【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
12 / 58

第12話 帰宅

しおりを挟む
 
「はぁ、疲れた……」

 恋人の家に初めて行くのも、ハグやキスをするのも、幸せだけど慣れなくて恥ずかしかった。
 それに、あのフェロモン……ほっとするんだけど、体の芯が熱くなるようなアレ……正直、まだちょっとボーっとする。アレはすごかった。

「あんなの知っちゃったら、ヤバイな……中毒になりそう」

 そんなことを思いながら、服を脱ぎ、バスルームに入る。
 さっぱりしてからゆっくり今日のこと、アキヤさんのことをちゃんと考えよう。
 ……そう思ったのに。

「あれ?」

 バスルームに入ったあたりから、なんとなく違和感があった。
 ……いや、気のせいだよね?

「……?」

 シャワーを浴びて、体を洗って……いよいよ違和感が強くなる。

「……あれ? うそ? え?」

 おかしい。
 涙まで出てきた。
 おかしい。おかしい。おかしい!

「……あ……え?」

 温かいお湯を浴びているはずなのに。
 身体の芯が冷めていく気がする。喪失感。不安。
 
「なんで? なにこれ?」

 慌ててバスルームを出て、脱衣所でバスタオル……よりも先に、脱いで洗濯籠に入れたニットに手が伸びた。

「……ふぅ……」

 おちつく……。
 不安がスっと抜けて、心の奥の冷たさもなくなって、とにかくほっとする。
 ほっとすると、頭も働いてきた。

「……これ……まさか」

 アキヤさんのフェロモンを洗い流したから?
 不安になったというよりも、さっきまで、フェロモンに包まれて無意識に感じていた安心感や幸福感がなくなっただけ?
 ニットを片手に持ったままスマートフォンで「運命の相手 フェロモン 初めて 喪失感」なんて単語を並べて検索すると……

「……あぁ、やっぱりよくあることなんだ」

 真面目な医療サイトにも、オメガ用の知恵袋にも俺と同じ事例が載っていた。
 やはり運命の相手のフェロモンを初めてしっかり浴びた後は、いきなりフェロモンを落とすと喪失感が大きいらしい。

「……運命の相手のフェロモン、すごすぎる……」

 すごい。
 ……ちょっと怖い。
 いや、怖いとか思っちゃだめだ。

「しかも、全員はならないのか。どういう人がなりやすいとか……ん?」

 医療系のサイトを読み進めると「特になりやすいオメガの三大特長」が書かれていて……

 ・アルファのフェロモンに敏感なオメガ
 ・運命の相手とフェロモンの相性が良いオメガ
 ・アルファへの愛情が大きいオメガ

 なるほど……。

「まぁ、そういうことなら仕方ないか……」

 単純だな、俺。
 原因に納得したら怖いと思った気持ちもすぐにどこかに行ってしまった。

「対処法も載っているし、次からは気を付けよう」

 この日は、なるべく色々考えてしまわないように無心で編み物をしまくって、アキヤさんのフェロモンが染みついたニットを抱いて寝た。
 寝ている間に徐々にフェロモンが薄れて体が慣れ、起きた頃にはいつもどおりになっていた。

 
 ただ、「アキヤさんに会いたいな」という気持ちが常に心の隅にいるようになってしまって……これは現代医学ではどうしようもないことらしい。


しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハコ入りオメガの結婚

朝顔
BL
オメガの諒は、ひとり車に揺られてある男の元へ向かった。 大昔に家同士の間で交わされた結婚の約束があって、諒の代になって向こうから求婚の連絡がきた。 結婚に了承する意思を伝えるために、直接相手に会いに行くことになった。 この結婚は傾いていた会社にとって大きな利益になる話だった。 家のために諒は自分が結婚しなければと決めたが、それには大きな問題があった。 重い気持ちでいた諒の前に現れたのは、見たことがないほど美しい男だった。 冷遇されるどころか、事情を知っても温かく接してくれて、あるきっかけで二人の距離は近いものとなり……。 一途な美人攻め×ハコ入り美人受け オメガバースの設定をお借りして、独自要素を入れています。 洋風、和風でタイプの違う美人をイメージしています。 特に大きな事件はなく、二人の気持ちが近づいて、結ばれて幸せになる、という流れのお話です。 全十四話で完結しました。 番外編二話追加。 他サイトでも同時投稿しています。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

処理中です...