余命3ヶ月と言われたので静かに余生を送ろうと思ったのですが…大好きな殿下に溺愛されました

Karamimi

文字の大きさ
20 / 46

第20話:後悔ばかりが押し寄せてくる~ロイド視点~

しおりを挟む
「セイラ、体調は大丈夫かい?馬車の中で、随分辛そうだったけれど」

「ええ…大丈夫ですわ。少し疲れてしまっただけです。ロイド様、今日は本当にありがとうございました」

 セイラがにっこりとほほ笑んだ。ただ、かなり苦しそうだ。馬車の中、急に息遣いが荒くなり、ぐったりしだしたセイラ。どうしていいか分からない僕に

「大丈夫です。いつもの事ですから、心配しないで下さい」

 そう笑顔を向けていたセイラ。相当苦しいはずなのに、僕を気遣ってくれる優しいセイラに、僕は泣きそうになった。こんなに苦しんでいるのに、僕は何も出来ない。代われるものなら代りたい。

 どうしてセイラが、こんな事に…

 セイラを思うと、涙が溢れそうになる。ダメだ、今泣いては。彼女の前で泣くだなんて。そう自分に言い聞かせた。

「それじゃあまた明日くるから」

 そう言い残し、公爵家を後にした。

 こんな風にほぼ丸1日一緒にいたのは、何年ぶりだろう。今日は楽しかったな。

 ただ、それと同時に僕は、どこまでもセイラの事を分かっていなかった事を嫌というほど思い知らされた。

 それと同時に、今までの自分の行動を恥じた。

 セイラとのお茶の時、ほとんど手を付けなかったり、僕がセイラのお誕生日にあげたプレゼントを喜んでくれなかった理由が、今ならわかる。

 苦手な苦いものや辛い物を毎回準備され、恐怖を感じている蛇やカエルのものをプレゼントされていたのだ。僕がセイラならきっと、嫌がらせと思うだろう。

 それなのにセイラは、顔を引きつらせながらも、毎回お礼を言ってくれていたのだ。彼女がどんな思いで今まで過ごしていたのか、考えただけで申し訳なさすぎる。

 逆に今日、セイラの好きなお菓子を持って行った時、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。それに花束も…

 僕はずっと、僕の事が好きではないからセイラは僕からのプレゼントや僕が準備したものを喜ばないと思っていた。でも実際は、全く違ったのだ。

「僕は今まで、セイラになんて酷い事をしていたのだろう。そりゃ嫌われても当然だよね。それなのにセイラは、文句ひとつ言わずに…」

 セイラの優しさに、涙が溢れだした。

 また泣いてしまった。僕はいつからこんなに泣き虫になったのだろう。

 ふと今日の事を思い出す。体がだるくてたまらない中、セイラは僕との思い出の森に足を運んでくれた。あの時と同じ昼食を準備し、あの時と同じ花冠を僕にプレゼントしてくれたのだ。

 僕の為に一生懸命花冠を作る姿は、あの時とちっとも変っていなかった。そして完成した時、嬉しそうに僕の頭に乗せてくれたのだ。

 その笑顔を見た瞬間、一気に涙が込み上げてきた。耐えられなくなった僕は、急いでその場を離れ、1人静かに泣いた。やっぱり僕は、セイラが大好きだ。あの頃と…いいや、あの頃以上にセイラの事を愛している。

 そんなセイラが、後3ヶ月しか生きられないだなんて…

 どうしてあんないい子が、死ななければいけないのだろう。どうして僕は、今までセイラを避けてきたのだろう。そもそも僕は、セイラを見ていたのだろうか?

 どうしようもないほど胸が苦しくて、セイラに何かしたくて、近くにあったお花をありったけ摘んで彼女にプレゼントした。

 お花を見たセイラは、それはそれは嬉しそうに笑ったのだ。その笑顔を見た瞬間、再び泣きそうになるのをぐっと堪えた。

 セイラはいつも、嬉しいときはこうやって喜んでくれていた。あの頃の僕たちは、こうやって笑い合えていた。それなのに僕は…

 帰りの馬車の中、苦しそうに僕にもたれかかるセイラ。よく考えたら数ヶ月前から、セイラはあまり食事を食べなくなっていた。教育係から、最近特にセイラの集中力が落ち、ぼっとする事が増えたと報告を受けていた。

 きっとセイラの病状は、彼女が気付かいない間にひっそりと進行していたのだろう。そもそも、セイラの母でもある公爵夫人は、症状が出始めてから1年生きたと聞いた。それなのにセイラは、余命3ヶ月と宣告されている。

 きっとずっと前から、症状は出ていたのだろう。誰にも打ち明ける事が出来ないまま、血を吐くまで気が付くことなく、セイラはずっと堪えていたのだろう。

 もし僕が、もっと早く病状に気が付いていたら、セイラはもしかしたら助かったかもしれない。僕はずっと、セイラを愛していたはずなのに…

 僕は今まで、一体何をしていたのだろうか…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

余命1年の侯爵夫人

悠木矢彩
恋愛
余命を宣告されたその日に、主人に離婚を言い渡されました

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!

ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。 相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。 結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。 現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう… その時に前世の記憶を取り戻すのだった… 「悪役令嬢の兄の婚約者って…」 なんとも微妙なポジション。 しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。

婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました

Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、 あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。 ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。 けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。 『我慢するしかない』 『彼女といると疲れる』 私はルパート様に嫌われていたの? 本当は厭わしく思っていたの? だから私は決めました。 あなたを忘れようと… ※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します

美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。 人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。 それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。 嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。 二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。 するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー

【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます

楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。 伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。 そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。 「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」 神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。 「お話はもうよろしいかしら?」 王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。 ※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m

【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた

迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」  待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。 「え……あの、どうし……て?」  あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。  彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。 ーーーーーーーーーーーーー  侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。  吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。  自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。  だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。  婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。 第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ! ※基本的にゆるふわ設定です。 ※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます ※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。 ※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。 ※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)  

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...