【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
17 / 58

第17話 準備4

しおりを挟む
「……おまたせしました」
「……!」

 ドアを開けて中に入った瞬間、ベッドに腰掛けたアキヤさんがビクっと体を強張らせて、固まってしまった。
 あー……失敗した? はしたない? 引いてる?

「ミチくん……こっち来て」

 絞り出すような声に促されるまま、アキヤさんの目の前まで歩いていくと……。

「わっ!?」

 力強く、腰を抱きしめられた。
 ニット越しに、アキヤさんの頬が俺のみぞおちあたりに擦り寄った。

「なんでそんなかわいい格好してくれるの?」
「え? な、なんとなく……?」
「なんとなくで俺のこと喜ばせるなんて……番かよ」
「まだ、ですよ?」
「わかってる」

 腕の力が強くなって……あ、わ! お尻……!

「ミチくんは初めてだから、優しくしたいのに」

 アキヤさんが顔を上げる。
 ちょっと情けない表情でかわいい……。

「かわいすぎてちょっと無理かもしれない」
「……優しくしてもらいたいので、変顔とかしましょうか?」
「たぶん、それはそれでかわいいと思うから無駄」
「え、えっと……じゃあ、どうすればいいですか?」

 本当に、どうすればいいんだろう?
 困った顔で首をかしげると、アキヤさんはふっと嬉しそうに笑ってくれた。

「……ミチくんがすると何でもかわいいから、何もしないで」
「なにそれ……んっ!」

 ニットの中に手が……!
 手のひらが、ペタっとヘソ辺りに触れただけなのに……体が震えた。
 わかる。
 俺、今、フェロモン出た。

「……触れただけで、これか」

 アキヤさんの笑顔が幸せそうに深まる。
 それ、俺のフェロモンで……?

「ミチくん、膝座って。フェロモンもっと感じたい」
「あ、はい。俺も……」

 ベッドに腰掛けたアキヤさんの太ももを跨いで、向かい合って座る。
 アキヤさんの顔がしっかり見えて、しっかり抱きしめ合えて……深く抱きしめ合えば、お互いの顔が首筋に埋まって、フェロモンが……。

「うん。いい……俺、ミチくんのフェロモンすごく好きだよ」
「ん……俺も。アキヤさんのフェロモン好きです。おちつく……きもちいー……」

 ほっとして、体の奥がじんわりあたたかくなる。
 先週と同じ。

 でも……同じだけど……落ち着くのに……心臓、めちゃくちゃドキドキする。

「もっと、くっつきたい」
「ん」

 ニットを大きく捲られて、脱がされて、下着だけになる。
 あまり筋肉のつかない細い体は少年っぽいとか少女漫画的とか言われるから、自分では色気が無いと思っていた。

「……ミチくん……こんなキレイな体だったんだ」
「キレイ……?」

 アキヤさんの視線はすごく熱っぽくて、嘘をついているようには見えない。
 ……この体、キレイに見えるんだ?

「キレイで、ずっと見ていたくなるし、触りたくなる」
「……あ、の、嬉しいけど、恥ずかしいから……アキヤさんも」

 シャツのボタンに手をかけると、俺が外すのをアキヤさんはただただ嬉しそうに眺めてくる。
 そんなに見られると緊張する……上手くできなくて、普通に自分のシャツのボタンを外すよりも倍以上かかってなんとかすべてを外し、ズボンはアキヤさんが自分で脱いでくれて……やっとアキヤさんの体を見ることができた。

「うわ……! か、かっこいぃっ!」

 俺、オメガの男だから、性対象は男性も女性も両方なんだけど、男性でも女性でも、陸上選手とか、サッカー選手みたいな細いんだけど要所要所の筋肉がぼこぼこしていて全体がぎゅぎゅっと引き締まっている体型に弱い。細いけど筋肉質って感じの。
 俺の性癖なんだなと思っていたけど……そっか。俺の運命の番がこういう体型だから、無意識に同じ体型の人が好きだったんだって解った。

「俺の理想どおり……俺、ずっとこういう体を想像してオナニーしてた……」
「じゃあ、今度からは俺の体を思い出してオナニーしてくれるんだ?」
「あ……」

 しまった、失言だったかも。
 
「す、すると思います。こんなの見ちゃったら、忘れられない」
「嬉しい……体型維持頑張るね」

 アキヤさんが嬉しそうだから、まぁいいか。

「よ、よろしくお願いします……ん」

 キスだ……唇がぴったりくっついて、体も。ぎゅっと抱きしめられて、素肌同士が触れ合う。
 これ、いい……。

「見た目だけじゃなくて、肌触りも最高」
「体温も安心します」
「ずっとくっついていたい」
「俺もです」

 しばらく、お互いを確かめるように肌を撫で合って、体を摺り寄せる。
 二人ともフェロモンが出て……それが混ざり合うと、落ち着く安心感のフェロモンのはずが……だんだん……。

「……すごく安心するけど……ごめん、興奮してきた」
「あ!」

 太ももに触れる硬い感触に少し体を離して視線を落とした。
 アキヤさんの黒い下着の前が持ち上がっていて……その中がどんな状態かは、同じ男だからよく解る。
 俺で、興奮してくれているんだ?
 そんなの……
 俺も……!

「あ……ん」
「興奮した?」
「あ、アキヤさん……」
「うん」

 アキヤさんの視線は俺の股間に向いていて、俺もそこを見ているんだけど、アキヤさんみたいに勃起はしていなかった。オメガで男だから、一人でするときは男の部分の興奮が強くて、興奮した時はまず勃起なのに。
 今日は……

「興奮して、俺……」

 確証はなかったけど、自分の指を下着の中に入れると、そこはもう、明らかにそういう状態だった。
 
「俺……ぬ……濡れちゃいました」

 俺、男らしくより、オメガらしく興奮しているんだ……。

しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

『アルファ拒食症』のオメガですが、運命の番に出会いました

小池 月
BL
 大学一年の半田壱兎<はんだ いちと>は男性オメガ。壱兎は生涯ひとりを貫くことを決めた『アルファ拒食症』のバース性診断をうけている。  壱兎は過去に、オメガであるために男子の輪に入れず、女子からは異端として避けられ、孤独を経験している。  加えてベータ男子からの性的からかいを受けて不登校も経験した。そんな経緯から徹底してオメガ性を抑えベータとして生きる『アルファ拒食症』の道を選んだ。  大学に入り壱兎は初めてアルファと出会う。  そのアルファ男性が、壱兎とは違う学部の相川弘夢<あいかわ ひろむ>だった。壱兎と弘夢はすぐに仲良くなるが、弘夢のアルファフェロモンの影響で壱兎に発情期が来てしまう。そこから壱兎のオメガ性との向き合い、弘夢との関係への向き合いが始まるーー。 ☆BLです。全年齢対応作品です☆

処理中です...