりすぎたせいか、護衛たちは私の顔を見るなり皆逃げて行った。伯爵家の人間を守るのが彼らの仕事なのに、私を見て怯えて逃げていくだなんて、本当に情けない。
「お嬢様、どうか護衛虐めはお止め下さい!お嬢様は誰よりもお強いのですから」
朝からマリアンに怒られてしまった。
「どうして私が怒られないといけないのよ。そもそも、こんな弱い護衛を雇っているお父様が悪いのよ。すぐにお父様に言って、もっと強い護衛を…」
「お嬢様、お取込み中失礼いたします。サフィーロン公爵令息殿がお見えです」
「何ですって?こんなに朝早くにレアが来たですって?なんて非常識な男なの?」
「お言葉ですがお嬢様、既に朝の10時を過ぎております。サフィーロン公爵令息殿が非常識なのではなく、お嬢様の感覚がおかしいのです」
すかさず私に反論するマリアン。今日は無性に腹が立つから、あの男を追いかえして…いいえ、せっかくだからあの男の実力を見てやろうじゃない。
「お嬢様、悪い事を考えているお顔をなされておりますね。どうかこれ以上旦那様や奥様、若旦那様や若奥様の心臓に負担がかかる様なことはお控えください。特に今、若奥様はご懐妊中なのですから」
「マリアン、あなたは何を言っているの?私がいつお父様たちに負担をかけたというのよ。本当に失礼ね。それよりもレアが来ているのでしょう。ちょっと会って来るわ」
「お待ちください、お嬢様。そのだらしのない格好で公爵令息殿に会われるおつもりではありませんよね?」
「もちろんこの格好で会うわよ。これが一番動きやすいのよ」
「いけません。すぐにドレスにお着替えを…お嬢様!!!」
うるさいマリアンを無視し、そのまま部屋を出た。ドレスを着飾った私を求めているのだったら、そんな男こっちから願い下げだ。この格好が嫌なら、早々に帰ってもらえばいい。
そう思い、レアの元に向かうと…
「おはよう、レイリス。今日もとても可愛いね。それが噂に聞く、君が開発した服だね。そういえば街に出ていた時も、そんな恰好をしていたよね。よく似合っているよ」
嬉しそうな顔のレアが、私に抱き着いて来たのだ。だから何なのよ、この男は!必死にもがくが、全く動かない。ただその瞬間、体中に激痛が走った。
「痛い!」
「大丈夫かい?すまない、君に会えた嬉しさから、つい力が入りすぎてしまったようだ。さあ、お茶にしよう。昨日君が食べたそうにしていたお菓子を持ってきたよ。他にもたくさんあるから、いっぱい食べてね」
私を抱きかかえたレアが、そのままソファに座らせた。
一体どうしたのかしら?まだ体が痛いわ。ただ、なぜかこの男に触れると、痛みが和らぐ気がする。
「大丈夫かい?体の調子でも悪いのかい?」
心配そうな顔でレアが話しかけてくる。いけない、しっかりしないと。
「いいえ、何でもないわ。それよりもお菓子を持ってきてくれたのだったわね。早速頂くわ」
目の前には昨日食べ損ねたフワフワの柔らかそうなお菓子が。そうよ、私はこれが食べたかったのだわ。早速1口食べる。
これは!
「なんて美味しいお菓子なの。口に入れた瞬間、甘みが口いっぱいに広がったと思ったら、スッと消えて行ったわ。こんなお菓子、初めてだわ」
お父様が言っていた通り、いいえ、それ以上に美味しいお菓子だわ。それこそ、想像を絶する味だ。これは一体どうやって作っているのかしら?こんな美味しいお菓子がこの世に存在しているだなんて。早速このお菓子を徹底的に研究して、我が家でも食べられる様にしないと!
「レイリスが喜んでくれて、よかったよ。次はこれを食べてみて。料理長新作お菓子で、まだ一度も夜会などで出した事のないものなんだ。ぜひレイリスに食べて欲しくてね」
今度は別のお菓子を手渡してきたレア。これは砂糖菓子?それにしては、とても美しいわ。
レアが渡してきたのは、光の加減で色が変わる不思議なお菓子なのだ。見た感じ砂糖菓子の様に見えるのだが。
早速口に入れた。噛んだ触感は砂糖菓子の様だ。でも…
「えっ?何なのこれは。触感は砂糖菓子だったのに、中から温かくて甘い液が出てきたわ。この液、美味しすぎない?それに外のサクサク菓子との相性も抜群だし。これは本当にこの世に存在するお菓子なの?」
さっきのフワフワなお菓子も神的に美味しかったが、このお菓子はそれを上回る美味しさだ。この様なお菓子が、この世に存在するだなんて。
「レイリス、僕と結婚すれば、珍しいお菓子が沢山食べられるよ。我が家には料理長が3人いて、お菓子に特化した者、食事に特化した者、他国の料理を研究し、珍しい料理を作ってくれる者がいるのだよ。食べる事が好きな君にも、魅力的な話だろう?」
「料理長が3人いるですって?」
さすが天下のサフィーロン公爵家だわ。要するに私を食べ物で釣る作戦なのね。でも、そう簡単に釣られるものですか。
「お嬢様、どうか護衛虐めはお止め下さい!お嬢様は誰よりもお強いのですから」
朝からマリアンに怒られてしまった。
「どうして私が怒られないといけないのよ。そもそも、こんな弱い護衛を雇っているお父様が悪いのよ。すぐにお父様に言って、もっと強い護衛を…」
「お嬢様、お取込み中失礼いたします。サフィーロン公爵令息殿がお見えです」
「何ですって?こんなに朝早くにレアが来たですって?なんて非常識な男なの?」
「お言葉ですがお嬢様、既に朝の10時を過ぎております。サフィーロン公爵令息殿が非常識なのではなく、お嬢様の感覚がおかしいのです」
すかさず私に反論するマリアン。今日は無性に腹が立つから、あの男を追いかえして…いいえ、せっかくだからあの男の実力を見てやろうじゃない。
「お嬢様、悪い事を考えているお顔をなされておりますね。どうかこれ以上旦那様や奥様、若旦那様や若奥様の心臓に負担がかかる様なことはお控えください。特に今、若奥様はご懐妊中なのですから」
「マリアン、あなたは何を言っているの?私がいつお父様たちに負担をかけたというのよ。本当に失礼ね。それよりもレアが来ているのでしょう。ちょっと会って来るわ」
「お待ちください、お嬢様。そのだらしのない格好で公爵令息殿に会われるおつもりではありませんよね?」
「もちろんこの格好で会うわよ。これが一番動きやすいのよ」
「いけません。すぐにドレスにお着替えを…お嬢様!!!」
うるさいマリアンを無視し、そのまま部屋を出た。ドレスを着飾った私を求めているのだったら、そんな男こっちから願い下げだ。この格好が嫌なら、早々に帰ってもらえばいい。
そう思い、レアの元に向かうと…
「おはよう、レイリス。今日もとても可愛いね。それが噂に聞く、君が開発した服だね。そういえば街に出ていた時も、そんな恰好をしていたよね。よく似合っているよ」
嬉しそうな顔のレアが、私に抱き着いて来たのだ。だから何なのよ、この男は!必死にもがくが、全く動かない。ただその瞬間、体中に激痛が走った。
「痛い!」
「大丈夫かい?すまない、君に会えた嬉しさから、つい力が入りすぎてしまったようだ。さあ、お茶にしよう。昨日君が食べたそうにしていたお菓子を持ってきたよ。他にもたくさんあるから、いっぱい食べてね」
私を抱きかかえたレアが、そのままソファに座らせた。
一体どうしたのかしら?まだ体が痛いわ。ただ、なぜかこの男に触れると、痛みが和らぐ気がする。
「大丈夫かい?体の調子でも悪いのかい?」
心配そうな顔でレアが話しかけてくる。いけない、しっかりしないと。
「いいえ、何でもないわ。それよりもお菓子を持ってきてくれたのだったわね。早速頂くわ」
目の前には昨日食べ損ねたフワフワの柔らかそうなお菓子が。そうよ、私はこれが食べたかったのだわ。早速1口食べる。
これは!
「なんて美味しいお菓子なの。口に入れた瞬間、甘みが口いっぱいに広がったと思ったら、スッと消えて行ったわ。こんなお菓子、初めてだわ」
お父様が言っていた通り、いいえ、それ以上に美味しいお菓子だわ。それこそ、想像を絶する味だ。これは一体どうやって作っているのかしら?こんな美味しいお菓子がこの世に存在しているだなんて。早速このお菓子を徹底的に研究して、我が家でも食べられる様にしないと!
「レイリスが喜んでくれて、よかったよ。次はこれを食べてみて。料理長新作お菓子で、まだ一度も夜会などで出した事のないものなんだ。ぜひレイリスに食べて欲しくてね」
今度は別のお菓子を手渡してきたレア。これは砂糖菓子?それにしては、とても美しいわ。
レアが渡してきたのは、光の加減で色が変わる不思議なお菓子なのだ。見た感じ砂糖菓子の様に見えるのだが。
早速口に入れた。噛んだ触感は砂糖菓子の様だ。でも…
「えっ?何なのこれは。触感は砂糖菓子だったのに、中から温かくて甘い液が出てきたわ。この液、美味しすぎない?それに外のサクサク菓子との相性も抜群だし。これは本当にこの世に存在するお菓子なの?」
さっきのフワフワなお菓子も神的に美味しかったが、このお菓子はそれを上回る美味しさだ。この様なお菓子が、この世に存在するだなんて。
「レイリス、僕と結婚すれば、珍しいお菓子が沢山食べられるよ。我が家には料理長が3人いて、お菓子に特化した者、食事に特化した者、他国の料理を研究し、珍しい料理を作ってくれる者がいるのだよ。食べる事が好きな君にも、魅力的な話だろう?」
「料理長が3人いるですって?」
さすが天下のサフィーロン公爵家だわ。要するに私を食べ物で釣る作戦なのね。でも、そう簡単に釣られるものですか。
619
あなたにおすすめの小説
ドレスが似合わないと言われて婚約解消したら、いつの間にか殿下に囲われていた件
ぽぽよ
恋愛
似合わないドレスばかりを送りつけてくる婚約者に嫌気がさした令嬢シンシアは、婚約を解消し、ドレスを捨てて男装の道を選んだ。
スラックス姿で生きる彼女は、以前よりも自然体で、王宮でも次第に評価を上げていく。
しかしその裏で、爽やかな笑顔を張り付けた王太子が、密かにシンシアへの執着を深めていた。
一方のシンシアは極度の鈍感で、王太子の好意をすべて「親切」「仕事」と受け取ってしまう。
「一生お仕えします」という言葉の意味を、まったく違う方向で受け取った二人。
これは、男装令嬢と爽やか策士王太子による、勘違いから始まる婚約(包囲)物語。
婚約破棄された地味伯爵令嬢は、隠れ錬金術師でした~追放された辺境でスローライフを始めたら、隣国の冷徹魔導公爵に溺愛されて最強です~
ふわふわ
恋愛
地味で目立たない伯爵令嬢・エルカミーノは、王太子カイロンとの政略婚約を強いられていた。
しかし、転生聖女ソルスティスに心を奪われたカイロンは、公開の舞踏会で婚約破棄を宣言。「地味でお前は不要!」と嘲笑う。
周囲から「悪役令嬢」の烙印を押され、辺境追放を言い渡されたエルカミーノ。
だが内心では「やったー! これで自由!」と大喜び。
実は彼女は前世の記憶を持つ天才錬金術師で、希少素材ゼロで最強ポーションを作れるチート級の才能を隠していたのだ。
追放先の辺境で、忠実なメイド・セシルと共に薬草園を開き、のんびりスローライフを始めるエルカミーノ。
作ったポーションが村人を救い、次第に評判が広がっていく。
そんな中、隣国から視察に来た冷徹で美麗な魔導公爵・ラクティスが、エルカミーノの才能に一目惚れ(?)。
「君の錬金術は国宝級だ。僕の国へ来ないか?」とスカウトし、腹黒ながらエルカミーノにだけ甘々溺愛モード全開に!
一方、王都ではソルスティスの聖魔法が効かず魔瘴病が流行。
エルカミーノのポーションなしでは国が危機に陥り、カイロンとソルスティスは後悔の渦へ……。
公開土下座、聖女の暴走と転生者バレ、国際的な陰謀……
さまざまな試練をラクティスの守護と溺愛で乗り越え、エルカミーノは大陸の救済者となり、幸せな結婚へ!
**婚約破棄ざまぁ×隠れチート錬金術×辺境スローライフ×冷徹公爵の甘々溺愛**
胸キュン&スカッと満載の異世界ファンタジー、全32話完結!
不愛想な婚約者のメガネをこっそりかけたら
柳葉うら
恋愛
男爵令嬢のアダリーシアは、婚約者で伯爵家の令息のエディングと上手くいっていない。ある日、エディングに会いに行ったアダリーシアは、エディングが置いていったメガネを出来心でかけてみることに。そんなアダリーシアの姿を見たエディングは――。
「か・わ・い・い~っ!!」
これまでの態度から一変して、アダリーシアのギャップにメロメロになるのだった。
出来心でメガネをかけたヒロインのギャップに、本当は溺愛しているのに不器用であるがゆえにぶっきらぼうに接してしまったヒーローがノックアウトされるお話。
大好きな婚約者に「距離を置こう」と言われました
ミズメ
恋愛
感情表現が乏しいせいで""氷鉄令嬢""と呼ばれている侯爵令嬢のフェリシアは、婚約者のアーサー殿下に唐突に距離を置くことを告げられる。
これは婚約破棄の危機――そう思ったフェリシアは色々と自分磨きに励むけれど、なぜだか上手くいかない。
とある夜会で、アーサーの隣に見知らぬ金髪の令嬢がいたという話を聞いてしまって……!?
重すぎる愛が故に婚約者に接近することができないアーサーと、なんとしても距離を縮めたいフェリシアの接近禁止の婚約騒動。
○カクヨム、小説家になろうさまにも掲載/全部書き終えてます
わたしとの約束を守るために留学をしていた幼馴染が、知らない女性を連れて戻ってきました
柚木ゆず
恋愛
「リュクレースを世界の誰よりも幸せにするって約束を果たすには、もっと箔をつけないといけない。そのために俺、留学することにしたんだ」
名門と呼ばれている学院に入学して優秀な成績を収め、生徒会長に就任する。わたしの婚約者であるナズアリエ伯爵家の嫡男ラウルは、その2つの目標を実現するため2年前に隣国に渡りました。
そんなラウルは長期休みになっても帰国しないほど熱心に勉学に励み、成績は常に学年1位をキープ。そういった部分が評価されてついに、一番の目標だった生徒会長への就任という快挙を成し遂げたのでした。
《リュクレース、ついにやったよ! 家への報告も兼ねて2週間後に一旦帰国するから、その時に会おうね!!》
ラウルから送られてきた手紙にはそういったことが記されていて、手紙を受け取った日からずっと再会を楽しみにしていました。
でも――。
およそ2年ぶりに帰ってきたラウルは終始上から目線で振る舞うようになっていて、しかも見ず知らずの女性と一緒だったのです。
そういった別人のような態度と、予想外の事態に困惑していると――。そんなわたしに対して彼は、平然とこんなことを言い放ったのでした。
「この間はああ言っていたけど、リュクレースと結んでいる婚約は解消する。こちらにいらっしゃるマリレーヌ様が、俺の新たな婚約者だ」
※8月5日に追記させていただきました。
少なくとも今週末まではできるだけ安静にした方がいいとのことで、しばらくしっかりとしたお礼(お返事)ができないため感想欄を閉じさせていただいております。
【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。
はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。
周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。
婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。
ただ、美しいのはその見た目だけ。
心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。
本来の私の姿で……
前編、中編、後編の短編です。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる