前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第62話:けじめを付けるために

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 翌朝
「ソフィーナ、本当に1人で行くのかい?俺も一緒についていこうか?」

「いいえ、大丈夫ですわ。これは私の問題ですので。それでは、行って参ります」

 心配そうなお兄様に笑顔を向けると、そのまま1人で馬車に乗り込んだ。今日は昼から両親と一緒に王宮へと向かう事になっている。でも、その前に私には、やらなければいけない事があるのだ。

 向かった先は…

「ソフィーナ嬢、おはよう。今日はわざわざ訪ねてきてくれてありがとう」

「アレック様、おはようございます。こちらこそ、急に訪ねてきてしまい、申し訳ございません。どうしても今日、話したいことがあったのです」

「俺は別に構わないよ。さあ、どうぞ」

 笑顔のアレック様に連れられ、客間へと向かった。

「それで、今日はどんな話なのだい?」

「はい、実は私、ファラオ様と心が通じ合い、近々婚約を結ぶ運びになりました。まだ正式に決まった訳ではないのですが、それでもアレック様には直接会って、きちんとお伝えしたいと思ったのです」

 アレック様は、私の事をとても大切に思ってくれていた。その事は、私も理解している。だからこそ、しっかり会って話がしたいと思ったのだ。

「そうか…この前ファラオとソフィーナ嬢に会った時、なんだかそんな気がしていたのだよ。ソフィーナ嬢は、ファラオの事が好きなのではないかってね。正直、ソフィーナ嬢と結婚出来たらいいなと思っていた時期もあったけれど、はっきりフラれたのなら仕方がない。

 ソフィーナ嬢、おめでとう。ファラオはずっと、ソフィーナ嬢を想っていた様だよ。ファラオは俺にとって、大切な友人だ。少し嫉妬深いところがある奴だけれど、ファラオの事、よろしくお願いします」

 そう言って頭を下げたアレック様。どこまでいい人なのだろう。そう思うほど、本当にアレック様も魅力的な男性だ。

「ありがとうございます。アレック様にもきっと、素敵な令嬢が現れますわ。私はアレック様の幸せを、心から祈っております」

「ありがとう、ソフィーナ嬢。しばらくは恋愛は出来ないかもしれないが、いつかきっと、君に紹介できるような素敵な令嬢を見つけるよ」

 そう言って悲しそうに笑ったアレック様。なんだか胸が苦しいが、仕方がない事。

「それでは私は、これで失礼いたしますわ」

「わざわざ来てくれたありがとう。これからセシルの家に行くのかい?」

「はい、セシル様にも自分の口から伝えたいので」

「そうか、君は本当に律儀だね。ソフィーナ嬢、これからも俺と仲良くしてくれるかい?もちろん、友達として」

「よろしいのですか?嬉しいです。これからもお友達として、よろしくお願いします」

 最後まで優しかったアレック様の元を後にし、次はセシル様の元へ向かった。

「そうか…何となくわかっていたよ。でも、ソフィーナ嬢が決めた事だから、俺はソフィーナ嬢を応援するよ」

 セシル様もアレック様と同様、私たちを祝福してくれた。そしてセシル様も、これからもお付き合いしてくださると言ってくれた。

 お2人の気持ちに応える事は出来なかったが、それでもきちんと話が出来てよかった。いつかお2人にも、素敵な令嬢が現れますように、そう願わずにはいられない。

 それでも、きちんとけじめを付ける事は出来た。これで心置きなく、ファラオ様との婚約に進める。

 さて、一度家に帰って、準備をしないと。

 屋敷に着き馬車から降りると、お兄様が心配そうな顔で待っていてくれた。

「ソフィーナ、大丈夫だったかい?」

「ええ、大丈夫でしたわ。お2人とも、私の気持ちを理解してくださりました。これからも、よきお友達として接してくれるとも言って下さりましたし」

「そうか、それなら良かったよ。俺からも2人には改めて話はしておくから、ソフィーナがこれ以上気にする事はない。さあ、次は王宮に向かわないといけないのだろう?きっとファラオが首を長くして待っているだろう。屋敷に乗り込んでくる前に、王宮に向かわないとな」

 そう言って笑ったお兄様。お兄様はいつも、私の事を考えて下さる。その優しさが、身に染みる。

「はい、すぐに準備をして参りますわ」
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