7 / 53
第7話:ジャンヌとの出会い~シャーロン視点~
しおりを挟む
「シャーロン、いいか。もう二度とジャンヌ嬢に関わるな。これはシャーロンの為でもあるのだ。分かったな」
「あなたが他の令嬢とあの様な行為を行っていただなんて…それだけジャンヌ嬢が嫌いなのだと思ったのだけど…シャーロン、どうしてそんなにジャンヌ嬢との婚約破棄を嫌がったの?あなた、ずっと彼女に冷たかったじゃない。婚約者らしい事だって、ほとんどしてこなかったのに。私はあなたが何を考えているのか、さっぱり分からないわ」
ジャンヌたちが帰った後、1人客間から席を立つことが出来ずに涙を流す僕に、両親が話しかけて来た。
「僕はただ…僕が味わった悲しみを、ジャンヌにも分かって欲しかっただけなんだ…だから僕は…」
「シャーロン、一体何を言っているの?」
「でも…結局彼女を失った…しばらくは僕を1人にして下さい。僕は部屋に戻ります」
「待って、シャーロン」
フラフラと自室に戻ってきた。ポロポロと溢れる涙を止める事は出来ない。僕は本当に、ジャンヌを心から愛していたのだ。決して彼女が嫌いで、ジャンヌに冷たくしていた訳ではない。それなのに、どうしてこんな事に…
彼女と初めて出会ったのは、僕が7歳の時。7歳になったと同時に、騎士団に入れられたのだ。正直騎士団なんてむさ苦しいところ、嫌で仕方がなかった。稽古は物凄く厳しいし、先輩たちも意地悪だ。特に先輩たちは、綺麗な顔立ちをしている僕が気に入らなかったのだろう。集中的にしごかれ、身も心もボロボロだった。
あの日も先輩たちに虐められ、1人騎士団の稽古裏で泣いていた。
「大丈夫?あの人たちに、また意地悪されたのでしょう?男の嫉妬って本当に醜いわよね。はい、ハンカチ」
そう声をかけてきてくれたのが、ジャンヌだった。太陽の光を浴びたキラキラと美しいオレンジ色の髪を1つにまとめていたジャンヌ。少し吊り上がった目が、怖そうな印象を受けるが、それでも可愛らしい少女だった。
「ありがとう…僕、もう騎士団なんて嫌だ。こんな所、居たくない」
女の子の前で涙を流すなんて、みっともない。そんな事は分かっているが、僕は涙を止める事なんてできなかった。そんな僕を、何を思ったのかギュッと抱きしめて来たのだ。
「き…君、一体何を考えているのだい?」
「だってあなた、辛いのでしょう?私の腕の中で好きなだけ泣いたらいいわ。私ね、この騎士団が大好きなの。だからね、あなたにも騎士団が少しでも好きになって欲しい。私に任せて」
そう言ってほほ笑んでいたジャンヌ。この子は一体何を言っているのだろう。こんな場所、好きになるはずなんてないのに…
「そろそろ私、戻るわね。あなたも落ち着いたら戻って来て。あなたが戻って来るまでに、あなたが少しでも居場所のいい場所に変えておくわ」
そう言って、ジャンヌは笑顔で戻って行ったのだ。
あの子、一体何を言っているのだろう。
僕もそろそろ戻らないと、また先輩たちに意地悪をされる。重い腰を持ち上げ、稽古場へと戻る。すると、なぜか皆が集まっていた。一体何をしているのだろう。
そっと覗いてみると、いつも僕に意地悪をしている先輩3人と、ジャンヌが言い合いをしていた。そして、どうやら3対1で勝負をする事になった様だ。
あり得ない、僕と同じくらいの少女1人に対し、僕たちよりも大きな男3人が勝負だなんて…そう思っている間にも、勝負が始まった。
このままではジャンヌが…そう思ったのも束の間。ジャンヌは3人相手に必死に戦っていた。それにしても、卑怯にもほどがある。3対1だなんて。
ジャンヌは何度も竹刀で攻撃を受けている。きっと痛いだろう。それでも必死に反撃をしているのだ。そんな中、なんとジャンヌが3人を倒したのだ。
その場に倒れ込んだジャンヌ。急いで駆けつけようとした時だった。
「ジャンヌ、大丈夫か?本当にお前は、無茶ばっかりして」
赤い髪の男が、ジャンヌに駆け寄り抱き起したのだ。
「ありがとう、大丈夫よ」
その男ににっこり微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、先輩たちの元に向かうジャンヌ。
「私の勝ちですよ。約束は守って頂きますから」
「ああ…もう二度とシャーロンに酷い事はしないよ…それから、教育係も降りる」
先輩たちがそう呟くと、僕の元にやって来て
「今まですまなかった」
そう言って頭を下げたのだ。あの先輩たちが、僕に謝罪するだなんて…
「シャーロン、これであなたを虐める人はいないわ。これからも私たちと一緒に、稽古をしましょうね」
そう言ってジャンヌが微笑んでくれたのだ。その笑顔を見た瞬間、僕の鼓動が一気に早くなるのを感じた。僕はこの時、ジャンヌに恋をしたのだった。
「あなたが他の令嬢とあの様な行為を行っていただなんて…それだけジャンヌ嬢が嫌いなのだと思ったのだけど…シャーロン、どうしてそんなにジャンヌ嬢との婚約破棄を嫌がったの?あなた、ずっと彼女に冷たかったじゃない。婚約者らしい事だって、ほとんどしてこなかったのに。私はあなたが何を考えているのか、さっぱり分からないわ」
ジャンヌたちが帰った後、1人客間から席を立つことが出来ずに涙を流す僕に、両親が話しかけて来た。
「僕はただ…僕が味わった悲しみを、ジャンヌにも分かって欲しかっただけなんだ…だから僕は…」
「シャーロン、一体何を言っているの?」
「でも…結局彼女を失った…しばらくは僕を1人にして下さい。僕は部屋に戻ります」
「待って、シャーロン」
フラフラと自室に戻ってきた。ポロポロと溢れる涙を止める事は出来ない。僕は本当に、ジャンヌを心から愛していたのだ。決して彼女が嫌いで、ジャンヌに冷たくしていた訳ではない。それなのに、どうしてこんな事に…
彼女と初めて出会ったのは、僕が7歳の時。7歳になったと同時に、騎士団に入れられたのだ。正直騎士団なんてむさ苦しいところ、嫌で仕方がなかった。稽古は物凄く厳しいし、先輩たちも意地悪だ。特に先輩たちは、綺麗な顔立ちをしている僕が気に入らなかったのだろう。集中的にしごかれ、身も心もボロボロだった。
あの日も先輩たちに虐められ、1人騎士団の稽古裏で泣いていた。
「大丈夫?あの人たちに、また意地悪されたのでしょう?男の嫉妬って本当に醜いわよね。はい、ハンカチ」
そう声をかけてきてくれたのが、ジャンヌだった。太陽の光を浴びたキラキラと美しいオレンジ色の髪を1つにまとめていたジャンヌ。少し吊り上がった目が、怖そうな印象を受けるが、それでも可愛らしい少女だった。
「ありがとう…僕、もう騎士団なんて嫌だ。こんな所、居たくない」
女の子の前で涙を流すなんて、みっともない。そんな事は分かっているが、僕は涙を止める事なんてできなかった。そんな僕を、何を思ったのかギュッと抱きしめて来たのだ。
「き…君、一体何を考えているのだい?」
「だってあなた、辛いのでしょう?私の腕の中で好きなだけ泣いたらいいわ。私ね、この騎士団が大好きなの。だからね、あなたにも騎士団が少しでも好きになって欲しい。私に任せて」
そう言ってほほ笑んでいたジャンヌ。この子は一体何を言っているのだろう。こんな場所、好きになるはずなんてないのに…
「そろそろ私、戻るわね。あなたも落ち着いたら戻って来て。あなたが戻って来るまでに、あなたが少しでも居場所のいい場所に変えておくわ」
そう言って、ジャンヌは笑顔で戻って行ったのだ。
あの子、一体何を言っているのだろう。
僕もそろそろ戻らないと、また先輩たちに意地悪をされる。重い腰を持ち上げ、稽古場へと戻る。すると、なぜか皆が集まっていた。一体何をしているのだろう。
そっと覗いてみると、いつも僕に意地悪をしている先輩3人と、ジャンヌが言い合いをしていた。そして、どうやら3対1で勝負をする事になった様だ。
あり得ない、僕と同じくらいの少女1人に対し、僕たちよりも大きな男3人が勝負だなんて…そう思っている間にも、勝負が始まった。
このままではジャンヌが…そう思ったのも束の間。ジャンヌは3人相手に必死に戦っていた。それにしても、卑怯にもほどがある。3対1だなんて。
ジャンヌは何度も竹刀で攻撃を受けている。きっと痛いだろう。それでも必死に反撃をしているのだ。そんな中、なんとジャンヌが3人を倒したのだ。
その場に倒れ込んだジャンヌ。急いで駆けつけようとした時だった。
「ジャンヌ、大丈夫か?本当にお前は、無茶ばっかりして」
赤い髪の男が、ジャンヌに駆け寄り抱き起したのだ。
「ありがとう、大丈夫よ」
その男ににっこり微笑むと、ゆっくりと立ち上がり、先輩たちの元に向かうジャンヌ。
「私の勝ちですよ。約束は守って頂きますから」
「ああ…もう二度とシャーロンに酷い事はしないよ…それから、教育係も降りる」
先輩たちがそう呟くと、僕の元にやって来て
「今まですまなかった」
そう言って頭を下げたのだ。あの先輩たちが、僕に謝罪するだなんて…
「シャーロン、これであなたを虐める人はいないわ。これからも私たちと一緒に、稽古をしましょうね」
そう言ってジャンヌが微笑んでくれたのだ。その笑顔を見た瞬間、僕の鼓動が一気に早くなるのを感じた。僕はこの時、ジャンヌに恋をしたのだった。
185
あなたにおすすめの小説
【完結】身を引いたつもりが逆効果でした
風見ゆうみ
恋愛
6年前に別れの言葉もなく、あたしの前から姿を消した彼と再会したのは、王子の婚約パレードの時だった。
一緒に遊んでいた頃には知らなかったけれど、彼は実は王子だったらしい。しかもあたしの親友と彼の弟も幼い頃に将来の約束をしていたようで・・・・・。
平民と王族ではつりあわない、そう思い、身を引こうとしたのだけど、なぜか逃してくれません!
というか、婚約者にされそうです!
【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います
りまり
恋愛
私の名前はアリスと言います。
伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。
母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。
その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。
でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。
毎日見る夢に出てくる方だったのです。
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目の人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
【完結】見えてますよ!
ユユ
恋愛
“何故”
私の婚約者が彼だと分かると、第一声はソレだった。
美少女でもなければ醜くもなく。
優秀でもなければ出来損ないでもなく。
高貴でも無ければ下位貴族でもない。
富豪でなければ貧乏でもない。
中の中。
自己主張も存在感もない私は貴族達の中では透明人間のようだった。
唯一認識されるのは婚約者と社交に出る時。
そしてあの言葉が聞こえてくる。
見目麗しく優秀な彼の横に並ぶ私を蔑む令嬢達。
私はずっと願っていた。彼に婚約を解消して欲しいと。
ある日いき過ぎた嫌がらせがきっかけで、見えるようになる。
★注意★
・閑話にはR18要素を含みます。
読まなくても大丈夫です。
・作り話です。
・合わない方はご退出願います。
・完結しています。
その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*
音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。
塩対応より下があるなんて……。
この婚約は間違っている?
*2021年7月完結
殿下、毒殺はお断りいたします
石里 唯
恋愛
公爵令嬢エリザベスは、王太子エドワードから幼いころから熱烈に求婚され続けているが、頑なに断り続けている。
彼女には、前世、心から愛した相手と結ばれ、毒殺された記憶があり、今生の目標は、ただ穏やかな結婚と人生を全うすることなのだ。
容姿端麗、文武両道、加えて王太子という立場で国中の令嬢たちの憧れであるエドワードと結婚するなどとんでもない選択なのだ。
彼女の拒絶を全く意に介しない王太子、彼女を溺愛し生涯手元に置くと公言する兄を振り切って彼女は人生の目標を達成できるのだろうか。
「小説家になろう」サイトで完結済みです。大まかな流れに変更はありません。
「小説家になろう」サイトで番外編を投稿しています。
【長編版】この戦いが終わったら一緒になろうと約束していた勇者は、私の目の前で皇女様との結婚を選んだ
・めぐめぐ・
恋愛
神官アウラは、勇者で幼馴染であるダグと将来を誓い合った仲だったが、彼は魔王討伐の褒美としてイリス皇女との結婚を打診され、それをアウラの目の前で快諾する。
アウラと交わした結婚の約束は、神聖魔法の使い手である彼女を魔王討伐パーティーに引き入れるためにダグがついた嘘だったのだ。
『お前みたいな、ヤれば魔法を使えなくなる女となんて、誰が結婚するんだよ。神聖魔法を使うことしか取り柄のない役立たずのくせに』
そう書かれた手紙によって捨てらたアウラ。
傷心する彼女に、同じパーティー仲間の盾役マーヴィが、自分の故郷にやってこないかと声をかける。
アウラは心の傷を癒すため、マーヴィとともに彼の故郷へと向かうのだった。
捨てられた主人公がパーティー仲間の盾役と幸せになる、ちょいざまぁありの恋愛ファンタジー長編版。
--注意--
こちらは、以前アップした同タイトル短編作品の長編版です。
一部設定が変更になっていますが、短編版の文章を流用してる部分が多分にあります。
二人の関わりを短編版よりも増しましたので(当社比)、ご興味あれば是非♪
※色々とガバガバです。頭空っぽにしてお読みください。
※力があれば平民が皇帝になれるような世界観です。
あなただけが私を信じてくれたから
樹里
恋愛
王太子殿下の婚約者であるアリシア・トラヴィス侯爵令嬢は、茶会において王女殺害を企てたとして冤罪で投獄される。それは王太子殿下と恋仲であるアリシアの妹が彼女を排除するために計画した犯行だと思われた。
一方、自分を信じてくれるシメオン・バーナード卿の調査の甲斐もなく、アリシアは結局そのまま断罪されてしまう。
しかし彼女が次に目を覚ますと、茶会の日に戻っていた。その日を境に、冤罪をかけられ、断罪されるたびに茶会前に回帰するようになってしまった。
処刑を免れようとそのたびに違った行動を起こしてきたアリシアが、最後に下した決断は。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる