前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi

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第89話:決断の時です

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「お嬢様、怪我はすっかり良くなりましたよ。もう歩いても問題ないでしょう」

「ありがとう。やっとケガが治ったのね。それじゃあ、明日は問題なく出掛けられるのね」

「はい、問題はありません。明日はアラバシア王国の王太子殿下と王女殿下が帰国される日でしたね。お嬢様は今回の件で、非常に活躍されたと聞いております。最後のお見送りに間に合ってよかったですね」

「ええ、そうね…ありがとう」

「それでは私はこれで失礼いたします」

 お医者様がお部屋から出て行った。

 さてと。

「お父様を呼んでくれるかしら?今日は屋敷にいらっしゃるのよね」

「はい、いらっしゃいます。すぐにお呼びいたします」

 もう怪我が治ったのだから、本当は私からお父様に会いに行かないといけないのだが、今日まで甘えさせてもらおう。

「ソフィーナ、怪我が完治したそうだね。おめでとう」

「ありがとうございます。お父様、いつもお父様には私のお部屋に来ていただき、ありがとうございます。それで、お兄様は?」

「ソリティオは今、王宮に行っているよ。それにしても、ソフィーナが私を部屋に呼んでくれた時は驚いた。それに…いいや、何でもない。私はどんなことがあっても、ソフィーナの味方だ。明日は私も一緒に行くから、安心して欲しい」

「お父様、何から何まで、ありがとうございます」

「お礼を言われる事はしていないよ。それよりも、今日までよく頑張ったね。後1日、ゆっくり休むといい」

「はい、そうしますわ」

 いよいよ明日、アラン殿下とアイリ殿下が帰国する日。そして、私にとっても運命の日と言っても過言ではない。

 明日の為にも、今日はゆっくり休んで明日に備えないと。

 そんな思いで、この日も部屋の中で過ごした。

 そして翌日。

「太陽の光がまぶしいわ。やっぱりずっとお部屋に引きこもっているのは、性に合わないわね」

 久しぶりにドレスに着替え、外に出たのだ。今日は雲一つない快晴。太陽の光がまぶしい。この10日間くらい、ずっとモグラの様な生活をしていたものね。

「ソフィーナ、元気そうでよかったよ。既にソリティオは王宮に向かったようだ。私達は、直接港に向かおう」

「承知いたしました」

 大きな荷物を持って、お父様と一緒に馬車に乗り込んだ。我が家から港までは、馬車で約40分。実は港に行くのも、海を近くで見るのも初めてなのだ。アラバシア王国は海に囲まれているとあって、今回は海にはいかなかった。

 前世でも海のない地域に住んでいた為、海を見た事がない。きっととても大きくて綺麗なのだろう。船もとっても立派なのだろうな。船の旅か…きっととても楽しいのだろう。考えただけで、ワクワクする。

「ソフィーナ、嬉しそうな顔をしてどうしたのだい?」

「私、海を見るのが初めてなのです。だからなんだか楽しみで。大海原を、船で旅をするのはどんな感じなのだろうと想像してしまって」

「そうか、ソフィーナは海を見た事がなかったのだね…そうだね、大きな船で知らない国を旅する、とても楽しい事だろうね」

 なぜだか寂しそうな顔をしたお父様。その顔が、なんだか胸に突き刺さる。

「ソフィーナ、見てごらん。海が見えて来たよ」

 窓からは大きな海が見える。太陽の光に照らされ、キラキラと輝いていた。なんて綺麗なのかしら?こんな大きな海を見ていると、なんだか心も軽やかになる。

「ソフィーナ、見てごらん。あれがアラバシア王国の船だよ。本当に立派な船だね」

「あれがアラバシア王国の船なのですね。本当に立派だ事」

 馬車の中からでも豪華さが分かるくらいの、大きな船だ。

「港に着いたよ。既に殿下たちも来ている様だ。行こうか」

「はい、行きましょう」

 いよいよこの時が来た!後悔しないためにも、私の気持ちをめいっぱいぶつけよう。
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