36 / 46
第36話:まだぎこちないけれど
しおりを挟む
「お父様、謝らないで下さい。こうやってお父様とお話しが出来ただけで、私は幸せですから。今日はお部屋に来てくださり、ありがとうございます」
唯一の肉親でもあるお父様と、こんな風に話しが出来ただけでも、十分幸せだ。嬉しくて涙が溢れる。
「セイラ!ああ、私のセイラ。私は君から母親を奪ったというのに…さっき全てを聞いた。君の母親は、私を思い亡くなったんだ。私は醜い嫉妬心から、愛する妻を死に至らしめたのだよ。本当は誰よりも、彼女を愛していたのに」
「お父様もお母様を愛していらしたのですか?お母様、きっと天国で喜んでいらっしゃいますわ。今ここで、お父様の気持ちを聞く事が出来たのですもの」
「セイラは、私の事を軽蔑しないのかい?私のせいで、君の母親は命を落としたのだよ」
「確かにお母様が亡くなって、寂しい思いもしました。ですがお父様も、ずっと苦しんできたのですよね。それにお母様は、お父様の幸せを誰よりも望んでいましたわ。私も一度命を失ったのでわかるのです。愛する人には、幸せになって欲しい、私もそう願い、命を落としたので」
「セイラ…」
「意識が戻る寸前、お母様に会ったのです。お母様は“お父様の事をお願いね”とおっしゃっておりました。きっと今でもお母様は、お父様の事を心配していらっしゃるのでしょう。どうかお父様も、お母様の為に幸せになってください」
恋焦がれ病にかかり、一度命を落とした私には、お母様の気持ちが痛いほどわかる。私がロイド様には絶対に幸せになって欲しいと望んだように、お母様もお父様の幸せを強く望んでいたのだろう。
現にお母様は、闘病中一度もお父様のことを悪く言わなかった。それどころか、愛おしそうにお父様の話をしていた。正直当時の私には、お母様の気持ちが理解できなかった。あの時の私はまだ、子供だったのだ。
「セレイナがそんな事を…セレイナ、本当にすまなかった。君に寂しい思いをさせてしまって。君はどんな時でも、私を心配してくれているのだね。セレイナ、愛しているよ、セレイナ」
お父様が何度も何度も叫んでいる。今まで溜め込んでいた思いを、一気にぶつけるように。きっとお母様も、今頃喜んでいる頃だろう。
「セイラ、改めて今まで本当にすまなかった。セイラを見ると、亡くなったセレイナへの罪悪感から、つい君を避けてしまっていた。でもそれは、間違いだった。今更遅いかもしれないが、今からでも父親としてセイラと親子の関係を築いてくれるかい?」
「もちろんですわ。私はずっと、お父様とこうやってお話がしたかったのです。だから、まるで夢の様で。また目を覚ましたら、いつものお父様に戻ってしまうのかしら?」
これは全て私の望みが夢となって表れているだけで、目を覚ましたら元通りという事はないかしら?そんな不安が、私を襲う。
「セイラは本当に優しい子だ。そんな事はないから、安心してくれ。せっかくだから、今日は傍にいてもいいかい?セイラの事、たくさん教えて欲しい」
「ええ、もちろんですわ。私もお父様の事、もっともっと知りたいです。それにお母様の事も…申し訳ございません、何でもありません」
ここでお母様の話はまずかっただろう。慌てて口をさえた。
「そうだね、セレイナは美しいのはもちろん、優しくて正義感が強くて、私には勿体ないほど素敵な女性だったよ」
少し寂しそうに、それでもなんだか嬉しそうなお父様の顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。お父様は、本当にお母様を愛していたのだろう。
もしお母様が生きていた時に、お互いの気持ちを知っていたら…そう思うと、いたたまらない気持ちになった。
お父様はお母様の病名を知って、さぞ無念だっただろう。お父様の顔を見ていたら、泣きそうになった。せめて私が、お父様を支えたい。
その後は、お父様と沢山お話をした。15年間、まともに話してこなかったお父様。今すぐ親子の関係が改善する事はないだろう。
正直まだぎこちない。それでも今のお父様とならきっと、いつか親子として良好な関係が築ける。なんだかそんな気がしたのだった。
唯一の肉親でもあるお父様と、こんな風に話しが出来ただけでも、十分幸せだ。嬉しくて涙が溢れる。
「セイラ!ああ、私のセイラ。私は君から母親を奪ったというのに…さっき全てを聞いた。君の母親は、私を思い亡くなったんだ。私は醜い嫉妬心から、愛する妻を死に至らしめたのだよ。本当は誰よりも、彼女を愛していたのに」
「お父様もお母様を愛していらしたのですか?お母様、きっと天国で喜んでいらっしゃいますわ。今ここで、お父様の気持ちを聞く事が出来たのですもの」
「セイラは、私の事を軽蔑しないのかい?私のせいで、君の母親は命を落としたのだよ」
「確かにお母様が亡くなって、寂しい思いもしました。ですがお父様も、ずっと苦しんできたのですよね。それにお母様は、お父様の幸せを誰よりも望んでいましたわ。私も一度命を失ったのでわかるのです。愛する人には、幸せになって欲しい、私もそう願い、命を落としたので」
「セイラ…」
「意識が戻る寸前、お母様に会ったのです。お母様は“お父様の事をお願いね”とおっしゃっておりました。きっと今でもお母様は、お父様の事を心配していらっしゃるのでしょう。どうかお父様も、お母様の為に幸せになってください」
恋焦がれ病にかかり、一度命を落とした私には、お母様の気持ちが痛いほどわかる。私がロイド様には絶対に幸せになって欲しいと望んだように、お母様もお父様の幸せを強く望んでいたのだろう。
現にお母様は、闘病中一度もお父様のことを悪く言わなかった。それどころか、愛おしそうにお父様の話をしていた。正直当時の私には、お母様の気持ちが理解できなかった。あの時の私はまだ、子供だったのだ。
「セレイナがそんな事を…セレイナ、本当にすまなかった。君に寂しい思いをさせてしまって。君はどんな時でも、私を心配してくれているのだね。セレイナ、愛しているよ、セレイナ」
お父様が何度も何度も叫んでいる。今まで溜め込んでいた思いを、一気にぶつけるように。きっとお母様も、今頃喜んでいる頃だろう。
「セイラ、改めて今まで本当にすまなかった。セイラを見ると、亡くなったセレイナへの罪悪感から、つい君を避けてしまっていた。でもそれは、間違いだった。今更遅いかもしれないが、今からでも父親としてセイラと親子の関係を築いてくれるかい?」
「もちろんですわ。私はずっと、お父様とこうやってお話がしたかったのです。だから、まるで夢の様で。また目を覚ましたら、いつものお父様に戻ってしまうのかしら?」
これは全て私の望みが夢となって表れているだけで、目を覚ましたら元通りという事はないかしら?そんな不安が、私を襲う。
「セイラは本当に優しい子だ。そんな事はないから、安心してくれ。せっかくだから、今日は傍にいてもいいかい?セイラの事、たくさん教えて欲しい」
「ええ、もちろんですわ。私もお父様の事、もっともっと知りたいです。それにお母様の事も…申し訳ございません、何でもありません」
ここでお母様の話はまずかっただろう。慌てて口をさえた。
「そうだね、セレイナは美しいのはもちろん、優しくて正義感が強くて、私には勿体ないほど素敵な女性だったよ」
少し寂しそうに、それでもなんだか嬉しそうなお父様の顔を見た瞬間、胸が締め付けられた。お父様は、本当にお母様を愛していたのだろう。
もしお母様が生きていた時に、お互いの気持ちを知っていたら…そう思うと、いたたまらない気持ちになった。
お父様はお母様の病名を知って、さぞ無念だっただろう。お父様の顔を見ていたら、泣きそうになった。せめて私が、お父様を支えたい。
その後は、お父様と沢山お話をした。15年間、まともに話してこなかったお父様。今すぐ親子の関係が改善する事はないだろう。
正直まだぎこちない。それでも今のお父様とならきっと、いつか親子として良好な関係が築ける。なんだかそんな気がしたのだった。
1,353
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?
いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー
これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。
「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」
「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」
冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。
あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。
ショックで熱をだし寝込むこと1週間。
目覚めると夫がなぜか豹変していて…!?
「君から話し掛けてくれないのか?」
「もう君が隣にいないのは考えられない」
無口不器用夫×優しい鈍感妻
すれ違いから始まる両片思いストーリー
乙女ゲームの悪役令嬢の兄の婚約者に転生しましたが傷物になったので退場を希望します!
ユウ
恋愛
平凡な伯爵令嬢のリネットは優しい婚約者と妹と穏やかで幸福な日々を送っていた。
相手は公爵家の嫡男であり第一王子殿下の側近で覚えもめでたく社交界の憧れの漆黒の騎士と呼ばれる貴族令息だった。
結婚式前夜、婚約者の妹に会いに学園に向かったが、そこで事件が起きる。
現在学園で騒動を起こしている第二王子とその友人達に勘違いから暴行を受け階段から落ちてしまう…
その時に前世の記憶を取り戻すのだった…
「悪役令嬢の兄の婚約者って…」
なんとも微妙なポジション。
しかも結婚前夜で傷物になる失態を犯してしまったリネットは婚約解消を望むのだが、悪役令嬢の義妹が王子に婚約破棄を突きつける事件に発展してしまう。
婚約者が実は私を嫌っていたので、全て忘れる事にしました
Kouei
恋愛
私セイシェル・メルハーフェンは、
あこがれていたルパート・プレトリア伯爵令息と婚約できて幸せだった。
ルパート様も私に歩み寄ろうとして下さっている。
けれど私は聞いてしまった。ルパート様の本音を。
『我慢するしかない』
『彼女といると疲れる』
私はルパート様に嫌われていたの?
本当は厭わしく思っていたの?
だから私は決めました。
あなたを忘れようと…
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。
愛のない結婚をした継母に転生したようなので、天使のような息子を溺愛します
美杉日和。(旧美杉。)
恋愛
目が覚めると私は昔読んでいた本の中の登場人物、公爵家の後妻となった元王女ビオラに転生していた。
人嫌いの公爵は、王家によって組まれた前妻もビオラのことも毛嫌いしており、何をするのも全て別。二人の結婚には愛情の欠片もなく、ビオラは使用人たちにすら相手にされぬ生活を送っていた。
それでもめげずにこの家にしがみついていたのは、ビオラが公爵のことが本当に好きだったから。しかしその想いは報われることなどなく彼女は消え、私がこの体に入ってしまったらしい。
嫌われ者のビオラに転生し、この先どうしようかと考えあぐねていると、この物語の主人公であるルカが声をかけてきた。物語の中で悲惨な幼少期を過ごし、闇落ち予定のルカは純粋なまなざしで自分を見ている。天使のような可愛らしさと優しさに、気づけば彼を救って本物の家族になりたいと考える様に。
二人一緒ならばもう孤独ではないと、私はルカとの絆を深めていく。
するといつしか私を取り巻く周りの人々の目も、変わり始めるのだったーー
【完結】これをもちまして、終了とさせていただきます
楽歩
恋愛
異世界から王宮に現れたという“女神の使徒”サラ。公爵令嬢のルシアーナの婚約者である王太子は、簡単に心奪われた。
伝承に語られる“女神の使徒”は時代ごとに現れ、国に奇跡をもたらす存在と言われている。婚約解消を告げる王、口々にルシアーナの処遇を言い合う重臣。
そんな混乱の中、ルシアーナは冷静に状況を見据えていた。
「王妃教育には、国の内部機密が含まれている。君がそれを知ったまま他家に嫁ぐことは……困難だ。女神アウレリア様を祀る神殿にて、王家の監視のもと、一生を女神に仕えて過ごすことになる」
神殿に閉じ込められて一生を過ごす? 冗談じゃないわ。
「お話はもうよろしいかしら?」
王族や重臣たち、誰もが自分の思惑通りに動くと考えている中で、ルシアーナは静かに、己の存在感を突きつける。
※39話、約9万字で完結予定です。最後までお付き合いいただけると嬉しいですm(__)m
【完】愛しの婚約者に「学園では距離を置こう」と言われたので、婚約破棄を画策してみた
迦陵 れん
恋愛
「学園にいる間は、君と距離をおこうと思う」
待ちに待った定例茶会のその席で、私の大好きな婚約者は唐突にその言葉を口にした。
「え……あの、どうし……て?」
あまりの衝撃に、上手く言葉が紡げない。
彼にそんなことを言われるなんて、夢にも思っていなかったから。
ーーーーーーーーーーーーー
侯爵令嬢ユリアの婚約は、仲の良い親同士によって、幼い頃に結ばれたものだった。
吊り目でキツい雰囲気を持つユリアと、女性からの憧れの的である婚約者。
自分たちが不似合いであることなど、とうに分かっていることだった。
だから──学園にいる間と言わず、彼を自分から解放してあげようと思ったのだ。
婚約者への淡い恋心は、心の奥底へとしまいこんで……。
第18回恋愛小説大賞で、『奨励賞』をいただきましたっ!
※基本的にゆるふわ設定です。
※プロット苦手派なので、話が右往左往するかもしれません。→故に、タグは徐々に追加していきます
※感想に返信してると執筆が進まないという鈍足仕様のため、返事は期待しないで貰えるとありがたいです。
※仕事が休みの日のみの執筆になるため、毎日は更新できません……(書きだめできた時だけします)ご了承くださいませ。
※※しれっと短編から長編に変更しました。(だって絶対終わらないと思ったから!)
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる