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第2話 豚の寝床と復讐の誓い
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王都の分厚い城門をくぐった頃には、空は完全に夜の帳に覆われていた。魔導ランプが灯る大通りは、昼間と変わらない活気に満ちている。酒場で陽気に騒ぐ冒険者たちの声。露店商の呼び込み。馬車の車輪が石畳を叩く音。それら全てが、今の僕にはひどく遠い世界の出来事のように感じられた。
パーティから追放されて数時間。怒りと屈辱で麻痺していた感覚が、じわじわと現実の冷たさに侵食され始めていた。背負う荷物がないだけで、こんなにも心許ないものか。両腕が所在なげに揺れる。
ポケットを探ると、硬い感触があった。アレクサンダーが投げつけた数枚の銅貨。あれは受け取らなかった。僕のなけなしのプライドだ。今、僕の全財産は、個人的に持っていた銀貨が三枚と銅貨が十数枚だけ。大金ではないが、安宿に数泊するくらいはできるだろう。
「さて、どうしたものか」
独り言が虚しく夜の空気に溶ける。まずは今夜の宿を確保しなければならない。
大通りに面した宿屋は、どこも立派な看板を掲げている。鎧を纏った屈強な冒険者や、裕福そうな商人が出入りしていた。パーティ単位での宿泊を前提とした、一泊銀貨数枚はするであろう高級宿だ。かつての僕たちも、ああいう宿を利用していた。もう僕には縁のない場所だ。
僕は人々の流れから外れ、大通りから一本入った薄暗い裏路地へと足を踏み入れた。建物の影が伸び、空気は少し湿っている。ここには、日雇い労働者や、僕のような駆け出し、あるいは落ちぶれた冒険者が利用する安宿が軒を連ねていた。
いくつかの宿を冷やかす。どこも似たり寄ったりだったが、その中でも一際くたびれた看板を掲げた宿を見つけた。『豚の寝床亭』。なんとも食欲をそそらない名前だ。だが、扉の横に打ち付けられた木札には『一泊 銅貨五枚』と書かれている。今の僕にはありがたい価格設定だった。
ギシリと音を立てる扉を開けると、酸っぱいエールの匂いと、汗の匂いが混じった空気が鼻をついた。一階は酒場を兼ねているらしく、数人の男たちが薄汚れたテーブルで安酒を呷っている。こちらを一瞥する彼らの視線には、値踏みするような色が浮かんでいた。
カウンターの奥で、脂ぎった顔をした宿主が気怠げに肘をついている。
「泊まりかい、兄ちゃん」
「ああ。一晩頼む」
僕はカウンターに銅貨五枚を置いた。宿主はそれを無造作に掴むと、顎で二階を指し示す。
「二階の突き当たりだ。鍵はねえから、荷物の管理は自分でな。飯は別料金。朝には出てけよ」
愛想も何もない。だが、それでよかった。余計な干渉は望んでいなかった。
僕は軋む階段を上り、言われた部屋へ向かう。扉を開けると、カビと埃の匂いがした。窓のない、押し入れのような狭い空間。そこにあるのは、藁が詰まった硬そうなベッドと、小さな木箱だけ。壁には誰が書いたか分からない落書きがいくつも残っていた。
まさに豚の寝床だ。だが、今は横になれるだけで十分だった。
扉を閉めると、階下の喧騒が少しだけ遠のく。ようやく手に入れた一人の空間。その静寂が、僕の疲労感を一気に増幅させた。どっと体が重くなる。僕は倒れ込むようにベッドに身を投げ出した。藁がごわごわと背中に当たる。
天井の染みをぼんやりと眺めていると、今日の出来事が否応なく脳裏に蘇ってきた。
アレクサンダーの冷酷な宣告。グレンの侮蔑の視線。そして、ヴォルフの沈黙。
彼らは僕のスキルを、僕の貢献を、何も理解していなかった。
「……理解しようともしなかった、か」
そうだ。彼らは最初から、僕を見下していたのだ。戦闘能力のない人間を、自分たちとは違う存在だと線引きしていた。だから、僕がどれだけ努力しても、それは彼らにとって「当たり前のこと」でしかなかった。
思い出すのは、数ヶ月前のことだ。僕たちはCランクダンジョン『迷宮蟻の巣』に挑んでいた。その名の通り、無限に枝分かれするアリの巣のような構造で、多くのパーティが深部への到達を諦めた難所だった。
僕たちは三日三晩、同じような景色の中を彷徨い続けた。食料は尽きかけ、精神は疲弊し、パーティの雰囲気は最悪だった。誰もが撤退を口にし始めた時、僕は気づいたのだ。壁の材質が、場所によって微妙に違うことに。ほとんどの壁は湿った土でできているのに、ある特定の区画だけ、乾燥した砂が混じっている。
僕は【地図化】でその区画をマーキングし、繋がりを追った。すると、一見行き止まりに見える壁の向こうに、巨大な空洞が存在することが分かった。女王蟻の部屋だ。
僕の報告に、グレンは「勘に頼るのか」と懐疑的だった。アレクサンダーも乗り気ではなかったが、他に手がない状況で、渋々僕の案を受け入れた。
結果、僕の読みは当たった。壁は脆くなっており、ヴォルフの一撃で簡単に崩れた。僕たちは奇襲の形で女王蟻を討伐し、ダンジョンを攻略した。
あの時、アレクサンダーは何と言ったか。
『ユキナガ、お前は運がいいな』
それだけだった。僕が三日間、神経をすり減らして見つけ出した法則性を、彼はただの幸運で片付けた。
またある時は、『亡霊の砦』でのこと。アンデッドモンスターが徘徊するそのダンジョンでは、聖属性の攻撃が有効だった。だが、セシリアの神聖魔法だけでは、次々と現れる敵を捌ききれずにいた。
僕はダンジョンの構造をマッピングする中で、奇妙な空間を発見した。壁の中に、細い通路が隠されている。そして、その通路を構成する壁土からは、微かに聖なる気配を感じ取れたのだ。【地図化】のスキルは、構造だけでなく、そういった微細な情報も拾い上げることがある。
おそらく、かつてこの砦に立てこもった人間が、聖水を練り込んだ土壁で隠し通路を作ったのだろう。アンデッドは聖なる気配を嫌って、その通路には近づかない。
僕はそのルートを進言した。案の定、グレンは反対した。
『私の魔力障壁があれば、正面から突破できる。わざわざそんな汚い抜け道を使う必要はない』
だが、彼の魔力も無限ではない。セシリアの負担も大きかった。結局、僕の案が採用され、僕たちはほとんど戦闘をすることなくボスの間手前まで到達し、目的のアイテムを手に入れて撤退することができた。
ヴォルフは「助かったぜ」と言ってくれたが、グレンは最後まで不満そうだった。アレクサンダーは「まあ、効率は良かったか」とだけ評価した。
彼らは知らない。僕の「勘」や「発見」が、どれほどの観察と分析の上に成り立っているのかを。僕が夜、皆が寝静まった後に、一人で地図とにらめっこしながら、壁の染み一つ、空気の流れ一つまで記憶し、そこから法則性を見つけ出そうと足掻いていたことなど、知る由もない。
僕の貢献は、全て見えないものだった。だから、価値がないと判断された。
「ふざけるな……」
ベッドの上で、僕は体を起こした。ギリ、と歯を食いしばる。怒りで腹の底が煮え繰り返るようだった。
彼らにとって、価値があるのは聖剣の輝きや、大魔法の破壊力だけだ。目に見える派手な力だけが、彼らの評価基準だった。
だが、本当にそうか?
ダンジョンとは、力押しだけで攻略できるほど甘くはない。複雑なギミック、巧妙なトラップ、そして膨大な情報量。それらをどう処理し、どう最適解を導き出すか。本当のダンジョン攻略とは、情報戦のはずだ。
その情報戦において、僕の【地図化】スキルに勝るものなど、この世界に存在するだろうか。
いや、ない。断言できる。
脳内に広がる三次元マップ。リアルタイムで更新されるモンスターのシンボル。構造の脆弱性から見抜く隠し通路やトラップ。これは、ただの地図じゃない。ダンジョンそのものを丸裸にする、究極の「答え」だ。
「俺は、無能なんかじゃない」
声に出すと、迷いが晴れていくのを感じた。
追放されたのは、悲劇ではない。むしろ、好機だ。
彼らという足枷が外れた今、僕は自分の力を何の制約もなく、最大限に発揮することができる。
そうだ。見返してやる。
僕を無能だと切り捨てた、あのパーティを。
僕の価値を理解できなかった、あの勇者を。
彼らが血反吐を吐きながら攻略するダンジョンを、僕は鼻歌交じりで踏破してやる。
彼らが一生かかっても手に入れられないような富と名声を、僕は手に入れてみせる。
そして、いつか彼らがどうしようもなく壁にぶつかり、プライドを捨てて僕の前に現れた時、言ってやるのだ。
『お前たちのような無能に、俺の力を貸す価値はない』と。
アレクサンダーが僕にやったように、銅貨数枚を投げつけてやってもいいかもしれない。
想像すると、口の端が歪んだ。そうだ。それでこそ、最高の復讐だ。
そのためには、まず何をすべきか。
感傷に浸っている暇はない。まずは、この最低ランクの宿から抜け出すこと。まともな装備を整えること。そして、僕の力を証明するための舞台に立つことだ。
幸い、この王都には、駆け出し冒険者向けのダンジョンがある。確か、『ゴブリンの洞窟』とか言ったか。
初心者向けの、単純な構造のダンジョン。パーティを組むまでもなく、ソロで攻略する者がほとんどだと聞く。
格好の舞台じゃないか。
僕の【地図化】が、そこでどれほどの威力を発揮するのか。試してみよう。
復讐の第一歩だ。
僕は硬いベッドの上で、固く拳を握りしめた。窓のない部屋の暗闇が、もはや僕の心を蝕むことはなかった。それは絶望の色ではなく、次なるステージへ向かうための、静かな幕開けの色に変わっていた。
明日、全てが始まる。
パーティから追放されて数時間。怒りと屈辱で麻痺していた感覚が、じわじわと現実の冷たさに侵食され始めていた。背負う荷物がないだけで、こんなにも心許ないものか。両腕が所在なげに揺れる。
ポケットを探ると、硬い感触があった。アレクサンダーが投げつけた数枚の銅貨。あれは受け取らなかった。僕のなけなしのプライドだ。今、僕の全財産は、個人的に持っていた銀貨が三枚と銅貨が十数枚だけ。大金ではないが、安宿に数泊するくらいはできるだろう。
「さて、どうしたものか」
独り言が虚しく夜の空気に溶ける。まずは今夜の宿を確保しなければならない。
大通りに面した宿屋は、どこも立派な看板を掲げている。鎧を纏った屈強な冒険者や、裕福そうな商人が出入りしていた。パーティ単位での宿泊を前提とした、一泊銀貨数枚はするであろう高級宿だ。かつての僕たちも、ああいう宿を利用していた。もう僕には縁のない場所だ。
僕は人々の流れから外れ、大通りから一本入った薄暗い裏路地へと足を踏み入れた。建物の影が伸び、空気は少し湿っている。ここには、日雇い労働者や、僕のような駆け出し、あるいは落ちぶれた冒険者が利用する安宿が軒を連ねていた。
いくつかの宿を冷やかす。どこも似たり寄ったりだったが、その中でも一際くたびれた看板を掲げた宿を見つけた。『豚の寝床亭』。なんとも食欲をそそらない名前だ。だが、扉の横に打ち付けられた木札には『一泊 銅貨五枚』と書かれている。今の僕にはありがたい価格設定だった。
ギシリと音を立てる扉を開けると、酸っぱいエールの匂いと、汗の匂いが混じった空気が鼻をついた。一階は酒場を兼ねているらしく、数人の男たちが薄汚れたテーブルで安酒を呷っている。こちらを一瞥する彼らの視線には、値踏みするような色が浮かんでいた。
カウンターの奥で、脂ぎった顔をした宿主が気怠げに肘をついている。
「泊まりかい、兄ちゃん」
「ああ。一晩頼む」
僕はカウンターに銅貨五枚を置いた。宿主はそれを無造作に掴むと、顎で二階を指し示す。
「二階の突き当たりだ。鍵はねえから、荷物の管理は自分でな。飯は別料金。朝には出てけよ」
愛想も何もない。だが、それでよかった。余計な干渉は望んでいなかった。
僕は軋む階段を上り、言われた部屋へ向かう。扉を開けると、カビと埃の匂いがした。窓のない、押し入れのような狭い空間。そこにあるのは、藁が詰まった硬そうなベッドと、小さな木箱だけ。壁には誰が書いたか分からない落書きがいくつも残っていた。
まさに豚の寝床だ。だが、今は横になれるだけで十分だった。
扉を閉めると、階下の喧騒が少しだけ遠のく。ようやく手に入れた一人の空間。その静寂が、僕の疲労感を一気に増幅させた。どっと体が重くなる。僕は倒れ込むようにベッドに身を投げ出した。藁がごわごわと背中に当たる。
天井の染みをぼんやりと眺めていると、今日の出来事が否応なく脳裏に蘇ってきた。
アレクサンダーの冷酷な宣告。グレンの侮蔑の視線。そして、ヴォルフの沈黙。
彼らは僕のスキルを、僕の貢献を、何も理解していなかった。
「……理解しようともしなかった、か」
そうだ。彼らは最初から、僕を見下していたのだ。戦闘能力のない人間を、自分たちとは違う存在だと線引きしていた。だから、僕がどれだけ努力しても、それは彼らにとって「当たり前のこと」でしかなかった。
思い出すのは、数ヶ月前のことだ。僕たちはCランクダンジョン『迷宮蟻の巣』に挑んでいた。その名の通り、無限に枝分かれするアリの巣のような構造で、多くのパーティが深部への到達を諦めた難所だった。
僕たちは三日三晩、同じような景色の中を彷徨い続けた。食料は尽きかけ、精神は疲弊し、パーティの雰囲気は最悪だった。誰もが撤退を口にし始めた時、僕は気づいたのだ。壁の材質が、場所によって微妙に違うことに。ほとんどの壁は湿った土でできているのに、ある特定の区画だけ、乾燥した砂が混じっている。
僕は【地図化】でその区画をマーキングし、繋がりを追った。すると、一見行き止まりに見える壁の向こうに、巨大な空洞が存在することが分かった。女王蟻の部屋だ。
僕の報告に、グレンは「勘に頼るのか」と懐疑的だった。アレクサンダーも乗り気ではなかったが、他に手がない状況で、渋々僕の案を受け入れた。
結果、僕の読みは当たった。壁は脆くなっており、ヴォルフの一撃で簡単に崩れた。僕たちは奇襲の形で女王蟻を討伐し、ダンジョンを攻略した。
あの時、アレクサンダーは何と言ったか。
『ユキナガ、お前は運がいいな』
それだけだった。僕が三日間、神経をすり減らして見つけ出した法則性を、彼はただの幸運で片付けた。
またある時は、『亡霊の砦』でのこと。アンデッドモンスターが徘徊するそのダンジョンでは、聖属性の攻撃が有効だった。だが、セシリアの神聖魔法だけでは、次々と現れる敵を捌ききれずにいた。
僕はダンジョンの構造をマッピングする中で、奇妙な空間を発見した。壁の中に、細い通路が隠されている。そして、その通路を構成する壁土からは、微かに聖なる気配を感じ取れたのだ。【地図化】のスキルは、構造だけでなく、そういった微細な情報も拾い上げることがある。
おそらく、かつてこの砦に立てこもった人間が、聖水を練り込んだ土壁で隠し通路を作ったのだろう。アンデッドは聖なる気配を嫌って、その通路には近づかない。
僕はそのルートを進言した。案の定、グレンは反対した。
『私の魔力障壁があれば、正面から突破できる。わざわざそんな汚い抜け道を使う必要はない』
だが、彼の魔力も無限ではない。セシリアの負担も大きかった。結局、僕の案が採用され、僕たちはほとんど戦闘をすることなくボスの間手前まで到達し、目的のアイテムを手に入れて撤退することができた。
ヴォルフは「助かったぜ」と言ってくれたが、グレンは最後まで不満そうだった。アレクサンダーは「まあ、効率は良かったか」とだけ評価した。
彼らは知らない。僕の「勘」や「発見」が、どれほどの観察と分析の上に成り立っているのかを。僕が夜、皆が寝静まった後に、一人で地図とにらめっこしながら、壁の染み一つ、空気の流れ一つまで記憶し、そこから法則性を見つけ出そうと足掻いていたことなど、知る由もない。
僕の貢献は、全て見えないものだった。だから、価値がないと判断された。
「ふざけるな……」
ベッドの上で、僕は体を起こした。ギリ、と歯を食いしばる。怒りで腹の底が煮え繰り返るようだった。
彼らにとって、価値があるのは聖剣の輝きや、大魔法の破壊力だけだ。目に見える派手な力だけが、彼らの評価基準だった。
だが、本当にそうか?
ダンジョンとは、力押しだけで攻略できるほど甘くはない。複雑なギミック、巧妙なトラップ、そして膨大な情報量。それらをどう処理し、どう最適解を導き出すか。本当のダンジョン攻略とは、情報戦のはずだ。
その情報戦において、僕の【地図化】スキルに勝るものなど、この世界に存在するだろうか。
いや、ない。断言できる。
脳内に広がる三次元マップ。リアルタイムで更新されるモンスターのシンボル。構造の脆弱性から見抜く隠し通路やトラップ。これは、ただの地図じゃない。ダンジョンそのものを丸裸にする、究極の「答え」だ。
「俺は、無能なんかじゃない」
声に出すと、迷いが晴れていくのを感じた。
追放されたのは、悲劇ではない。むしろ、好機だ。
彼らという足枷が外れた今、僕は自分の力を何の制約もなく、最大限に発揮することができる。
そうだ。見返してやる。
僕を無能だと切り捨てた、あのパーティを。
僕の価値を理解できなかった、あの勇者を。
彼らが血反吐を吐きながら攻略するダンジョンを、僕は鼻歌交じりで踏破してやる。
彼らが一生かかっても手に入れられないような富と名声を、僕は手に入れてみせる。
そして、いつか彼らがどうしようもなく壁にぶつかり、プライドを捨てて僕の前に現れた時、言ってやるのだ。
『お前たちのような無能に、俺の力を貸す価値はない』と。
アレクサンダーが僕にやったように、銅貨数枚を投げつけてやってもいいかもしれない。
想像すると、口の端が歪んだ。そうだ。それでこそ、最高の復讐だ。
そのためには、まず何をすべきか。
感傷に浸っている暇はない。まずは、この最低ランクの宿から抜け出すこと。まともな装備を整えること。そして、僕の力を証明するための舞台に立つことだ。
幸い、この王都には、駆け出し冒険者向けのダンジョンがある。確か、『ゴブリンの洞窟』とか言ったか。
初心者向けの、単純な構造のダンジョン。パーティを組むまでもなく、ソロで攻略する者がほとんどだと聞く。
格好の舞台じゃないか。
僕の【地図化】が、そこでどれほどの威力を発揮するのか。試してみよう。
復讐の第一歩だ。
僕は硬いベッドの上で、固く拳を握りしめた。窓のない部屋の暗闇が、もはや僕の心を蝕むことはなかった。それは絶望の色ではなく、次なるステージへ向かうための、静かな幕開けの色に変わっていた。
明日、全てが始まる。
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