【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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第4話 面談2

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「あ、の、えっと」
「あ……その……」

 俺もアルファの人も上手く話せないでいると、立会人のおばさんが笑顔で口を挟んでくれた。

「まずは座って。ゆっくりお話ししましょう?」
「あ……はい、そうですね」

 おばさんの声で俺もアルファの人も落ち着いたというか、現実に戻って来られた気がした。
 そうだ。ここ病院で、面談なんだった。

「初めまして。東上寺アキヤです。二十九歳で神奈川県在住。機械メーカーで働いています」

 向かいのソファに腰を下ろしたアルファの人が優しい声で自己紹介をする。
 わぁ……声も、声もすごく好き。

「ほら、春野さんも」

 声に聞き惚れてしまってボーっとしていると、立会人のおばさんが声をかけてくれた。
 自己紹介されたら自分もする。こんな当たり前なことも頭から抜けてしまうなんて……。

「あ、ごめんなさい! 春野ミチです。二十四歳で、えっと、都内で、手芸用品の会社で働いています」
「春野ミチくん……ミチくんでいい?」

 ミチくん。
 家族にも友達にもさんざん呼ばれてきた名前だけど、目の前の人に呼ばれると背中がゾクっとするくらい嬉しかった。

「はい!」
「俺のことも、名前で呼んでくれる?」
「えっと、アキヤさん?」
「うん……」

 あ、うわ。
 嬉しそう。
 呼ばれるのも嬉しかったけど、俺が呼んで嬉しそうな顔されるのも嬉しい。
 たったこれだけの会話で、もう何度も嬉しい!

「嬉しいな……登録してもう五年も経っているし、年に一人くらい会っていたんだけど全然ピンと来なかったから……」

 アキヤさんが本当に嬉しそうに笑うけど、そうか。モニくんの言っていた通りだ。
 俺、やっぱり待たせちゃっていたんだ……!

「あ、ご、ごめんなさい。俺がもっと早く登録していれば……」
「違うんだ。俺が登録したのだって二十四歳の時だから。責めるわけじゃなくて、ただ、ずっと待っていたからすごく嬉しくて……」

 アキヤさんは首を横に振った後、やっぱり嬉しそうとしか言えない笑顔で俺を見てくれる。
 あぁ、だめだ。
 嬉しい顔されると俺も嬉しい。

「こんな、オメガらしい素敵な子が、俺の……そっか」
「俺の方こそ、アルファの人ってきっとこんな感じの人かなって想像していた通りの人で……ビックリって言うか……嬉しいです」

 俺の言葉に、アキヤさんがはぁっと大きくため息をついて両手で顔を覆った。

「かわいい……っ。よかった。家が近いみたいで。こんなかわいいオメガと遠距離恋愛なんて耐えられない」
「俺もです。俺の家、都内だけど神奈川よりだから多分会いやすいと思います!」
「本当? 俺も神奈川だけど東京に近いよ」

 ラッキーだなぁ……。
 オメガ友達の中には、運命の番が見つかったけど関東と関西で遠距離なんて話も聞くし。
 隣県なんて本当にラッキー。将来的に一緒に住むなら俺が神奈川に行っても通勤は別に……なんて気が早いか。

「盛り上がっている所、ごめんなさいね」
「「え?」」

 話し始めるともう目の前のアキヤさんしか目に入らなくなってしまっていたけど、そうだ。立会人のおばさん、おじさんもいたんだった。

「二人とも、もうお付き合いが始まったみたいな話し方だけど、運命の番と認識した……ということでいいのかしら?」

 ……?
 あれ?
 そういえば……

「あ……!」
「あれ? 俺、言っていませんでした?」

 俺もアキヤさんも、あまりにも自然に相手を運命の相手だと認識してしまって、自分たちの中で勝手に決定して話を進めてしまっていた。
 うわ……そうか、運命の番ってこんな感じなんだ?

「ふふっ。だいたい皆さんそうなるのよ。でも、お役所仕事でごめんなさいね。成立の場合、データベースから除外しないといけないから確認が必要なのよ」

 立会人のおばさんがバインダーに挟まった書類をテーブルに置く。
 そうだ。事前に聞いていた。運命の相手と認識できた場合は宣言してサインが必要だって。
 数分前に言われたことも頭から飛んでしまうなんて……運命ってすごい。
 アキヤさんも同じ気持ちなのか、少し困ったように照れ笑いを浮かべながらペンを手に取ろうとしたけど、おばさんがそれを遮った。

「それに、きちんと言葉にしてから関係を始めた方が、お互い嬉しいでしょ?」
「「あ……」」

 そうかも。いや、絶対にそう!
 言わなきゃ!

「えっと、じゃあ」
「あの、俺」

 ……。
 かぶってしまった。
 運命同士、気が合うのは良いけど、困ってしまうな。
 ……嬉しい「困る」だけど。

「……ミチくん。俺からでもいいかな?」
「はい」

 二人で笑い合った後に、アキヤさんが優しい笑顔を向けて俺の方へと手を伸ばしてくれた。

「一目見た瞬間に運命の相手だと思いました。番を前提に、俺の恋人になってください」

 伸ばされた手に自分の手を重ねると、アキヤさんの体温を初めて感じて……体の奥の深いところがドクっと脈打った。

「はい!」


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