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30 リリアの決意
しおりを挟むレオナルド様が物凄く怒ってる。
執務室のソファに足を組み、背もたれに両肘を掛けて座ったまま、セバスを睨み付けている。
トーマスはふてくされた顔をして私を睨んでる。
「セバス、まずはお前から説明しろ。何故リリアの私室に入り、リリアと抱き合っていた?そしてリリア、お前は俺に隠し事をしようとした。その事をきちんと説明しろ」
さっきの激しさから打って変わって、今の静かな怒りが余計に恐ろしい。
「おそれながらレオナルド様、リリア様の許しがなければわたくしの口から説明する事は出来ません」
そう言ってセバスが私を見るから、私は高速で何度も頷いた。
「それではご説明いたしましょう。実はわたくしも転生者でございます。アイドル『加々美リン』のマネージャー、瀬川修。リンの父親代わりとして側に居りました」
セバスが大したことではない、とでも言うようにさらりと答える。
「は?せ、瀬川さん?!何だよ!セバスは瀬川さんかよ!うわーい!瀬川さんだ!」
トーマスがセバスに勢いよく抱きついた。
ほらね、トーマスだってそうなるでしょ?摩周も瀬川さんが大好きだったんだから。
「トーマス、残念ながら、瀬川さんは摩周の事は知らないのよ?」
「だよなー、ちぇーっ!つまんないの!」
トーマスが唇を尖らせた。
「知ってたぞ、リンの中に『ましゅう』という存在が居たことは」
「え?な、何で?」
「リンが『ましゅう』と喋ってるのを聞いたことがあった。リンが何か大きな闇を抱えている事にも気づいてた」
「「瀬川さん!」」
そう言って、また二人でギューッとセバスに抱きつくと、レオナルド様が深くため息をついた。
「レオナルド、瀬川さんはリンと摩周があの世界で唯一、心を許すことが出来た大人だったんだ。頼む!セバスとリリアを許してあげてくれ!」
トーマスが必死に私とセバスを庇ってくれる。
「リンのマネージャー、か・・・・・・。リリアの周りはリンの知り合いだらけだな。俺は寂しいぞ」
あ、拗ねたレオナルド様が可愛い!
私はレオナルド様の隣に座ると、ギュッと抱きしめて、膨れたその頬にキスをした。
「レオナルド様、大好きです。私はレオナルド様に出会えて本当に幸せです。こんな幸せな世界はレオナルド様の隣しかあり得ません」
「では、何故俺に隠し事をする?リリアは俺が信用出来ないのか?」
真っ赤になりながらも大事なところは見逃してくれない。
もう、正直に話そうと決心した。
「レオナルド様、トーマス、セバスも、私の話を聞いてくれる? あ、ナタリーも呼んで来て」
「あたしはここにいるわよ?」
ナタリーがドアの隙間から顔を出した。
盗み見してたのね、さすが悪役令嬢ナタリー。
「みんな、驚かないで聞いて・・・・・・私はマサヤを殺す。それを実行しようと思ったの」
「「「なっ!?」」」
「何故そんな大切なことを俺に隠す必要がある!」
レオナルド様が自分の太ももに拳を打ち付けた。
「ごめんなさい。こんな恐ろしいことを考えている悪魔のような自分をレオナルド様に見せたくなかったの。そしてトーマス、貴方にとっては国王は父親でしょ?私は国王がマサヤでなければいいと思ってる。でも、もし本当に国王がマサヤだったとしたら、私がやらなくちゃいけない」
「リリアがやる必要はないよ! 父上は俺がちゃんと止めて見せる!」
「トーマス、あなた、国王を殺そうと思ってるでしょ?リンをあの母親から守ってくれた時みたいに」
「・・・・・っ・・・・・」
「駄目よ、させないわ。トーマスはナタリーと幸せに暮らすの。もちろん私もレオナルド様と幸せに暮らす。そのために私は強くなる。もう、逃げない。私は摩周に、トーマスに依存して、その腕の中に隠れているだけだった。レオナルド様は、そんな私を受け入れて守って下さると仰ったけど、もう守られてばかりではいけないの。私はレオナルド様と愛し愛される対等な夫婦になりたいのよ。だから立ち向かう。悪魔になってでも」
「リリア、お前が悪魔だと言うなら、俺は魔物だ。何があってもお前の側にいる。だから一人で突っ走るな。俺に頼る事は逃げる事とは違う。マサヤを殺す方法を一緒に考えよう」
「レオナルド様・・・・・・」
「リリア様は先ほど何かいい考えがあるとおっしゃっておりましたが?」
そうして私は、計画の全てを話した。
まず、リリア死亡の手紙はコンポジット伯爵家には送ってはいけない。
リリアが死んだと世間に思い込ませてしまっては、この先私は『リリア』として生きて行く事は出来ない。
ずっとコソコソと隠れて生活しなければならなくなる。
それは絶対に嫌だ。
私は『リリア・ボンディング』としてレオナルド様の隣に立ちたい。
出来ることなら子も成したい。
レオナルド様と私の子を。
だから、国王に " だけ " リリアが死んだと伝える。
そしてマサヤが遺書を残したように、リリアも残すのだ。
マサヤがあの『儀式』を一人で行ってしまうほどの強烈な遺書を。
日本語で書けば、マサヤにしか読めない。
国王がマサヤでなければ、何事も起こらないはず。
「なるほど、確かにいい考えだが、どうやって国王だけに知らせるか、そこが問題だ。王宮には物凄い数の人間がいる。その上、国王ともなればその周りは側近や護衛で完全に固められているだろう」
「俺が行く。俺なら王宮の全てを知り尽くしてる。父上の私室にも誰にも気付かれずに侵入できる!」
「いえ、トーマス様はここでお待ちください。その役目、わたくしがいたしましょう」
「セバス!駄目だ!セバスにそんな危ないことはさせられない!」
「危ないと解っておられてご自分で行かれるおつもりでしたか?」
セバスが、まるで駄々をこねる幼子を相手にするかのような穏やかな声で言い、大きくため息をついた。
「トーマス様、いや、トーマス、リリア、俺は今度こそお前たちの父親としての役目を果たす。大丈夫だ。俺はリンのマネージャーになるまで30年以上、詐欺師をしていた。どんな人間でも騙す自信がある。王宮の従者に成り済ますなど簡単だ」
「「詐欺師!」」
私とトーマスの声がハモった。
「俺に任せろ」
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