クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ

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第75話 君と見る初日の出

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大吉のおみくじと温かい甘酒。
幸先の良いスタートを切った俺たちの新年は、まだ始まったばかりだった。
初詣を終え神社の境内を出た俺たちは、どちらからともなく足を止めた。
時刻は午前一時を少し回ったところ。
このまま家に帰るのは、あまりにも名残惜しい。

「……なあ」
俺が何かを言いかけた、その時だった。
雫が俺のコートの袖をきゅっと掴んだ。そして俺の目をキラキラとした瞳で真っ直ぐに見上げてくる。
その瞳は何かを強く訴えかけていた。
俺は彼女が何を言いたいのかすぐに分かった。
俺も同じことを考えていたからだ。

「……行ってみるか」
俺がにっと笑いながら言うと、彼女はぱあっと花が咲くように顔を輝かせた。
そして今日一番の力強さで、こくこくと何度も頷いてくれた。

俺たちの行き先は決まった。
初日の出。
この街で一番綺麗に、新しい年の最初の太陽が見える場所。
それは俺たちが告白をした、あの丘の公園だった。

俺たちは電車に乗り、再びあの公園へと向かった。
深夜の電車はがらがらに空いていた。
ボックス席に二人並んで座り、窓の外を流れていく静かな夜の街並みを眺める。
隣に座る雫の肩が、俺の肩にそっと寄りかかってくる。
その確かな重みと温もりが、どうしようもなく愛おしい。
俺は彼女の頭に、自分の頭を優しく寄り添わせた。

公園に着くと、丘の上には俺たちと同じように初日の出を待つ人々がちらほらと集まり始めていた。
でもその数はまだ少なく、丘の上は静寂と期待に満ちた空気で満たされている。
空気が痛いほど冷たい。
俺たちは一番景色の良い柵のそばに陣取った。
そして二人で一つのブランケットにくるまり、身を寄せ合った。

「寒いな」
俺が言うと彼女はこくりと頷いた。そして俺のコートのポケットの中で、繋いだ俺の手をきゅっとさらに強く握り返してくる。
その温もりだけで、どんな寒さも耐えられる気がした。

日の出まであと一時間以上。
俺たちは言葉少なに、ただ静かにその時を待った。
雫が俺の肩に頭を預け、うとうとと船を漕ぎ始める。
その無防備な寝顔。
俺は彼女が風邪をひかないようにブランケットをかけ直し、その小さな体を優しく抱き寄せた。
俺の腕の中で彼女が安心しきったように、穏やかな寝息を立て始める。
その寝顔を見ているだけで、俺の心は温かいもので満たされていく。

やがて東の空がゆっくりとその色を変え始めた。
深い藍色の空の地平線のあたりが、わずかに白んでくる。
そしてその白は徐々に金色と燃えるようなオレンジ色へと、その表情を変えていった。

「……雫、起きろ。始まるぞ」
俺が彼女の肩を優しく揺すると、彼女は「ん……」と可愛らしい寝息を漏らし、ゆっくりと瞼を開けた。
そして目の前に広がる幻想的な光景に、息をのんだ。

空が燃えている。
世界が新しい光の誕生を静かに待っている。
周りにいた人々も皆、固唾を飲んで東の空を見つめていた。

そして、その瞬間は訪れた。
地平線の向こうから、眩い一点の光が顔を覗かせたのだ。
それはまるで世界を焼き尽くすかのような、力強い生命力に満ちた光。
その光はあっという間に勢いを増し、巨大な黄金色の太陽がゆっくりと、しかしその姿を現した。

「「わあ……」」

周りから感嘆の声が上がる。
俺も雫もただ言葉を失い、その神々しい光景に心を奪われていた。
新しい年の最初の太陽。
その光が俺たちの顔を、体を、そして未来を、優しくそして力強く照らし出していく。

俺は太陽から隣に立つ雫の横顔へと視線を移した。
朝日に照らされた彼女の横顔。
その瞳には黄金色の光が映り込み、キラキラと宝石のように輝いている。
その頬は希望と感動でほんのりと赤らんでいた。
その姿は、この世のどんな美しい景色よりも、ずっとずっと俺の心を強く強く揺さぶった。

この子を一生大切にしよう。
この笑顔を一生俺が守り抜こう。
この手とこの心で、この子を世界で一番幸せにしよう。

俺は初日の出の神々しい光の中で、そう固く固く心に誓った。
それは誰に言うでもない、俺だけの静かで、しかし何よりも強い誓いの言葉だった。

彼女が俺の視線に気づき、こちらを振り返った。
そして最高の笑顔でふわりと微笑んだ。
その笑顔が、俺の誓いに対する神様からの最高の答えのように思えた。

君と見る初日の出。
それは俺たちの新しい年の始まりを、そして輝かしい未来を祝福してくれる最高の贈り物だった。
俺たちの恋は、この初日の出の光のようにこれからもずっと力強く、そして温かく輝き続けるのだろう。
俺は繋いだ手の温もりを噛み締めながら、そう確信していた。
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