【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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第7話 食事1

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 徐々に二人の時間に慣れて行こうということで、まずは仕事帰りにかるく食事へ行くことになった。

 平日の夜、俺の職場から近い繁華街の駅前で待ち合わせをして、時間ピッタリにやってきたアキヤさんは前回とは違う濃紺に薄っすらストライプが入っているスーツで、ノーネクタイ。ボタンダウンの白いシャツ。
 俺は白いシャツに自分で編んだチャコールグレーのタイトなVネックセーターとスラックス。
 二人とも手にはビジネスバッグで、靴もビジネスっぽい革靴。
 周囲を歩くサラリーマンには、似たような格好の人が多い。
 でも……

「か、かわいい……!」
「か、かっこいい……!」

 待ち合わせ場所で顔を見た瞬間にお互い口元を押さえて固まってしまった。
 今日までの四日間。何度も写真を見て、少しは気持ちが落ち着いてきたと思ったのに。
 顔を見てしまうとやっぱり頭が「好き」「この人は俺の」「素敵」でいっぱいになる。

「………………あ、えっと、予約しているし早速行こうか」
「はい」

 多分、たっぷり三分くらいはお互い見つめあって動けなくなっていた後、アキヤさんが絞り出すように言った声に慌てて頷いた。
 アキヤさんが予約してくれた半個室の小料理屋まで歩く間も、隣のアキヤさんを何度も何度もチラチラ見てしまって……そのほとんどがアキヤさんが俺を見るタイミングと同じで、目が合うたびに二人で照れ笑いを浮かべた。


      ◆


 高級感が漂う日本家屋だけど、料亭ほどは緊張しない落ち着いたテーブルの半個室で、料理も手の込んだ見た目で味もこだわりを感じる繊細な和食。お酒もサービスも申し分ない。
 すごく良いお店。
 しかも目の前には素敵すぎるアルファ。
 はぁー……。
 このお店がすごく良いお店なのは間違いないんだけど、それに加えて大好きな素敵なアルファと食べる料理、飲むお酒ってこんなに美味しいんだ……。
 沢山会話をして、距離を縮めるべきなのに、あまりにこの瞬間が幸せすぎて、俺もアキヤさんも「美味しいね」とか「この味好きだな」みたいな当たり障りない会話で時間が過ぎていく。
 あぁ、俺幸せ……。
 お腹も膨れてお酒も少しだけ回ってきたころ、アキヤさんが何か思い出したように声をあげた。

「あ、そうだ、ミチくん」
「……?」

 さっきまで俺と一緒でにこにこ柔らかい笑顔を浮かべていたアキヤさんが真剣な顔になったので、俺もつられて背筋を伸ばす。

「こんなことをまだ会って二回目で話すのは性急というか……焦りすぎかもしれないけど」
「アキヤさん?」
「できれば、一番早いタイミングで番になれると嬉しいなと思っていて……」
「……!」

 そうだった。この前モニくんにも言われて、ちゃんと正式な番契約のことを相談しないといけないって思っていたんだった! 会った瞬間「好き」でいっぱいで満足しちゃって忘れていた……だめだな。好きすぎる、素敵すぎるのも考え物だ。
 でも、そっか……アキヤさん、なるべく早く番になりたいって思ってくれているんだ。
 嬉しい……!

「……その、もし良いなら、準備とかもあるし、出会ってすぐのオメガにヒート周期を聞くなんて失礼なのは解っているんだけど……」

 俺が内心めちゃくちゃ喜んでいる間に、アキヤさんが気まずそうに言葉を続ける。
 そうだ。俺もちゃんと返事をしないと!

「二ヶ月半くらい、です!」
「ミチくん……!」
「あの、俺も……早くちゃんと番になりたいです。だから、俺の、一番早い、次のヒートまで……二ヶ月半くらい、です」
「あ……あ、い、いいの?」
「……はい。なりたい……です」

 アキヤさんの目をちゃんと見て、しっかり、大げさなくらい深く頷くと、アキヤさんは無言のまま手で顔を覆って上を向いてしまう。

「アキヤさん?」
「ごめん、ちょっとだけ待って。ごめん」

 待てと言われれば待つけど……?

「はぁー……うん。ごめん」

 アキヤさんの声が微かに震えている気がする。
 俺、何か変なこと言った?
 顔が見えないの、ちょっと不安になってきたな……。

「アキヤさん……」
「ごめん、もう大丈夫。喜びを噛みしめていた」

 やっと手を外して俺の方を見てくれた。やった、アキヤさんの嬉しそうな顔だ!
 ほっとして無意識で笑顔を深めると、アキヤさんの顔が歪み、自分のシャツの胸元を掴んで俯いてしまった。

「うっ……」

 ……折角顔見られたのに。なんで?

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