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後日談
東上寺アキヤの幸せ 4
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「かわいい~! 一生懸命食べてる!」
「こんな小さい子を手に乗せるの、緊張する……」
動物ふれあいコーナーでウサギに餌をやるモニさんと、掌にモルモットを乗せるミチくんを、俺とキョウイチさんは柵の外からスマートフォンで連写しながら眺めている。
「かわいい」
「あぁ、かわいいな」
「お友達と一緒のミチくん、あんな顔するんですね……かわいい」
「あぁ。モニも裏表のない性格だが、ミチさんと一緒の時はまた違ったかわいい顔をする」
「今、俺と一緒の時もあれくらいリラックスした顔をして欲しいという気持ちと、俺には恋人としての顔を見せてくれているんだなという感動が同時に沸いて、気持ちが落ち着きません」
「俺はもう五回以上モニとミチさんが一緒にいる所を見ているが、いまだにそう思う」
連写の手は止めずに、キョウイチ様が俺の方を向く。
「俺がおかしいのかと思っていたが、お前の話を聞いて安心した。よかったら、他にもアルファとして思うことを色々聞かせてくれ」
「こういうことでしたら、自然と口から出てしまうと思いますので、いくらでも」
「ありがとう……アキヤ、でいいか? お前も好きに呼べ」
「はい。ではミチくんが呼ぶのと同じ『キョウイチさん』と」
「あぁ。よろしく」
キョウイチさんが一瞬だけ連写の手を止めて、俺に右手を差し出す。
「よろしくお願いします」
俺からも右手を出して、硬い握手を結んだ。
大人になってから、自分よりも大きな手を握るのは初めてだった。
◆
俺の手には大好物の一つであるソフトクリームが握られている。
牧場で売られているだけあって、牛乳の味が濃くて美味い。感動レベルの味だ。
しかし、俺は今、美味いソフトクリーム以上に感動していることがある。
「いつも思うんだ。折角のモニとのデート、二人きりで楽しみたいと。しかし……」
感動を隠せない声のキョウイチさんの手にもソフトクリームが握られているが、俺と同じで味ではなく別のことに感動しているようだ。
「ミチくんのコーヒー味、ひと口ちょーだい!」
「いいよ。モニくんのイチゴも味見したい」
俺たちの目の前で、ミチくんとモニさんがお互いのソフトクリームを相手に向け合い、一口交換……いいな、俺もそれしたい……という気持ちもあるが……。
「世界一かわいいモニが、美人の友達といちゃいちゃしている姿を見ることでしか得られない心の栄養がある気がする」
「……そういう栄養があるの、俺、今知りました」
今、確実に俺の中で新しい扉が開く音がした。
ミチくんと出会ってから、俺の心には扉が開きまくりだ。
◆
「乗馬体験、十一時からのを予約したんだよね?」
「あぁ」
モニさんがキョウイチさんのブルゾンの袖を捲って、キョウイチさんの高級腕時計で時間を確認する。
「そろそろ向かったほうが良いかも!」
モニさんがミチくんの手を引いて歩きだす。
あぁ、自分以外と手を繋ぐのちょっと嫉妬するけど、これはかわいい。
それと……
「今の、いいですね。番の腕時計をまるで自分の物のように見るの……俺もミチくんにあんなことしてもらいたいです」
「いいだろう。俺もモニのあの行動を気に入っている。しかし……そっちもいいじゃないか」
キョウイチさんは自慢げに頷いた後、俺の左手首に視線を送る。
「気づきました?」
「あぁ。色違いだろう?」
番になれた記念に俺がミチくんに、ミチくんが俺に、贈り合ったペアの腕時計。
俺がチャコールグレーのベルトで、ミチくんが黒いベルト。
キョウイチ様の腕にハマっている数千万円の時計に比べれば桁が二つ下だけど、二人とも気に入って、記念日とイニシャルの刻印も入っている大事な時計だ。
「番記念に贈りあったんです」
「……羨ましい。俺もこの時計と同じものをモニに渡しているんだが『こんな高いの普段使いできないから、特別な時だけつけるね』と言われて、部屋に飾られてしまった」
「大切に思ってくれている証拠ですよ。それに、さっきのは本当に番の物は俺の物って感じで羨ましいですよ」
「確かにあれは大好きなんだが、目の前でペアウォッチをさりげなく着けているのを見てしまうと、その自然体な感じ、いいな」
「いえ、そちらの方が」
「いや、そっちの方が」
「いえいえ、そちらの方が……」
「いやいや、そっちの方が……」
俺たちがお互いを羨ましがっていると、先に進んでいた二人が嬉しそうにこちらを振り返って何か話しているようだった。
「キョウイチさんとアキヤさん、仲良くなってるね~」
「よかった。アキヤさんアルファのお友達できるの、すごく嬉しいみたいだから。なるべく二人にしてあげたいな」
「そうだね~。キョウイチさんも自分が強すぎてアルファ友達なんていないって言っていたから良かった。楽しそうな顔してる」
「こんな小さい子を手に乗せるの、緊張する……」
動物ふれあいコーナーでウサギに餌をやるモニさんと、掌にモルモットを乗せるミチくんを、俺とキョウイチさんは柵の外からスマートフォンで連写しながら眺めている。
「かわいい」
「あぁ、かわいいな」
「お友達と一緒のミチくん、あんな顔するんですね……かわいい」
「あぁ。モニも裏表のない性格だが、ミチさんと一緒の時はまた違ったかわいい顔をする」
「今、俺と一緒の時もあれくらいリラックスした顔をして欲しいという気持ちと、俺には恋人としての顔を見せてくれているんだなという感動が同時に沸いて、気持ちが落ち着きません」
「俺はもう五回以上モニとミチさんが一緒にいる所を見ているが、いまだにそう思う」
連写の手は止めずに、キョウイチ様が俺の方を向く。
「俺がおかしいのかと思っていたが、お前の話を聞いて安心した。よかったら、他にもアルファとして思うことを色々聞かせてくれ」
「こういうことでしたら、自然と口から出てしまうと思いますので、いくらでも」
「ありがとう……アキヤ、でいいか? お前も好きに呼べ」
「はい。ではミチくんが呼ぶのと同じ『キョウイチさん』と」
「あぁ。よろしく」
キョウイチさんが一瞬だけ連写の手を止めて、俺に右手を差し出す。
「よろしくお願いします」
俺からも右手を出して、硬い握手を結んだ。
大人になってから、自分よりも大きな手を握るのは初めてだった。
◆
俺の手には大好物の一つであるソフトクリームが握られている。
牧場で売られているだけあって、牛乳の味が濃くて美味い。感動レベルの味だ。
しかし、俺は今、美味いソフトクリーム以上に感動していることがある。
「いつも思うんだ。折角のモニとのデート、二人きりで楽しみたいと。しかし……」
感動を隠せない声のキョウイチさんの手にもソフトクリームが握られているが、俺と同じで味ではなく別のことに感動しているようだ。
「ミチくんのコーヒー味、ひと口ちょーだい!」
「いいよ。モニくんのイチゴも味見したい」
俺たちの目の前で、ミチくんとモニさんがお互いのソフトクリームを相手に向け合い、一口交換……いいな、俺もそれしたい……という気持ちもあるが……。
「世界一かわいいモニが、美人の友達といちゃいちゃしている姿を見ることでしか得られない心の栄養がある気がする」
「……そういう栄養があるの、俺、今知りました」
今、確実に俺の中で新しい扉が開く音がした。
ミチくんと出会ってから、俺の心には扉が開きまくりだ。
◆
「乗馬体験、十一時からのを予約したんだよね?」
「あぁ」
モニさんがキョウイチさんのブルゾンの袖を捲って、キョウイチさんの高級腕時計で時間を確認する。
「そろそろ向かったほうが良いかも!」
モニさんがミチくんの手を引いて歩きだす。
あぁ、自分以外と手を繋ぐのちょっと嫉妬するけど、これはかわいい。
それと……
「今の、いいですね。番の腕時計をまるで自分の物のように見るの……俺もミチくんにあんなことしてもらいたいです」
「いいだろう。俺もモニのあの行動を気に入っている。しかし……そっちもいいじゃないか」
キョウイチさんは自慢げに頷いた後、俺の左手首に視線を送る。
「気づきました?」
「あぁ。色違いだろう?」
番になれた記念に俺がミチくんに、ミチくんが俺に、贈り合ったペアの腕時計。
俺がチャコールグレーのベルトで、ミチくんが黒いベルト。
キョウイチ様の腕にハマっている数千万円の時計に比べれば桁が二つ下だけど、二人とも気に入って、記念日とイニシャルの刻印も入っている大事な時計だ。
「番記念に贈りあったんです」
「……羨ましい。俺もこの時計と同じものをモニに渡しているんだが『こんな高いの普段使いできないから、特別な時だけつけるね』と言われて、部屋に飾られてしまった」
「大切に思ってくれている証拠ですよ。それに、さっきのは本当に番の物は俺の物って感じで羨ましいですよ」
「確かにあれは大好きなんだが、目の前でペアウォッチをさりげなく着けているのを見てしまうと、その自然体な感じ、いいな」
「いえ、そちらの方が」
「いや、そっちの方が」
「いえいえ、そちらの方が……」
「いやいや、そっちの方が……」
俺たちがお互いを羨ましがっていると、先に進んでいた二人が嬉しそうにこちらを振り返って何か話しているようだった。
「キョウイチさんとアキヤさん、仲良くなってるね~」
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