【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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後日談

東上寺アキヤの幸せ 1

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 俺の性別は男でアルファ。
 しかも、アルファの中でも、自他共に認めるアルファらしいアルファだ。

 外見は長身で引き締まった筋肉質の体に、男らしい彫りが深い整った顔。クセのないイケメンとよく言われて、物心ついた頃から女性やオメガによくモテた。
 少し勉強するだけでテストや試験でいい点数が取れたし、スポーツはすればするだけ身に付いた。それ以外のことも、少し努力すればなんでもそれなりにできたし、人の上に立ったりまとめたりするのが得意で、部活の部長や学級委員長、生徒会長もしていた。
 仕事も、大企業の経営に関わるやりがいがある仕事を任され、売り上げや株価という成果も目に見えて出ている。
 実家が代々アルファの裕福な家庭で、親が建てたタワマン住みだから家賃はタダ。親から土地や建物を継ぐ予定もある。

 順風満帆な、アルファらしいアルファ。
 恵まれた、みんなの羨望を浴びる人生。

 でも、そんな俺に、ずっと欠けているものがあった。

 番だ。

 何をしていても、どんなに人生が上手くいっていても満たされなくて、色々な趣味に手を出したり、恋人を作ってみたりしても、心の奥の寂しさは埋まらなかった。
 俺の恵まれた体も、恵まれた能力も、恵まれた環境も、全て番のオメガのためのものなのに。
 オメガがいないと、どんなに良い家に住んでいても、どんなに仕事ができても意味がない。
 どんなにアルファらしくても、完璧なアルファじゃない。

 そんな俺を……

 やっと出会えた運命の相手が

 ミチくんが、

 完璧なアルファにしてくれたんだ。


 運命の相手と出会ってから、仕事も、生活も、趣味も、全部今までよりやる気に満ち溢れて、毎日が最高に楽しかった。
 俺はこの子を幸せにするために生まれてきたんだ……そう思うと生きているってなんて素晴らしいんだろうと何度も何度も生命を生み出してくれた存在に感謝した。
 正式な番契約を交わしてからは、ミチくんも少し甘えることに慣れてきて、一緒にいる時間も増えて、俺がしてあげられることが増えてますます生きがいを感じている。
 それともう一つ……


      ◆


「アキヤさん、ダブルデートしませんか?」
「ダブルデート……?」

 休日の午後、リビングのソファでぴったりくっついて俺は読書、ミチくんは編み物というゆったりとした時間を「幸せだなぁ」としみじみ感じながら過ごしていた時だった。ミチくんのスマートフォンが震えて、画面を確認したミチくんが笑顔で首を傾げる。
 あ。その動作、世界一キレイな髪がサラっとなってかわいいし、上目遣いでかわいいし……かわいいな。

「はい。オメガ友達のモニくんとその番のアルファ男性が一緒におでかけしませんかって」
「いつも飲み会している子だよね? 俺も会ってみたいと思っていたんだ」
「いいですか? よかった! じゃあちょっと返事しますね」

 ミチくんの生活や人間関係の輪の中に入れてもらえるのが、「番」って感じがしてたまらなく嬉しい。
 先日はご実家にも連れて行ってもらったなぁ。
 オメガのお父様はミチくんそっくりで、三〇年後のミチくんが楽しみになったし、アルファのお父様は気さくで話しやすくてほっとした。
 何より嬉しかったのは、ミチくんのお兄様のタイチさん。
 俺はアルファらしいアルファだから、普通は未番アルファには嫌われがちだ。本能やフェロモンの関係で仕方が無いし、職場や学校でお互いを知っていけばきちんと信頼関係が作れるんだけど……初対面では大抵仲良くできない。
 それが、タイチさんは初対面から笑顔で話してくれて、俺の仕事も褒めてくれた。
 運命の相手のお兄様だからかな……あまりに嬉しくて、今度うちの会社のカレンダーを渡すついでに飲みに行く約束までしてしまった。ミチくんの子どもの頃の話、沢山してもらいたいなぁ。ご実家で聞いた「ミチ、幼稚園の時に冗談で毛糸は雲でできているって教えたら半年くらい信じていたんですよ? かわいくないですか?」というエピソードや、見せてもらったタイチさんチョイスの幼稚園から小学生の頃の写真。かわいかったなぁ……天使だった。今もだけど。
 とにかく、タイチさんとは趣味が合う気がする。
 ミチくんの家族の輪の中に入れて、貴重なアルファの知り合いができて……はぁ、俺ってなんて恵まれているんだろう。
 今回のダブルデートも楽しみだな。
 友達に紹介されるなんて、また一歩ミチくんの懐に入れた気がする。
 俺も早くミチくんを友達に自慢したいけど、まず紹介しようと思っているフットサル仲間の集まりが二週間後なんだよなぁ……。

「アキヤさん、最近話題になっている体験型牧場わかります? そこの招待券があるらしくて、一緒に行けたらなって言われているんですけど」
「テレビで見たな。ご飯も美味しいんだよね? 牧場ってあまり行ったことないし楽しそう」

 牧場か……のどかな風景とミチくん。
 色々な動物とミチくん。
 美味しいご飯とミチくん。
 ミチくんのお友達とミチくん。
 最高だろ。
 絶対に楽しい。

「いいですか? あと、日程……来週の土日なら土曜日?」
「そうだね。日曜日だと前日にエッチし過ぎてミチくんが体力無いかもしれないしね?」
「もう、最近のアキヤさん、エッチ激し過ぎですよ」
「嫌?」
「……俺、セックス中に嫌って言ってます?」
「言ってない。良いって言ってくれてる」
「……モニくんに返事します」

 出会ってすぐのころは経験が無くてすぐに顔を真っ赤にして視線をそらしていたこういう話題も、ちょっと照れたり恥ずかしそうにするだけで……あぁ、俺がミチくんを処女からここまで育てたんだって思うと感動で泣きそうだ。

「……えっと、当日はモニくんの番が車を出してくれることになりました」

 俺が感動を噛みしめている間に、ミチくんとお友だちのメッセージのやり取りが進んだようだ。

「結構遠いよね? 俺も途中で運転変わりますって言っておいて」
「あ、それは大丈夫だと思います。運転は運転手さんがされるので」
「運転手?」
「番の方が運転されることもあるけど、その日は人数が多いからリムジンで来るって……」
「リムジン?」

 行き先が普通の観光地っぽいレジャー施設だから油断したけど、ミチくんの友達の番ってことはアルファで……アルファには優秀な人や代々裕福な家も多いから大富豪なんていう可能性があるけど、それにしても……。

「そういえば言っていませんでしたね。モニくんの番は日篠宮キョウイチさんという方で……」
「ひ……ひしのみや……?」

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