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第二部
36. ロクサーヌの胸の内1
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「ロクサーヌ様、この度の夜会は様々な方にお声掛けなされているんですね。」
アイリーシャは周囲を見渡して、参加者の顔ぶれを眺めると、ノルモンド家の夜会にミューズリー側の貴族が出席している事が珍しかった事から、そのような所感をロクサーヌに伝えた。
するとそんなアイリーシャからの言葉に、ロクサーヌも賛同したのだった。
「そうね、お祖父様が居たら開催できなかったでしょうね。ミューズリ側の貴族を招く夜会だなんて。」
ミューズリーを毛嫌いしている祖父が居たのならば、きっとマキシムをはじめとした、ミューズリーの系譜の人間は我が家の敷居を跨げなかっただろうとロクサーヌも思っていたのだ。
今宵の夜会は、祖父である前ノルモンド公爵が静養のために領地に帰っているから開催できたのだと。
どうやら兄は、祖父と違って血筋など気にせずに、とにかく自分の糧になるか否かで、人との繋がりを作ろうとしている様で、ミューズリー側の貴族とも積極的に関わろうとしていた。だからきっとこのタイミングを前からを狙って居たのだろうなと、妹であるロクサーヌは察した。
そしてそれにはロクサーヌも内心感謝していた。兄が分け隔てなく上位貴族を招待してくれたおかげで、マキシムとまた会う事が出来たのだから。
彼女は、偶然聞いてしまった兄の恐ろしい計画を止めることで頭が一杯であったが、そんな中でも、内心マキシムと再び会って話せた事を少なからず嬉しく思っていたのだ。
あのガーデンパーティーの時に彼がレティシアではなく自分を助けてくれた事で、ロクサーヌの中でマキシム・ステインに対する感情が大きく揺れていたから。
彼は対立するステイン家の人間なのに、王太子殿下の婚約者であるレスティアではなく、ノルモンド家の自分を親身になって助けてくれたのだ。
そんなロクサーヌにとって予想外の彼の行動に、箱入りで育って恋愛経験が全くない御令嬢の心は、動かされない訳が無かった。
けれどもこの仄かな気持ちは、決して人に知られてはいけなかった。自分はノルモンド家の人間だからお祖父様が毛嫌いしているミューズリーの貴族とは仲良く出来る訳ないと、そう思い込んでいたのだ。
だから胸の奥に仕舞い込んで、この思いを悟られない様に裏腹な態度で振る舞っていたのだが、しかし、そんなロクサーヌの胸の内など知らないアイリーシャが、微笑みながら無自覚に彼女を追い込むのだった。
「そうですね、マキシム様もお呼びできて良かったですね。」
「な、何故そこにマキシム様の名前が出てくるのですか?!」
「何故って、とても楽しそうにお話しされてたじゃないですか。」
「見間違えですわ!!」
アイリーシャにまるで胸の内を見透かされた様な事を言われて、ロクサーヌは思わず顔を赤くして、ムキになって反論した。
そんなことない!
絶対にない!!
そう言って、アイリーシャの言葉をひたすらに否定したのだが、すると今度は、そんな彼女の必死の様子をみて、少し意外そうにミハイルまでもが口を開いたのだった。
「ロクサーヌ様は案外マキシムと仲が良いんですね。」
あれが楽しそうな会話に見えていたかと言ったら、ミハイルの目にはそうは映らなかったが、それでも遠慮なく言いたい事を言い合っている様子は険悪とは程遠い、痴話喧嘩の様に思えたのだ。
いつもゲンナリした表情でロクサーヌからの手紙を読んでいるマキシムの姿を見ていたから、もっと冷たい感じで彼女に接するのかと思っていたが、思いの外ちゃんと面倒を見ていたことに、ミハイルは驚いたのであった。
「仲が良いだなんて、そんな!違いますわ!ただ、私が困っている事を相談できるのがあの方しかいなかったから仕方なく一緒に居るだけですわ!」
二人から続け様に指摘を受けて、ロクサーヌは顔を赤くしながらも躍起になって否定を続けた。
「仕方が無いから彼を頼っているだけであって、他に人がいたらスタイン家なんかに頼らないですわ!!」
全くもって本心とは真逆の言葉であるが、兎に角ロクサーヌは否定を続けたのだ。
するとミハイルは、そんな頑ななロクサーヌの様子を見て少しだけ考える様な素振りを見せると、アイリーシャの方を見て彼女と目配せをし、そしてロクサーヌにある提案を持ちかけたのだった。
アイリーシャは周囲を見渡して、参加者の顔ぶれを眺めると、ノルモンド家の夜会にミューズリー側の貴族が出席している事が珍しかった事から、そのような所感をロクサーヌに伝えた。
するとそんなアイリーシャからの言葉に、ロクサーヌも賛同したのだった。
「そうね、お祖父様が居たら開催できなかったでしょうね。ミューズリ側の貴族を招く夜会だなんて。」
ミューズリーを毛嫌いしている祖父が居たのならば、きっとマキシムをはじめとした、ミューズリーの系譜の人間は我が家の敷居を跨げなかっただろうとロクサーヌも思っていたのだ。
今宵の夜会は、祖父である前ノルモンド公爵が静養のために領地に帰っているから開催できたのだと。
どうやら兄は、祖父と違って血筋など気にせずに、とにかく自分の糧になるか否かで、人との繋がりを作ろうとしている様で、ミューズリー側の貴族とも積極的に関わろうとしていた。だからきっとこのタイミングを前からを狙って居たのだろうなと、妹であるロクサーヌは察した。
そしてそれにはロクサーヌも内心感謝していた。兄が分け隔てなく上位貴族を招待してくれたおかげで、マキシムとまた会う事が出来たのだから。
彼女は、偶然聞いてしまった兄の恐ろしい計画を止めることで頭が一杯であったが、そんな中でも、内心マキシムと再び会って話せた事を少なからず嬉しく思っていたのだ。
あのガーデンパーティーの時に彼がレティシアではなく自分を助けてくれた事で、ロクサーヌの中でマキシム・ステインに対する感情が大きく揺れていたから。
彼は対立するステイン家の人間なのに、王太子殿下の婚約者であるレスティアではなく、ノルモンド家の自分を親身になって助けてくれたのだ。
そんなロクサーヌにとって予想外の彼の行動に、箱入りで育って恋愛経験が全くない御令嬢の心は、動かされない訳が無かった。
けれどもこの仄かな気持ちは、決して人に知られてはいけなかった。自分はノルモンド家の人間だからお祖父様が毛嫌いしているミューズリーの貴族とは仲良く出来る訳ないと、そう思い込んでいたのだ。
だから胸の奥に仕舞い込んで、この思いを悟られない様に裏腹な態度で振る舞っていたのだが、しかし、そんなロクサーヌの胸の内など知らないアイリーシャが、微笑みながら無自覚に彼女を追い込むのだった。
「そうですね、マキシム様もお呼びできて良かったですね。」
「な、何故そこにマキシム様の名前が出てくるのですか?!」
「何故って、とても楽しそうにお話しされてたじゃないですか。」
「見間違えですわ!!」
アイリーシャにまるで胸の内を見透かされた様な事を言われて、ロクサーヌは思わず顔を赤くして、ムキになって反論した。
そんなことない!
絶対にない!!
そう言って、アイリーシャの言葉をひたすらに否定したのだが、すると今度は、そんな彼女の必死の様子をみて、少し意外そうにミハイルまでもが口を開いたのだった。
「ロクサーヌ様は案外マキシムと仲が良いんですね。」
あれが楽しそうな会話に見えていたかと言ったら、ミハイルの目にはそうは映らなかったが、それでも遠慮なく言いたい事を言い合っている様子は険悪とは程遠い、痴話喧嘩の様に思えたのだ。
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「仲が良いだなんて、そんな!違いますわ!ただ、私が困っている事を相談できるのがあの方しかいなかったから仕方なく一緒に居るだけですわ!」
二人から続け様に指摘を受けて、ロクサーヌは顔を赤くしながらも躍起になって否定を続けた。
「仕方が無いから彼を頼っているだけであって、他に人がいたらスタイン家なんかに頼らないですわ!!」
全くもって本心とは真逆の言葉であるが、兎に角ロクサーヌは否定を続けたのだ。
するとミハイルは、そんな頑ななロクサーヌの様子を見て少しだけ考える様な素振りを見せると、アイリーシャの方を見て彼女と目配せをし、そしてロクサーヌにある提案を持ちかけたのだった。
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