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第10章 位相編
信じているから
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「でも、これからどうしたら? お父様の言いつけを無視して出てきちゃったから……」
「問題ない。さっきも言ったように俺が何とかする」
「何とかできるの?」
「もちろんだ。任せてくれ」
「……うん」
正直、この世界で今の俺が何とかできると言い切れることじゃない。
それでも、曖昧な返事なんて口に出せないだろ。
「うん、うん……」
瞳にまだ僅かな雫を残しながら、 嬉しそうに何度も頷く幸奈。
「ありがとう、功己、さん?」
「……」
15歳の幸奈は、この華奢な身体に計り知れない苦悩を内包していたんだな。
当時の俺はそんなこと露とも知らず、ただ異世界だけを夢見て武道に明け暮れていた。幸奈の抱える悩みに気づくこともなく、自分の夢だけを考えて。
はぁぁ。
15歳の俺も40歳の俺も、異世界でも日本でも、何も分かってない。
何も見えちゃいない。
結局、自分のことばかり。
本当に情けない。
けど……。
今は違う。
幸奈のために動くことができる。
やり直すことができる。
和見家の事情?
異能家門の事情?
知ったことじゃないな。
どんな事情があろうと、俺はここにいる15歳の幸奈を助ける。
それが偽善だとしても、過去の改変になったとしてもだ。
「……」
確かに、過去の改変は未来に歪みを生む危険がある。
タイムパラドックスという問題もあるだろう。
それでも、この状況を見ながら見ぬふりをして元の世界に戻るなんて。
もう、あり得ないんだよ。
「その……功己? 功己さん?」
「功己でいい」
「でも、15歳の功己もいるし……」
「……」
「5つも年上だし……」
地下室で出会った当初の幸奈は動揺のあまり俺の容姿に不審を抱いていなかったが、今は違う。この現在の容姿で15歳と言い張るのは無理があり過ぎるのだから。
それに加え、固く閉ざされていた幸奈の口から詳しい話を聞き出すためにも、こっちの事情を黙っているわけにはいかなった。
という理由で、少し脚色を入れながら手短に経緯を説明したのだが、幸奈は少し不思議そうな顔をしただけで、すぐに納得してくれたようだ。
「やっぱり、功己さんでいいですか?」
「……好きに呼んでくれ」
「うん、功己さん! なんだか、頼りになるお兄さんみたい」
幸奈に兄と言われると、妙な気分になってしまう。
「ほんとの妹の香澄ちゃんには悪いんだけど」
「……」
「でも、20歳の功己って、こんな感じになるんだなぁ。嬉しいような、悔しいような、うーん?」
さっきまで泣いていた顔が嘘のように、今は晴れやかなものに変化している。
何というか……。
こちらに来てから調子が狂いっぱなしだ。
「ところで、20歳のわたしって、どんな感じなんですか?」
「自分の未来は知らない方がいい」
「まあ、そうですよね」
「ただ……悪い未来ではないと思う」
オーバードーズが待つ5年後。
そんな未来は過去とともに改変してやるから。
「えっ、嬉しい」
「……疑わないんだな」
「何をです?」
「何もかもだよ」
「それはまあ、不思議なことばかりだけど、異能があるんですから時間移動があってもおかしくないかなぁって。何より功己なら……功己さんなら何でもできそうだし」
「……」
「わたし、功己も功己さんのことも信じてますから」
「……どうして?」
どうして、俺のことをそこまで?
「ふふ。理由はですねぇ、信じることができると信じてるからです」
「……」
「問題ない。さっきも言ったように俺が何とかする」
「何とかできるの?」
「もちろんだ。任せてくれ」
「……うん」
正直、この世界で今の俺が何とかできると言い切れることじゃない。
それでも、曖昧な返事なんて口に出せないだろ。
「うん、うん……」
瞳にまだ僅かな雫を残しながら、 嬉しそうに何度も頷く幸奈。
「ありがとう、功己、さん?」
「……」
15歳の幸奈は、この華奢な身体に計り知れない苦悩を内包していたんだな。
当時の俺はそんなこと露とも知らず、ただ異世界だけを夢見て武道に明け暮れていた。幸奈の抱える悩みに気づくこともなく、自分の夢だけを考えて。
はぁぁ。
15歳の俺も40歳の俺も、異世界でも日本でも、何も分かってない。
何も見えちゃいない。
結局、自分のことばかり。
本当に情けない。
けど……。
今は違う。
幸奈のために動くことができる。
やり直すことができる。
和見家の事情?
異能家門の事情?
知ったことじゃないな。
どんな事情があろうと、俺はここにいる15歳の幸奈を助ける。
それが偽善だとしても、過去の改変になったとしてもだ。
「……」
確かに、過去の改変は未来に歪みを生む危険がある。
タイムパラドックスという問題もあるだろう。
それでも、この状況を見ながら見ぬふりをして元の世界に戻るなんて。
もう、あり得ないんだよ。
「その……功己? 功己さん?」
「功己でいい」
「でも、15歳の功己もいるし……」
「……」
「5つも年上だし……」
地下室で出会った当初の幸奈は動揺のあまり俺の容姿に不審を抱いていなかったが、今は違う。この現在の容姿で15歳と言い張るのは無理があり過ぎるのだから。
それに加え、固く閉ざされていた幸奈の口から詳しい話を聞き出すためにも、こっちの事情を黙っているわけにはいかなった。
という理由で、少し脚色を入れながら手短に経緯を説明したのだが、幸奈は少し不思議そうな顔をしただけで、すぐに納得してくれたようだ。
「やっぱり、功己さんでいいですか?」
「……好きに呼んでくれ」
「うん、功己さん! なんだか、頼りになるお兄さんみたい」
幸奈に兄と言われると、妙な気分になってしまう。
「ほんとの妹の香澄ちゃんには悪いんだけど」
「……」
「でも、20歳の功己って、こんな感じになるんだなぁ。嬉しいような、悔しいような、うーん?」
さっきまで泣いていた顔が嘘のように、今は晴れやかなものに変化している。
何というか……。
こちらに来てから調子が狂いっぱなしだ。
「ところで、20歳のわたしって、どんな感じなんですか?」
「自分の未来は知らない方がいい」
「まあ、そうですよね」
「ただ……悪い未来ではないと思う」
オーバードーズが待つ5年後。
そんな未来は過去とともに改変してやるから。
「えっ、嬉しい」
「……疑わないんだな」
「何をです?」
「何もかもだよ」
「それはまあ、不思議なことばかりだけど、異能があるんですから時間移動があってもおかしくないかなぁって。何より功己なら……功己さんなら何でもできそうだし」
「……」
「わたし、功己も功己さんのことも信じてますから」
「……どうして?」
どうして、俺のことをそこまで?
「ふふ。理由はですねぇ、信じることができると信じてるからです」
「……」
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