私だってあなたなんて願い下げです!これからの人生は好きに生きます

Karamimi

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第19話:ジャンヌが幸せならそれでいい~グラディオン視点~

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ゆっくり目を覚ますと、見覚えのない天井が…ここは一体どこだ?

「グラディオン、よかった。目覚めたのだな」

「本当によかったわ。こんな大けがをするだなんて。それにしても、護衛も付けずに街に出て、悪党に絡まれるだなんて。あなたは侯爵家の嫡男なのよ。もっと自覚も持たないと」

涙を流しながら、俺に抱き着く母上。後ろには同じく涙ぐんでいる父上の姿も。

悪党に絡まれた?一体どういうことだ?

そうだ、ジャンヌ!

「それでジャンヌはどうなった?ジャンヌの無罪は晴れたのですか?」

俺の怪我なんてどうでもいい、ジャンヌの事が心配だ。

「ジャンヌ嬢の件は我々にはわからないな。とにかくグラディオンは酷い怪我をしているのだから、治療に専念しなさい。それから、もう悪党と無意味な戦いをしない事だな。全くお前は」

無意味な戦いとは、どういうことだ?俺はジャンヌを助けるために、あいつらと戦ったのだが…

両親の言っている意味が全く分からなかったが、どうやら俺は助かった様だ。

ただ、ジャンヌの件がどうなったのか分からず、不安でたまらない。ジャンヌの無実は証明されたのか?

その時だった。隊長が病室にお見舞いに来てくれたのだ。

「グラディオン、意識が戻った様だな。よかった」

「隊長、ジャンヌは…ジャンヌの件はどうなったのですか?」

隊長に必死に訴えた。すると

「ジャンヌの件だが、真犯人が見つかったよ。どうやら目撃者と名乗っていた者たちが、実は犯人だった様だ。シャーロンが彼らを捕まえ、自首させて無事解決したよ。本人たちも出来心でやったとの事で、深く反省している様だ。だから、これ以上大事にはしないつもりだ」

一体どういう事だ?あいつらは裏の組織と繋がっていたはずだぞ。それに自首とは一体…

「そうそう、君が血だらけで倒れているのを見つけ、病院に運んでくれたのは、シャーロンの家臣の様だ。シャーロンの家臣が、たまたま買い物で街に出ている時に見つけたらしい。シャーロンに礼を言っておけよ」

シャーロンの家臣がたまたま買い物で街に出ている時に、俺を発見しただと?意味が分からない。一体何が起きているのだろう。

混乱する俺を他所に、俺の姿を確認した隊長は足早に病室から出て行ったのだ。

その後分かった話なのだが、俺が悪党を倒して大けがを負った事件と、ジャンヌを陥れた事件は、全く別のものとして扱われていたらしい。

さらに今回、ジャンヌを救った英雄となったシャーロンは、ジャンヌとの婚約が決まったのだ。

ふざけるな!ジャンヌの無実を晴らしたのは俺なのに。どうしてシャーロン1人がジャンヌを助けたみたいになっているのだよ!

とにかく退院したら、すぐに隊長やジャンヌに話そう。そう思っていたのだが…

「グラディオン、体調はどう?もう、悪党なんか相手にするから。でも、あなたが無意味に悪党と戦うなんて考えられないわ。何かあったの?」

お見舞いに来たジャンヌが、俺に話しかけてきたのだ。やっぱりジャンヌは、俺の事を分かってくれているのだな。よし、今この場で、本当の事を話そう。そう思った時だった。

「そうそう、私ね、シャーロン様と婚約する事が決まったの。彼、私を必死に助けてくれたのよ。まさか私を助けてくれる殿方が現れるだなんて…それでね、シャーロン様たっての希望で私、騎士団を辞める事にしたの。グラディオン、私の仲良くしてくれてありがとう」

ジャンヌがそれはそれは嬉しそうにそう言ったのだ。こんなジャンヌの顔、初めて見た。きっとジャンヌは、シャーロンの事が好きなのだろう…

ジャンヌのこの幸せそうな顔を、奪いたくはない…

「そうか、よかったな。おめでとう。幸せになれよ」

気が付くと、そんな言葉を掛けていた。

「ありがとう、それじゃあ、シャーロン様が待っているから行くわね」

そう言って笑顔で病室を出ていくジャンヌ。その瞬間、涙が溢れ出た。泣いても仕方がないのは分かっている。でも、泣かずにはいられないのだ。

胸が張り裂けそうになるくらい辛い。いつか俺が、ジャンヌと…そんな淡い期待を抱いていた気持ちも、今この場で、もろくも崩れ落ちたのだ…

もしも俺があの時、意識を飛ばしていなければ、今頃ジャンヌは俺と…

いいや、もしなんて言葉は、この世には存在しない。過ぎた事はもうどうにもならない。

俺はジャンヌのあの笑顔が好きだ。今後俺がジャンヌの為に出来る事は…

俺はジャンヌや隊長に真実を話すのは止めた。そんな事をすればきっと、ジャンヌは困惑し、苦しむだろう。ジャンヌが困る姿を見たくはない。

俺はジャンヌのあの幸せそうな顔を、守りたい。ジャンヌが幸せなら、それでいい。

あの時の出来事は、今後誰かに話すことは絶対にない。俺の心の中だけにしまっておこう。そう心に決めたのだった。
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