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31 決まったの?
しおりを挟む王宮から戻ったセバスの口から告げられたのは悲しい結末だった。
やっぱり国王はマサヤだった。
「わたくしが国王の元に辿り着いたとき、彼は寝巻き姿に短剣を差し、馬に跨がっておられました。多分こちらに、リリア様の元に向かおうとなさっていたのだと思います。あのお顔は常軌を逸しておりました。何か薬物を摂取していたものと思われます」
「薬物?確かに前世のマサヤは覚醒剤の常習者だったとナタリーが言ってたが・・・・・・この世界で覚醒剤など聞いたことがない」
レオナルド様の言葉にナタリーが人差し指を立てて左右に振る。
「あるわよ?あたしは最近まで平民として暮らしてたからね、知ってる。多分、ケシよ」
「ケシ?」
「大麻よ。平民の中でも特に貧しい貧困層は、病気や怪我をしても簡単に病院にいくことは出来ないの。だから痛み止めとして、ケシを使ってた。きっと国王はそれをこっそり使用してたのよ」
トーマスが、あぁ、と小さくため息を吐いた。
「リリア様からの遺書を読まれると、一瞬の躊躇いもなく、ご自分の短剣で首を切りご自害なさいました。最期のお言葉は『ああ、リン、俺のことを分かっていたのか、俺を求めてくれるのか、待ってろ、すぐに行く』でございました」
私は両手で顔を覆いその場に泣き崩れた。
レオナルド様が優しく抱きしめてくれる。
「トーマス、トーマス、ごめんね。私はトーマスのお父さんを殺してしまった。ごめんなさい・・・・・・」
「リリア、俺は大丈夫だよ。リリアは父上がマサヤなのか半信半疑だったみたいだけど、俺は確信してたから。俺は父上の私室で見たんだ。『リン』と『マサヤ』の名が刻まれたお揃いの結婚指輪を。ケシの花の燃えカスもね。あいつはね、俺とリリアを結婚させたあと、俺と母上を殺してリリアを自分のモノにするつもりだったんだ。だから、どの道あいつは殺さないと駄目だったんだ。でも最期は自分で、しかも幸せな妄想を抱いて死ぬことが出来た。リリアのお陰だ」
「トーマス・・・・・・」
「父上もさぁ、地獄の世界で苦しんでたんだよ。でも、やっと『マサヤ』から解放されて、次はきっと幸せな世界に生まれ変わる。俺には分かる。これでも一応、あの人の息子だからね」
暗く、重たい雰囲気の中、トーマスは一人晴れ晴れとした顔で笑った。
「さあ、リリア、今度こそ俺とリリアは全ての過去から解放された!幸せになろうぜ?レオナルドはリリアとすぐに結婚するだろ?俺とナタリーはリリアのウエディング姿を見たら、ここを出ていくよ」
トーマスがナタリーの手を握って言った。
ああ・・・・・・トーマス、私たちは本当に離れてしまうのね。
前世からずっと共にあった。
今世では別々の肉体を持って生まれ変わったけれど、それでも一心同体の存在として、離れる事はできなかった。
今、別れの時が来ている。
私たちは離れても、もう大丈夫。
でも、やっぱり淋しい。
本当は側にいたい。
側にいて、お互いの幸せな姿を見ていたい。
でも、そんな我が儘は口が裂けても言えないわ。
トーマスはトーマスの人生を、私は私の人生を歩いていかなければならないのだから。
「出ていく必要はない。お前とナタリーはここで暮らせ」
レオナルド様がさらりと言った。
「レ、レオナルド様?」
「は?な、何で?俺とリリアはもう離れても大丈夫だぞ?そりゃ、ひと月に一回くらいは会いたいけどさ」
「トーマス、お前は俺とリリアの養子に入れ。」
「「は?」」
「国王が崩御したんだ。今後の国内はかなり混乱するだろう。現王弟が国王となったあとも、その混乱は続くはずだ。廃嫡されたとはいえ、国王の直系の血を引くお前が担ぎ上げられるのは目に見えてる。玉座争いに巻き込まれる前にボンディング家に入るのが一番いい。決まりだ」
「き、決まったの?」
「ああ、決まった。俺はこのボンディング公爵家の当主だ。異論は認めない」
異論は認めないって・・・・・・
ど、どこかで聞いたセリフだわ。
「それに、元を正せばお前を生んだのはリンだろう?何も問題はない」
「「た、確かに!」」
そうして、トーマスは私とレオナルド様の養子となることが決まった。
ナタリーは物凄く嬉しそうに、トーマスにぶら下がるように抱きついて、
「トーマス!わたし、ずっとここでリリアちゃんと暮らせるのね!」
と喜んでいた。
笑った顔はトーマスに向いているが、その目は私から離れない。
これもどこかで見た光景だわ。
その夜、私の私室に訪れたレオナルド様に改めてお礼を言うと、レオナルド様は優しく抱きしめておでこにキスをしてくれた。
私はもう、嬉しさを我慢できずにレオナルド様の襟元を掴んで屈ませると、その唇にキスを返した。
「レオナルド様、大好きです。私は貴方だけをずっと愛し続けます。だからレオナルド様も、ずっと私だけを愛して下さい」
約束して?そう言うと、レオナルド様の目の縁が赤く染まった。
「リリア、俺は自分が我慢強い男だと自負している。しかし、お前の事になると自制が効かなくなるんだ。煽るお前が悪い」
そう言って私の肩をゆっくりとベッドに押し倒し、その大きな手で首筋をつつ、と撫でた。
「ごほん!レオナルド様、そこまででございます」
セバス!!盗み見してたのね!
さすが元詐欺師!
「レオナルド様、世の中には順序と言う言葉がございます。嫁入り前のご令嬢に、していい事と悪い事の判断も付きませんか!俺の娘にさわるな!このエロ公爵が!」
あ、セバスがキレた。
レオナルド様は慌てて私から離れると、
「セ、セバス、ま、まて!誤解だ!」
とか何とか言い訳をするから、セバスがますますキレた。
「黙れ!俺の娘には、結婚式まで半径2メートル以内に近づくな!」
今度はレオナルド様が首根っこを掴まれて連行されて行った。
────────────────────
32狂ってる
~レオナルド・ボンディング目線
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