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第30話:セイラの病名~ロイド視点~
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「今、何て言ったのだい?恋焦がれ病とは一体何なのだい?」
今まで聞いた事のない病名を呟いた医者の言葉を、僕は聞き逃さなかった。
「殿下の前で、病名を話せるだなんて…どうなっているのでしょうか?もしかしてセイラお嬢様が病気を克服したことで、病名を殿下に話せるようになったのかしら?」
混乱しているのか、医者がブツブツと独り言を言っている。
「混乱しているところ悪いが、僕に分かるように説明してくれ。君はセイラの病名を知っていたのかい?それならどうして、すぐに教えてくれなかったのだい?もし故意に黙っていたのなら、不敬罪で君を処罰する事も考えないといけないのだよ」
彼女は公爵家の専属医師だ。いくら僕が王太子であっても、セイラに黙って僕に病名を教える事が出来ない事は分かっている。でも、内緒にされていたことに腹が立って、つい不敬罪だなんて言葉を口にしてしまった。
そんな僕に、あきれ顔の執事。
「お医者様、殿下の言葉は気になさらないで下さい。もし差し支えなければ、セイラ様の病名を詳しく教えていただけますか?」
「はい、セイラお嬢様は、恋焦がれ病という病に侵されておりました。この病気は、愛する人にふりむいてもらえない寂しさが募りに募って発病する病気でございます。お嬢様はずっと、殿下をお慕いしておりました。ですが、お嬢様の想いは中々殿下に伝わらず…その結果、発病してしまわれたのです」
「そんな…それじゃあセイラは、僕のせいで苦しんでいたというのかい?僕のせいでセイラは…」
あまりの衝撃的に、僕の頭は一気に真っ白になる。僕はセイラの命を奪おうとしていただなんて…
「殿下、落ち着いて下さい。それでしたら、殿下にその事をお話しになって下されば、解消できたのではありませんか?殿下は不器用なりに、セイラ様の事を愛していた様ですし」
不器用なりにとは失礼な!と言いたいが、確かに僕が愚かで不器用なばかりに、セイラをここまで苦しめたのは事実だ。
「それが、なぜか殿下に話しをする事が出来なかったのです。というよりも、本人以外にこの病名を話すことが出来なくて。傍で聞いていた使用人経由で話してもらおうとしたのですが、それも無理で」
「そうだったのですね。まるで呪いの様な病気ですね」
「はい、実は奥様の実家でもあるラスティア侯爵家では、この病気を呪いの病気と呼んでおりました。一度発症すると、決して助からない。発症の目印となる首の後ろのアザの濃さで、進行具合を確認できるのです。そのアザが真っ黒に染まった時、命が尽きるときと言われていたのです」
「首にアザですか…まさに呪いですね。1つ質問なのですが、セイラ様が病気を発症後は、殿下も不器用なりにセイラ様に寄り添っていたように思いますが。それでも病気が進行したというのは、どういうことなのでしょうか?」
「私も実はよくわからなくて。先祖の記述を見ると、殿下と同じように傍に寄り添っていた方もいたそうですが、結局命を落とされたとの事。ですので、発症してしまうと、いくら愛情を注いでももう手遅れなのか…愛情が足りずに命を落としたのかは、私共にもわかりかねます。
ただ、今回ロイド殿下が熱烈な愛情を注いだことで、お嬢様は病気を克服したようですので、発病した後でも助かる事もあるようだという事が、今回分かりました」
「要するに、代々ラスティア侯爵家の専属医師をしていた君の一族ですら、謎が多い病気だったという事だね」
「はい、そうです。もう一つ申し上げますと、お嬢様は一度は心臓が動き出しましたが、もしかしたら一時的なものかもしれません。実際、首のアザは完全に消えておりませんので。正直今後、お嬢様がこのまま回復なされるのか、それとも再び悪化していくのか、私にもわかりかねるのです」
このまま回復するのか、それとも…
そっとセイラを抱きかかえ、首の後ろを見た。確かに首の後ろには、ハートにひびが入ったようなアザがある。これが病の証か…
このアザが消えない限り、セイラは…
「セイラ、ごめんね。僕のせいで君を苦しめる事になってしまって。これからは君が嫌だというくらい、沢山愛情を注ぐから。だからどうか、元気になって欲しい」
まさか僕のせいで、セイラが苦しんでいただなんて。そしてセイラは、病気を発症する程、僕を愛してくれていただなんて…
過去に戻れるのなら、セイラと出会ったあの日からやり直したい。そしてこんな病気を発症させない程、セイラを大切にしたい。でも、そんな事は出来ない。
後悔しても遅いのだ。
だから今の僕に出来る事は…
今まで聞いた事のない病名を呟いた医者の言葉を、僕は聞き逃さなかった。
「殿下の前で、病名を話せるだなんて…どうなっているのでしょうか?もしかしてセイラお嬢様が病気を克服したことで、病名を殿下に話せるようになったのかしら?」
混乱しているのか、医者がブツブツと独り言を言っている。
「混乱しているところ悪いが、僕に分かるように説明してくれ。君はセイラの病名を知っていたのかい?それならどうして、すぐに教えてくれなかったのだい?もし故意に黙っていたのなら、不敬罪で君を処罰する事も考えないといけないのだよ」
彼女は公爵家の専属医師だ。いくら僕が王太子であっても、セイラに黙って僕に病名を教える事が出来ない事は分かっている。でも、内緒にされていたことに腹が立って、つい不敬罪だなんて言葉を口にしてしまった。
そんな僕に、あきれ顔の執事。
「お医者様、殿下の言葉は気になさらないで下さい。もし差し支えなければ、セイラ様の病名を詳しく教えていただけますか?」
「はい、セイラお嬢様は、恋焦がれ病という病に侵されておりました。この病気は、愛する人にふりむいてもらえない寂しさが募りに募って発病する病気でございます。お嬢様はずっと、殿下をお慕いしておりました。ですが、お嬢様の想いは中々殿下に伝わらず…その結果、発病してしまわれたのです」
「そんな…それじゃあセイラは、僕のせいで苦しんでいたというのかい?僕のせいでセイラは…」
あまりの衝撃的に、僕の頭は一気に真っ白になる。僕はセイラの命を奪おうとしていただなんて…
「殿下、落ち着いて下さい。それでしたら、殿下にその事をお話しになって下されば、解消できたのではありませんか?殿下は不器用なりに、セイラ様の事を愛していた様ですし」
不器用なりにとは失礼な!と言いたいが、確かに僕が愚かで不器用なばかりに、セイラをここまで苦しめたのは事実だ。
「それが、なぜか殿下に話しをする事が出来なかったのです。というよりも、本人以外にこの病名を話すことが出来なくて。傍で聞いていた使用人経由で話してもらおうとしたのですが、それも無理で」
「そうだったのですね。まるで呪いの様な病気ですね」
「はい、実は奥様の実家でもあるラスティア侯爵家では、この病気を呪いの病気と呼んでおりました。一度発症すると、決して助からない。発症の目印となる首の後ろのアザの濃さで、進行具合を確認できるのです。そのアザが真っ黒に染まった時、命が尽きるときと言われていたのです」
「首にアザですか…まさに呪いですね。1つ質問なのですが、セイラ様が病気を発症後は、殿下も不器用なりにセイラ様に寄り添っていたように思いますが。それでも病気が進行したというのは、どういうことなのでしょうか?」
「私も実はよくわからなくて。先祖の記述を見ると、殿下と同じように傍に寄り添っていた方もいたそうですが、結局命を落とされたとの事。ですので、発症してしまうと、いくら愛情を注いでももう手遅れなのか…愛情が足りずに命を落としたのかは、私共にもわかりかねます。
ただ、今回ロイド殿下が熱烈な愛情を注いだことで、お嬢様は病気を克服したようですので、発病した後でも助かる事もあるようだという事が、今回分かりました」
「要するに、代々ラスティア侯爵家の専属医師をしていた君の一族ですら、謎が多い病気だったという事だね」
「はい、そうです。もう一つ申し上げますと、お嬢様は一度は心臓が動き出しましたが、もしかしたら一時的なものかもしれません。実際、首のアザは完全に消えておりませんので。正直今後、お嬢様がこのまま回復なされるのか、それとも再び悪化していくのか、私にもわかりかねるのです」
このまま回復するのか、それとも…
そっとセイラを抱きかかえ、首の後ろを見た。確かに首の後ろには、ハートにひびが入ったようなアザがある。これが病の証か…
このアザが消えない限り、セイラは…
「セイラ、ごめんね。僕のせいで君を苦しめる事になってしまって。これからは君が嫌だというくらい、沢山愛情を注ぐから。だからどうか、元気になって欲しい」
まさか僕のせいで、セイラが苦しんでいただなんて。そしてセイラは、病気を発症する程、僕を愛してくれていただなんて…
過去に戻れるのなら、セイラと出会ったあの日からやり直したい。そしてこんな病気を発症させない程、セイラを大切にしたい。でも、そんな事は出来ない。
後悔しても遅いのだ。
だから今の僕に出来る事は…
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