【完結】幸せしかないオメガバース

回路メグル

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後日談

東上寺アキヤの幸せ 2

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 思わず声が裏返った。
 だって、まさか!?
 財閥系の日本トップの!?
 しかもキョウイチ……キョウイチ様ってことは、跡取りではあるけど実質現在の代表。
 どう考えても日本一の富豪で社会的地位もトップ。
 それになにより……

「ミチくん、俺の勤め先って覚えている?」
「はい!ヒシノ重工……あ」

 ミチくんが笑顔で頷いた後、一瞬固まってしまう。
 うん。
 覚えていてくれて嬉しいけど、今気づいたんだ?

「ヒシノ重工って、ヒシノグループで……ヒシノって、日篠宮家の……ですよね?」
「うん。そうだね。俺の勤め先の社長は、キョウイチ様の叔父にあたる人だよ」

 所謂、分家が経営している会社。
 キョウイチ様も役員として一応席はあるけど、雲の上の人過ぎてお会いしたことはない。

「あ、ご、ごめんなさい! キョウイチさんっていつも言われていたし呼んでいたから、苗字、あまり意識していなくて……財閥のすごい人とは解っていたんですけど……! これって、休日に上司に会うようなものですよね? 気まずいですよね? ごめんなさい!」

 きっと俺の微妙な気持ちが顔に出ていたのもあるんだろう。
 ミチくんが申し訳なさそうに頭を下げる。

「謝らないで。グループのトップとコネができてむしろラッキーだよ。良い機会をありがとう」
「……無理、していませんか?」
「大丈夫だよ。俺のオメガ、持ってるなぁって運命感じてるだけ」
「よかった。でも、きっと気疲れするから……夜は俺がいっぱい癒しますからね?」

 ミチくんが眉尻を下げたまま、俺のセーターの裾を引っ張っる。
 癒しって、そういうことか。
 ミチくんに一mmも非は無いのに、優しいなぁ。

「本当に気を遣わなくていいんだよ? でも、癒して欲しいから気疲れするってことにしようかな」

 読んでいた文庫本をソファに置いて、ミチくんの体を抱きしめると、俺の腕の中でミチくんが力を抜いたのが解る。
 
「確かにちょっと緊張はするけど、それ以上にラッキーだと思っているから。ありがとう、ミチくん」

 グループのトップとコネができて、恋人が「癒し」を頑張ってくれるなんてラッキー……と、本当に思っている。
 俺の社内での立場的にもグループの上の方とは繋がりが欲しい。
 ただ……
 確かにキョウイチ様と並ぶのは気まずい。
 気まずいけど、それは別の理由だ。

 ……あの方、アルファの頂点過ぎるだろ。

 日篠宮キョウイチ様といえば、日本一のアルファ。
 いくらアルファらしいアルファの俺でも、レベルが違いすぎる。
 ミチくんとはすでに番だし、向こうも番だし、安心なはずだけど……ミチくんを世界一幸せにするのは俺だという自信はあるけど……。
 さすがにあんなにすごいアルファに並ばれると、アルファとして、俺の存在が霞むだろう。
 ミチくんが「キョウイチさんの方がいいな」とハッキリ言うことは無いと思うけど、「あれ、アキヤさんって意外とたいしたことないな」くらいは思われるかもしれない。
 でも、ここで逃げるのは社会人的にも、番的にも情けないし……。

「あ、あの、アキヤさん」

 俺が笑顔はキープしたまま内心めちゃくちゃに焦っていると、ミチくんが俺の腕の中にいるのに珍しく心配そうな顔をする。

「ん? なに?」
「あの……モニくんは友達の俺から見てもすごくすごく見た目も性格もかわいい素敵なオメガだけど……俺から目移りしないでくださいね?」
「ミチくん……」
「俺が友達と会って欲しいって言い出したのに、面倒くさいこと言ってごめんなさい。でも……モニくんはすっごく素敵な子だから心配で」

 不安なの、俺だけじゃなかったのか……。
 そうか。

「心配いらないよ。俺、ミチくんが世界一好きだから。俺の好みはミチくんだから。絶対に大丈夫」
「アキヤさん……」
「それに、俺はもうミチくんのフェロモンしか感じないんだよ? 俺好みの俺専用フェロモンが浴びれるのに、他に浮気なんて絶対にないよ」
「……ん」

 俺の歯型がついたミチくんの項に顔を寄せる。
 あー……フェロモンが甘ったるい。
 ミチくんも俺のこと好きって言ってくれているな。

「ミチくんは? 俺よりもキョウイチ様の方が強いアルファだと思うけど、目移りしない?」
「大丈夫です! 俺も、俺の好みはアキヤさんだから絶対に大丈夫だし、なにより友達の番って思うと、全く一mmもドキドキしないです!」

 ミチくんが顔を上げてキッパリ言ってくれた。
 俺、好かれてるなぁ。
 しかも、友達思いの良い子だなぁ。
 っていうか、冷静に考えれば俺と会う前からもうキョウイチ様とは会ってるんだよな。
 心配する必要ないか?

 俺、ミチくんと出会ってから心配とか嫉妬とか、今まで知らなかった感情が沢山沸いてくる。
 こういう感情は少し情けないし面倒くさいけど……

「ミチくん、ありがとう」

 心配しても嫉妬しても、すぐにミチくんが笑顔と愛情で包み込んでくれるから……そのたびに二人の距離が近づく気がする。

 こういう自分は、嫌いじゃない。
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