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第5章 王都編
エリシティア 3
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<エリシティア視点>
天命……。
私を押し上げる目に見えない力。
そんな曖昧なものを。
今は強く感じてしまう!
「……」
天命の陰で散った戦士。
私のために逝った勇敢な戦士たちよ。
私は進む!
今もこれからも。
お前たちの屍を越えて、私は進み続ける!
非情だと、誹らば誹れ。
愚かだと、笑わば笑え。
だが、戦士たちよ。
グラズヘイムで、ヴァルハラで、しかと見ておれ。
この私が玉璽を掴む姿を。
お前たちの屍の上に天を掴むところを!
「姫様……」
「……」
「あの者たちも本望でしょう」
「……ふむ」
「彼らの献身を無駄にしてはなりませぬ」
何を今さら。
「当然のことを!」
「はっ」
「ウォーライルよ、私がいつまでも落ち込んでいると思うておるのか?」
「……」
「ふっ、そんなわけなかろう」
「では?」
「天運ともいえる一助をもたらした、コーキとジンクのことよ」
先の襲撃。
九死に一生を得ることができたのは、全てコーキとジンクの力によるもの。
この2人がいなければ、私は今この馬車の中にいることはできなかったであろう。
「彼らのことを考えておったのだ」
「そうでしたか」
「ふむ……」
ふたりとも素晴らしい腕前だった。
特に、コーキの魔法は凄まじかった。
騎士たちも皆、口々に褒め称えておったな。
ウォーライルにいたっては、エヴドキヤーナ殿の名前を出すほど。
一撃で10人以上の賊を戦闘不能に陥らせたのだから、それも分からぬではないが……。
さすがに、エヴドキヤーナ殿ほどではなかろう。
それでも、素晴らしい魔法の使い手であることに疑いはない。
身のこなしも相当なものであった。
「……」
魔法の名手であり、さらに戦士でもある。
欲しいな。
あの者を我が陣営に。
「……どう見る?」
「コーキ殿のことでしょうか?」
「うむ」
「一介の冒険者には見えませぬが、かといって間諜の類とも思えませぬ。もちろん、姫様を害する意図なども持っておらぬでしょう」
「腹に一物は抱えておらぬ、か」
「はい」
「……」
馬車の窓から後ろに目をやると、そこには我らに付き従うように進む乗合馬車が目に入ってくる。
何の変哲もない乗合馬車。
冒険者連中が乗るであろう一般的な馬車だ。
あやしい所など、何も見当たらぬ。
「あれが、ただの冒険者。偶然通りかかった冒険者か」
「おそらくは」
信じがたいが、信じるしかないのだろうな。
「……」
「エリシティア様、何か?」
「剣姫イリサヴィア、幻影ヴァルター、共にこの国の冒険者であったな?」
「はい。ふたりとも、キュベリッツ王国に籍を置く冒険者です」
「この国の冒険者レベルは高いのか?」
「剣姫や幻影は特殊な例外でしょう。私の知る限りでは、レザンジュとキュベリッツの冒険者の腕に大きな差はないかと」
「……」
「レザンジュには、シャリエルンもおりますし」
確かに、レザンジュにもシャリエルン率いる精鋭冒険者がいる。
あの者たちの腕も相当なものだ。
「コーキも例外、特別ということか」
「はい」
「まだ名も売れておらぬ図抜けた冒険者」
「……」
「欲しいな」
「味方にできるなら頼もしいのですが、あのような冒険者を引き抜くのはなかなか……」
「やつらは自由を好む」
「その通りです」
「シャリエルンもそうだが、冒険者の扱いは難しいものだな」
「まことに」
とはいえだ。
シャリエルンは冒険者であっても、有事には私に与するはず。
コーキとも良い関係を……。
「それが一流の冒険者なのでしょう」
「一つの生き方か」
「……」
自由に生きる。
ふふ、真逆の人生だな。
「まっ、問題はなかろう」
「問題ですか?」
「あやつが兄上の下に行くようなら障害にもなり得るが、良くも悪くもキュベリッツの冒険者であるからな」
「……」
「今の私には益にも害にもならんだろう。いや、今回は大きな益をもたらしてくれたな。そして、兄上には害をな」
「……」
「そうは思わぬか」
「姫様、それは……」
「気にせずともよいぞ」
「ですが」
「相変わらず真面目なやつだ」
「……」
「私がキュベリッツを訪れたこの時期。このタイミング。賊の動き。全てがそれを示しておる」
「……」
「今はまだ何の証拠もないがな」
キュベリッツへの訪問を提案し、私に命じたのは他ならぬあの兄。
今日この地を移動していることのみならず、こちらの予定も動線もすべて把握しているはず。
何より私を排斥すべく、ずっと……。
「父上たちがワディンに進軍している今は好機であろう」
「……」
とはいえ、まさかこのような蛮行に及ぶとは思っておらなんだ。
明らかに油断だな。
情けない。
天命……。
私を押し上げる目に見えない力。
そんな曖昧なものを。
今は強く感じてしまう!
「……」
天命の陰で散った戦士。
私のために逝った勇敢な戦士たちよ。
私は進む!
今もこれからも。
お前たちの屍を越えて、私は進み続ける!
非情だと、誹らば誹れ。
愚かだと、笑わば笑え。
だが、戦士たちよ。
グラズヘイムで、ヴァルハラで、しかと見ておれ。
この私が玉璽を掴む姿を。
お前たちの屍の上に天を掴むところを!
「姫様……」
「……」
「あの者たちも本望でしょう」
「……ふむ」
「彼らの献身を無駄にしてはなりませぬ」
何を今さら。
「当然のことを!」
「はっ」
「ウォーライルよ、私がいつまでも落ち込んでいると思うておるのか?」
「……」
「ふっ、そんなわけなかろう」
「では?」
「天運ともいえる一助をもたらした、コーキとジンクのことよ」
先の襲撃。
九死に一生を得ることができたのは、全てコーキとジンクの力によるもの。
この2人がいなければ、私は今この馬車の中にいることはできなかったであろう。
「彼らのことを考えておったのだ」
「そうでしたか」
「ふむ……」
ふたりとも素晴らしい腕前だった。
特に、コーキの魔法は凄まじかった。
騎士たちも皆、口々に褒め称えておったな。
ウォーライルにいたっては、エヴドキヤーナ殿の名前を出すほど。
一撃で10人以上の賊を戦闘不能に陥らせたのだから、それも分からぬではないが……。
さすがに、エヴドキヤーナ殿ほどではなかろう。
それでも、素晴らしい魔法の使い手であることに疑いはない。
身のこなしも相当なものであった。
「……」
魔法の名手であり、さらに戦士でもある。
欲しいな。
あの者を我が陣営に。
「……どう見る?」
「コーキ殿のことでしょうか?」
「うむ」
「一介の冒険者には見えませぬが、かといって間諜の類とも思えませぬ。もちろん、姫様を害する意図なども持っておらぬでしょう」
「腹に一物は抱えておらぬ、か」
「はい」
「……」
馬車の窓から後ろに目をやると、そこには我らに付き従うように進む乗合馬車が目に入ってくる。
何の変哲もない乗合馬車。
冒険者連中が乗るであろう一般的な馬車だ。
あやしい所など、何も見当たらぬ。
「あれが、ただの冒険者。偶然通りかかった冒険者か」
「おそらくは」
信じがたいが、信じるしかないのだろうな。
「……」
「エリシティア様、何か?」
「剣姫イリサヴィア、幻影ヴァルター、共にこの国の冒険者であったな?」
「はい。ふたりとも、キュベリッツ王国に籍を置く冒険者です」
「この国の冒険者レベルは高いのか?」
「剣姫や幻影は特殊な例外でしょう。私の知る限りでは、レザンジュとキュベリッツの冒険者の腕に大きな差はないかと」
「……」
「レザンジュには、シャリエルンもおりますし」
確かに、レザンジュにもシャリエルン率いる精鋭冒険者がいる。
あの者たちの腕も相当なものだ。
「コーキも例外、特別ということか」
「はい」
「まだ名も売れておらぬ図抜けた冒険者」
「……」
「欲しいな」
「味方にできるなら頼もしいのですが、あのような冒険者を引き抜くのはなかなか……」
「やつらは自由を好む」
「その通りです」
「シャリエルンもそうだが、冒険者の扱いは難しいものだな」
「まことに」
とはいえだ。
シャリエルンは冒険者であっても、有事には私に与するはず。
コーキとも良い関係を……。
「それが一流の冒険者なのでしょう」
「一つの生き方か」
「……」
自由に生きる。
ふふ、真逆の人生だな。
「まっ、問題はなかろう」
「問題ですか?」
「あやつが兄上の下に行くようなら障害にもなり得るが、良くも悪くもキュベリッツの冒険者であるからな」
「……」
「今の私には益にも害にもならんだろう。いや、今回は大きな益をもたらしてくれたな。そして、兄上には害をな」
「……」
「そうは思わぬか」
「姫様、それは……」
「気にせずともよいぞ」
「ですが」
「相変わらず真面目なやつだ」
「……」
「私がキュベリッツを訪れたこの時期。このタイミング。賊の動き。全てがそれを示しておる」
「……」
「今はまだ何の証拠もないがな」
キュベリッツへの訪問を提案し、私に命じたのは他ならぬあの兄。
今日この地を移動していることのみならず、こちらの予定も動線もすべて把握しているはず。
何より私を排斥すべく、ずっと……。
「父上たちがワディンに進軍している今は好機であろう」
「……」
とはいえ、まさかこのような蛮行に及ぶとは思っておらなんだ。
明らかに油断だな。
情けない。
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