余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
3 / 46

第3話:優しさが身に染みる

しおりを挟む
 長い足でスタスタと歩き出したラファエル様。こんな風に男性に抱っこされたのは、初めてだ。

「ラファエル様、万が一誰かに見られて、あなた様の評判が下がっては大変です。どうか降ろしてください。私は大丈夫ですので」

 真っすぐ彼を見つめ、必死に訴えた。すると

「…分かりました。ですが公爵家までは送らせてください。あなた様が心配なのです」

「ありがとうございます。それでは、よろしくお願いします」

 お優しいラファエル様、彼の優しさが身に染みる。

 その時だった。

「セイラ、ラファエルといたのだね。探したよ、今日のお茶の時間だ。さあ、行こう」

 やって来たのは、ロイド様だ。いつも通り無表情のロイド様、ミーア様といた時の嬉しそうな顔とはあまりにもかけ離れている表情に、なんだか胸が締め付けられる。

 私たちは婚約者として、1日1時間、2人でお茶をする事が義務付けられている。たいして話が弾むわけではないのに、ロイド様は毎日律儀にこのルールを守っているのだ。

「ロイド様、申し訳ございません。今日は体調がすぐれないので、お屋敷に帰らせていただきますわ。ですからどうか、私の事は気にしないで下さい」

「ロイド殿下、セイラ嬢の体調がすぐれない様ですので、私が彼女を屋敷までお送りして参ります。ですので殿下は、公務にお戻りください。さあ、セイラ嬢、参りましょうか」

「はい、ラファエル様、色々とご迷惑をおかけして申し訳ございませんが、よろしくお願いいたします」

 きっと律儀なロイド様の事だ、婚約者として私を屋敷まで送らなければいけないと、考えてしまうだろう。それを察したラファエル様が、自ら私を送る役を買って出てくれたのだ。

 ロイド様の負担を減らすために。さすがラファエル様ね。

「待ってくれ、セイラは僕が…」

「ラファエル様が送って下さるとおっしゃって下さっているので、ロイド様はどうか公務にお戻りください。ラファエル様、参りましょう」

 ふらつく体を必死に奮い立たせ、ラファエル様に笑顔を向けた。

「殿下、私めがしっかりと送り届けますから、どうかご安心を」

 すっと私の手を取り、ゆっくり歩きだしたラファエル様。

 “セイラ嬢、辛そうですね。やはり抱っこして馬車まで行きましょうか?”

 “いいえ、大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます”

 ラファエル様に支えられながら、なんとか馬車に乗り込んだ。座っている事も辛い。

「セイラ嬢、どうか私の方に体を預けて下さい。座っているのも辛いのでしょう?」

「ありがとうございます、ラファエル様は、本当にお優しいのですね」

「…私は優しく何てありませんよ。好きな女性が苦しんでいても、何もできない愚か者です」

「ラファエル様は、好きな女性がいらっしゃるのですね。あなた様の様なお優しくて聡明な殿方に好かれる令嬢は、きっと幸せ者でしょうね」

 ラファエル様の好きな人が誰かは知らないが、こんな素敵な男性に愛されるだなんて、きっと幸せ者間違いない。

 私もロイド様と幸せになりたかったな…ロイド様に愛されたかった。いくらそう願っても、叶う事は決してないけれど…

「セイラ嬢、私は…」

「屋敷に着いたようですね。ラファエル様、送って下さり、ありがとうございました。それではこれで」

 馬車から立ち上がろうとしたのだが、その場で倒れそうになったのを、ラファエル様が受け止めてくれたのだ。

「セイラ嬢、相当体調が思わしくないようですね。私が部屋まで運びます」

 すっと私を抱き上げると、そのまま屋敷へと入って行った。

「お嬢様、一体どうされたのですか?あなた様は…」

「セイラ嬢が、王宮で吐血したのです。今すぐ医者の手配を」

「お嬢様が吐血ですって…承知いたしました。すぐに医者を連れて参ります」

 使用人たちが大慌てで、お医者様を呼びに行った。

 その間に私は、ラファエル様にベッドまで運んでもらい横になった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ! ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...