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第48話 挨拶3
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アキヤさんの実家は神奈川県の中心地にある立派なマンションだった。
所謂タワマンではないけど、どっしりとした作りのレジデンスで、このマンションを建てたのはもちろん、アキヤさんのお母様だ。
「初めまして。アキヤさんの番になりました、春野ミチです」
アキヤさんの家のリビングよりも広くて天井が高いホテルのラウンジのようなリビングで、L字型ソファの一辺に俺とアキヤさんが並んで座り、斜め前にアキヤさんのご両親が並ぶ。
アルファのお母様もオメガのお母様も、ショートカットが似合うはっきりした顔立ちで、細身ながら筋肉質で長身。
二人とも有名な劇団の男役のような雰囲気で、パンツスーツも髪型もお揃い色違いで……いいなぁ。同性夫婦ってこういうことができるのが良いよね。俺もアキヤさんの髪型真似しようかな。
「アルファの母、ミキコです」
「オメガの母、リオです」
アルファのミキコさんは、目力が強い美人でかっこいい。アキヤさんによく似てる。
オメガのリオさんはやや垂れ目で彫が深いのに儚い感じもして……ファンタジーの洋画で出てくるエルフみたいだなと思った。
つまり、お二人ともすっごくかっこよくて素敵だけど……クールな感じがするから、仲良くできるかな……?
不安と緊張で笑顔のまま固まってしまっていると、俺の顔をじっと見つめていたミキコさんが急に自分の両手で顔を覆う。
「え~、もう、アキヤの番ちゃん、本当素敵! オメガの中のオメガって感じ! こんな息子欲しかった~! 最高! 幸せ!」
「え?」
急にハイテンションな大声が上がり、今度は別の意味で固まっていると、隣のリオさんも両手を自分の頬に沿えてキラキラした視線を向けてくれる。
「やった~! やっとオメガ仲間ができる! うちって息子二人ともアルファで妻もアルファだから、みんな優しくはしてくれるけどちょっと寂しかったの~!」
「え!? 私リオさんのこと寂しくさせてた!?」
「ちょっとだけね」
「……!」
ミキコさんがあからさまにショックを受けているけど、それはスルーしてリオさんが俺に優しい視線を向けてくれる。
「私、実家の母が早くに亡くなって兄弟もいなくて、アルファの父しかいなかったの。それで結婚してもこれでしょう? 家族にオメガがいるのずっと憧れていたの。アキヤの番ならもう私たちの息子も同然だと思うから、いつでも気軽に遊びに来てね。アキヤに対する愚痴だって聞くから」
「あ……はい! オメガ同士、仲良くして頂けると嬉しいです!」
「しましょう~! オメガの息子とオメガ専用の個室があるカフェに行くのが憧れだったの! あと、オメガ専用のエステプランとかオメガ専用の旅行プランもいいし……ミチさん、来週デートしない?」
「ちょ、ちょっとリオ母さん、俺からミチくん取らないで!」
アキヤさん、親御さんの前だとちょっと「息子」っぽくてかわいい。
ご両親も話しやすい方で安心したけど、それよりも番のちょっと違う顔が見れるのが新鮮!
「ほら、ミチくん、アレ渡そうよ! 頑張って作ったんだから」
アキヤさんがまだ焦った声で俺の横に置いている紙袋をさす。
玄関に入った時に手土産のフルーツタルトは渡しているので、この紙袋の中は……。
「そうですね。あの、リクエストして頂けて嬉しかったです。気に入ってもらえるといいんですが……」
落ち着いた深い赤色のマフラーと、少しグレーがかった水色のマフラーをテーブルに置く。
「え、もう作ってくれたの!? すごい……素敵!」
「アキヤから聞いていたし写真も見せてもらったけど、本当に手編みとは思えないわ。一点物のニット作家の作品と思うと、まぁ、そうよね……ごめんなさい、ここまですごい物が来ると思わなかったから気軽にリクエストしてしまって」
「いえ、大丈夫です! 俺、誰かのために作るのが好きなので、作って良いならいくらでも作りたくて……ご迷惑でなければもっと作りたいので欲しいニットアイテムをいつでもリクエストしてください!」
「え! いいの?」
早速マフラーを巻いてくれたミキコさんが華やかなパーツの顔を満面の笑みにする。
こういう顔の人の笑顔、好きだなぁ……アキヤさんがそうだからなんだけど。
「俺もミチくんの手編み作品は無限にいくらでも欲しいんだけど、最近クローゼットに入らなくなりそうで控えてもらっているし、リクエストするとミチくんは本気で喜ぶと思うよ」
「そういうことなら、遠慮なくお願いしたいけど……欲しい物が多すぎて悩むわね」
「そうね。SNSの写真で巣にする前のマフラーやセーターも見たけど、どれも素敵だったから悩むわ。特にざっくりしたベージュのカーディガン。あんな感じでケープになっていると最高……なんて言っても大丈夫?」
「もちろんです!」
ケープって男性で欲しがる人が少ないからあまり作ったことないな。
女性の家族……いや、まだ家族じゃないけど、女性と繋がりができるのはとても新鮮だ。
アキヤさんのお陰で俺の世界が広がるな。
「巣材にしたニットが素敵なのはもちろんだけど、巣も素敵よね。私、自分の番が作ってくれる巣が世界一だと思っていたけど……私にとっては世界一なんだけど……」
ミキコさんが少し言いにくそうに、リオさんの顔を伺う。
視線を向けられたリオさんは、笑顔のままミキコさんの肩を優しく叩いた。
「オメガの私から見ても、私の巣よりミチさんの巣の方が良いと思うわ。でも、『負けた』という気持ちよりも『真似したい』、それに……『息子は幸せ者だ』、という気持ちの方が強いわね」
「そう! あんな巣を作ってもらえるなんて、親として安心だし……息子への愛情を感じて、嬉しくて泣いちゃった」
「そうね……」
「ミキコさん……リオさん……」
俺の大好きなアキヤさんを産んでくれた二人が、本当に嬉しそうに、目に涙をためて俺を見る。
あ……これ、俺も泣きそう。
「ミチさん、息子はアルファに囲まれて育っているから、アルファらしすぎて面倒なところもあると思うけど、その分アルファの良いところもとても強いと思うの。仲良くしてあげてね?」
「アキヤが変なことしたらすぐに私たちに言ってね! 叱るから!」
「はい!」
アキヤさんが先週言ってくれたのと同じく、アキヤさんが素敵な人に育った理由が解った。
所謂タワマンではないけど、どっしりとした作りのレジデンスで、このマンションを建てたのはもちろん、アキヤさんのお母様だ。
「初めまして。アキヤさんの番になりました、春野ミチです」
アキヤさんの家のリビングよりも広くて天井が高いホテルのラウンジのようなリビングで、L字型ソファの一辺に俺とアキヤさんが並んで座り、斜め前にアキヤさんのご両親が並ぶ。
アルファのお母様もオメガのお母様も、ショートカットが似合うはっきりした顔立ちで、細身ながら筋肉質で長身。
二人とも有名な劇団の男役のような雰囲気で、パンツスーツも髪型もお揃い色違いで……いいなぁ。同性夫婦ってこういうことができるのが良いよね。俺もアキヤさんの髪型真似しようかな。
「アルファの母、ミキコです」
「オメガの母、リオです」
アルファのミキコさんは、目力が強い美人でかっこいい。アキヤさんによく似てる。
オメガのリオさんはやや垂れ目で彫が深いのに儚い感じもして……ファンタジーの洋画で出てくるエルフみたいだなと思った。
つまり、お二人ともすっごくかっこよくて素敵だけど……クールな感じがするから、仲良くできるかな……?
不安と緊張で笑顔のまま固まってしまっていると、俺の顔をじっと見つめていたミキコさんが急に自分の両手で顔を覆う。
「え~、もう、アキヤの番ちゃん、本当素敵! オメガの中のオメガって感じ! こんな息子欲しかった~! 最高! 幸せ!」
「え?」
急にハイテンションな大声が上がり、今度は別の意味で固まっていると、隣のリオさんも両手を自分の頬に沿えてキラキラした視線を向けてくれる。
「やった~! やっとオメガ仲間ができる! うちって息子二人ともアルファで妻もアルファだから、みんな優しくはしてくれるけどちょっと寂しかったの~!」
「え!? 私リオさんのこと寂しくさせてた!?」
「ちょっとだけね」
「……!」
ミキコさんがあからさまにショックを受けているけど、それはスルーしてリオさんが俺に優しい視線を向けてくれる。
「私、実家の母が早くに亡くなって兄弟もいなくて、アルファの父しかいなかったの。それで結婚してもこれでしょう? 家族にオメガがいるのずっと憧れていたの。アキヤの番ならもう私たちの息子も同然だと思うから、いつでも気軽に遊びに来てね。アキヤに対する愚痴だって聞くから」
「あ……はい! オメガ同士、仲良くして頂けると嬉しいです!」
「しましょう~! オメガの息子とオメガ専用の個室があるカフェに行くのが憧れだったの! あと、オメガ専用のエステプランとかオメガ専用の旅行プランもいいし……ミチさん、来週デートしない?」
「ちょ、ちょっとリオ母さん、俺からミチくん取らないで!」
アキヤさん、親御さんの前だとちょっと「息子」っぽくてかわいい。
ご両親も話しやすい方で安心したけど、それよりも番のちょっと違う顔が見れるのが新鮮!
「ほら、ミチくん、アレ渡そうよ! 頑張って作ったんだから」
アキヤさんがまだ焦った声で俺の横に置いている紙袋をさす。
玄関に入った時に手土産のフルーツタルトは渡しているので、この紙袋の中は……。
「そうですね。あの、リクエストして頂けて嬉しかったです。気に入ってもらえるといいんですが……」
落ち着いた深い赤色のマフラーと、少しグレーがかった水色のマフラーをテーブルに置く。
「え、もう作ってくれたの!? すごい……素敵!」
「アキヤから聞いていたし写真も見せてもらったけど、本当に手編みとは思えないわ。一点物のニット作家の作品と思うと、まぁ、そうよね……ごめんなさい、ここまですごい物が来ると思わなかったから気軽にリクエストしてしまって」
「いえ、大丈夫です! 俺、誰かのために作るのが好きなので、作って良いならいくらでも作りたくて……ご迷惑でなければもっと作りたいので欲しいニットアイテムをいつでもリクエストしてください!」
「え! いいの?」
早速マフラーを巻いてくれたミキコさんが華やかなパーツの顔を満面の笑みにする。
こういう顔の人の笑顔、好きだなぁ……アキヤさんがそうだからなんだけど。
「俺もミチくんの手編み作品は無限にいくらでも欲しいんだけど、最近クローゼットに入らなくなりそうで控えてもらっているし、リクエストするとミチくんは本気で喜ぶと思うよ」
「そういうことなら、遠慮なくお願いしたいけど……欲しい物が多すぎて悩むわね」
「そうね。SNSの写真で巣にする前のマフラーやセーターも見たけど、どれも素敵だったから悩むわ。特にざっくりしたベージュのカーディガン。あんな感じでケープになっていると最高……なんて言っても大丈夫?」
「もちろんです!」
ケープって男性で欲しがる人が少ないからあまり作ったことないな。
女性の家族……いや、まだ家族じゃないけど、女性と繋がりができるのはとても新鮮だ。
アキヤさんのお陰で俺の世界が広がるな。
「巣材にしたニットが素敵なのはもちろんだけど、巣も素敵よね。私、自分の番が作ってくれる巣が世界一だと思っていたけど……私にとっては世界一なんだけど……」
ミキコさんが少し言いにくそうに、リオさんの顔を伺う。
視線を向けられたリオさんは、笑顔のままミキコさんの肩を優しく叩いた。
「オメガの私から見ても、私の巣よりミチさんの巣の方が良いと思うわ。でも、『負けた』という気持ちよりも『真似したい』、それに……『息子は幸せ者だ』、という気持ちの方が強いわね」
「そう! あんな巣を作ってもらえるなんて、親として安心だし……息子への愛情を感じて、嬉しくて泣いちゃった」
「そうね……」
「ミキコさん……リオさん……」
俺の大好きなアキヤさんを産んでくれた二人が、本当に嬉しそうに、目に涙をためて俺を見る。
あ……これ、俺も泣きそう。
「ミチさん、息子はアルファに囲まれて育っているから、アルファらしすぎて面倒なところもあると思うけど、その分アルファの良いところもとても強いと思うの。仲良くしてあげてね?」
「アキヤが変なことしたらすぐに私たちに言ってね! 叱るから!」
「はい!」
アキヤさんが先週言ってくれたのと同じく、アキヤさんが素敵な人に育った理由が解った。
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