【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

文字の大きさ
48 / 58

第48話 挨拶3

しおりを挟む
 アキヤさんの実家は神奈川県の中心地にある立派なマンションだった。
 所謂タワマンではないけど、どっしりとした作りのレジデンスで、このマンションを建てたのはもちろん、アキヤさんのお母様だ。

「初めまして。アキヤさんの番になりました、春野ミチです」

 アキヤさんの家のリビングよりも広くて天井が高いホテルのラウンジのようなリビングで、L字型ソファの一辺に俺とアキヤさんが並んで座り、斜め前にアキヤさんのご両親が並ぶ。
 アルファのお母様もオメガのお母様も、ショートカットが似合うはっきりした顔立ちで、細身ながら筋肉質で長身。
 二人とも有名な劇団の男役のような雰囲気で、パンツスーツも髪型もお揃い色違いで……いいなぁ。同性夫婦ってこういうことができるのが良いよね。俺もアキヤさんの髪型真似しようかな。

「アルファの母、ミキコです」
「オメガの母、リオです」

 アルファのミキコさんは、目力が強い美人でかっこいい。アキヤさんによく似てる。
 オメガのリオさんはやや垂れ目で彫が深いのに儚い感じもして……ファンタジーの洋画で出てくるエルフみたいだなと思った。
 つまり、お二人ともすっごくかっこよくて素敵だけど……クールな感じがするから、仲良くできるかな……?
 不安と緊張で笑顔のまま固まってしまっていると、俺の顔をじっと見つめていたミキコさんが急に自分の両手で顔を覆う。

「え~、もう、アキヤの番ちゃん、本当素敵! オメガの中のオメガって感じ! こんな息子欲しかった~! 最高! 幸せ!」
「え?」

 急にハイテンションな大声が上がり、今度は別の意味で固まっていると、隣のリオさんも両手を自分の頬に沿えてキラキラした視線を向けてくれる。

「やった~! やっとオメガ仲間ができる! うちって息子二人ともアルファで妻もアルファだから、みんな優しくはしてくれるけどちょっと寂しかったの~!」
「え!? 私リオさんのこと寂しくさせてた!?」
「ちょっとだけね」
「……!」

 ミキコさんがあからさまにショックを受けているけど、それはスルーしてリオさんが俺に優しい視線を向けてくれる。

「私、実家の母が早くに亡くなって兄弟もいなくて、アルファの父しかいなかったの。それで結婚してもこれでしょう? 家族にオメガがいるのずっと憧れていたの。アキヤの番ならもう私たちの息子も同然だと思うから、いつでも気軽に遊びに来てね。アキヤに対する愚痴だって聞くから」
「あ……はい! オメガ同士、仲良くして頂けると嬉しいです!」
「しましょう~! オメガの息子とオメガ専用の個室があるカフェに行くのが憧れだったの! あと、オメガ専用のエステプランとかオメガ専用の旅行プランもいいし……ミチさん、来週デートしない?」
「ちょ、ちょっとリオ母さん、俺からミチくん取らないで!」

 アキヤさん、親御さんの前だとちょっと「息子」っぽくてかわいい。
 ご両親も話しやすい方で安心したけど、それよりも番のちょっと違う顔が見れるのが新鮮!

「ほら、ミチくん、アレ渡そうよ! 頑張って作ったんだから」

 アキヤさんがまだ焦った声で俺の横に置いている紙袋をさす。
 玄関に入った時に手土産のフルーツタルトは渡しているので、この紙袋の中は……。

「そうですね。あの、リクエストして頂けて嬉しかったです。気に入ってもらえるといいんですが……」

 落ち着いた深い赤色のマフラーと、少しグレーがかった水色のマフラーをテーブルに置く。

「え、もう作ってくれたの!? すごい……素敵!」
「アキヤから聞いていたし写真も見せてもらったけど、本当に手編みとは思えないわ。一点物のニット作家の作品と思うと、まぁ、そうよね……ごめんなさい、ここまですごい物が来ると思わなかったから気軽にリクエストしてしまって」
「いえ、大丈夫です! 俺、誰かのために作るのが好きなので、作って良いならいくらでも作りたくて……ご迷惑でなければもっと作りたいので欲しいニットアイテムをいつでもリクエストしてください!」
「え! いいの?」

 早速マフラーを巻いてくれたミキコさんが華やかなパーツの顔を満面の笑みにする。
 こういう顔の人の笑顔、好きだなぁ……アキヤさんがそうだからなんだけど。

「俺もミチくんの手編み作品は無限にいくらでも欲しいんだけど、最近クローゼットに入らなくなりそうで控えてもらっているし、リクエストするとミチくんは本気で喜ぶと思うよ」
「そういうことなら、遠慮なくお願いしたいけど……欲しい物が多すぎて悩むわね」
「そうね。SNSの写真で巣にする前のマフラーやセーターも見たけど、どれも素敵だったから悩むわ。特にざっくりしたベージュのカーディガン。あんな感じでケープになっていると最高……なんて言っても大丈夫?」
「もちろんです!」

 ケープって男性で欲しがる人が少ないからあまり作ったことないな。
 女性の家族……いや、まだ家族じゃないけど、女性と繋がりができるのはとても新鮮だ。
 アキヤさんのお陰で俺の世界が広がるな。

「巣材にしたニットが素敵なのはもちろんだけど、巣も素敵よね。私、自分の番が作ってくれる巣が世界一だと思っていたけど……私にとっては世界一なんだけど……」

 ミキコさんが少し言いにくそうに、リオさんの顔を伺う。
 視線を向けられたリオさんは、笑顔のままミキコさんの肩を優しく叩いた。

「オメガの私から見ても、私の巣よりミチさんの巣の方が良いと思うわ。でも、『負けた』という気持ちよりも『真似したい』、それに……『息子は幸せ者だ』、という気持ちの方が強いわね」
「そう! あんな巣を作ってもらえるなんて、親として安心だし……息子への愛情を感じて、嬉しくて泣いちゃった」
「そうね……」
「ミキコさん……リオさん……」

 俺の大好きなアキヤさんを産んでくれた二人が、本当に嬉しそうに、目に涙をためて俺を見る。
 あ……これ、俺も泣きそう。

「ミチさん、息子はアルファに囲まれて育っているから、アルファらしすぎて面倒なところもあると思うけど、その分アルファの良いところもとても強いと思うの。仲良くしてあげてね?」
「アキヤが変なことしたらすぐに私たちに言ってね! 叱るから!」
「はい!」

 アキヤさんが先週言ってくれたのと同じく、アキヤさんが素敵な人に育った理由が解った。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

ジャスミン茶は、君のかおり

霧瀬 渓
BL
アルファとオメガにランクのあるオメガバース世界。 大学2年の高位アルファ高遠裕二は、新入生の三ツ橋鷹也を助けた。 裕二の部活後輩となった鷹也は、新歓の数日後、放火でアパートを焼け出されてしまう。 困った鷹也に、裕二が条件付きで同居を申し出てくれた。 その条件は、恋人のフリをして虫除けになることだった。

高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】

きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。  オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。  そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。 アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。  そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。 二人の想いは無事通じ合うのか。 現在、スピンオフ作品の ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中

【完結】獣王の番

なの
BL
獣王国の若き王ライオネルは、和平の証として差し出されたΩの少年ユリアンを「番など認めぬ」と冷酷に拒絶する。 虐げられながらも、ユリアンは決してその誇りを失わなかった。 しかし暴走する獣の血を鎮められるのは、そのユリアンただ一人――。 やがて明かされる予言、「真の獣王は唯一の番と結ばれるとき、国を救う」 拒絶から始まった二人の関係は、やがて国を救う愛へと変わっていく。 冷徹な獣王と運命のΩの、拒絶から始まる、運命の溺愛ファンタジー!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

【完結】この契約に愛なんてないはずだった

なの
BL
劣勢オメガの翔太は、入院中の母を支えるため、昼夜問わず働き詰めの生活を送っていた。 そんなある日、母親の入院費用が払えず、困っていた翔太を救ったのは、冷静沈着で感情を見せない、大企業副社長・鷹城怜司……優勢アルファだった。 数日後、怜司は翔太に「1年間、仮の番になってほしい」と持ちかける。 身体の関係はなし、報酬あり。感情も、未来もいらない。ただの契約。 生活のために翔太はその条件を受け入れるが、理性的で無表情なはずの怜司が、ふとした瞬間に見せる優しさに、次第に心が揺らいでいく。 これはただの契約のはずだった。 愛なんて、最初からあるわけがなかった。 けれど……二人の距離が近づくたびに、仮であるはずの関係は、静かに熱を帯びていく。 ツンデレなオメガと、理性を装うアルファ。 これは、仮のはずだった番契約から始まる、運命以上の恋の物語。

ハコ入りオメガの結婚

朝顔
BL
オメガの諒は、ひとり車に揺られてある男の元へ向かった。 大昔に家同士の間で交わされた結婚の約束があって、諒の代になって向こうから求婚の連絡がきた。 結婚に了承する意思を伝えるために、直接相手に会いに行くことになった。 この結婚は傾いていた会社にとって大きな利益になる話だった。 家のために諒は自分が結婚しなければと決めたが、それには大きな問題があった。 重い気持ちでいた諒の前に現れたのは、見たことがないほど美しい男だった。 冷遇されるどころか、事情を知っても温かく接してくれて、あるきっかけで二人の距離は近いものとなり……。 一途な美人攻め×ハコ入り美人受け オメガバースの設定をお借りして、独自要素を入れています。 洋風、和風でタイプの違う美人をイメージしています。 特に大きな事件はなく、二人の気持ちが近づいて、結ばれて幸せになる、という流れのお話です。 全十四話で完結しました。 番外編二話追加。 他サイトでも同時投稿しています。

刺されて始まる恋もある

神山おが屑
BL
ストーカーに困るイケメン大学生城田雪人に恋人のフリを頼まれた大学生黒川月兎、そんな雪人とデートの振りして食事に行っていたらストーカーに刺されて病院送り罪悪感からか毎日お見舞いに来る雪人、罪悪感からか毎日大学でも心配してくる雪人、罪悪感からかやたら世話をしてくる雪人、まるで本当の恋人のような距離感に戸惑う月兎そんなふたりの刺されて始まる恋の話。

処理中です...