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第16話:陽だまりの歌声
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蓮の失言が落とした小さな影は、サークル室の空気に溶けずに漂っていた。創作の話は続いている。しかし、言葉と言葉の間に、以前にはなかった微かな隙間風が吹いているのを、二人とも感じていた。陽葵は努めて明るく振る舞い、蓮はそれを痛々しく感じながらも、どうすることもできない。
彼女は悪くない。悪いのは、全て自分だ。嘘と秘密を抱え込み、その重さに耐えきれず、一番傷つけたくない相手にその一端を垣間見せてしまった。
「……なあ、朝霧」
蓮は、この気まずい空気を断ち切るように、不意に口を開いた。陽葵は、びくりと肩を揺らして蓮を見る。
「もう一度、歌ってみてくれないか」
「え? い、今、ですか?」
「ああ。さっき言った修正点を、実際に試してみたい。それに……ちゃんと、録音したい」
蓮の目は、真剣だった。陽葵は少し戸惑ったように視線を彷徨わせたが、やがてこくりと小さく頷いた。
「……はい。分かりました」
蓮は立ち上がると、サークル室の隅に置かれた、埃をかぶった機材ケースへと向かった。中から取り出したのは、一本のコンデンサーマイクと、オーディオインターフェース。プロが使うような高価なものではない。部費で買った、最低限の性能しかない安物だ。
手際よく機材をセッティングし、パソコンに接続する。音楽制作ソフトを立ち上げ、新しいオーディオトラックを作成した。防音設備などない、ただの部室。窓の外からは、運動部の掛け声や、吹奏楽部の練習の音が微かに聞こえてくる。完璧なレコーディング環境とは、口が裂けても言えなかった。
だが、それでいい。蓮が今、記録したかったのは、完璧な音源ではない。この瞬間の、彼女の生の歌声そのものだった。
「準備できた。いつでもいいぞ」
マイクスタンドの前に立った陽葵は、緊張した面持ちでごくりと唾を飲み込んだ。蓮は彼女にヘッドホンを手渡す。陽葵がそれを受け取り装着する。その仕草を、蓮はミキサー卓の向こう側から、じっと見つめていた。
「……じゃあ、いきます」
ヘッドホン越しに、陽葵の少し震えた声が聞こえる。蓮は無言で頷き、録音ボタンを押した。
クリック音が四回鳴り、静寂が訪れる。そして、イヤホンから、蓮が紡いだピアノのイントロが静かに流れ始めた。
陽葵が、そっと息を吸う音が聞こえた。
次の瞬間、彼女の唇から、歌声が紡ぎ出される。
それは、先ほどスマホのスピーカーで聴いたものとは、全く別物だった。
マイクを通してダイレクトに耳に届く彼女の声は、驚くほど生々しく、そして魂の震えを伴っていた。
技術的に上手いとか、声量があるとか、そういう次元の話ではなかった。
彼女の歌声は、温かかった。まるで、冬の陽だまりに包まれているような、優しい温もりがあった。
歌詞の一つ一つが、蓮の心に染み込んでくる。
それは、暗闇の中で独りきり、出口を探して彷徨う『誰か』の歌だった。蓮が、無意識のうちにこの曲に込めていた孤独や焦燥を、陽葵は完璧に理解し、言葉にしてくれていた。
だが、彼女の歌詞は、絶望だけでは終わらなかった。
『――それでも信じたいんだ 消えない光があること 手探りで見つけた 小さな希望のカケラを握りしめて――』
サビの部分で、彼女の歌声は力強さを増す。それは、ただの慰めや励ましではない。共に暗闇の中から這い上がろうとする、強い意志の表明だった。蓮が失いかけていた、前に進むための力を、彼女が歌声に乗せて与えてくれているようだった。
蓮は、ミキサーのフェーダーを握りしめたまま、身動き一つできなかった。
脳裏から、瑠奈の影が、コンサートの喧騒が、マネージャーの脅し文句が、急速に色褪せていく。このサークル室だけが、世界の全てだった。ここには、薄汚い芸能界の駆け引きも、過去の呪縛も存在しない。
ただ、純粋な音楽だけがあった。
蓮が作り、陽葵が歌う、二人だけの音楽。
曲は、やがてクライマックスへと向かっていく。陽葵の歌声は、さらに感情の純度を高めていた。それはもはや、蓮への応援歌であり、彼女自身の未来への祈りのようでもあった。
『――夜明けはきっと来るから 凍える夜の向こうに 君と見つけたい 新しい物語の始まりを――』
最後のフレーズが、優しい余韻を残して消えていく。
アウトロのピアノの旋律が、静かに、静かにフェードアウトしていく。
そして、完全な静寂が訪れた。
蓮は、しばらくの間、動けなかった。感動という言葉では、到底言い表せない感情の奔流が、胸の中で渦巻いていた。これは、自分の作った曲だ。だが、今はもう、自分一人のものではなかった。陽葵という光が加わることで、全く新しい、遥かに尊い何かに生まれ変わっていた。
ヘッドホンを外した陽葵が、感極まったように少しだけ俯いている。その肩が、微かに震えているのが見えた。
蓮は、ゆっくりと録音停止ボタンを押した。そして、溜まっていた息を、深く、長く吐き出した。
心は、決まっていた。
「……朝霧」
蓮の声に、陽葵がゆっくりと顔を上げる。その大きな瞳は、涙で潤んでいた。
「この曲は、朝霧だけのものだ」
その言葉は、何の迷いもなく、蓮の口から滑り出た。
陽葵は、きょとんとした顔で、蓮を見つめている。蓮の言葉の意味が、すぐには理解できないようだった。
蓮は、椅子から立ち上がると、マイクの前に立つ陽葵の元へと歩み寄った。そして、その潤んだ瞳を、真っ直ぐに見つめ返す。
「誰にも渡さない。コンペとか、事務所とか、そういうのじゃない。瑠奈のためでもない」
瑠奈の名前を口にした時、陽葵の肩が小さく震えた。蓮は、その震えをしっかりと受け止めるように、言葉を続けた。
「これは、俺が、君のために作った曲だ。君が歌うから、この曲は完成したんだ。だから、これは君の歌だ」
先ほどの失言による、二人の間の見えない壁。蓮は、その壁を自らの手で打ち壊しにかかっていた。嘘やごまかしではない。今の、偽りのない本心を、全て彼女にぶつける。
蓮の力強い言葉に、陽葵の瞳から、堪えていた涙が一筋、頬を伝った。それは、悲しみの涙ではなかった。
「……せんぱい」
「だから、他の誰にも歌わせない。この曲は、俺と朝霧、二人だけのものだ」
その言葉は、誓いだった。この曲を、そして何より、この曲を歌う朝霧陽葵という存在を、自分が必ず守り抜くという、固い誓い。
陽葵の唇が、震えながらゆっくりと綻んでいく。やがてそれは、涙に濡れた、最高の笑顔になった。
「…………はいっ!」
消え入りそうな、しかし、世界中のどんな言葉よりもはっきりと、彼女は頷いた。
コンサートの失言が作った小さな亀裂は、もうどこにもなかった。二人の間には、共に一つの作品を生み出したという、何物にも代えがたい、強固な絆が結ばれていた。
蓮は、心の中に、確固たる光が灯るのを感じていた。
星宮瑠奈という過去の嵐が、これからどれだけ吹き荒れようとも、もうこの光だけは、決して消させはしない。
そのために、自分は戦わなければならない。
蓮の心の中で、クリエイターとしての、そして一人の男としての、静かな覚悟が固まった瞬間だった。
彼女は悪くない。悪いのは、全て自分だ。嘘と秘密を抱え込み、その重さに耐えきれず、一番傷つけたくない相手にその一端を垣間見せてしまった。
「……なあ、朝霧」
蓮は、この気まずい空気を断ち切るように、不意に口を開いた。陽葵は、びくりと肩を揺らして蓮を見る。
「もう一度、歌ってみてくれないか」
「え? い、今、ですか?」
「ああ。さっき言った修正点を、実際に試してみたい。それに……ちゃんと、録音したい」
蓮の目は、真剣だった。陽葵は少し戸惑ったように視線を彷徨わせたが、やがてこくりと小さく頷いた。
「……はい。分かりました」
蓮は立ち上がると、サークル室の隅に置かれた、埃をかぶった機材ケースへと向かった。中から取り出したのは、一本のコンデンサーマイクと、オーディオインターフェース。プロが使うような高価なものではない。部費で買った、最低限の性能しかない安物だ。
手際よく機材をセッティングし、パソコンに接続する。音楽制作ソフトを立ち上げ、新しいオーディオトラックを作成した。防音設備などない、ただの部室。窓の外からは、運動部の掛け声や、吹奏楽部の練習の音が微かに聞こえてくる。完璧なレコーディング環境とは、口が裂けても言えなかった。
だが、それでいい。蓮が今、記録したかったのは、完璧な音源ではない。この瞬間の、彼女の生の歌声そのものだった。
「準備できた。いつでもいいぞ」
マイクスタンドの前に立った陽葵は、緊張した面持ちでごくりと唾を飲み込んだ。蓮は彼女にヘッドホンを手渡す。陽葵がそれを受け取り装着する。その仕草を、蓮はミキサー卓の向こう側から、じっと見つめていた。
「……じゃあ、いきます」
ヘッドホン越しに、陽葵の少し震えた声が聞こえる。蓮は無言で頷き、録音ボタンを押した。
クリック音が四回鳴り、静寂が訪れる。そして、イヤホンから、蓮が紡いだピアノのイントロが静かに流れ始めた。
陽葵が、そっと息を吸う音が聞こえた。
次の瞬間、彼女の唇から、歌声が紡ぎ出される。
それは、先ほどスマホのスピーカーで聴いたものとは、全く別物だった。
マイクを通してダイレクトに耳に届く彼女の声は、驚くほど生々しく、そして魂の震えを伴っていた。
技術的に上手いとか、声量があるとか、そういう次元の話ではなかった。
彼女の歌声は、温かかった。まるで、冬の陽だまりに包まれているような、優しい温もりがあった。
歌詞の一つ一つが、蓮の心に染み込んでくる。
それは、暗闇の中で独りきり、出口を探して彷徨う『誰か』の歌だった。蓮が、無意識のうちにこの曲に込めていた孤独や焦燥を、陽葵は完璧に理解し、言葉にしてくれていた。
だが、彼女の歌詞は、絶望だけでは終わらなかった。
『――それでも信じたいんだ 消えない光があること 手探りで見つけた 小さな希望のカケラを握りしめて――』
サビの部分で、彼女の歌声は力強さを増す。それは、ただの慰めや励ましではない。共に暗闇の中から這い上がろうとする、強い意志の表明だった。蓮が失いかけていた、前に進むための力を、彼女が歌声に乗せて与えてくれているようだった。
蓮は、ミキサーのフェーダーを握りしめたまま、身動き一つできなかった。
脳裏から、瑠奈の影が、コンサートの喧騒が、マネージャーの脅し文句が、急速に色褪せていく。このサークル室だけが、世界の全てだった。ここには、薄汚い芸能界の駆け引きも、過去の呪縛も存在しない。
ただ、純粋な音楽だけがあった。
蓮が作り、陽葵が歌う、二人だけの音楽。
曲は、やがてクライマックスへと向かっていく。陽葵の歌声は、さらに感情の純度を高めていた。それはもはや、蓮への応援歌であり、彼女自身の未来への祈りのようでもあった。
『――夜明けはきっと来るから 凍える夜の向こうに 君と見つけたい 新しい物語の始まりを――』
最後のフレーズが、優しい余韻を残して消えていく。
アウトロのピアノの旋律が、静かに、静かにフェードアウトしていく。
そして、完全な静寂が訪れた。
蓮は、しばらくの間、動けなかった。感動という言葉では、到底言い表せない感情の奔流が、胸の中で渦巻いていた。これは、自分の作った曲だ。だが、今はもう、自分一人のものではなかった。陽葵という光が加わることで、全く新しい、遥かに尊い何かに生まれ変わっていた。
ヘッドホンを外した陽葵が、感極まったように少しだけ俯いている。その肩が、微かに震えているのが見えた。
蓮は、ゆっくりと録音停止ボタンを押した。そして、溜まっていた息を、深く、長く吐き出した。
心は、決まっていた。
「……朝霧」
蓮の声に、陽葵がゆっくりと顔を上げる。その大きな瞳は、涙で潤んでいた。
「この曲は、朝霧だけのものだ」
その言葉は、何の迷いもなく、蓮の口から滑り出た。
陽葵は、きょとんとした顔で、蓮を見つめている。蓮の言葉の意味が、すぐには理解できないようだった。
蓮は、椅子から立ち上がると、マイクの前に立つ陽葵の元へと歩み寄った。そして、その潤んだ瞳を、真っ直ぐに見つめ返す。
「誰にも渡さない。コンペとか、事務所とか、そういうのじゃない。瑠奈のためでもない」
瑠奈の名前を口にした時、陽葵の肩が小さく震えた。蓮は、その震えをしっかりと受け止めるように、言葉を続けた。
「これは、俺が、君のために作った曲だ。君が歌うから、この曲は完成したんだ。だから、これは君の歌だ」
先ほどの失言による、二人の間の見えない壁。蓮は、その壁を自らの手で打ち壊しにかかっていた。嘘やごまかしではない。今の、偽りのない本心を、全て彼女にぶつける。
蓮の力強い言葉に、陽葵の瞳から、堪えていた涙が一筋、頬を伝った。それは、悲しみの涙ではなかった。
「……せんぱい」
「だから、他の誰にも歌わせない。この曲は、俺と朝霧、二人だけのものだ」
その言葉は、誓いだった。この曲を、そして何より、この曲を歌う朝霧陽葵という存在を、自分が必ず守り抜くという、固い誓い。
陽葵の唇が、震えながらゆっくりと綻んでいく。やがてそれは、涙に濡れた、最高の笑顔になった。
「…………はいっ!」
消え入りそうな、しかし、世界中のどんな言葉よりもはっきりと、彼女は頷いた。
コンサートの失言が作った小さな亀裂は、もうどこにもなかった。二人の間には、共に一つの作品を生み出したという、何物にも代えがたい、強固な絆が結ばれていた。
蓮は、心の中に、確固たる光が灯るのを感じていた。
星宮瑠奈という過去の嵐が、これからどれだけ吹き荒れようとも、もうこの光だけは、決して消させはしない。
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