前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第71話:思っていた方向と違う様な…

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「そうだったのですね。確かにアイリ殿下は、とても美しいお方です。殿方が夢中になるのも頷けますわ。そのせいで、令嬢たちの醜い嫉妬に苦しんできたのですね。お可哀そうに…」

 こんなにもお可愛らしい方を虐めるだなんて、一体どんな神経をしているのかしら?何だか私まで腹が立ってきた。

「そんな意地悪な令嬢たちの事は忘れて、今日はぜひ楽しんでください。そうですわ、私のお気に入りの場所を案内いたします。さあ、涙を拭いて下さい」

 アイリ殿下の涙をそっと拭いた。そして、彼女の手を握り、歩き出す。向った先は、もちろん!


「どうぞ、こちらです」

「ここは、お庭ですか?」

「そうです、ここの一角は、私が管理しておりますの。自ら種植えを行い、お水をやり、草を抜いているのですよ。公爵令嬢がこのような事を!そういう人もいますが、私は自分自身の手で育てたお花たちが奇麗に咲くのが、嬉しくてたまらないのです」

「このお花たちは、ソフィーナ様が自らの手で育てられたのですか?すごいですわ」

「褒めていただいて、ありがとうございます。とはいえ、庭師やファラオ様にも手伝ってもらっておりますが。私1人では、何もできないので。このお庭も、元々はファラオ様が準備してくださったのです」

「ソフィーナ様は、ファラオ殿下を愛しているのですね」

「ええ、もちろんですわ。彼は私の大切な人です。実は私は昔、どうしようもない人間だったのです。我が儘で傲慢で、人として最低でした。ですが、そんな私をそのころから思い続けてくれていたのが、ファラオ様なのです。

 随分と彼にも辛い思いをさせてしまったので、これからは目いっぱいファラオ様に尽くすつもりですわ」

 ファラオ様の事を考えると、胸が熱くなる。多少嫉妬深くて、困った事もあるけれど、そんなファラオ様も全てひっくるめて、私は彼の事が大好きなのだ。

「ソフィーナ様はいいですね…そこまで愛する人がいて。あなた様の様な魅力的な令嬢に愛されるファラオ殿下は、とても魅力的な人なのでしょう。私もぜひ、彼と仲良くなりたいですわ」

 なぜかうっとりとした顔したアイリ殿下。

「アイリ殿下?」

「ソフィーナ様、中庭を案内して下さり、ありがとう…きゃぁぁぁ」

「アイリ殿下!」

「アイリ」

 どこからともなく現れたのは、アイリ殿下の双子の兄、アラン殿下だ。後ろにはファラオ様やお兄様たちもいる。どうしてここにいるのかしら?そもそもアイリ殿下は、何に驚かれた?もしかして」

「スカイ、あなたも来たのね。さあ、こっちにいらっしゃい」

 どうやらスカイに驚いたみたいだ。

「私、獣は苦手なのです。どうかどこかにやって頂けますか?」

 獣?スカイはとても可愛らしい猫なのに!獣だなんて失礼しちゃうわ。ただ、動物が嫌いな人もいるものね。

 急いで近くに控えていた使用人に、スカイを渡した。

「アイリ殿下、申し訳ございません。スカイは王宮で飼っている猫でして」

 深々とアイリ殿下に頭を下げた。

「こちらこそ、大きな声を出してごめんなさい。気にしないで下さいね。それよりもファラオ殿下、ここからはあなた様に王宮内を案内していただきたいですわ」

 何を思ったのか、ファラオ様にすり寄って行ったのだ。

 ちょっと待って、この人は一体何を考えているの?どうしてファラオ様にすり寄っていくの?

「アイリ殿下、申し訳ございません。私には愛するソフィーナがおりますので、ソフィーナ以外の令嬢に触れられることを良しとしません」

 すっとアイリ殿下から離れると、笑顔でそう告げたのだ。

 ファラオ様ったら、そんなはっきりと言わなくても。でも…そうやってはっきりと言ってくれると、嬉しいわ。

 何だか胸の奥が熱くなった。ただ、私たちの関係を知っているのに、どうしてアイリ殿下はファラオ様に?
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