【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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第6話 報告

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「で、どうだった……なんて顔見ればわかるんだけどね」
「そうね」

 アキヤさんと会った三日後の夜。
 先日の服選びのお礼や報告も兼ねて、いつものモニくんとヨナちゃんと三人で、いつもの俺の家のリビングの床に座って簡単な飲み会をしていた。

「……わかる?」
「わかるよ。ミチくんは美人の中でも表情はまぁまぁ変わる方だけど、普通はオメガ美人って儚げな無表情でそんなに幸せそうな蕩けそうな笑顔するのって番に出会った時くらいだよ」
「モニが番に出会った時も解りやすかったけど、ミチはもっと解りやすい気がする」
「自覚ない……とは言えないか。アキヤさんと出会ってから、アキヤさんのことばっかり考えてる」
「運命の番に出会った瞬間ってそうだよね。大丈夫、何度か会ったら落ち着いて『普通に大好き!』になるから」

 番のいるモニくんの言葉は信憑性が高いはずだけど……全然落ち着く気がしない。

「良い人そう?」
「良い人っていうのは解らないけど、相性がいいのは間違いないと思う」
「感覚的にってこと?」

 モニくんは俺の返事に大きく頷いたけど、ヨナちゃんはまだ番がいないのもあって、ピンとこない様子だった。

「それもあるけど、初めて会った日も、『もっと一緒に居たいけど、今日は混乱して気持ちが落ち着かないし変なことしちゃいそうで一回落ち着きたい』って俺が思ったら、アキヤさんも『離れがたいけど冷静でいられないから日を改めて良い?』って言ってくれたり」
「うんうん」
「へぇ」
「面談の日に付き合おうって言われて恋人同士になったから、翌朝『恋人なんだしおはようのメッセージとか送って良いかな? いきなりうざい?』って悩みかけた瞬間にアキヤさんから『おはよう』ってメッセージ来たり」
「いいね!」
「同じペースって感じで良いと思う」

 ヨナちゃんは感心したように頷いた後、机に置いていたスマートフォンを指差した。

「それでミチ、写真は?」
「あ、撮ったよ!」

 スマートフォンのロックを外して、画像フォルダを開き、新しく作った「アキヤさん」フォルダを開く。
 ここ数日で何度も開いているので指が流れを覚えてしまった。

「これ!」

 アキヤさんと撮った写真を全画面で表示して、二人の方へ画面を向ける。

「へ~。アルファって感じでかっこいい人だね」
「真面目そう。ちょっと安心した」
「体つきもしっかりしていて健康そうだし」
「髪型とか清潔感もあるし」
「なにより……」
「一番は……」

 画面をじっと見つめていた二人が顔を上げる。

「ミチくんと出会えて幸せって顔しているのがいいね」
「ミチのことが好きでたまらないって顔でいい」
「そうだよね~!!」

 そう! 俺もこの写真のそこが一番好き!
 やっぱりオメガ同士、気に入るポイント一緒だよね?
 大事な友達にそう言ってもらえると嬉しいなぁ。

「ミチくんもすごく幸せそうな顔だしね」
「今も幸せそうだけど、アキヤさんが隣にいる時の方がいい顔している」
「え? そう……?」

 そういえば、自分の顔なんて全く見ていなかった。
 だって、アキヤさんの顔にばかり目が行くから。
 
「オメガの勘だけど、この感じならミチくんにベタ惚れで大事にしてくれそう」
「私もそう思う。甘やかしすぎそうな所だけは気になるけど。ほら、モニのところみたいに」

 モニくんのところみたいに、か。
 モニくんの番であるアルファのキョウイチさんは確かにモニくんにベタ惚れで甘いというか……溺愛……過保護……。

「ね~。キョウイチさん過保護だよね? このマンションまで徒歩五分なのに車で送ってくれるし」
「それ。この路地狭いのにあの無駄に長い車で送ってくるの、モニにもミチにも迷惑だと思う」
「何度も言っているんだけど、俺のことが心配で仕方ないんだよね、キョウイチさん」
「せめて小さい車を買うように言ったらどう? お金はいくらでもあるんだろうし」
「言ったんだけど、小さい車はセキュリティがダメだって~」

 今までは、俺もヨナちゃんに近い考えで、モニくんの溺愛されぶりをちょっとやりすぎと思っていた。
 番が心配なのはわかるけど、モニくんだってもう立派な成人男性なのにって。信頼してないのも良くないって。
 だけど……

「でも、ほら。モニくんは少し前に、誘拐されてオメガ人身売買組織のオークションに出品されてキョウイチさんのお陰で何とか助かったってこともあったし、心配も当然だと思うよ。俺もアキヤさんに心配だから送るって言われたら断れないだろうし……ちょっと嬉しいかも」

 自分に置き換えると完全に意見が変わってしまった。
 ヨナちゃんがちょっと呆れた顔をするけど、自分でも呆れるけど……どうしようもない。番ってすごい。

「ミチ。番の契約はまだなんでしょう? それでもう……そんな感じ?」
「ヨナちゃん、そうなんだよ。番が見つかった瞬間って番になった瞬間とはまた違うベタ惚れ感があるから」

 そういえば、番が見つかったけど、俺たちは正式な番にはまだなっていない。
 忘れていたというか、もう見つけただけであまりに嬉しくて番みたいな気でいた。

「番契約は次のヒートにするの?」
「多分……まだそういう話全然してない」

 モニくんに言われて、浮かれていた気持ちが引き締まる。
 運命の相手に出会ったってだけじゃダメなんだった。

「まだ二ヶ月半くらいあるって言っても、早めに準備しておいた方がいいと思うよ」
「準備、か……」

 番の準備……。
 準備か……。
 嫌ではないんだけど……緊張と言うか、なんていうか……。

 番になるのも、番の準備も……所謂「性行為」を伴うから。


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