【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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第22話 会社

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「春野さん。今日、なんか雰囲気違いますね」
「え? そう?」

 月曜日、会社の気楽な部署ミーティングの後、会議室で隣に座っていたベータ男性の後輩に声をかけられる。

「なんだろう、全体的にキラキラしてません?」
「キラキラ?」

 雰囲気がキラキラ?
 そんな、少女マンガじゃないんだから……と首をかしげていると、向かいに座っているベータ女性の先輩も身を乗り出してきた。

「わかる! いつも美人だけど、今日は特に……あ! もしかして」

 先輩が少し顔を赤らめて口元を両手で覆った。

 ……あ。

 その反応で自分でも気づいてしまった。
 二日前、初めてセックスしたんだった。
 初めてオメガらしく後ろの快感でイったから……フェロモンがなんか、違うのかも?
 それがベータにもバレる?
 えぇ、めちゃくちゃフェロモンヤバイってこと?
 え、ど、どうしよう。恥ずかしい!
 なんとか笑顔を保ちながらも、内心めちゃくちゃ焦っていると、先輩がすっごく楽しそうな笑顔で首を傾げた。

「恋してるんでしょう?」
「え」

 ……杞憂だった。
 よかった。勘違いしてくれた。
 でも……周りに何かしらあったと思われるくらいには態度に出ちゃっていたということか。
 気を付けよう。
 それに、そろそろ言おうと思っていたんだ、いい切っ掛けだ。

「実は、バース性のマッチングに登録して……運命の相手が見つかったんです」
「え!? すごい! よかったね!」
「おぉ! おめでとうございます!」

 先輩と後輩が椅子から立ち上がってまで喜んでくれると、会議室を出ようとしていた他の先輩や上司もこちらを振り返る。

「え、何? 番? おめでとう!」
「やったな!」
「すごいすごい!」
「いやぁ、うちの会社からとうとう番誕生か!」

 この部屋にいる同じ部署の人は一〇人全員ベータ。
 そして、入社の時に社長直々に言われたのが「春野くんは我が社初のベータ以外の社員だから、何かバース性的に困ったことがあったら何でも遠慮なく言って欲しい。会社としてもなるべく多様性を大事にしていきたいしね」ということだから、社内でもオメガは一人。
 アルファはいない。
 だから特別喜んでくれるみたいで……嬉しいけどちょっと恥ずかしいな。

「あ、まだ、あの、契約はまだです。正式に番になってから報告しようとも思ったんですけど……」
「あ、それはまだなんだ?」
「じゃあ、結婚とかも……?」
「とりあえず、お付き合いが始まっただけです」

 正直に報告すると、俺より三〇歳年上の男性でいつも穏やかな恵比須顔の課長が、恵比須顔を更に嬉しそうに緩ませて俺の肩を叩く。

「じゃあ、次のヒートで番だなぁ? わりと最近ヒート休みを使っていたから……」
「ちょっと課長! ヒート周期の話はセクハラですよ!」

 課長の言葉に俺が嫌悪を感じるより先に、先輩が声をあげてくれた。

「あ、あぁ、そうか。ごめんごめん。でも、めでたいからさ、つい。ごめんね、春野くん」

 課長も素直に謝ってくれる。
 オメガってだけで大切にしてくれているというか、気を使ってくれているというか……ありがたいんだけど、ちょっと申し訳ない。

「大丈夫です。それに、次のヒートの時は念のため長めに休暇を頂けたらと相談するつもりだったので」
「あぁ! オッケーオッケー! そんな人生の一大事に仕事している場合じゃないよ。うちは折角ヒート休暇制度があるんだし、がっつり使って! それに、ヒート休暇取得の実績がある方が会社の評価も上がるし。遠慮せずに、一週間でも二週間でも、ね!」
「そうよ。私たちがちゃんとフォローするし」
「俺ももう一人でできるようになってきたので、先輩の業務引き継ぎますよ!」

 課長、先輩、後輩、他のみんなも、本当にめでたいといった顔で応援してくれている。
 嬉しい。
 恵まれている。
 感謝。
 普段のヒートの時だって、休むたびにみんな本当に優しいし、仕事もちゃんと他の人がフォローしてくれて職場の人や雰囲気にも、会社の制度にも、心から感謝をしているんだけど……。

 俺、こんなにしてもらえるほど会社に貢献しているのかな……?
 仕事、もっと頑張りたいのに。
 折角大好きな手芸の仕事をしているのに。

 ……こんな気持ち、贅沢だよね。昔のオメガは社会的な偏見が強くてもっともっともっともっと苦労したって言うし。

「ありがとうございます。しっかり素敵な番になれるようにがんばります」

 俺の言葉に、部署のみんなは笑顔で拍手までしてくれた。
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