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第27話:いつまでも逃げている訳にはいきません
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「アントアーネ、ここにいたのだね。今日は少し冷えるから、そんな薄着で外に出ていたら風邪をひくよ。ほら、こっちにおいで」
ブラッド様とお兄様がこの国に来てから、早10日。熱も下がり、すっかり元気になった。この10日間、ずっと私の傍に寄り添ってくれたブラッド様。今日も中庭で散歩をしていた私の元に、ストールを持ってやってきてくれた。
「このストール、温かいですわ。それに…」
ブラッド様の匂いがする。
あの後、お兄様にこっそり本当にブラッド様に婚約者がいないのか聞いたのだが、お兄様曰く、ブラッド様は全く令嬢に興味がないとの事。もちろんブラッド様はとても魅力的なので、彼に近づく令嬢も沢山いるようだが、全く相手にしていないらしい。
令嬢の前では、つねに不愛想なのだとか。
“ブラッド殿は、令嬢に全く興味がない様だよ。このままだと一生独身を貫くのではないかと、夫人が心配しているくらいだ”
そう言って笑っていた。こんなにも優しいブラッド様が、不愛想だなんて、なんだか想像できない。とはいえ、いつまでもブラッド様の優しさに甘えていてはいけない。
「ブラッド様、もう屋敷に戻りましょう。あなたはずっと、暖かいリューズ王国で暮していたのでしょう。この国の寒さには慣れていないでしょう。風邪をひいたら大変ですもの」
そう言って、私にかけてくれたストールを、彼にかけた。
「アントアーネは優しいね。俺は鍛えているから、大丈夫だよ。さあ、屋敷に戻ろう」
すっと私の手を取ったブラッド様。その温もりが、心地いい。
でも、いつまでも幸せに浸っている訳にはいかない。
「ブラッド様、この後父に話しがありますので、私はこれで失礼いたします」
笑顔でブラッド様の元を離れようとしたのだが
「それなら俺も行くよ。それじゃあ、伯爵の元に行こうか」
そう言って、私の手を引いて歩き出したのだ。
ブラッド様に聞かれて困る話でもないし、まあいいか。
お父様の元に行くと、お兄様とお母様も一緒にいた。
「ちょうどいいところに来たね。アントアーネにも話しておかないと。君も落ち着いたし、俺は今日の夕方、リューズ王国に帰るよ。留学期間も後半年だし。最後の追い込みをしたいからね」
「まあ、そうだったのですね。お忙しいのに私の為に、急遽帰国して頂きありがとうございました。お兄様が帰るという事は、ブラッド様も?」
隣にいたブラッド様の方を見た。ブラッド様とも、もうお別れなのね。分かっていたことだけれど、なんだか胸の奥がズキリと痛んだ。
「アントアーネ、そんな顔をしないで。俺はもう少し、この国でお世話になる予定だよ。せっかくサルビア王国に来たのだから、色々とこの国の事を学びたくてね。それに両親からも、まだ帰って来るなと強く言われているから」
「そうなのですね」
よかった!ブラッド様は、まだこの国にいて下さる…て、私は何を喜んでいるのかしら。彼はこの国の事を学ぶために、残るだけなのに。
それにこれ以上、ブラッド様にご迷惑をかける訳にはいかない。
「承知いたしましたわ。それでしたら、私も出来る限り協力いたします。それから…お父様、お母様、明日からまた、貴族学院へ通いますわ。これ以上お休みをしている訳には、いきませんので」
学院のことを考えると、恐怖で吐きそうになる。でも、これ以上逃げ続ける訳にはいかないのだ。たとえどんなに辛くても、私は伯爵令嬢。立派に貴族学院を卒業する義務がある。
両親には散々迷惑をかけた、お兄様やブラッド様にも心配をかけてしまった。彼らを安心させるためにも、貴族学院だけは卒業したいのだ。
「分かったよ、それじゃあ、明日から学院に通いなさい。ただし、無理はいけないよ」
「アントアーネは本当に頑張り屋さんね。お父様の言う通り、無理はしないでちょうだいね」
穏やかな表情でほほ笑む両親。絶対に反対されると思っていたのに…一体どういう事かしら?
さらに
「アントアーネは一度言い出したらきかないからな。まあ、アントアーネならきっと、無事に卒業できるよ。君が笑顔で卒業する姿、俺は楽しみにしているよ」
そう言って笑ったお兄様。本当にどうしたのかしら?
とはいえ、皆私を信じて背中を押してくれているのだ。この期待に応えるためにも、絶対に卒業しないと!
ブラッド様とお兄様がこの国に来てから、早10日。熱も下がり、すっかり元気になった。この10日間、ずっと私の傍に寄り添ってくれたブラッド様。今日も中庭で散歩をしていた私の元に、ストールを持ってやってきてくれた。
「このストール、温かいですわ。それに…」
ブラッド様の匂いがする。
あの後、お兄様にこっそり本当にブラッド様に婚約者がいないのか聞いたのだが、お兄様曰く、ブラッド様は全く令嬢に興味がないとの事。もちろんブラッド様はとても魅力的なので、彼に近づく令嬢も沢山いるようだが、全く相手にしていないらしい。
令嬢の前では、つねに不愛想なのだとか。
“ブラッド殿は、令嬢に全く興味がない様だよ。このままだと一生独身を貫くのではないかと、夫人が心配しているくらいだ”
そう言って笑っていた。こんなにも優しいブラッド様が、不愛想だなんて、なんだか想像できない。とはいえ、いつまでもブラッド様の優しさに甘えていてはいけない。
「ブラッド様、もう屋敷に戻りましょう。あなたはずっと、暖かいリューズ王国で暮していたのでしょう。この国の寒さには慣れていないでしょう。風邪をひいたら大変ですもの」
そう言って、私にかけてくれたストールを、彼にかけた。
「アントアーネは優しいね。俺は鍛えているから、大丈夫だよ。さあ、屋敷に戻ろう」
すっと私の手を取ったブラッド様。その温もりが、心地いい。
でも、いつまでも幸せに浸っている訳にはいかない。
「ブラッド様、この後父に話しがありますので、私はこれで失礼いたします」
笑顔でブラッド様の元を離れようとしたのだが
「それなら俺も行くよ。それじゃあ、伯爵の元に行こうか」
そう言って、私の手を引いて歩き出したのだ。
ブラッド様に聞かれて困る話でもないし、まあいいか。
お父様の元に行くと、お兄様とお母様も一緒にいた。
「ちょうどいいところに来たね。アントアーネにも話しておかないと。君も落ち着いたし、俺は今日の夕方、リューズ王国に帰るよ。留学期間も後半年だし。最後の追い込みをしたいからね」
「まあ、そうだったのですね。お忙しいのに私の為に、急遽帰国して頂きありがとうございました。お兄様が帰るという事は、ブラッド様も?」
隣にいたブラッド様の方を見た。ブラッド様とも、もうお別れなのね。分かっていたことだけれど、なんだか胸の奥がズキリと痛んだ。
「アントアーネ、そんな顔をしないで。俺はもう少し、この国でお世話になる予定だよ。せっかくサルビア王国に来たのだから、色々とこの国の事を学びたくてね。それに両親からも、まだ帰って来るなと強く言われているから」
「そうなのですね」
よかった!ブラッド様は、まだこの国にいて下さる…て、私は何を喜んでいるのかしら。彼はこの国の事を学ぶために、残るだけなのに。
それにこれ以上、ブラッド様にご迷惑をかける訳にはいかない。
「承知いたしましたわ。それでしたら、私も出来る限り協力いたします。それから…お父様、お母様、明日からまた、貴族学院へ通いますわ。これ以上お休みをしている訳には、いきませんので」
学院のことを考えると、恐怖で吐きそうになる。でも、これ以上逃げ続ける訳にはいかないのだ。たとえどんなに辛くても、私は伯爵令嬢。立派に貴族学院を卒業する義務がある。
両親には散々迷惑をかけた、お兄様やブラッド様にも心配をかけてしまった。彼らを安心させるためにも、貴族学院だけは卒業したいのだ。
「分かったよ、それじゃあ、明日から学院に通いなさい。ただし、無理はいけないよ」
「アントアーネは本当に頑張り屋さんね。お父様の言う通り、無理はしないでちょうだいね」
穏やかな表情でほほ笑む両親。絶対に反対されると思っていたのに…一体どういう事かしら?
さらに
「アントアーネは一度言い出したらきかないからな。まあ、アントアーネならきっと、無事に卒業できるよ。君が笑顔で卒業する姿、俺は楽しみにしているよ」
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