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29 連行 ~セバス目線
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国王崩御より三日前のこと。
「セバス、この手紙をすぐにコンポジット伯爵家に届けてくれ」
朝の執務室、レオナルド様が黒く縁取りされた封筒を俺に差し出した。
「かしこまりました」
封筒を受け取り、胸の内ポケットに仕舞って執務室を出た。
リリア様が死んだ事にする為の準備は着々と進んでいる。
わたしはこのボンディング公爵家の執事、セバス。
そして、前世は『瀬川修』として国民的アイドル『加々美リン』のマネージャーをしていた。
それを思い出したのは、リリア様がレオナルド様の婚約者としてこの屋敷にやって来た時の事。
すぐにレオナルド様と正式な婚約を結ばせた。
ああ、これでずっと可愛い娘が幸せに暮らす様を見ていることが出来る。
レオナルド様ならリリア様を大切にしてくれるだろう。
現に彼はリリア様にドップリと嵌まってしまっているようだ。
そしてリリア様もまた、レオナルド様を愛し始めているのが解った。
今度こそ、幸せになってほしい。
俺は幸せなリリア様をここで見守りながら生きていく。
しかし、リリア様は半月ほど経った頃から様子がおかしくなった。
ああ、リン、またお前は壊れてしまうのか。
レオナルド様でも駄目か。
何がお前をそんなに苦しめる?
リリアとなった今でさえ、お前を苦しめる大きな闇は消えることはないのか?
そしてトーマス様が訪ねて来たあの日、すべてを理解した。
『加々美リン』の憂いと悲しみのすべてを。
ああ、トーマス様、貴方がリンの『ましゅう』か。
大丈夫、レオナルド様が受け入れられないと言うなら、俺がお前たちを連れて、何処まででも逃げてやる。
だが、レオナルド様は『リン』と『ましゅう』を受け入れて、その愛で二人を救ってくれた。
もう、安心だ。
そう思っていたのに、国王があのマサヤだと?
アイツはリンを追いかけてきたのか。
本当に執念深い男だ。狂ってる。
リリア様を守るための話し合いの末、リリア様は死んだことにすると決まった。
俺はレオナルド様から受け取った黒縁の封筒をポケットから取り出し、眺めた。
本当に大丈夫か?
そんなに上手くいくのものか?
前世が詐欺師の俺は用心深いんだ。
この先リリア様が一生安心して暮らしていくには、国王は死んだほうがいいんじゃないか?
国王を殺す・・・・・・?
王殺しは斬首刑だ。
誰にも知られずこの国の王を殺すなど、出来るはずがない。
「セバス、レオナルド様から手紙を預かった?」
回廊を歩く俺を追いかけてきたリリア様が聞いてきた。
「はい、こちらに。」
「その手紙、私にちょうだい?」
「何故でごさいましょう?」
「お願い、その手紙が必要なの」
リリア様の目がギラギラと強い光を放っている。
これは、何かを決意した人間の目だ。
「リリア様、いけません。リリア様が国王を殺したいと仰るなら、わたくしが殺します。このセバス、あなたの為なら斬首刑も喜んで賜りましょう」
リリア様が俺を見た。
この顔は・・・・・・やっぱりな。
リリア様は国王を殺そうとしている。
「セバス?何故そんな事を言うの?とにかくその手紙を私にちょうだい!」
これはもう、本当の事を言わなければリリア様は暴走してしまう。
「お渡ししましょう。貴女が、自ら国王を殺さないと約束してくださるなら。その前にまず、わたくしの話を聞いて下さいますか?」
「話?いいから手紙を・・・・・・」
「リン、俺は瀬川だ。今度こそ命に変えてもお前を守ると決めている。お前が国王を殺すと言うなら、絶対にこの手紙は渡せない」
リリア様の目が大きく見開かれた。
「瀬川・・・・・・さん?瀬川さんなの!何で瀬川さんがこの世界にいるの?!!」
「死んだ。酒の飲み過ぎだ。お前が死んでタガが外れた」
「はあ?! ちょ、ちょっとこっち来て!」
リリア様の部屋に強引に押し込まれた。
「リリア様、いけません。令嬢が私室に従者を連れ込むなど、誰かに見られては・・・・・・」
「もう!いいから!瀬川さん、久しぶり!」
そう言ってリリア様が勢いよく抱きついてきた。
俺も優しく抱きしめ返し、
「おう。」
と返事をする。
「あたし、いっつも瀬川さんに会いたいなって思ってた!瀬川さんはあたしのお父さんみたいな人だったから!」
「俺もお前を大事な娘だと思ってたよ」
そう言うと、またぎゅうぎゅうと抱きついてきた。
ああ、俺の娘はやっぱり可愛いな。
「それにしても、お前、何を考えている?国王を殺すなど絶対に駄目だ。さっきも言った通り、お前がやるくらいなら俺がやる。これだけは譲れない」
「そうじゃないの。えっと、セバスが瀬川さんなら話が早いね。あたしにいい考えがあるの。レオナルド様とトーマスには内緒よ?」
その瞬間、リリア様の部屋のドアが壊れるほどの勢いで大きな音を立てて開かれた。
「何が内緒だ馬鹿者!!!セバス!貴様リリアの部屋で何をしている!!」
ドアの前に立つレオナルド様が、物凄い怒りの形相で俺を睨み付けている。
今にも飛びかかって来て俺の喉頚に食らいつきそうな獣のような目付きで。
その手は固く拳を握り、ブルブルと震えている。
「リリア!どういう事だよ!俺にまで隠し事しようなんて俺はショックで死にそうだ!」
「あわわ!レオナルド様!トーマスも!」
レオナルド様は乱暴にリリア様の手を掴み引っ張ると
「来い!!リリア!セバス、貴様もだ!!」
そう言って彼女を肩に担ぎ上げた。
あー、これはもうレオナルド様にも本当の事を話さねぇと、マジで殺される。
俺と担がれたリリア様は項垂れて、レオナルド様の執務室に連行された。
────────────────────
30 リリアの決意 へ
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