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18 リンと摩周① ~トーマス目線
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※残酷な描写が含まれます。
ご注意下さい。
~トーマス目線
「俺はね、リンの中にだけ存在した、リンのもうひとつの人格、摩周だ」
正気に戻ったリリアを抱き寄せて、レオナルドに告白した。
リリアの瞳から大粒の涙がいくつも転がり落ちる。
「ごめんなさ・・・・ごめ・・・・なさい・・・・レオナルド、さ・・・・ま」
「大丈夫だよ、リリア。俺に任せな?ちゃんと説明してやるから」
リリアが小刻みに頷いて俺の手を握りしめた。
「・・・・・・リンとは・・・・リリアのことか?」
「そうだよ。リリアはリン、トーマスは摩周。リリアと俺は転生者だ。前世の記憶を持っている。前世の俺たちは、地球という星の日本という国で生きていた。こことは違う世界だ」
「転生者・・・・・・前世の、記憶・・・・・・地球・・・・・・?」
「長くなるが聞いて欲しい。そしてどうかリリアと俺を受け入れてくれないか」
「・・・・・・分かった、聞こう。聞かせて、くれ」
それは遠いようで、つい最近のような、幼いリンの記憶。
ゴミが天井まで積み上がった薄暗いワンルームのアパートで、幼いリンは激しい空腹を我慢できずにそのゴミを漁っていた。
カビの生えたパンのミミを見付け、躊躇いもなく口の中に押し込むと、真っ黒の蛇口に口をつけて大量の水で流し込んだ。
ふらふらと座り込み、ゴミに寄りかかって目を閉じる。
誰か、誰か、ねえ、誰か・・・・・・
ガチャガチャと鍵を回す音が静かな部屋に響く。
リンはあわてて起き上がり、ゴミの後ろに隠れた。
「あんた、まだ生きてたの?」
リンとよく似た美しい女がその顔を醜く歪ませ、吐き捨てるように呟いた。
「・・・・・・ごめんなさ・・・・」
「うるさい!!喋るな!」
バンッッ
いきなり頬を力任せにひっ叩かれて、実年齢よりもずっと小さく痩せたリンの身体は、いとも簡単にゴミの山に吹っ飛ばされた。
ボサボサに伸びた髪の毛を鷲掴みにして引きずり回し、腹に強烈な蹴りを入れるこの女は、リンの母親だ。
叩き、殴り、蹴り、振り回し、投げ飛ばす。
一通り痛め付けて煙草でひと息つくと、レジ袋から六枚入りの食パンを取り出してリンに投げつけた。
垂れ流れる鼻血を小さな手の甲で拭い、ヨロヨロと起き上がりそれを拾って貪るように食べるリン。
その横でスマホを片手に缶ビールをあおる母親。
5、6本一気に飲むと、そのままゴミの山に寄りかかりイビキをかきだした。
リンはそんな母親を見て、今日もこの地獄のような一日が終わったことを実感し、息を吐く。
これが幼いリンの世界。
生まれて一度もこの部屋から出たことがないリンにはこの世界が全てだった。
締め切ったカーテンの隙間から黄色い日差しが差しかかる頃、気怠そうに起き上がった母親が化粧を始める。
顔を白く塗りたくり、真っ赤な口紅を差し、これでもかと香水を振りかけてドアから出ていく母親を、リンは黙って見送る。
母親は一度出掛けると数日は戻らない。
叩かれないで済むのはいいが、そのうちまた恐ろしい程の空腹に襲われるだろう。
テレビを付けた。
ゴミに埋もれたテレビの中で、知らない人間たちが笑ってる。
「そっちの世界は楽しそうでいいね」
小さく呟いてテレビを消した。
誰か、誰か、誰でもいいよ、あたしのそばにいて。
手を繋いで、抱き合って眠るの。
ねえ、お願い、誰か。
あたしの側にずっといてくれる、誰かが欲しい。
そう願い続けたリンの思いは、神に聞き入れられたのか。
その夜、リンの心の中に、俺『摩周』が生まれた。
────────────────────
19 リンと摩周②
~レオナルドとトーマス目線 へ
ご注意下さい。
~トーマス目線
「俺はね、リンの中にだけ存在した、リンのもうひとつの人格、摩周だ」
正気に戻ったリリアを抱き寄せて、レオナルドに告白した。
リリアの瞳から大粒の涙がいくつも転がり落ちる。
「ごめんなさ・・・・ごめ・・・・なさい・・・・レオナルド、さ・・・・ま」
「大丈夫だよ、リリア。俺に任せな?ちゃんと説明してやるから」
リリアが小刻みに頷いて俺の手を握りしめた。
「・・・・・・リンとは・・・・リリアのことか?」
「そうだよ。リリアはリン、トーマスは摩周。リリアと俺は転生者だ。前世の記憶を持っている。前世の俺たちは、地球という星の日本という国で生きていた。こことは違う世界だ」
「転生者・・・・・・前世の、記憶・・・・・・地球・・・・・・?」
「長くなるが聞いて欲しい。そしてどうかリリアと俺を受け入れてくれないか」
「・・・・・・分かった、聞こう。聞かせて、くれ」
それは遠いようで、つい最近のような、幼いリンの記憶。
ゴミが天井まで積み上がった薄暗いワンルームのアパートで、幼いリンは激しい空腹を我慢できずにそのゴミを漁っていた。
カビの生えたパンのミミを見付け、躊躇いもなく口の中に押し込むと、真っ黒の蛇口に口をつけて大量の水で流し込んだ。
ふらふらと座り込み、ゴミに寄りかかって目を閉じる。
誰か、誰か、ねえ、誰か・・・・・・
ガチャガチャと鍵を回す音が静かな部屋に響く。
リンはあわてて起き上がり、ゴミの後ろに隠れた。
「あんた、まだ生きてたの?」
リンとよく似た美しい女がその顔を醜く歪ませ、吐き捨てるように呟いた。
「・・・・・・ごめんなさ・・・・」
「うるさい!!喋るな!」
バンッッ
いきなり頬を力任せにひっ叩かれて、実年齢よりもずっと小さく痩せたリンの身体は、いとも簡単にゴミの山に吹っ飛ばされた。
ボサボサに伸びた髪の毛を鷲掴みにして引きずり回し、腹に強烈な蹴りを入れるこの女は、リンの母親だ。
叩き、殴り、蹴り、振り回し、投げ飛ばす。
一通り痛め付けて煙草でひと息つくと、レジ袋から六枚入りの食パンを取り出してリンに投げつけた。
垂れ流れる鼻血を小さな手の甲で拭い、ヨロヨロと起き上がりそれを拾って貪るように食べるリン。
その横でスマホを片手に缶ビールをあおる母親。
5、6本一気に飲むと、そのままゴミの山に寄りかかりイビキをかきだした。
リンはそんな母親を見て、今日もこの地獄のような一日が終わったことを実感し、息を吐く。
これが幼いリンの世界。
生まれて一度もこの部屋から出たことがないリンにはこの世界が全てだった。
締め切ったカーテンの隙間から黄色い日差しが差しかかる頃、気怠そうに起き上がった母親が化粧を始める。
顔を白く塗りたくり、真っ赤な口紅を差し、これでもかと香水を振りかけてドアから出ていく母親を、リンは黙って見送る。
母親は一度出掛けると数日は戻らない。
叩かれないで済むのはいいが、そのうちまた恐ろしい程の空腹に襲われるだろう。
テレビを付けた。
ゴミに埋もれたテレビの中で、知らない人間たちが笑ってる。
「そっちの世界は楽しそうでいいね」
小さく呟いてテレビを消した。
誰か、誰か、誰でもいいよ、あたしのそばにいて。
手を繋いで、抱き合って眠るの。
ねえ、お願い、誰か。
あたしの側にずっといてくれる、誰かが欲しい。
そう願い続けたリンの思いは、神に聞き入れられたのか。
その夜、リンの心の中に、俺『摩周』が生まれた。
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