ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ

文字の大きさ
67 / 87

第74話:新大陸への船出

しおりを挟む
リビングの暖炉の火が和やかに揺らめいている。僕が書斎から持ち出した古びた羊皮紙の地図を大きなテーブルの上に広げると、バルガスとリリアナは興味深そうにそれを覗き込んできた。
「なんだ、こりゃ。見たことねえ大陸だな」
バルガスがその無骨な指で地図に描かれた未知の大陸の海岸線をなぞった。
「新大陸……。海の向こうにこんなに広い世界が広がっていたなんて」
リリアナもその瞳を輝かせている。
「ああ。そして俺たちの次の目的地はここだ」
僕は地図の一点、強力なダンジョンの存在を示す古代のシンボルを指差した。「ここにはまだ俺たちの知らない新たな『世界の理』の断片が眠っているはずだ。俺はそれを見つけに行きたい」
僕の言葉に二人は顔を見合わせ、そしてまるで示し合わせたかのようににやりと笑った。
「へへっ、ようやく骨のありそうな冒険の話が出てきたな!」
バルガスが嬉しそうに拳を鳴らす。
「ええ。この家での穏やかな生活も素敵だけど、やっぱり私たちは冒険者だものね」
リリアナもその碧眼に探求の光を宿していた。
僕たちの心はもう決まっていた。
Aランクパーティとなり王家からの後援も得た今、僕たちの活動範囲はもはやこのエーテリオン王国だけには留まらない。
僕たちは世界の謎を解き明かすため、新大陸へと旅立つことを決意した。

出発までの準備はこれまでにないほど大掛かりなものになった。
新大陸への渡航には当然、船が必要だ。僕たちはランズデール侯爵の紹介で王都でも指折りの造船技師と契約を結んだ。
「ただの船じゃダメだ!」
バルガスは自ら設計図を引き、造船技師たちと熱い議論を交わしていた。「船体にはエンシェントウッドとミスリル合金を使う! 嵐にも巨大な海獣の襲撃にも耐えられる、海に浮かぶ『要塞』を造るんだ!」
彼のドワーフとしての知識と技術が今度は船造りの分野で遺憾なく発揮されていた。
リリアナは長期航海に備えて大量の食料と、そして何よりも重要な薬草の準備に奔走していた。
「船の上でもハーブを育てられるように特別なプランターを用意しないと。それに新大陸には未知の病気があるかもしれないわ。あらゆる毒に対応できる万能解毒薬の研究も進めないと」
彼女の錬金術師としての才能が僕たちの旅の生命線を支えることになるだろう。
僕は王立図書館のさらに奥深く、初代国王の許可がなければ入れない『禁断の書庫』で新大陸に関するわずかな文献を探し求めていた。
そこには古代アルケイア文明が遺したと思われる断片的な航海日誌が残されていた。
『東の大陸……そこは、我らが『システム』の及ばぬ理の外の地……。星の理ではなく、混沌の理が支配する原初の土地……』
その謎めいた記述が僕の知的好奇心をさらに掻き立てた。

数ヶ月後。
王都の港には一隻の壮麗で、そして明らかに異質な船がその威容を誇示するように停泊していた。
船体は流線型の美しいフォルムを持ちながらも、バルガスが設計した通りミスリル合金で補強された重厚な装甲に覆われている。マストには風の魔力を受けて自動で帆を張る魔法の帆布が使われていた。船首にはリリアナがデザインした翼を広げた銀色の鳥の彫刻が飾られている。
船の名は『フロンティア号』。
僕たちの新たな冒険の翼だ。
「すげえ……。本当にできちまったな、俺たちの船が」
バルガスが感慨深げにその船を見上げている。
「ええ。私たちの新しいお城ね」
リリアナも満足げに微笑んでいた。
僕たちの船出の日には多くの人々が見送りに来てくれた。
ギルドマスターのダグラス。ランズデール侯爵とすっかり逞しくなったアルフレッド様。僕たちの活躍に憧れる若い冒険者たち。
そしてその人垣の少し離れた場所に。
質素な旅装束を身につけた三人の男女の姿があった。
アレクサンダー、ヴォルフ、そしてセシリア。
アレクサンダーはもう聖剣を佩いてはいなかった。その腰にはありふれた鉄の剣が一本だけ。だがその顔にはかつての憎悪も屈辱もない。ただ静かで穏やかな表情があった。
彼と僕の視線が一瞬だけ交差した。
彼は僕に向かって小さく、しかし確かに頷いてみせた。それは言葉にならない彼なりの激励と、そして感謝の印だったのかもしれない。
僕もまた静かに頷き返した。
僕たちの間の全ての物語は本当に終わったのだ。
彼らにも彼らなりの新しい道がある。僕たちにも僕たちの新しい道がある。その道がいつかまたどこかで交差することがあるのかもしれない。だがそれはまた別の物語だ。

「出航の時間だ」
僕が言うと、三人は頷きフロンティア号のタラップを上がった。
「面舵いっぱーい! 新大陸に向けて出航だああああ!」
バルガスが船長のように朗々とした声を張り上げる。
魔法の帆が風を孕み、僕たちの船はゆっくりと、しかし力強く港を離れていった。
岸壁から僕たちの名を呼ぶ多くの声が聞こえる。
僕たちはその声に大きく手を振って応えた。
僕たちの第一章は終わった。
追放から始まり、最高の仲間と出会い、過去の因縁を乗り越え、この国で伝説となった。
そして今、第二章の幕が上がる。
まだ誰も知らない未知なる大陸。
世界の理の外側にあるという原初の土地。
そこにどんな謎が、どんな冒険が、そしてどんな『世界の真実』が待ち受けているのか。
僕の【地図化】スキルはまだ真っ白な広大な海の地図を、そしてその先にある未知なる大陸の輪郭を期待に満ちて描き出し始めていた。
僕たち『フロンティア』の本当の冒険。
それは今、この大海原から始まるのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

異世界帰りの俺、現代日本にダンジョンが出現したので異世界経験を売ったり配信してみます

内田ヨシキ
ファンタジー
「あの魔物の倒し方なら、30万円で売るよ!」  ――これは、現代日本にダンジョンが出現して間もない頃の物語。  カクヨムにて先行連載中です! (https://kakuyomu.jp/works/16818023211703153243)  異世界で名を馳せた英雄「一条 拓斗(いちじょう たくと)」は、現代日本に帰還したはいいが、異世界で鍛えた魔力も身体能力も失われていた。  残ったのは魔物退治の経験や、魔法に関する知識、異世界言語能力など現代日本で役に立たないものばかり。  一般人として生活するようになった拓斗だったが、持てる能力を一切活かせない日々は苦痛だった。  そんな折、現代日本に迷宮と魔物が出現。それらは拓斗が異世界で散々見てきたものだった。  そして3年後、ついに迷宮で活動する国家資格を手にした拓斗は、安定も平穏も捨てて、自分のすべてを活かせるはずの迷宮へ赴く。  異世界人「フィリア」との出会いをきっかけに、拓斗は自分の異世界経験が、他の初心者同然の冒険者にとって非常に有益なものであると気づく。  やがて拓斗はフィリアと共に、魔物の倒し方や、迷宮探索のコツ、魔法の使い方などを、時に直接売り、時に動画配信してお金に変えていく。  さらには迷宮探索に有用なアイテムや、冒険者の能力を可視化する「ステータスカード」を発明する。  そんな彼らの活動は、ダンジョン黎明期の日本において重要なものとなっていき、公的機関に発展していく――。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...