前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第85話:アラン殿下の提案

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「そんなに落ち込まないでくれ。ソフィーナ嬢にとっては、受け入れがたい現実だろう…」

「そうですね…そういえばアイリ殿下は、ファラオ様のお部屋を見て、何かおっしゃっていましたか?」

「いいや、何も言っていないよ。そもそもアイリがファラオ殿下の部屋に通っている事を、私は知らない事になっているからね」

「そうでしたね…申し訳ございません、頭が混乱してしまっていて…まさかお2人が、陰であのような事をなさっているだなんて信じられなくて」

「私も最初は信じられなかったよ。ただ、これが現実なのだよ。ファラオ殿下とアイリは、不貞を行っている。本当に最低な男だ!そんな男とこのまま結婚してもいいのかい?それにどうやらファラオ殿下は、アイリに心を奪われつつある。

 もしかしたら今頃、ソフィーナ嬢との婚約を白紙に戻せないか、相談しているかもしれない」

「婚約を白紙に…ですか…」

「ああ、そうだよ、ソフィーナ嬢、もし君さえよかったら、私の国、アラバシア王国に来ないかい?こんな時にこんな事を言うのは不謹慎かもしれない。でも、落ち込んでいる君を、このまま放っておけないんだ。

 私が君に好意を抱いている事は、知ってくれているね。もちろん、アラバシア王国に来たからといって、すぐに結婚しろだなんて野暮な事は言わない。お互いの事を知って、君が私に好意を抱いてくれたら、その時に改めて将来の事を考えたらいい。

 とにかく、あんな非道で浮気癖のある男の元にいる必要はないよ。アラバシア王国においで。君の為の屋敷も準備するから」

「アラン殿下、ありがとうございます。アラバシア王国、きっと素敵な国なのでしょう。ですが、今はまだ頭が混乱していて、自分がどうしたらいいのか分からなくて。それに私の一存では決められませんので。

 父や兄に相談しないといけませんし」

「そうだね、君は公爵令嬢だから、勝手には決められないよね。それじゃあ、私が帰国する日までに、返事をもらえるかな?すぐに我が国に来たいと言えば、その場で一緒に船に乗って帰ればいいし。準備期間が必要とあれば、改めて迎えに来るから」

「承知いたしました。アラン殿下、何から何までありがとうございます。一度ゆっくり考え、父や兄にも相談しつつ、どうするか結論を出しますわ。あなた様が帰国する日には、必ずお返事をさせていただきますので」

「ソフィーナ嬢の辛いだろうだ、新しい地で一からやり直すのも、私は良いのではないかと思う。いい返事を、期待しているよ。せっかくだから、お茶でも飲みながら、話しをしないかい?君にアラバシア王国がどれほど素晴らしい国か、知ってもらいたくてね」

「申し訳ございません。ファラオ様の件で、頭が混乱しておりまして。それにアラン殿下からご提案頂いた件も、真剣に検討したいと考えております。今は1人にして頂けないでしょうか?」

 真っすぐアラン殿下を見つめて、はっきりと告げた。

「そうだよね。信じていた恋人に裏切られて、君も辛いだろう。1人でゆっくり考えたい事もあるだろうし。それじゃあ、私は帰るよ。いい返事を期待しているよ」

「はい、ありがとうございます。申し訳ございません、怪我をしておりますので、ここで失礼いたします」

 部屋から出ていくアラン殿下に、深々と頭を下げた。いくらケガをしているとはいえ、本来なら見送らなければいけないのだが、とてもではないがお見送りできる状況ではない。

「お嬢様、大丈夫ですか?お部屋に戻りますか?」

 心配して使用人が声をかけてきてくれた。

「ええ、そうね。部屋に戻るわ。ごめんなさい、あなた達にも随分と心配をかけてしまったわね」

「私共の事は良いのです。お嬢様、私共はどんな時でも、お嬢様の味方です。その事だけは、覚えておいてください」

「ありがとう…それじゃあ、1つお願いしてもいいかしら?私が良いと言うまで、私の部屋に誰も通さないでほしいの。ファラオ様はもちろん、お父様やお母様、お兄様も」

「旦那様や奥様、お坊ちゃまもですか?」

「ええ、そうよ。今は誰にも会いたくはないの。私の心の決心がついたら、必ず部屋から出てくるから。どうかそれまでは、見守って欲しいと」

「承知いたしました。お嬢様、どうかご無理はなされない様にしてくださいませ」

「ええ、ありがとう」

 使用人たちも私を心配してくれている。しっかりしないと!


 ※次回、ファラオ視点です。
 よろしくお願いいたします。
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