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第44話 出社1
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「春野さん、おめでとうございます!」
「春野くん、おめでとう!」
「番だって? おめでとう!」
会社のビルに入るなり、受付の人にも、警備員さんにも、他の部署の人にも、すれ違う人全員に「おめでとう」と声をかけられた。
そして、エレベーターで三階まで上がり、自分の部署の部屋に入ると……
「番、おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
部署全員がもう揃っていて、全員の拍手とともに女性の先輩から大きな花束を渡された。
「ありがとうございます!」
みんな笑顔で、拍手の音も大きい。
あ、よく見たら他の部署の人も何人かいる。
俺のために……俺、いい会社に入ったなぁ……。
「体調はどう?」
喜びをかみしめていると、先輩が少しだけ心配そうに首を傾げる。
いつもヒート明けの顔色が悪い俺を気遣ってくれる、優しい先輩だもんなぁ。
「もう万全です。番じゃない時のヒート明けより元気です」
「そっか。番ってそういうところもいいのね。春野くんいつも体調悪そうだったから安心したわ」
「春野くん、もう役所にも届けたんだよね? 助成金の申請もあるからあとで総務に……」
「もう課長! そういう事務的なのは後で良いじゃないですか!」
結構大事な話だとは思うけど……?
うちの部署と隣の部署の若い女性二人が、課長を押しのけて俺の顔……いや、その後ろの項へチラチラと興味深そうな視線を向けてくる。
「春野さん、項見せてもらっていいですか~?」
「私も見たいです!」
きっと言われると思って、項は念入りに洗って襟足もアキヤさんに整えてもらって来た。
……病院で褒められたから、俺も見せたかったんだよね。
「はい、いいですよ……こんな感じです」
みんなに背を向けて、首に少しかかっている髪を掻き上げると、俺の背後から歓声が上がった。
「わ~! すごい! くっきりついてる!」
「本物初めて見た! きれい!」
「絵に描いたような角度だね? 首の向き真っすぐ。こういうの、ガイドひくんだっけ?」
女性だけでなく、課長も興味深そうに褒めてくれる。
課長、お目が高いなぁ。
「それが、番は無意識で噛んだって言っていました」
「無意識でこんなに真っすぐ? へぇ……アルファってそういう能力もあるんだ?」
「春野さんのアルファが特別なんじゃないですか? SNSでたまに見ますけど、もっと曲がっている歯型も多いですよ」
「へぇ。すごいなぁ春野くんのアルファは!」
んんん。アキヤさんが褒められている!
後ろ向いていてよかった。俺、今、すっごく顔がにやけていると思う。
「あの、図々しいのは承知なんですけどぉ、歯型触っても良いですか? 私婚活中で……」
後ろから、同僚の女性の声が聞こえる。
番の証である歯型はデリケートな部分ではあるけど……。
「はい。いいですよ」
「やった! ありがとうございます!」
迷信だとは思うけど、「オメガの歯型に触れると素敵な結婚相手が見つかる」っていうよね。
特に田舎では、番ができたら村の未婚者全員が項に触れるなんて風習もきく。
「あの、俺も、彼女欲しくて!」
「すみません、私も!」
「じゃあ俺も!」
「あんたは既婚者でしょ!」
「バレたか~」
俺の後ろで楽しそうな笑い声が上がる。
いいなぁ。
俺の番契約で、みんなが嬉しそうに楽しそうにしてくれるの。
すごくいい。
「はい、触りたい方皆さんどうぞ」
「ありがとうございます! ちゃんと除菌シートで手を拭いてから触りますから!」
みんな気を使ってくれて、除菌シートで拭いた手でそっと撫でる程度に歯型に触れていく。
……あ、すごい。
アキヤさんに触られるとゾクゾクするのに、ベータの人に触られても「無」だ。
やっぱりアキヤさんって特別なんだな。
「そうだ春野くん、ホームページとSNSに番のこと載せてもいい?」
希望者全員が項に触れたので、みんなの方を向き直ると、先輩がスマートフォンで会社のSNSを表示させながら尋ねて来た。
アキヤさんの会社と同じだ!
「はい。番の会社のホームページにも載せることになったので、相手の許可も大丈夫です」
「じゃあホームページはお二人の名前と……SNSには何か写真も載せられたらいいんだけど……顔は嫌?」
「そ、それはちょっと恥ずかしいです」
「項載せる人多いですよね?」
「あれは個人のSNSじゃない? 企業のSNSだとどうかしら……?」
顔や項以外のオメガらしいもの……SNSだからうちの会社のPRにも……あ!
「それなら……これ、どうですか?」
「春野くん、おめでとう!」
「番だって? おめでとう!」
会社のビルに入るなり、受付の人にも、警備員さんにも、他の部署の人にも、すれ違う人全員に「おめでとう」と声をかけられた。
そして、エレベーターで三階まで上がり、自分の部署の部屋に入ると……
「番、おめでとう!」
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
部署全員がもう揃っていて、全員の拍手とともに女性の先輩から大きな花束を渡された。
「ありがとうございます!」
みんな笑顔で、拍手の音も大きい。
あ、よく見たら他の部署の人も何人かいる。
俺のために……俺、いい会社に入ったなぁ……。
「体調はどう?」
喜びをかみしめていると、先輩が少しだけ心配そうに首を傾げる。
いつもヒート明けの顔色が悪い俺を気遣ってくれる、優しい先輩だもんなぁ。
「もう万全です。番じゃない時のヒート明けより元気です」
「そっか。番ってそういうところもいいのね。春野くんいつも体調悪そうだったから安心したわ」
「春野くん、もう役所にも届けたんだよね? 助成金の申請もあるからあとで総務に……」
「もう課長! そういう事務的なのは後で良いじゃないですか!」
結構大事な話だとは思うけど……?
うちの部署と隣の部署の若い女性二人が、課長を押しのけて俺の顔……いや、その後ろの項へチラチラと興味深そうな視線を向けてくる。
「春野さん、項見せてもらっていいですか~?」
「私も見たいです!」
きっと言われると思って、項は念入りに洗って襟足もアキヤさんに整えてもらって来た。
……病院で褒められたから、俺も見せたかったんだよね。
「はい、いいですよ……こんな感じです」
みんなに背を向けて、首に少しかかっている髪を掻き上げると、俺の背後から歓声が上がった。
「わ~! すごい! くっきりついてる!」
「本物初めて見た! きれい!」
「絵に描いたような角度だね? 首の向き真っすぐ。こういうの、ガイドひくんだっけ?」
女性だけでなく、課長も興味深そうに褒めてくれる。
課長、お目が高いなぁ。
「それが、番は無意識で噛んだって言っていました」
「無意識でこんなに真っすぐ? へぇ……アルファってそういう能力もあるんだ?」
「春野さんのアルファが特別なんじゃないですか? SNSでたまに見ますけど、もっと曲がっている歯型も多いですよ」
「へぇ。すごいなぁ春野くんのアルファは!」
んんん。アキヤさんが褒められている!
後ろ向いていてよかった。俺、今、すっごく顔がにやけていると思う。
「あの、図々しいのは承知なんですけどぉ、歯型触っても良いですか? 私婚活中で……」
後ろから、同僚の女性の声が聞こえる。
番の証である歯型はデリケートな部分ではあるけど……。
「はい。いいですよ」
「やった! ありがとうございます!」
迷信だとは思うけど、「オメガの歯型に触れると素敵な結婚相手が見つかる」っていうよね。
特に田舎では、番ができたら村の未婚者全員が項に触れるなんて風習もきく。
「あの、俺も、彼女欲しくて!」
「すみません、私も!」
「じゃあ俺も!」
「あんたは既婚者でしょ!」
「バレたか~」
俺の後ろで楽しそうな笑い声が上がる。
いいなぁ。
俺の番契約で、みんなが嬉しそうに楽しそうにしてくれるの。
すごくいい。
「はい、触りたい方皆さんどうぞ」
「ありがとうございます! ちゃんと除菌シートで手を拭いてから触りますから!」
みんな気を使ってくれて、除菌シートで拭いた手でそっと撫でる程度に歯型に触れていく。
……あ、すごい。
アキヤさんに触られるとゾクゾクするのに、ベータの人に触られても「無」だ。
やっぱりアキヤさんって特別なんだな。
「そうだ春野くん、ホームページとSNSに番のこと載せてもいい?」
希望者全員が項に触れたので、みんなの方を向き直ると、先輩がスマートフォンで会社のSNSを表示させながら尋ねて来た。
アキヤさんの会社と同じだ!
「はい。番の会社のホームページにも載せることになったので、相手の許可も大丈夫です」
「じゃあホームページはお二人の名前と……SNSには何か写真も載せられたらいいんだけど……顔は嫌?」
「そ、それはちょっと恥ずかしいです」
「項載せる人多いですよね?」
「あれは個人のSNSじゃない? 企業のSNSだとどうかしら……?」
顔や項以外のオメガらしいもの……SNSだからうちの会社のPRにも……あ!
「それなら……これ、どうですか?」
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