クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ

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第71話 聖なる夜のイルミネーション

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十二月二十四日、クリスマス・イヴ。
街は一年で最も輝かしい光と、浮き足立った幸福感に包まれていた。
俺は心臓が口から飛び出しそうなほどの緊張と、それを遥かに上回る期待感を胸に、待ち合わせ場所の公園の入り口に立っていた。
吐く息が白い。
マフラーに顔を埋め、かじかむ手をこすり合わせる。
寒さのせいだけじゃない。武者震いにも似た興奮が、俺の全身を駆け巡っていた。

今日の日のために新しく買った、少しだけ大人っぽいコート。
カバンの中には、あの月と星のネックレスが静かに出番を待っている。
完璧なはずだ。
でも、やっぱり不安だった。彼女は喜んでくれるだろうか。

約束の時間の五分前。
イルミネーションが灯る並木道の向こうから、見慣れた、しかし今日は世界で一番特別な姿が現れた。
雫だった。
その姿を認めた瞬間、俺は寒さも緊張も全て忘れてしまった。

白いふわふわとした素材のコート。
首には柔らかなピンク色のマフラーが巻かれ、その小さな顔を半分くらい埋めている。
髪は緩く巻かれ、雪の結晶をかたどったキラキラとした髪飾りが、街の光を反射して輝いていた。
その姿は、まるで冬の国から舞い降りてきた雪の妖精のようだった。
可愛い。
その一言しか思い浮かばない。

彼女は俺の姿を見つけると、ぱあっと顔を輝かせ、小さな歩幅でてとてとと駆け寄ってきた。
その手には可愛らしいラッピングが施された、少しだけ縦長の紙袋が握られている。

「ごめん、待った?」
マフラーに埋もれた口元で、彼女が声にならない言葉を紡ぐ。
「ううん、今来たとこ」
俺はもはやお決まりとなった嘘をつきながら、彼女のあまりの可愛さに完全に心を奪われていた。
「そのコート、すごく似-合ってる。可愛い」
俺が素直な気持ちを手話で伝えると、彼女はマフラーから覗く頬をぽっと鮮やかな赤に染めた。

「行こうか」
俺はごく自然に彼女の前に手を差し出す。
彼女もはにかみながら、その小さな手を俺の手に重ねてくれた。手袋越しの柔らかな感触。
俺たちは恋人繋ぎで、光のトンネルへと一歩を踏み出した。

公園の中はまるで夢の世界だった。
木々という木々に何万ものLEDライトが飾られ、青や白やシャンパンゴールドの光が幻想的な空間を作り出している。
頭上からは星が降ってくるかのような光のシャワー。
地面に敷き詰められたライトは、まるで銀河の上を歩いているかのような錯覚に陥らせた。

「わあ……」
雫が感嘆の息を漏らした。
その瞳は子供のように純粋な輝きに満ちて、目の前に広がる光の海に完全に心を奪われている。
イルミネーションの光が彼女の顔をキラキラと照らし出す。
その横顔は、この世のどんな宝石よりも美しく輝いて見えた。

俺たちは言葉少なに光の中を歩いた。
言葉なんて必要なかった。
繋いだ手の温もりと、目の前に広がる絶景と、そして隣で微笑む愛しい君の存在。
それだけで、俺の心はどうしようもなく満たされていた。

一番大きなクリスマスツリーの前で、俺たちは足を止めた。
天辺には大きな星が輝き、色とりどりのオーナメントがきらびやかに飾られている。
多くのカップルが、その前で幸せそうに写真を撮っていた。

今だ。
この最高の瞬間に。
俺は意を決した。

「雫」
俺が彼女の名前を呼ぶ。
不思議そうな顔で俺を見上げるその潤んだ瞳。
俺は一度ごくりと唾を飲み込んだ。
そして、カバンの中からあの小さな箱を取り出した。

「メリークリスマス」
俺はそう言って、その箱を彼女の前にそっと差し出した。
彼女は驚きに目を丸くした。
そして俺が差し出した小さな箱と俺の顔を、何度も何度も交互に見つめている。
その瞳には信じられないという気持ちと、隠しきれない喜びの色が溢れんばかりに浮かんでいた。

彼女は震える手でその箱を受け取った。
そして、ゆっくりとリボンを解いていく。
小さな蓋を開けた、その瞬間。
彼女の息をのむ音が聞こえた。

箱の中では月のモチーフのネックレスが、イルミネーションの光を反射して静かに、しかし強く輝いていた。
「月宮雫の、『月』」
俺が手話でそう伝えると、彼女の瞳から一筋の温かい涙がぽろりとこぼれ落ちた。

「開けて、つけてみていい?」
彼女が涙で濡れた笑顔のまま、こくりと頷く。
俺はネックレスを箱から取り出し、彼女の背後に回った。
ふわりと香る甘いシャンプーの匂いに心臓が跳ねる。
俺は震える指で彼女の白い首筋に冷たいチェーンをかけた。
そして、小さな留め具をなんとか留める。
その時、俺の指先が彼女のうなじにそっと触れた。
びくりと彼女の肩が震える。俺の体にも甘い電気が走った。

「……できた」
俺が言うと、彼女は自分の胸元で輝く小さな月を愛おしそうに、そっと指でなぞった。
そして、俺の方を振り返る。
その顔は涙と最高の笑顔でぐしゃぐしゃだった。
でも、それは俺が今まで見た中で一番美しい顔だった。

「ありがとう……」
彼女が声にならない声でそう言った。
そして、今度は私の番というかのように、彼女が持っていた紙袋を俺の前に差し出してきた。
「え、俺にも?」
俺が驚くと、彼女はこくりと力強く頷いた。

俺がラッピングを解くと、中から出てきたのは。
紺色の手編みのマフラーだった。
少しだけ編み目が不揃いな部分がある。
でも、その一つ一つに彼女の温かい想いがぎゅっと込められているのが、痛いほど伝わってきた。

「……ありがとう。すごく、嬉しい」
俺は込み上げてくる感動を抑えながらそう言った。
そして、早速そのマフラーを自分の首に巻く。
驚くほど暖かかった。
彼女の温もりに直接包まれているような、幸せな感覚。

聖なる夜のイルミネーションの下で。
プレゼントを交換し、お互いの想いを確かめ合う。
それはまるで映画のワンシーンのような、完璧で最高に甘い瞬間だった。
俺たちの恋は、これからもずっとこのイルミネーションの光のようにキラキラと輝き続けるのだろう。
俺は首に巻かれたマフラーの温かさを感じながら、そう固く信じていた。
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